インタビュー
[G★2007#51]KONAMIとUNIANAが,新作オンラインゲーム「Chaotic Eden」を共同開発する理由とは?
KONAMIのPCオンラインゲームといえば,オンラインカードゲーム「遊戯王」や,鳴り物入りで登場したもののあえなくサービス終了となったMMOコミュニティゲーム「ときめきメモリアルONLINE」,そしてフィギュアと連動するというコンセプトで現在もサービス中の「武装神姫」などがある。しかし,世界中のコンシューマゲーム市場で確固たる地位を築いているKONAMIであるにも関わらず,日本のオンラインゲーム市場において大きなインパクトを残してきたとは言えない状況だ。
そんなKONAMIが,PCオンラインゲームの競争が激しい韓国市場に乗り込むことになった理由はどこにあるのか。なぜこのタイミングでKONAMIが動いたのかを聞いてみた。
KONAMIとUNIANAがタッグを結成したいきさつ
4Gamer:
今回は突然の申し出に応じていただき,ありがとうございます。「Chaotic Eden」についての詳細は,11月中旬に韓国で開催される発表会まで公開できないとのことですので,今回はひとまず,どうしてKONAMIとUNIANAが組んでオンラインゲームを作ることになったのかを聞かせてください。まずKONAMIとUNIANAの間には,どのような関係があるのでしょうか。
KONAMIの「ウイニングイレブン」や「サイレントヒル」「ランブルローズ」といったゲームソフトの韓国での販売や,ウイニングイレブンのオンラインサービスの韓国での運営などを担当してもらってきたのが,UNIANAなんです。
S.J.Park氏(UNIANA CS Div/Manager。以下,Park氏):
1988年ごろからアーケードゲームでは関係があったのですが,本格的なお付き合いが始まったのは,1990年代後半に「Dance Dance Revolution」を韓国で取り扱うようになってからです。SCEK(ソニー・コンピュータエンタテイメントコリア)が韓国でPlayStation 2を正式に販売するようになってからは,まず「METAL GEAR SOLID 2」の販売を手がけました。
4Gamer:
なるほど,昨日今日の関係というわけではなく,こういった歴史のうえで,Chaotic Edenの共同開発が実現したということですね。そもそもゲームの企画自体は,どのような形で動き始めたのですか?
大和久氏:
もともと,オンラインコンテンツプロダクションの代表である高橋(高橋一也氏)が,オンラインゲームのノウハウを学ぶべく,韓国でゲームを開発しようと発案したんです。当初はモバイルでやろうか? という案もあったのですが,紆余曲折の末,PCオンラインゲームという形に落ち着きました。それが2007年の初めです。
そしてその企画が当社に持ち込まれ,社内でさまざまな検討を重ねた結果,一緒にやろうということになったんです。
4Gamer:
Chaotic Edenでは,“共同開発”とのことですが,役割の分担を教えていただけますか?
大和久氏:
企画,シナリオ,原画,サウンドはKONAMIが,サーバーとクライアントのプログラムやモデリングをUNIANAが担当しています。
4Gamer:
KONAMIが企画したものを,UNIANAに丸投げしている……というわけではないんですよね?
大和久氏:
ちゃんと一緒に開発していますよ。私自身,韓国に頻繁に来ていて,今ではUNIANAに自分の机もあるんです(笑)。
4Gamer:
そのうちKONAMIから机がなくなったり……しないといいですね(笑)。それはさておき,大和久さんはこれまで,オンラインゲーム開発に取り組んだ経験はお持ちですか?
大和久氏:
いえ,実は今回が初めてなんですよ。これまではコンシューマ畑で,例えばサイレントヒルのシナリオや企画に携わってきたんです。
4Gamer:
となると,オンラインゲーム開発に取り組むうえで,カルチャーショックのようなものを受けたりといったことはありませんか?
やっぱり作り方というか,考え方が違う部分は,カルチャーショックというより面白さを感じています。例えばコンシューマのパッケージゲームが中心の日本では,コンテンツのクオリティさえ高ければそれで良いという考え方で開発しがちなんですよ。でも,韓国ではプレイヤーを満足させる“サービス”を重視しているんですよね。
Park氏:
今回のプロジェクトに関わってくださっているKONAMIの皆さんが,韓国でオンラインゲームを成功させるために,違う文化を理解,吸収して開発に取り組んでくれているんです。例えば,しっかりした世界観が出来上がっていても,プレイヤーにとってもっと優先すべきことがあれば,その世界観を変えることも辞さないんですよ。そういう部分は,本当にありがたいですね。
大和久氏:
KONAMIとしても,こうやって韓国でオンラインゲームの開発手法を学べるいい機会ですからね。そのために,共同開発を選んだとも言えますし。
「Chaotic Eden」は,これまでの韓国市場にはないタイプの作品
4Gamer:
ところで,G★2007の会場はご覧になりました?
大和久氏:
はい,一通り見てきました。東京ゲームショウと比較すると,プラットフォームの傾向がまったく違うのが興味深いですね。ゲームのジャンルとしては,若干,似たようなものが多いと思いましたが,純粋な新作が多いのは面白いと思いました。
4Gamer:
確かにヒット作のシリーズ物が目立つ日本のコンシューマゲーム市場とは,ちょっと違いますよね。
やっぱりシリーズ物には安心感がありますからね。これが,ゲーマーの皆さんがゲームを買うときに大きく影響しているんだと思います。
4Gamer:
面白かろうがつまらなかろうが,遊ぶ前にパッケージを購入しなければいけないわけですからね。やっぱり購入前には慎重になりますし。
大和久氏:
そういう意味では,とりあえず無料で遊べるオンラインゲームというのは,新作ゲームをリリースしやすい環境だと思うんですよ。こと韓国においては。
4Gamer:
ひょっとして,Chaotic Edenを韓国に投入するのも,そういった思惑があるのですか?
大和久氏:
ええ,それはありますね。Chaotic Edenは,韓国のオンラインゲーム市場で,あまり例のないタイプの作品なんです。ですから,その新しさを,韓国のゲーマーに受け入れてもらいたいと考えています。
4Gamer:
最近の韓国では,一つのヒット作が出ると,同じジャンルの後発タイトルが次々と出てくる印象もあるんですよ。こういう状況を見ていると,パブリッシャが新しいジャンルの開拓に及び腰になっている部分もあるのではないかと感じるんです。日本のコンシューマゲームのようなシリーズものが少ない代わりに,各社がある程度の数字が確立されたジャンルに注力しているというか。
確かにその傾向はあって,MMORPG,FPS,カジュアル以外のジャンルは,危険だと見なされているんですよ。その結果,似通ったジャンルのゲームが溢れて,市場が飽和状態になりつつあります。でも現在,韓国のオンラインゲーム市場の最先端を走っている企業は,以前,前例のないジャンルで新しい試みをして,自ら市場を切り開いてきたわけです。ですから今回,Chaotic Edenで新しい試みをするのには不安もありますけれど,チャレンジする価値があると確信しています。
4Gamer:
韓国でうまく成果を出して,日本市場にも投入される日が来ることを楽しみにしています。
大和久氏:
そうなるといいですねぇ。
4Gamer:
最後に大和久さんにお聞きしたいのですが,Chaotic Edenをどのようなゲームにしていこうと考えているのですか? 漠然としたイメージでけっこうですので……。
大和久氏:
そうですねぇ……。いつも新鮮な気持ちと,緊張感を持って遊んでもらえるようなゲームにしていきたいですね。
4Gamer:
そんなダンジョンタイプのRPG……というと?
大和久氏:
これ以上は,まだ言えません(笑)。
4Gamer:
おっと,そうでしたね。それでは,近日中の発表までおとなしく待つことにします。ありがとうございました。
……といっても,当面は日本のゲーマーには関係のない話ではあるのだが,日本展開の可能性もゼロではなさそうなので,本作のことを覚えておいても損はないはずだ。
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