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新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
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印刷2019/01/19 00:00

インタビュー

新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー

 2019年1月25日発売予定となっているDHARMAPOINT(ダーマポイント)の光学センサー搭載ワイヤードマウス「ダーマタクティカルマウス DPTM39」(以下,DPTM39)は,さまざまな点で注目の製品だ。

DPTM39
画像集 No.031のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー

高山 安氏(ソリッド 企画開発)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
 定評あるPixArt Imaging製の光学センサー「PMW3360」を搭載する点や,マウスパッドに対するセンサー出力自動調整機能を搭載するマウスとしてはかなり安価な5980円(税込)という価格を実現する点,ラバーコート仕様の「DPTM39RC」と,上面カバーをUVコート,側面をドライサンドコートとした「DPTM39DS」からなる2モデル展開となる点,そして何よりも,ブランドの復活第1弾マウスとして「ダーマタクティカルマウス DPTM37BK」(以下,DPTM37BK)という「失敗作」を市場投入してしまった新生DHARMAPOINTにとって,そのイメージを払拭できるか否かの試金石的存在となる点においてである。

 DPTM37BK市場投入のタイミングで4Gamerでは,ブランドを率いるソリッドの平山俊之氏代表取締役に話を聞いている。正直,そのときは煮え切らない回答が多かったわけだが,あれから9か月。今回は旧DHARMAPOINTのメンバーで,新生DHARMAPOINTにおいてDPTM39の開発に携わった高山 安(たかやまやすし)氏ら2名に話を聞くことができた。
 DPTM39は今度こそ「新生DHARMAPOINT復活の狼煙」となれるのか。ここまでの経緯や製品の詳細など,いろいろと聞いてきたので,その結果をお知らせしたい。


旧DHARMAPOINTのオリジナルメンバー2人がDPTM39に関わるまで


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 以前,平山さんに登場していただいたとき,平山さんはご自身をフロントマンであるとおっしゃっていました。そのため,「開発者」の方がインタビューを受けていただけるとは思っていなかったのですが,今回,出てきていただけたのはどういう理由からなのでしょうか。

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 日本発のゲーマー向け製品ブランド「DHARMAPOINT」がソリッドという会社へ移管され,相応の時間が経った。製品のリリース以外ではこれまで沈黙を保ってきた“新生ダーマ”だが,4Gamerではついにそのソリッドの代表取締役である平山俊之氏にコンタクトを取ることができたので,聞いたことを全部お伝えしたい。

[2018/04/21 00:00]

高山 安氏:
 前回のインタビューだと,弊社としてあくまでも「DHARMAPOINTを買ったのは誰なのか」を明らかにしたかったということで,平山が出たという経緯があります。
 ただ,その場でいろいろご質問をいただいて,キャッチボールのボールを受けただけで投げ返せていなかったな,と。
 DPM39も発表したということで(※編注:インタビュー自体はDPTM39の発表に合わせて行っている),ここできちんと回答させていただこうということです。

4Gamer:
 そして高山さんと,もう1人,顔出しと名前出しNGの方がいらっしゃっています。なのでもうひとかたは事前のご希望に従って「中の人」とお呼びしたいと思いますが,お二人はどのような経緯で新DHARMAPOINTに関わることになったのでしょうか。

中の人:
 旧DHARMAPOINTチームの解散に関する記事が4Gamerに載りましたよね。2013年の秋頃だったと思いますが,僕はあの後,2014年の2月にはソリッドへ合流しています。

4Gamer:
 つまりDHARMAPOINT復活の話って,そんな昔からあったんですか?

中の人:
 あ,いえ,そこは平山もお話ししていますが,その時点だとDHARMAPOINTはまったく関係ありません。
 これもインタビューに出てきましたけど,ソリッドの子会社に,メーカー事業を手がけるプレクスというのがあるんですね。そのメーカー事業のほうを見てほしいという話で入社したという経緯があります。

4Gamer:
 つまり後からDHARMAPOINTがくっついてきて,運命には逆らえなかったと。

中の人:
 そうですね(笑)。

4Gamer:
 旧DHARMAPOINT時代の仕事や,新生DHARMAPOINT合流までの経緯をざっくり伺ってもいいでしょうか。

中の人:
 旧DHARMAPOINT時代は,完全分業制だったんですよ。簡単にいうと作る人と売る人……というか,内向きの仕事と外向きの仕事ってイメージですが,そんな感じで分かれていたんですね。僕がやっていたのは外向きの広報やマーケティング,営業ということになります。

4Gamer:
 となると,プレクスでも広報やマーケティングなどを?

中の人:
 それが違うんですよ。
 ソリッドは商社なんですけど,これは一般論として,商社って「メーカーにとって必要なもの」,それこそパッケージングのノウハウや,マニュアルの書き方,Webサイトと製品情報ページの作り方といったものを知識として持っていなかったりするんです。なので,そういうのを面倒見てほしいということで入社した経緯があります。

4Gamer:
 それってかなり違うジャンルの業務では……。

中の人:
 平山は「メーカーにいたんだから大丈夫でしょ」と。そんなことはないんですけど(笑)。そういう意味では「本職じゃない」んですが,旧DHARMAPOINTもそれほど大きなチームではなかったですから,横でいろいろ見ていたわけです。そのときの経験を活かしながら,見よう見まねでやっていた感じですね。

4Gamer:
 高山さんのほうはいかがでしょう。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
高山 安氏:
 僕は旧DHARMAPOINTだとサポートや物流をやっていました。
 旧DHARMAPOINTが解散したあとは本当にあちこち行っていたんですけど,あるとき,「ソリッドがDHARMAPOINT買うかもしれない」という噂を聞いて,さらに2017年の春頃になると「どうやら本気らしい」という話も聞きまして。もともと平山とも面識があったので,「なら,サポートとか物流管理担当が必要じゃないですか。ぜひまたやらせてください」と連絡しにいったという流れですね。

4Gamer:
 旧DHARMAPOINTには開発担当者が別にいたから当たり前ですけど,高山さんご自身も,開発畑出身というわけではないと。

高山 安氏:
 そうですね。

4Gamer:
 そんなお二人がいま,「開発者」としてインタビューを受けてくださっていますが,平山さんはご自身を,プランナーであり,また最終的な決裁者であるとおっしゃっていました。
 お二人はどのようなポジションなのでしょうか。

高山 安氏:
 プランナーが行うコンセプト出しというのが工程の最初にあるとお話しすると分かりやすいと思うんですが,平山は「最初と最後」の担当です。
 僕らは,そのコンセプトを踏まえて,仕様への落とし込みや,どこに製造を頼むべきか,何を自分達で用意すべきかという,生産に至るまでのところをやっています。
 二人の役割分担はざっくり言うと,僕が「海外生産になるもの」,彼(=中の人)が「国内生産になるもの」です。

中の人:
 補足すると,僕の主な仕事は国内のパートナー探しですね。量産をしてくれる会社さん探し。
 「海外で作ればロット単価は安いけれども,ロット単位が大きくて,ソリッドのような小さな会社では扱いきれない」ようなものを国内生産するんですが,それを担当してくれる会社さんを探して,交渉してといった感じです。

4Gamer:
 具体例って何かありますか。

ダーママウスソールの例
画像集 No.004のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
中の人:
 そうですね。いま販売しているマウスソール(※ダーママウスソールシリーズのこと)の工場はイチから探して,最終的に西新宿の会社さんに依頼して,相模原の工場で量産するっていう形になっています。

4Gamer:
 それはゲーム系で有名な会社なんですか?

中の人:
 いえ,自動車や医療機器用の樹脂加工が本業の会社です。なので交渉は「ゲーム用のマウス? なんですかそれは?」っていうところからですね。
 飛び込んで,一通り説明して,そこからやっと素材の相談に入って。「それならこれがいいんじゃないか」というのを話し合うという。

4Gamer:
 ああ,そういう。

中の人:
 あとはほかにも鈑金系の会社さんとか縫製工場とか,全然違う業界の方々に「こういうことがしたいんですけど,できますか」というのをやっています。現在のところ,形になっているのはソールしかないですけど。

 あ,そうそう,仕事としてはもう1つ,旧DHARMAPOINT時代と同じ「外向きの仕事」もさせてもらっています。広報やマーケティングですね。最近はそこにTwitterアカウントも入りました。

4Gamer:
 高山さんも同じ感じ……ではないですよね。飛び込みでいきなり深圳(しんせん,Shenzhen,中国南部にある工業都市)の工場に行ったりはしないでしょうし。

高山 安氏:
 そうですね。そういう観点でお話しすると,ソリッドとして付き合いの古いエージェントが台湾の協力企業にいまして,基本的にはその人を通じて動いています。たとえば,こういった素材を扱えるところはないかとか,こういうことができる工場はないかとか。

 あとは,先ほど「旧DHARMAPOINTの解散後にいろいろ」というお話をしましたが,いつかゲーマー向けデバイス市場の現場へ戻れることを想定して,それこそCOMPUTEXの展示会などで話をできそうな人と名刺交換を重ねて,いくつか連絡先を押さえていたりはしますね。

4Gamer:
 ちなみに,先のインタビューで平山さんは,国内にいる「先生」的な存在の人達に,開発についていろいろ聞いているといった趣旨の話をしていましたが,それをやっているのは……。

高山 安氏:
 僕ですね。その先生に紹介していただいた工場と僕とで直接やり取りするようなケースが最近では増えてきています。


オリジナルメンバーにあらためて聞く「DPTM37BK事件」


4Gamer:
 以上を踏まえて,これは絶対に聞かねばならないことですが,いくらメイン開発者が離脱しているとはいえ,旧DHARMAPOINTで実績をお持ちのお二人がいながら,なぜDPTM37BKという製品が世に出てしまったのでしょう?

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[2017/11/14 00:00]

高山 安氏:
 来ましたね(苦笑)。
 ただ,僕達もソリッド側の人間ですので,すべてを包み隠さずお話しするわけにはいきません。申し訳ないのですが,その点はご理解ください。

4Gamer:
 はい。

高山 安氏:
 ものすごく簡単にお話しすると,僕がソリッドに入社したのは2017年6月中頃なんですが,そのときには,すべてが決まった後だったんです。

4Gamer:
 以前のインタビューで,平山さんは旧37(※旧DHARMAPOINTが手がけていた「DRTCM37」のこと)の金型は一部残っていたとおっしゃっていましたが,それがあの形だったということですか? 工場の管理番号上は「旧37と同じ」ことになっていたけれども,その実は当時のCM StormやCOUGARなどが手を加えた後の「ほぼ別モノ」になっていた金型に対し,その現物確認もしないまま,最終決裁者である平山さんが新生DHARMAPOINTチームへの相談なしに注文書を切った?

高山 安氏:
 申し訳ないですが,いまのご質問には肯定も否定もできません。お話しできるのは,「メーカーとして非常にお恥ずかしい話があった」ということだけです。

 ……実のところ,当初の発売計画は6月下旬だったんですが,僕が入社して最初に目にした当時のDPTM37BKはもっと「ヤバい」状態だったんですよ。

4Gamer:
 アレよりですか……。

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高山 安氏:
 それで急遽,3か月だけ時間をもらって,少しでもマトモにするよう改良は行いました。最初のよりは相当マシになっているんです。あれでも。

中の人:
 インタビューの後で,平山とも「会社としての見積もりが甘かった」ことを確認して,襟を正すというか,いまはとにかく「甘さ」を潰すことを第一にやっています。
 これ以上具体的なお話は一切できないのが本当に申し訳ないですが……。

4Gamer:
 これもノーコメントだと思うので,いまのお話を聞いた感想だと思っていただければと思いますが,出荷前の時点で問題は認識されていたということですね。

高山 安氏:
 配慮いただきありがとうございます。「勇み足で本当にご迷惑をおかけしました。これからの製品にご期待ください」というのが公式の回答になるかと思います。

4Gamer:
 ちなみに今,DPTM37BKはどういうステータスなんでしょうか。

中の人:
 実のところ売り上げ自体はそれほど悪くなくて,おおむね順調に出荷を続けられています。
 DPTM39の発表に合わせて3980円(税込)へ,2000円値引きもしましたので,この価格なら受け入れてもいいという方への提供を続けていく感じですね。ただ,増産の検討はしていません。

4Gamer:
 分かりました。
 さて,「これからの製品」の話が出てきたのでここで聞いてしまうのですが,平山さんは先のインタビューで,かなりきっちりしたように見えたロードマップを出していましたよね。
 ですが,「2018年4〜6月期に出す」ことになっていたDPTM39はここまで遅れたりと,計画は明らかに遅延しているように見えます。これはどういう事情によるものなのでしょうか。

中の人:
 まず,全体的なお話をさせていただくと,新生DHARMAPOINTはDPTM37BKで失態を犯しました。そして僕達は,マウスの失態はマウスでしかカバーできないと考えていて,だからこそ高山はしんどかったと思うんですけど,DPTM39の開発に全力を注ぐことにしたんです。
 あともう1つ,付随的な理由として,ソリッドはそれほど大きな会社ではありませんから,何レーンも並行して動かすのは「マウス開発に全力」という状況だと難しいというのがあります。

4Gamer:
 確かに複数のパイプラインを走らせるのは大変ですよね。

中の人:
 どこのメーカーでもそうだと思いますが,PCゲーム用のデバイスを手がけているところにとって,マウスは花形アイテムなので,そういった意味では「資源の集中」を図った感じですね。
 僕が話を進めていたアイテムとしてはバッグや机といったものもありますが,ゲーマーの方に自信を持ってお届けできるマウスもない状況でそちらにリソースを割くのは得策ではないという,チームとしての判断がありました。

2017年夏の時点で予告されていたキーボードのイメージ
画像集 No.007のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
高山 安氏:
 キーボードは,平山も「しばらくは何もない」というお話をさせていただいたと思いますが,第1弾として計画していた製品は正式に「ぽしゃり」ました。原因は1にも2にも製造コストです。
 日本語キーボードは日本国内でしか売れませんから,潰しが効かず,結果としてロットが大きくなるとか,そもそも採用しようとしていたスイッチの単価が高いとか,そういう理由です。

4Gamer:
 仮に,当初の計画のまま進行していたら,どれくらいの値段になったんですか。

高山 安氏:
 DHARMAPOINTのキーボードとして,ゲーマーの皆さんに自信を持って勧められるものはこれですと形になったとき,価格はおそらく税込で3万円近くになったと思います。

中の人:
 というか,最近のゲーマー向けデバイス市場って,価格がどんどん高騰しているじゃないですか。

4Gamer:
 ええ。

中の人:
 端的に述べて,中学生のプレイヤーからすれば3万円という金額は非常に高価です。1万円だって簡単には手が出ません。
 もちろん,その背景には大手各社の開発競争があって,ここ数年におけるゲーマー向けデバイスの技術的,機能的進化には目を見張るものがあるんですが,でも高くて買えないならそれは意味がないというのがDHARMAPOINTの立ち位置です。僕達は,マウスとマウスパッド,キーボード,ヘッドセットの4点で税込2万円くらいに収めたい。

 でも,キーボードで「Cherry MXキースイッチを使おう」って話になると,あっという間に店頭価格が税込1万円を超えてしまいます。4点セットで2万円という話をしているのに,キーボードが1万円超級ってのは,さすがに現実的じゃないですよね。

4Gamer:
 しかも,それこそ計画終了になったキーボードのように,「皆がCherry MXを採用しているから,我々は変わったものを出そう」と,国内メーカー製スイッチを採用しようとすると,コストはどんどん上がっていきますし。

中の人:
 そうなんです。そうなると,他社さんが積極採用しているような機構を採用したキーボードを,他社さんと同じような高単価で出す意味ってないんじゃないか,ということになります。

4Gamer:
 そこを打開するアイデアはあるんですか?

中の人:
 残念ながらまだ見えていません。DHARMAPOINTとしては,よそが出しているようなものを作っても面白くないなと考えていますので,現在はスイッチに代表される入力機構の新しいものをあらためて探しているという段階ですね。

4Gamer:
 国内大手,それこそバッファローさんあたりは,メンブレンスイッチを採用して,一部のキーでロールオーバーに対応して,実勢価格は税込2000円くらい,とかそういうビジネスをやっています。
 スイッチの選定まで開発のステータスが巻き戻ったのであれば,それこそひとまずそういう安価なものを出すという選択肢もあると,外から見ている分には思ってしまうんですが。

画像集 No.006のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
高山 安氏:
 正直,そういう製品の売り込みは頻繁に来ます。ただ,持ち込まれたものにロゴシールを貼って発売して,それはDHARMAPOINTのキーボードなのかというのがあります。
 わざわざ「日本人のために日本人が作るブランドです」と宣言しているにもかかわらず,ただ持ってきちゃうのは違うだろうと。

4Gamer:
 まあ,なんというか,そういう自称ゲーマー向けデバイスって画一的ですよね。画一的という表現が正しいかはちょっと自信がありませんが。

高山 安氏:
 そうですね。
 そういう売り込みをかけてくる業者の製品って,「ほら,ゲーマー向けデバイスってこういうやつでしょ?」というものばかりなんです。マウスならとりあえずピカピカ光ってる(笑)。

4Gamer:
 ああ,すごくよく分かります。

高山 安氏:
 でも,僕達は光らせてない。なぜかといえば,ゲーマー向けデバイスを光らせる理由が見つかっていないからです。そういうところに光るデバイスを持ち込まれても……というところですね。
 あと単純に,光らせるとコストは必ず上がります。それは,若い層が手を出しやすい,低価格の製品を出すというDHARMAPOINTのポリシーには合わないというのもあります。
 自分達で率先してやりたいと思えないものを,ただラインナップを揃えるためだけに用意する必要はないかなと。

4Gamer:
 ヘッドセットも同様な感じですか?

高山 安氏:
 そうですね。似たような感じです。
 スピーカードライバーをいろいろ取り寄せて試しているんですが,これならDHARMAPOINTとしてゲーマーの方々に使ってみてよと言えるものを見つけられていません。
 先ほどもお話ししたとおり,この数か月,僕のリソースはDPTM39のためにほぼすべて振り分けてしまっているというのもあって,なかなか進んでいませんね。

 一段落すればもう少し何かできると思いますが,現時点ではDPTM39を優先した結果として後ろ倒しになっています。

4Gamer:
 本当,DPTM39というか,「DPTM37BKの尻拭い」というか(笑)。

高山 安氏:
 いやまあそんな感じです。DPTM37BKの件にケリを付けなければ,前には進めないよっていう。


旧37の完全復活を掲げるDPTM39はどんなマウスなのか


4Gamer:
 ここまでいろいろ伺ってきましたが,やっと本題です。DPTM39については,登場の経緯とハードウェアの詳細を聞かねばならないと考えていますが,まずは経緯から聞かせてください。

中の人:
 マーケティングな的なところからいくとですね,旧DHARMAPOINTから新生DHARMAPOINTになって,相変わらず僕はエンドユーザーさんと直接お話をさせてもらったりしているんですけど,彼ら彼女らの不満として常に上位に来るものに,「形を気に入っていたマウスがあったのに,いつの間にか販売終了になってしまって,乗り換え先が見つからない」というのがあるんです。

4Gamer:
 はい。

画像集 No.032のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
中の人:
 なので,旧37のユーザーが安心して使えるマウスを出したい。仮にセンサーが変わったとしても,金型は変わらない状態で少なくとも5年以上は継続販売できるものを出したいというのがあります。(DPTM37BKで)一度失敗していますから,今度こそですね。
 個人的には,DPTM39の後も,“310”“311”といった感じで,最低でも2回は3型番で同じ形状の製品を継続したいと考えています。

4Gamer:
 スケジュールという観点ではいかがでしょう。DPTM37BKの登場からかなりの時間がかかり,当初のロードマップからもかなり遅れての登場となったDPTM39ですが,まずはここまで時間がかかった理由を聞かせてください。

高山 安氏:
 DPTM37BKを出した当時は,そこまで3か月間,あれがダメだこれがダメだとやっていたわけですが,そのやりとりの中で,「現状の金型を修正できる」と考えていたんですね。これも先ほどの「甘さ」という話につながってくるんですけども。

4Gamer:
 旧37からいろいろあったDPTM37BKの金型だけれども,修正すればDPTM39は作れるだろうと。

高山 安氏:
 そうです。センサーを変更する時点でセンサー台座の変更は必須ですから,下ケース(※底板部分のこと)は変えなければならないんですが,でも上面カバーは既存の金型を修正するだけでいけるだろう,修正するだけならそこまで時間はかからないだろうと見積もっていたんです。

4Gamer:
 しかしそうはならなかった?

高山 安氏:
 ええ。いろいろやってみた結果,これじゃやっぱりダメだと。
 その時点で平山とも相談したんですが,DPTM37BKの失敗をカバーするにはやむなしと,金型を新規で起こすことになりました。ここまで遅れた最大の理由はこれですね。金型を1つ起こすだけでスケジュールは軽く半年くらいドンと延びてしまいます。

中の人:
 金型を起こそうって話になったのはインタビュー記事の掲載直後くらいですね。

高山 安氏:
 4月下旬か5月上旬くらいに決まったってことを考えると,まずまずの速度で完成させられたかなって(笑)。

4Gamer:
 いや,相当速いですよ。そこまで速くできた理由は何でしょうか。

高山 安氏:
 簡単に言うと,お手本があったということです。

4Gamer:
 ああ,旧37!

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高山 安氏:
 そうです。
 普通は,開発者やコンセプターの頭の中にしかない理想の形を実際の形状に落とし込むという作業が生じるわけですが,DPTM39の開発では,ゴールが決まっているわけですよ。金型を起こすところまで戻っても,当初の予定から半年強の遅延で済んだのはそれが大きな理由ですね。

4Gamer:
 発泡スチロールや3Dプリンター,粘土などを使って,形状を模索するという工程を全部端折れるわけだから,後は細かい部分だけと。

高山 安氏:
 ええ。メインボタンをセパレートにしたり,スイッチを押す機構のリップも元に戻したりとか,形状に関するデザインで必要なのはそういう細かい部分だけでした。
 なので遅れた理由は金型ということになりますが,これはもう仕方がなかったかなと。早く出すことよりも,皆が慣れ親しんでくれたあの形に戻すことのほうが優先度ははるかに上でしたから。

4Gamer:
 素人考えだと,センサーが変わるとファームウェアも変えなければならないので,そこもけっこうな工数がかかるのではという気がするんですが。

ダーマコントロール2.2
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高山 安氏:
 実はそこも短縮できました。というのも,旧37のユーザーが従来と同じ感覚で使えるようにしたかったので,設定ツールである「ダーマコントロール」のユーザーインタフェースを変えていないんですよ。なので,バージョンもDPTM37BKのときの2.1から今回は2.2に上がっただけで,マイナーチェンジという扱いにできています(ので,デザインの工数が発生していません)。
 もちろんご指摘のとおり,センサーが違いますから,内部的には1から作っているんですが,ユーザーインタフェースを変えていないので(スケジュール的には有利になりました)。

4Gamer:
 だとすると,プリセットで組み込まれているプロファイルも相変わらず古いまま?

高山 安氏:
 新しいのも足しましたよ。でも,古いのがなくなったら寂しいじゃないですか。そんな理由で残しています。もうプレイできないオンラインゲームのものはさすがに削除しましたけども。

4Gamer:
 ところで,旧DHARMAPOINT時代,製品名型番って十の位が金型,一の位がセンサーのそれぞれ新しさを示していましたよね。
 意地悪なツッコミですけど,DPTM39って金型変わっていますから,「3」9じゃないのでは(笑)。

中の人:
 3’(さんダッシュ)くらいですね(笑)。まあ,今後は「十の位は形状」ということでご容赦ください。
 先ほど高山も言っていましたが,別に旧37が完成品だったというわけではありませんし,今回のDPTM39がそうだとも思っていません。DPTM39を市場で評価いただいて,今後,3系の新製品が出るときには,上面カバーの微修正を行うとか,そういうことを繰り返していくことになると思います。


DPTM39における「2コーティング展開」の意味と意図


4Gamer:
 ということで,実機のお話ですが,DPTM39における大きな特徴は,表面加工の異なる2モデル展開という点にあると思います。色違いではなく,表面加工という「触らないと分からない」違いで2つ用意したのはなぜですか。

DPTM39RC(左)とDPTM39DS(右)。並べて細かくチェックしてみると確かに違う
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中の人:
 最初に「大人の事情」をお伝えすると,金型のコストを回収しなければならないというのと,製造工場のいわゆるMOQ(Minimum Order Quantity,最小発注数量)をクリアしなければならないというのがあるんですが,両方をクリアするのに1アイテムだとなかなか厳しかったんです。

 ただ,なら2色展開すればいいかというと,2色展開した場合って,必ず「黒じゃないほう」が売れなくなるんですよ。

4Gamer:
 それはどこのメーカーさんもそうおっしゃいますね。

中の人:
 じゃあどうするかっていう話を高山とずっと話をしていて,最終的に「サーフェス違いって面白くない?」と。それで実際にTwitterでアンケートを採ってみたんです。


4Gamer:
 「触ってみないとわかんねーな」が1位(笑)。

DPTM39の製品ボックス。DPTM39RCが橙,DPTM39DSが黄を「参九」の文字表記に用いている
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中の人:
 まあそういう結果になるとは思ったんですけど(笑),触ってみないと分からないなら上位2つを出してみようと,ラバーコートとドライサンドを用意することにした次第です。DPTM39RCがラバーコート,DPTM39DSが上面UVコート,側面ドライサンドコートですね。

4Gamer:
 目の前に2モデルありますが,ぱっと見だと違いは分からないですね。

DPTM39の2モデル。インタビュー時のサンプルだが,一見では両者を区別できない
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高山 安氏:
 だと思います。外観は当然,旧37のときに開発へ協力してくださった方々の意見を集約して完成したものをそのまま踏襲する形で仕上げてあります。旧37を使っていた方にはまったく違和感なく使っていただけるはずです。

4Gamer:
 旧37との違いはコーティングだけだと。

高山 安氏:
 です。
 ラバーコーティングのほうは,手汗をかいてもかかなくてもサラサラしていて気持ちよく,グリップに影響を与えにくいです。
 UVとドライサンドのミックスは,逆に手汗をかいたときにも滑らないことを重視しています。UVコートは耐水性が圧倒的に高いので,長く使っていただいても感触は変わりにくく,ドライサンドはとにかくグリップを高める方向ですね。

4Gamer:
 旧37はラバーコートで,そのレーザーセンサーモデルに相当する「DRTCM38」で上面UV加工,側面ドライサンド加工でしたよね。DRTCM38はとにかくドライサンド加工の耐久性が低く,使っているとすぐ剥がれてくるのをよく憶えていますが,そこは改善したんでしょうか。

高山 安氏:
 今回採用しているのは新しいドライサンドで,あれより耐久性を上げるというコンセプトで用意しています。

4Gamer:
 なぜ剥がれるのか原因究明はできたんですか?

高山 安氏:
 ここはそんなに難しい話じゃないんですよ。ドライサンドって,砂粒状に細かくしたABS(合成樹脂)を塗料に混ぜ込んで,それを塗布しているんですね。これで表面がざらざらになります。
 なので,感触もそうですし,グリップ力や摩擦力といった要素はすべて,塗料自体のスペックと粒の大きさで決まるんです。

4Gamer:
 はい。

高山 安氏:
 で,ですね,実のところ,塗料のほうのスペックはこれ以上ないところまで来ています。これ以上剥がれにくい,強い塗料を使ってしまうと,手触りがベタベタしたりと,別の問題が発生してしまうんですね。
 だからあとは,粒の大きさと量を調整するしかありません。大きいと摩擦が大きくなって持ちやすくなりますが剥がれやすくなり,小さくすれば逆のことが起こります。ここは完全にトレードオフです。

4Gamer:
 つまり現時点で最もよいと考えられるバランスにしたということですか。

ドライサンドコーティングに寄ったところ
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高山 安氏:
 というか,ひとまず従来よりも粒の大きさを小さくして,一方で量を少し増やしてみています。触っていただくと,前のとは感触がけっこう違うと思うんですが,ならこれが最終回答かと言えば,そうは思っていません。ここは,ご意見があればぜひいただきたいです。

4Gamer:
 サーフェス展開のバリエーションという点だと,最近は側面にラバーシートを貼るというのが流行じゃないですか。そこにいかず,セカンドチョイスをドライサンドにしたのっていうのは先ほどのアンケート結果が大きいわけですか?

高山 安氏:
 そうですね。ただ,「アンケートの選択肢にした3種類の中だと,僕は一番ドライサンドが好き」というのもあったりしますが。

4Gamer:
 選択肢にラバーシートを入れなかったのは意図的ですか?

旧DHARMAPOINTが手がけていたDRM26
画像集 No.010のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
高山 安氏:
 いえ,そんなことはないです。ラバーシートは以前に「26」(※「DRM26」)で採用していますし,またやりますよ。DPTM39で採用しなかった理由はシンプルで,旧37の完全復活を目指すDPTM39の金型が,ラバーシートを貼る前提になっていないからですね。貼る前提で凹みを用意しておかないと,貼ったラバーシートの厚みだけ外形が大きくなっちゃいますから。

4Gamer:
 言われてみればそれはそうですね。

高山 安氏:
 あと個人的には,せっかくグリップに何か貼るのであれば「持った感触の異なるバリエーションモデル」を追求したいと考えているんですよ。
 それこそ“おっぱいマウスパッド”的な素材もどうかなあ,なんて。

4Gamer:
 つまりジェルですか。

高山 安氏:
 そうです。意外と値段が高かったりするので,いまは解決策を探している最中ですけれども。

4Gamer:
 薄くして,握り込める系にする感じですかね。

高山 安氏:
 やっぱり皆さん,ゲームをプレイしていると熱くなって,ついつい握る力が強くなるんですよね。

4Gamer:
 ところで,今回のDPTM39で,3ラインナップというのは考えなかったんですか。ポリウレタン(PU)コーティングのテカテカしたやつも用意すれば,3製品展開できたと思うのですが。

中の人:
 3製品はまた難しくてですね。3製品展開すると,どういうわけか,必ず1製品だけ売れなくなるんですよ。そしてそうなると,次の量産に影響が出てくるんです。
 たとえば今回は2000個ずつ,合計4000個生産するんですが,仮に4500個として,3種を1500個ずつにするじゃないですか。

4Gamer:
 はい。

中の人:
 それで,たとえばそのうちの1種類が全然売れなかったとします。そうすると,残る2種類を再生産するわけですけど,契約は4500個ですから,2製品で4500個取らなければならなくなります。初回生産数量より増えて,それはそのまま在庫のリスクになってしまうということですね。
 2種類くらいのほうがユーザーも選びやすいですし,我々も生産しやすい。また,MOQもクリアしやすいと。

4Gamer:
 なるほど……。

中の人:
 あとは,2種類の場合,片方だけ極端に売れるという事態が生じてしまえば,今回はMOQが4000個ですから,売れているほうだけ4000個再注文してしまえばいいので,問題が生じにくいんです。

4Gamer:
 そうなると,将来の製品も2モデル展開が基本になりそうですね。

中の人:
 そうですね。一応,その予定ではいます。

高山 安氏:
 まずは,DPTM39で2種類あるコーティングを両方触ってみて,ぜひ好きなほうを選んでください,ということで。両方だったらそのときは両方よろしくお願いします(笑)。

4Gamer:
 底面は,旧37に戻ったという理解でいいですか。

高山 安氏:
 ええ。ソールの形状も含めて元どおりです。貼ってあるソールはPTFE(PolyTetraFluoroEthylene,ポリテトラフルオロエチレン),いわゆる「テフロン」ですね。
 交換用のPTFEソールと,より耐久性に優れる超高分子ポリエチレン性ソールもあるので,そちらもぜひ(笑)。

DPTM39の底面
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4Gamer:
 ケーブルはどうでしょう?

高山 安氏:
 ケーブルは何も変更していません。要するに,「変なコストダウンの対象になっていなかった」ということですね。


内部こそが一番大きな変更点!?


4Gamer:
 今回は上面カバーを開けた状態も見せていただいているので,いくつかその質問もさせていただければと思いますが,まず左右メインボタンのスイッチ。耐久性1000万回のタイプなんですね。最近のゲーマー向けマウスだと4000万回だったり5000万回だったりと高耐久のものを採用するケースが多かったりしますが,これはコストが理由ですか。

高山氏はサンプルを開けて見せてくれた
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高山 安氏:
 そうですね。どこまでいっても結局のところは価格が影響してしまうところです。
 ただ,リップの調整,というかリップを旧37と同じに戻したことで,ボタンとしての耐久性向上は図っています。

左右メインボタン用スイッチはオムロン スイッチアンドデバイス製の「D2FC-F-7N(10M)」だった(左)。右は「メインボタン側の,スイッチを押す機構」に寄ったところ。写真の左右両端に少し膨らみが見えるが,これがリップだ。このリップがあるため,スイッチを底打ちしなくなり,スイッチの耐久性が向上するというのが旧DHARMAPOINTのデザインコンセプトだったが,それが復活したわけである
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4Gamer:
 「戻した」という点で,ほかにも見るべきポイントってありますか。

高山 安氏:
 そうですね。ミドルケース(=シャーシ)にある「サイドボタン用に開けた穴」の内側に,L字の出っ張りを設けています。
 本体後方側のサイドボタンはもともと穴よりも大きくしてあるので,押下したときにはミドルケースにぶつかって,必要以上にスイッチを押し込んでしまわないようになっているんですけども,本体前方側のサイドボタンは先が細く,ミドルケースにぶつからないんです。仮にマイクロスイッチがなければ際限なく押し込めてしまう構造になっていた,とも言えます。

高山氏が精密ドライバーで指し示している先のL字部分が,氏の言う出っ張りだ
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4Gamer:
 それで,ストッパーとしてこの出っ張りを設けたと。

L字型の出っ張りとボタンの関係を見たカット
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高山 安氏:
 そうです。スイッチやサブ基板をぐいっと押してしまうことが故障の原因になり得るので,その対策ですね。
 L字の突起がサブ基板上にあるマイクロスイッチの角にピタッと当たるようになっていて,押下時の圧でサブ基板が動いてしまうのを防ぎます。

4Gamer:
 今回,L字のやつを取り付けたことで,その問題を改善したと。

高山 安氏:
 そうですね。
 実のところ,DPTM37BKからの変更点は,こと内部に関してお話しするなら,そういう細かいところばっかりなんですよ。強度を上げるものであるとか,工場の組み立てラインにおける生産性を上げるものであるとか。
 おそらくですけど,外から見て分かるところで,表面のコーティング以外に旧37との違いは見つけられないと思います。

4Gamer:
 サイドボタンはこれ,いわゆるノーブランド品ですか。

サイドボタン用スイッチなどが載るサブ基板
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高山 安氏:
 そうです。メインボタンと同じオムロン(※オムロン スイッチアンドデバイスのこと)のスイッチも検討したんですが,ここも最終的にはコストとの兼ね合いですね。
 サイドボタンは押下回数も少ないですし,最後の手段ですがダーマコントロール側で「デバウンス」を長く設定することで延命を図ることもできますから。

4Gamer:
 サンプルだと「載っているだけ」に見えますが。

高山 安氏:
 鋭い(笑)。このサンプルはまだ最終版じゃなくてですね,「ちゃんと動く,最初のバージョン」です。なので,サイドボタン周りはとりあえず動くだけで,「下駄」もまだ履いていません。

DPTM37BKのレビュー記事より。サブ基板に載るサイドボタン用スイッチの片方が斜めを向いた実装になっていた
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4Gamer:
 DPTM37BKだとマウス後方側のサイドボタンスイッチが斜めに付いていましたけど,アレが改善するわけですね。

高山 安氏:
 ええ。旧37もそうですが,このデザインだと,マウス前方側よりも後方側のサイドボタン用スイッチが1mmほど高くなっているんです。なのでただ「載っている」場合だと,高さがズレますから,スイッチを斜めに押すことになってしまうわけですよ
 DPTM39ではここに下駄を履かせるように薄い板を挟み,どちらのサイドボタンもスイッチの中心をしっかり押せるようにしますので,ここは最終製品であらためてチェックしていただければと思います。

4Gamer:
 了解です。
 さて,センサーは発表どおりPMW3360ですね。マイクロコントローラも当然ですけど,いわゆる“32bitARMプロセッサ”と。ここは定番の「Cortex-M0」ベースですか。

PMW3360センサー(左)。マイクロコントローラは中国Holtek Semiconductor製の「HT32F52352」だった
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高山 安氏:
 そうですね。

4Gamer:
 いい機会だから聞いてしまうんですが,PixArtって,センサーのチューニングとか,ファームウェアの最適化サポートとかをやってくれたりするんですか。

高山 安氏:
 そういう意味でのサポートは基本的にありません。ただ,今回はまだ出していませんが,完成品を送るとPixArt内部の評価試験みたいなのを通してはくれるみたいです。

4Gamer:
 ほう。

高山 安氏:
 とはいえ,DPTM39ではほぼPixArtの推奨どおりの実装にしてあるので,これといって参考になる試験結果は出てこないと思います。それに,聞くところによると,びっくりするくらい待つことになるみたいなんですよ。
 そういう意味で,「PixArtのサポートを期待して開発を進める」というのは選択しづらいですね。

4Gamer:
 分かりました。
 続いてはスクロールホイール手前のボタン用スイッチですが,こういうのって往々にしてノーブランド品ですけど,DPTM39でもそんな感じですか。

高山 安氏:
 そうですね。少なくともボクらとボクらの依頼している工場の契約上はという話ですが,こういう(サブ的な)スイッチだと型番指定はできなかったりします。「信頼できるところのもの」みたいな指定だけですね。

 そもそもタクタイルスイッチ(Tactile switch,いわゆる「押しボタン」用のスイッチ。日本ではアルプス電気の登録商標である「タクトスイッチ」と呼ぶことも多い)って,型番で管理されてなかたったりして,「ほにゃららという工場が作っているやつなら信用できるから,それを用意してくれ」っていう指定の仕方になっちゃうんですよ。

4Gamer:
 ホイールは……(実際に回転させて)24ノッチ。ロータリーエンコーダは最近だとTTC製が流行ですが,これもTTCですね。

高山 安氏:
 そうですね。ここはコストパフォーマンスと,ユーザーの皆さんが使い慣れているものという点から,継続採用になっています。

4Gamer:
 もう1つ,DHARMAPOINTのマウスといえば「フェライトコア内蔵」ですけど,DPTM39はきっちりと中に入れてきていますね。

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高山 安氏:
 旧DHARMAPOINT時代に「フェライトコアを『おまじない』として付ける。でも,中を開けられたとき恥ずかしくないように」という話があったと思いますが,それを踏襲しています。見えないところのオシャレ,というほどのことでもないと思いますが,DHARMAPOINTらしさの体現というか。

4Gamer:
 だったら,基板に一筆したためてもよかったかもしれませんね。「我々は死なない」とか(笑)。

高山 安氏:
 面白いですね。僕もそういうのは好きなほうなので,いつかやるかもしれません。

4Gamer:
 あとはファームウェアですが,DPTM39ではいわゆるサーフェスキャリブレーション機能が付いていますよね。

高山 安氏:
 そうですね。ただあれって実のところはLoD(Lift-off Distance,マウスをマウスパッドから何mm離すとセンサーの出力をカットするかの調整値)のキャリブレーション機能なんですよ。トラッキングを調整するサーフェスキャリブレーション的な要素はどちらかというと副次的なもので。

4Gamer:
 サーフェスとの距離に応じて適切な出力に調整すると,そりゃ当然,トラッキングにも影響あるよね,的な。

高山 安氏:
 ですね。

4Gamer:
 調整法は他社のサーフェスキャリブレーション対応モデルと同じく横8の字ですか。以前,PixArtのPMW3360製品資料に「横8の字でやれ」って書いてあるのをちらっと見たことがあるんですが。

高山 安氏:
 同じ資料かどうかは分かりませんが,確かに横8の字に関する言及はありますね。
 厳密には規定というよりも推奨という感じなんですが,なるべく推奨に従ったほうが,何か問題が生じたときに余計な検証をしなくて済みますから,そういうところはなるべく推奨に従うようにしています。

 それでですね,1つだけお詫びしなければならないんですが。

4Gamer:
 なんでしょう。

サーフェスキャリブレーション機能は発売後の実装になる可能性があるとのこと。現時点でも機能自体は呼び出せるが,正常に動作しないという
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高山 安氏:
 このキャリブレーション機能ですが,発売には間に合わないかもしれません。間に合わない場合は,ひとまず手動で対応いただくことになると思います。必ず追加しますので,その場合は申し訳ないのですがお待ちください。

4Gamer:
 読者には必ず伝えます。
 で,そのキャリブレーションですが,センサー出力のいわゆる「工場出荷時設定」はどれくらい詰められたんですか。目下,詰めている真っ最中かもしれませんが。

高山 安氏:
 そうですね,「びっくりするくらい良い」わけではないと思いますが,合格点は十分に与えられる,くらいのものには仕上がりつつあると思います。
 重要なのはキャリブレーション後に「これはすごくいいぞ」と思ってもらえることなので,そこを目指して,「この変数にこれを入れてくれ」みたいな話を最近(※製品発表前後)はソフトウェア担当の会社さんとずっと続けてますね。

4Gamer:
 他社さんだと「自社製品用のプリセット」みたいなものを用意していることがあるじゃないですか。ああいうのは用意しないんですか。

高山 安氏:
 実のところ,マウスパッドのサーフェスってコンディション次第なところがあるじゃないですか。新品なのかそうじゃないのかでも全然違いますし。

4Gamer:
 ええ。

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高山 安氏:
 なのでメーカーとしては極論,「ラウンドごとにキャリブレーションしてほしい」くらいの気持ちだったりします。
 もちろんそれは大変すぎますから,一度バシっと決めたらしばらくはそれで使うという前提でチューニングしていますが,それでも「プリセット」はやはり危険なように思います。「それ選んでおけばあとは放置でいいんでしょ」と思われてしまうというか。

4Gamer:
 ああ,確かにプリセットにはそういう雰囲気がありますね。

高山 安氏:
 新品のときに合わせてプリセットしたら,1か月経ってけっこう変わってきちゃったね,みたいな。
 もちろん,多くのユーザーさんが望むのであれば将来的にDHARMAPOINTマウスパッド用のプリセットは出すかもしれませんが,だとしても,できれば1週間に一度,最低でも1〜2か月に一度はキャリブレーションしていただけれたらと考えています。対応版のダーマコントロールが出てから,になってしまうので申し訳ないですが,キャリブレーション自体はオートで簡単ですから。

4Gamer:
 ちなみに,今回製造を依頼している工場はDPTM37BKと同じですよね?

中の人: 
 同じです。

4Gamer:
 やっぱり,その工場がノウハウを全部持っていたということですね。

中の人:
 そうです。


あらためて聞く「新生DHARMAPOINTのこれから」


4Gamer:
 最後になりますが,DPTM39が出るというところで,再びロードマップに戻るというか,これからどうするのかというのをあらためて伺えればと思います。

中の人:
 ふわっとした回答をさせていただくと,ゲームを「楽しむためのデバイスを販売しているブランドになりたい」んですよ。

4Gamer:
 その心は?

中の人:
 ゲームってどうしても,勝った負けたの話になりがちじゃないですか。eスポーツという概念が幅を利かせるようになった昨今は,とくにその傾向が顕著で。
 もちろん,勝つことにこだわるとか,負けたくないとか,そういう世界はあるべきだと思うんですが,それ以前に,もっとゲームを楽しんでほしいんです。

4Gamer:
 米国ではけっこう前から言われている「Play for serious, or play for fun」,ガチかエンジョイかって話で,どちらかというと後者に寄っていると。

中の人:
 そうですね。なんかこう,寝る前にゲームをやってて,今日も楽しかったなってゲームを終了させたとき,手に持ってるマウスがDHARMAPOINTだったらいいなっていう感じですね。もちろんそこで競技性の高いゲームをプレイすることは一切否定しませんが……。

4Gamer:
 根底にあるのは「ゲームを楽しもうぜ」っていう思いだと。

中の人:
 これは余談ですけど,昔所属していたクランのマスターに「ゲームに遊ばされるな,ゲームを遊べ」って言われたことがあるんですよ。
 いまはどうしても勝つことがすべてみたいな風潮があると思うんですが,楽しんだ先に勝利があればいいだけで,勝利だけのためにゲームを考えるといろいろ苦しいよ,みたいな。

4Gamer:
 おっしゃることはすごくよく分かります。
 ただ,それっていまのDHARMAPOINTのタグライン(=キャッチコピー)とズレてませんか? 戦い続けてましたよね?

公式Webサイトを立ち上げたとき,DHARMAPOINTは「戦い続ける。日本のゲーマーとともに。」と宣言していた
画像集 No.030のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー

中の人:
 ええと(苦笑)。
 ……まぁ,そうなんですよね。

4Gamer:
 またチームの意向を無視して決まった系ですか。

中の人:
 あれは「大人の事情」系です。

4Gamer:
 ああ,なんとなく察しました(笑)。
 ということは,ポリシーの変更に合わせて変更することもあると。

中の人:
 というか,変えます。

2019年1月時点におけるDHARMAPOINT公式Webサイトのトップページ。「戦い続ける」系のメッセージは消えている
画像集 No.022のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
4Gamer:
 (※Webサイトをチェックしながら)確かに,DPTM39の発表に合わせて,「戦い続ける」系の画像はWebサイトから消えていますね。となると,DPTM39でブランドコンセプトも再構築を図っていく感じですか。

中の人:
 そうですね。いまいくつか案を検討しているところではあります。

4Gamer:
 発表を楽しみにしています。
 それで将来の話ですが,可能な範囲で今後のお話を聞かせていただけませんか。

中の人:
 一応ですが,2019年の大型連休前に2シリーズの復活を考えています。暫定的な型番は「210」です。

4Gamer:
 旧DHARMAPOINT時代の2系は「26」でしたから,ずいぶん飛びますね。

中の人:
 ですね。そしてその先のお話もすると,210の次もマウスです(笑)。

高山 安氏:
 次は新作です。「59」です。

中の人:
 「4」を飛ばすのは,日本人だからです(笑)。

高山 安氏:
 59は左右対称タイプになります。「左右対象形状だけれども右手用」ではなく,右側面にもボタンがある,完全な左右対象形状ですね。

中の人:
 社外的には何も言ってないですけど,社内的には,DPTM39でまずはDPTM37BKの失態を取り返したいという気持ちが強いです。
 そのうえで要望が多く,かつ,エントリー向けなので開発のハードルも低い2シリーズを出して,そこから59で,完全なる新生DHARMAPOINTを始めよう,みたいな感じですね。

4Gamer:
 開発はもう始まっているんですか。

中の人:
 まだ粘土コネコネだけですね。

4Gamer:
 DPTM39を発表できて,210もある程度形になってきて,それで高山さんが粘土をこねられる時間ができたという感じですか。

画像集 No.023のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
高山 安氏:
 というかですね,個人的にはいま,3Dプリンターにドハマりしていまして。
 これがもう楽しくてしょうがないんですよ。Autodeskの3D CADソフトも個人なら無料で使えるっていうのもあって,個人的に2万円ちょっとの3Dプリンターキットを買って組み立てて,もう,とにかく遊んでいるという状況です。

 なので,業務上は粘土をこねているんですけど,自宅ではもっぱら3D CADですね。最終的には業務にして,「もう粘土なんて時代遅れ」くらいのことは言っていきたい(笑)。

4Gamer:
 (笑)。

高山 安氏:
 いまはトラッキング速度を計測する装置みたいなものを3Dプリンターで実現できないか,考えていたりします。

4Gamer:
 ああ,普通に作ろうとするととてつもない大きさになるという……。


高山 安氏:
 もちろん巨大なものは作れませんし,作れても置く場所がありませんが,似たようなことはできそう,ということで,いまいろいろトライしています。
 みんなもっと3Dプリンターで遊ぼうよというのが,ある意味,今日一番お伝えしたいことです(笑)。

一同
 (笑)。

4Gamer:
 ところで,当初の予定にあったバッグなどはいったんペンディングですか。

中の人:
 ペンディングというか,逆に「いつでも出せる」ので,お金が潤沢にあるときにやろうかなと。

4Gamer:
 DHARMAPOINTとしては,そういうのが出てほしいという人は,とりあえずマウスを買って応援してください的な。

中の人:
 そんな感じですかね。なにとぞよろしくお願いします。

4Gamer:
 そうなると,当面はマウスに注力するという理解でいいですか。

中の人:
 最初に戻りますけれど,縫製工場に飛び込んだりしているって話をしたじゃないですか。

4Gamer:
 はい。

中の人:
 実はいま,マウスパッドを国内でやれないかと,いろいろ動いているんですよ。

4Gamer:
 それってつまりARTISAN的な? ARTISANと同じ工場を使うとか?

中の人:
 製造工場がどこかは知っています(笑)。ただ,ARTISANさんとはアプローチがちょっと違うので(同じ工場を使うことはおそらくないと思います)。

4Gamer:
 どういう意味でしょう?

中の人:
 想像ですけど,見る感じ,ARTISANさんはサーフェス生地の開発のほうから(工場探しや交渉に)入っていっていると思うんです。
 でも,僕がやっているのは縫製の側から入るやり方で,簡単に言うと,仕上げる縫製工場自体にサーフェス生地の開発もやってもらおうと。

4Gamer:
 候補をいくつか作ってもらって,その中から選んでいくイメージですか。

中の人:
 そうですね。物によっては,有名な東レさんとかの糸を使って,自分たちだけの物ももちろん作れますし。
 というかですね,縫製を専門にしている工場の人達って生地のプロなんです。であればその知識に基づくアイデアをお借りしたいというか,餅は餅屋というか。

DHARMAPOINTのTwitter公式アカウントより
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4Gamer:
 そちらにも期待したいですね。最後の最後なのですが,エンドユーザーとのコミュニケーションについて聞かせてください。
 序盤で,中の人がTwitter担当もしているという話がありましたが,今後,ゲーマーとのコミュニケーションはどのように図っていくのですか。Play for funが軸だとすると,プロゲーマーと契約して……という話にはなりにくいですよね。

中の人:
 ソリッドという会社は小さく,マーケティング予算みたいなもものもありませんから,大規模なプロモーション活動みたいなものは,もちろんできません。なのでそういうのはちゃんとした会社さんブランドさんにお任せして,僕らは基本的にTwitter上のコミュニケーションを重視していきたいと考えています。

4Gamer:
 具体的なプランはありますか。

中の人:
 すでに実施していることなんですけれども,フォローしてくれた人にこっちから連絡して,Discordでチャットしたりはけっこうやっているんですよ。

4Gamer:
 表に見えてないだけだと。

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中の人:
 そうですね。
 あとは,僕らは「リッツパーティー」って呼んでいるんですけど,うちの会社の会議室とかに集まってもらって,みんなでわいわいとゲームデバイスの話をしたいなと,ずっと考えています。

 旧DHARMAPOINTのときには,「SACTL」とか「AVAれ祭」といったゲームパブリッシャ主催のイベントへブース出展してユーザーさんとお話しする機会を確保していたんですが,いまだとそういう機会って「C4LAN」くらいしかないじゃないですか。

4Gamer:
 確かにいまだとそんな感じですね。

中の人:
 だったら,リッツパーティーで集まってもらって,「これ開発中のマウスなんだけどどう?」って直接聞けばいいんじゃないかと。
 3か月に1回なのか,年3回なのか,半年に1回なのかは決まっていませんが,定期的にそういうことができたらなと思います。

4Gamer:
 Twitterと言えば,DHARMAPOINTのアカウントって,けっこう頻繁に塗装しました系のツイートをしていますよね。

中の人はインタビューにも自分で塗装した塗装マウスを持ち込んでいた
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中の人:
 あれも「ゲームをもっと楽しもうよ」っていうやつの関連です。
 昔から思っているんですけど,たとえばテニスをやる人って,テニスのラケットの形とか素材とかグリップとか,ガットの張り方とか色とか,すごい気にするじゃないですか。こっちのほうがカッコいいとか,こっちのほうが調子が良いとか。
 「なのに,ゲーム用のデバイスはみんな同じでいいの?」っていうのがあって。

 愛着を持つために,たとえばデコったり,マニキュアを塗ったりとか,そういうのをもっとやればといいと思うんですけど,イベント会場でもほとんど見ないんですよね。

4Gamer:
 そういう状況に一石を投じるということですか。

中の人:
 難しいことは抜きにして,とにかく「愛着を持ったデバイスでゲームを楽しくプレイしようよ」というのを何とか表現したいなという感じです。

4Gamer:
 新生DHARMAPOINTとしては「楽しい」というのがどこまでも重要だということですね。

中の人:
 もちろん,塗装したり改造したりは自己責任ですよ。それは定期的に注意書きを入れます。
 でも,「DHARMAPOINTのツイートを見てやってみたくなって,ダメだったけど修理できませんか?」という話なら,応相談ですよっていう(笑)。楽しんだ結果ならサポートしたいですよね。

4Gamer:
 どうします,あえてLED仕込んでくるやつがいたら(笑)。

中の人:
 それはそれで面白いから,呼びますよ。「君,リッツパーティーに来なよ」って(笑)。

競技AIMタイトルの例。こちらは早期アクセス版をSteamから購入できる「Aim Hero」だ
画像集 No.027のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTは今度こそ立ち上がるのか? 「旧37の完全復活」を掲げるマウス「DPTM39」開発者インタビュー
 とにかく積極的にいろんな人と絡もうとしているんですが,最近,「競技AIM」(Competitive Aiming,競技エイム)をやっている人からフォローしてもらえたんですよ。で,ツイートを読みに行ってみると,摩擦係数みたいな話をずっとしているんですね。

 競技AIMって,FPSから立ち回りを一切合切カットしたようなものなんですが,それってつまり,立ち回り以外はFPSにも通じるものがあるわけです。であれば,FPSプレイヤーがAIMを向上させる話があるかもしれない。やっていることは似ているのに交わらないとか,そういう人達をリッツパーティーで引き合わせられたらなと考えています。

4Gamer:
 それでよい意見があればどんどん取り入れると。

中の人:
 そうですね。エンドユーザーさんから出てくる意見を直接「吸える」ブランドって,そう多くはないと思うので,うちはそこを目指していきたいなと。

4Gamer:
 デカいところほど難しいですからね。

中の人:
 もちろん,良い意見はどんどん言ってもらったほうがいいですし,悪いという意見ももらえればそれが改善につながりますから。

(インタビュー:BRZRK&佐々山薫郁,撮影および構成:佐々山薫郁)


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