連載
海外ゲーム四天王 / 第31回:「The Void」
ロシアのデベロッパ,Ice-Pick Lodgeが制作した一人称視点のアクションアドベンチャー,「The Void」(ロシア語版のタイトルは「Tension」)が,今回の「海外ゲーム四天王」のテーマだ。Ice-Pick Lodgeが2005年に発表した「Pathologic」も,精神世界を描いた,なんとも不思議な雰囲気のゲームだったが,The Voidはそれにさらに輪をかけたミステリアスぶり。ゲームシステム,グラフィックスデザイン,ストーリー,いずれも“何かに似ている”“なんとかチック”であることを徹底的に拒否し,拒否しまくっているうちに向こう側に行ってしまったという感じだ。さすが,ロシアである。
Tensionと呼ばれていた頃から気になっていた人が日本に30人ほどいると嬉しいのだが,そんなThe Voidを「難しいゲームですって? ボクがチャカチャカっとやっつけちゃいますよ。あははは」とでっかいことを言った割には悪戦苦闘していた,編集部のgingerが紹介する。
今回の「海外ゲーム四天王は」,美女と仲良くなりつつ不思議な世界“The Void”からの脱出を目指す,ロシア生まれの一人称視点アクションアドベンチャー,「The Void」を取り上げよう。
舞台となるThe Voidとは,あの世とこの世の中間的な異空間であり,主人公=プレイヤーの肉体は(おそらく)すでに死んでいて,魂のみがこの世界に放り込まれ,ここから脱出できなければ今度こそ本当に死んでしまうという状態。プレイヤーはここで,主人公に仮の肉体を与え,脱出の手助けをしてくれる“シスター”と呼ばれる美女達と出会うのだ。
この世界には全部で11人のシスターがおり,彼女達がThe Voidからの生還の鍵を握っている。ゲームの最終目的は彼女達と親しくなり,このうちの一人の力を借りて一緒にThe Voidから脱出すること。そして,本作の大きな特徴の一つとして,どういういうわけかシスター達と親しくなればなるほど,その体があらわになっていくことが挙げられる。
だが,ここまで読んで「これはロシア生まれのギャルゲーだろうか?」などと早とちりをしてはいけない。本作の実際のゲーム内容は,そんな生ぬるい幻想を軽く吹き飛ばしてしまうほど,とにかく奇妙奇天烈で独創的なのだ。
その難解なゲーム性たるや,おっぱいと聞いたら黙っちゃいないハラショー! なおじさん,松本が喜び勇んで本作に飛びつき,あまりの理解不能ぶりに1時間も経たないうちに放り出したほどだ。筆者もできる限り噛み砕いて紹介するつもりだが,正直うまく説明できるか自信が持てない……。
とりあえず,本作でまず覚えておきたいのは,The Voidは“色”がすべてを支配している世界だということだ。シスター達とお近づきになるためには,マップを歩き回って彼女達の好みの色を集め,それを分けてあげればいい。色の入手方法はいくつかあるが,もっとも基本的な方法は,マップ内に植物のように生えているものを見つけて採取することだ。
集めた色はシスターに分け与えるだけでなく,敵との戦闘などでも使用する。しかし,ただ色を集めても,そのまますぐに使えるわけではない。入手した色を使うには,いったん体内の“ハート”に移し替え,時間経過によってそれが神経に吸収されるまで待たなくてはならないのだ。神経に吸収された色は,それを消費しつつマウスで特定の記号を描くことで,敵を攻撃したり,シスターに分け与えたりといった使い方をする。
さらにややこしいのは,色は全部で7種類あり,赤なら攻撃力アップ,青なら移動速度アップといった具合に,ハートに移し替えた色に応じてさまざまな効果が得られることで,そのうえハート内の色の残量がそのままプレイヤーの生命力になる。上述したように,ハート内の色は時間経過と共に神経に吸収されて減少するうえ,敵の攻撃を食らっても減少するので,プレイヤーは常に色を入手し続けなくてはならないのだ。一度に大量の色を入手できる手段は限られているため,ムフフな展開どころか生き残るだけで精一杯だ。
これらの苦労を乗り越えてようやくシスター達とある程度親しくなると,次の脅威が待っている。それが,シスター達を支配する“ブラザー”達だ。ブラザーはシスターと一対一で対応しており,その数はシスターと同じく11人。自分の支配下のシスターがプレイヤーと一定以上に親しくなると,プレイヤーと敵対関係になっていくのだ。クソー,男の嫉妬はみっともないぞ!
そしてこのブラザー達ときたら,どいつもこいつも人間離れした凶悪な姿の持ち主ばかり。まさに異形と呼ぶに相応しい,その不気味なデザインはかなり見事であり,シスターの裸体とは別の意味で要注目だ。しかし,敵対関係にあるブラザーと遭遇してしまったら戦闘は避けられず,これがまた非常に強い。本当にこんな物騒な世界から無事に生還できるのか? あ,ハート内の色がもう足りなくなってきた! ギャー,また死んだ! という具合に,プレイ中は何度もやり直すはめになるだろう。
本作は,難解なゲームシステムを理解しなければ,何を楽しめばいいのかさっぱり分からないという時点でかなり人を選ぶゲームであり,ゲームバランスも理不尽とは言えないまでも極めてシビア。とてもじゃないが,松本のような不純な動機で気軽に手を出すことはオススメしづらい。シスター達のお色気に踊らされず,じっくりと腰を据えてプレイしようという人のみ,覚悟を決めてチャレンジしよう。
|
- 関連タイトル:
The Void
- この記事のURL:
キーワード
(C)Ice Pick Lodge, 2009. All rights reserved. (C)ND Games, 2009. All rights reserved. ND Games is a part of Noviy Disk Company. www.ndgames.ru