インタビュー
[AGDC 08#09]月額制か基本料金無料か。オンラインゲーム開発者が繰り広げるトークバトル
マット・フィラー氏(左)とジョシュア・ホン氏(右) |
迎え撃つのは,北米で「Global Mu Online」(邦題 ミュー 奇蹟の大地)や「WarRock」などの韓国製オンラインゲームを数多くサービスしているK2 Networkの社長を務める,Joshua Hong(ジョシュア・ホン)氏だ。
ちなみに,ホン氏が韓国人であることと,扱っているゲームの傾向から間違えられがちだが,K2 Networkは2001年にカリフォルニアで発足したアメリカの会社だ。2007年には「Gamers First」という英語圏/トルコ語圏向けポータルサイトを立ち上げている。
K2 Networkは,サービス中のオンラインゲームをまとめて2007年に「GamersFirst」というポータルをローンチした。最近では欧米産のゲームも扱う,ドイツのACONY Gamesが手がけるFPS「Parabellum」の販売権を獲得した |
ホン氏は,フィラー氏の発言を受けて「業界に入る前から,良いゲームも悪いゲームも同じ値段に設定されていたのに疑問を感じていた。MMORPGやオンラインゲームも同じで,消費者が支払いたいと思う価格にするのが理に適っているはずだ」と答えた。さらに,「月額制のMMORPGをプレイする層がここ10年でほとんど変わっていないのに対し,支払い価格が柔軟な基本料金無料は,より若い層を取り込んでいる。これは,ビジネスとしての将来性を考えるうえで,重要な要素だ」コメントした。
基本料金無料のほうが将来性があるように聞こえるが,ホン氏によると,「最初の数か月で,アカウント総数の5%から10%がアイテムなどに投資してくれれば良いサービス。それ以下なら長期的な戦略は組めない」と語っており,それなりにシビアな世界なのである。また,子供達がお金を使い過ぎてしまうという問題もあるだろう。
これは,ZeniMax Online Studiosの公式サイトだ。現在,未発表のMMORPGを制作しているが,その内容はまったく明かされていない。ちなみに,Bethesda SoftworksはZeniMax Mediaの傘下であり,ZeniMax Online Studiosとは兄弟分である |
さらにフィラー氏は,「アメリカでも基本料金無料に需要があるというのは証明された。だが,結局は値段にあったゲームを提供できるかどうかにかかっている」と続けた。
「Age of Conan: Hyborian Adventures」や「The Lord of the Rings Online: Shadows of Angmar」が健闘しているとはいえ,1000万以上の登録者がいる「World of Warcraft」の牙城を崩すゲームはいまだに生まれていない。これに関しては「ビジネスとして,今後もさまざまな試みがMMORPGの中でも行われていくはずだ。World of Warcraft以上の人気を得るゲームは,ここ2〜3年のうちに登場してもおかしくない」とフィラー氏はコメント。これまで多くのMMORPGが失敗したのは,「途中で開発資金がなくなったり,延期が許されなくなったから」なのだという。
フィラー氏が所属するZeniMax Online Studiosは,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」で大成したBethesda Softworksにあやかり,その名前を冠したオンラインゲームを開発しているという話がある。
これが本当だとすれば,パッケージゲームの成功をMMORPGに生かしたBlizzard Entertainmentを模した動きだ。豊かな開発資金をバックに,多くの開発者をつぎ込み,時間をかけて制作されたMMORPGだけが,成功の切符を手にするのかもしれない。
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