インタビュー
[TGS 2007#41]開発会社とパブリッシャの国際的な架け橋「Game Connection」の運営者が語る,海外進出の難しさとは
開発会社とパブリッシャが商談をする場であるが,イベント運営社である,Connection EventsのCEO Pierre Carde(ピエール・カルド)氏に,インタビューを行った。各国のゲーム会社の特徴や,海外進出の難しさなどを語ってもらったので,その様子をお伝えしよう。
4Gamer:
お久しぶりです。東京ゲームショウに来るのは何度目ですか。
Connection Events CEO Pierre Carde氏 |
あれ,何度目だったかな……。4回は来てない気がするから……3度目かな? もっとも,2006年の「Game Connection Tokyo」は,東京ゲームショウの直前に都内のホテルで行っていたのですが,今年は会場内にブースを設けているので,ゲームショウへの関わり方がちょっと違いますね。
4Gamer:
今年の東京ゲームショウはいかがですか。
カルド氏:
今年は東京ゲームショウの会場内にブースを設けているので,イベントの熱気を感じやすいですね。個人的には,ものすごく大きな発表といえるものはなかったと思っていますが,大手が揃って出展する東京ゲームショウは,やはり重要なイベントです。
4Gamer:
では,今年のGame Connection Tokyo自体の手応えはどうでしょう。昨年との違いはありますか。
カルド氏:
昨年よりもイベントの規模を大きくしました。昨年はイベント自体を日本の会社に知ってもらうという意味合いが強かったのですが,今年のイベントは,本来の形,リヨン(フランス)やサンフランシスコ(アメリカ)で開催しているものに,より近くなったと思います。
4Gamer:
昨年お会いしたときにGame Connectionの目的などを説明してもらっていますが,この記事で初めて知る人もいると思いますので,改めて説明してください。
カルド氏:
ゲーム開発会社とパブリッシャをつなぐというのが,Game Connectionの基本的な目的です。とくに国を超えて架け橋になれるように,リヨン(12月),サンフランシスコ(3月),そして東京(9月)の3か所で開催しており,どこの国の会社でも参加できます。
4Gamer:
昨年のGame Connection Tokyoと今年では,参加企業に違いはありますか。
カルド氏:
今年は18か国の会社が参加しており,さらに国際色が強くなったといえるでしょう。ただ,日本からは1社だけだったので,それはちょっと残念でしたが……。ですから,日本の会社にはGame Connectionの説明をして,もっと知ってもらう努力をしていこうと思っています。
4Gamer:
日本から参加した会社が1社というのは,ちょっと寂しいですね。なにが原因だと思いますか。
カルド氏:
言葉の問題が大きいと思います。日本の会社には英語を使える人が少ないようですからね。それと商習慣の違いも大きいと考えています。言葉の問題をすぐに解決することは難しいですが,私達も日本の習慣を学び,それを他国の会社に伝えていき,よい関係を築けるように努力していきます。
4Gamer:
確かに,言葉と習慣の違いは他国の会社とやり取りが発生する以上,避けては通れない問題ですよね。
カルド氏:
それを解決するための取っ掛かりとして,Game Connectionがあると思っています。参加企業に提供しているオンラインミーティングサービスを使えば,ほかの会社が予定しているプロジェクトや,興味を持っていることなどを調べられ,ミーティングの設定なども可能です。企業間のミスマッチをなくし,時間のロスも減るでしょう。
4Gamer:
日本では,誰かの紹介などで知り合った場合は,紹介者の顔を立てるといったことも必要になることがあるので,一緒にビジネスをやっていくのは難しいと感じても,なかなか断れないということも少なくないと思います。しかしGame Connectionを利用すれば,ある意味,そういったしがらみを感じずに済むわけですね。
ええ,その通りです。個人的なコネクションの利用や飛び込み営業的な昔ながらの方法に比べて,効率良くパートナーを探せるでしょう。
それと日本企業の参加が少なかった原因としては,日本のパブリッシャと開発会社のつながりが非常に強く,ほかの国のパブリッシャを探す開発会社が少ないからだと思います。ヨーロッパではもっとビジネスライクですね。
4Gamer:
確かに,そういう傾向が強いかもしれません。では,ヨーロッパのゲーム市場の特徴について教えてください。
カルド氏:
コンシューマ機が中心ですね。あと,まだマーケットの10%程度という規模ではありますが,「World of Warcraft」が大成功を収めたことなどもあり,オンラインゲームがものすごい勢いで伸びています。
4Gamer:
2007年のGames Conventionのビジネスセンターでは,韓国勢が目だっていました。韓国のオンラインゲームは日本ではメジャーで,今では米国などにもかなり進出していますが,ヨーロッパではどうですか?
カルド氏:
実際に,韓国や中国産のオンラインゲームがかなりヨーロッパに入ってきているのですが,ヨーロッパ向きになっているとはいいづらく,一気に流行るというのは難しいようです。ですが,「ラグナロクオンライン」などは,商業的に成功を収めていますので,同じようなタイプのMMOを受け入れる土壌はできつつあると考えています。
4Gamer:
韓国の例に留まらず,アメリカやヨーロッパのゲーム会社はアジアを目指し,アジアのゲームはアメリカやヨーロッパを目指しているという動きが最近とても増えてきましたよね。そんな中で,Game Connectionの役割はどのようなものになると考えていますか。
カルド氏:
それこそが,私達が必要になってくる部分です。パブリッシャは,ゲームがどこで作られたかということではなく,面白いゲーム/良いサービスなのかを重要視しており,それを私達が助けられると思っています。そして,WiiやNintendo DSのヒットにより,いままでゲームを遊ばなかった人達がゲームを遊ぶようになってきています。この流れは世界的であり,ますますアジアとアメリカ/ヨーロッパ間でのゲームのやり取りは活発になるでしょう。
4Gamer:
今までの経験から,ヨーロッパからアジアへの進出と,アジアからヨーロッパの進出を比較した場合,どちらのほうが難しいと思いますか。
カルド氏:
どちら側にとっても言葉と文化の違いが大きな壁になりますので,どちらも同じくらいの難しさだと思います。だからGame Connectionがありますので,最大限に利用してもらいたいです。
現状では,ヨーロッパとアメリカのゲーム市場の伸びは,日本よりも大きいです。そしてアジアは,韓国と中国が牽引するオンラインゲームが伸びています。この状況を考えると,日本の会社は海外にもっと目を向けてもらいたいと思っています。
4Gamer:
では最後に,日本のデベロッパやパブリッシャに向けてメッセージをお願いします。
カルド氏:
アメリカやヨーロッパのゲーム会社と一緒に仕事をし,会社をグローバル化させるチャンスになりますので,ぜひGame Connectionに参加してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
Game Connectionは,ゲームの開発や売買に関わっていない者には,直接的な関係はないイベントだ。しかし,現在の日本のPCゲームマーケットは,韓国産のオンラインゲームがまだまだ多く,台湾,中国のものも増えてきている。同じアジア同士で文化的な背景が近いということもあるのかもしれないが,言葉と文化の壁を超えて,成功を収めているものも少なくない。
こういった動きをワールドワイドでさらに活発にしようというのが,Game Connectionの目的だ。それはゲーム産業そのものの発展を支えるプロジェクトであり,長い目で見れば,ゲームを遊ぶ我々にとっても,大きなプラスになるだろう。
日本のゲーム業界は,その長い歴史と栄光ある実績のためか,それとも単に――筆者も含め――外国語が不得手な人が多いせいか,ときとして驚くほどに閉鎖的な対応をとることがある。
いわゆる“洋ゲー”のパブリッシュについては,その多くが契約までこぎ着けず,テクノロジーの購入は,言葉の問題などでサポートに不安が残るために手を出さない。それはそれで別段問題があるとまでは思わないが,技術力をも含めたゲーム開発力は世界のトップクラス(だと筆者は思っている)にある日本が,良いものを取り入れることがないまま鎖国化が進んでいくのを見るのは,いささか忍びない。
なるほど,刀剣研ぎ師のような“職人”に支えられているゲーム業界だといえば聞こえはよいが,果たしてそれでよいのだろうか。オンラインゲームの開発力(企画力,ではない)ですでに大きな溝を開けられているのを見せつけられているだけに,今後の不安がまったくないとは,言い切れないものがある。
Game Connectionには日本語のサイトがあり,日本語ができるスタッフも働いている。その組織力の強さゆえか,相当“名の売れた会社”も普通にメンバーとして登録しているようだし,いままでコネクションがなかったデベロッパ/パブリッシャと,関係を築くきっかけを与えてくれる。興味を持った会社は,ぜひ一度彼らにコンタクトをとってみてほしい。
(Photo by kiki)
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