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重厚なテーマとリアリティのあるグラフィックスが魅力的な「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」のレビューを掲載
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印刷2008/10/02 15:34

レビュー

異世界「ZONE」の過去の姿を描く待望の続編

S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky
日本語マニュアル付英語版

Text by 奥谷海人

»  2007年にリリースされた「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」の続編となる「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」。チェルノブイリ原発事故の直後に出現した異世界,「ZONE」を舞台に,行き場をなくした男達が命がけの戦いを繰り広げる重厚なFPSだ。難度もまた折り紙付きのこのタイトルを重厚さにかけてはひけをとらない,奥谷海人氏がレビューする。


※日本語版についての記述は,記事の一番下にあります。

前作の一年前の世界を描く「S.T.A.L.K.E.R.:Clear Sky」


 ウクライナのデベロッパ,GSC Game Worldが2007年3月にリリースした「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(以下,Shadow of Chernobyl)は,重厚なテーマと秀逸なゲームデザインが高く評価され,熱狂的なファンを獲得したFPSである。開発が遅れに遅れたとか,発売当初にバグが多かったといった問題もあったが,世界累計で200万本が売れたと発表されている。

ウクライナを拠点にするGSC Game Worldが制作した「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」の続編,「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」。欧米はもとより,日本でもズーから日本語マニュアル付き英語版がリリースされた。現在でも健康被害をもたらすというチェルノブイリ原発事故を下敷きに,SFやホラー要素をふんだんに織り込んだFPSとして,ファンもかなり多い
画像集#001のサムネイル/重厚なテーマとリアリティのあるグラフィックスが魅力的な「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」のレビューを掲載

 その続編となる「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」(以下,Clear Sky)は,開発発表当時の予定からはいくらか遅れてしまったものの,2008年9月に無事リリースを果たした。
 北米においては,前作を担当したTHQほど流通チャンネルの整っていないヨーロッパ系のDeep Silverがパブリッシングを担当しているが,併せてValveのデジタル配信システムである「Steam」からのダウンロード販売も行われているので,入手は容易。日本では前作同様,ズーから日本語マニュアル付き英語版が発売されている。

 Clear Skyでは,プレイヤーが“Scar”という名の傭兵(Mercenary)になって活躍する。時代背景としては,前作の1年前を描いている。1年前というと,ゲームの設定では2011年であり,2006年にチェルノブイリで起こった第2の爆発事故からは5年後となる。謎の爆発事故の直後に発生した異世界「ZONE」は,前作よりはるかにアクティブで,奇怪な現象が立て続けに起こる不気味な地域だ。

 オープニングムービーでは,Scarが科学者の一団を案内してZONEに潜り込んだとき,その内部から強力なエネルギーが放出される。引率していた科学者達は皆死んでしまったが,ただ一人Scarだけが生き残り,Lebedevというリーダーが率いるClear Skyという一団によって助け出される。

 「ZONE」や「ストーカー」といった言葉や,ストルガツキー兄弟の原作小説,そしてタルコフスキー映画の影響については,Shadow of Chernobylのレビュー記事で詳しく触れているのでここでは割愛する。
 本作で新たに登場する「Clear Sky」とは,ZONEを詳しく調査することで未来に備えようという科学者達が結成した秘密組織の名前であり,ストーカーや盗賊に存在を気づかれることのないよう,湿地帯に隠れるようにキャンプを張る非戦闘集団である。そのリーダーであるLebedevは,今回のエネルギー放出が,ZONEの奥深くまで潜入を試みようとする人間を殺傷する一種の防菌システムであるという仮説を立てており,これを検証するためにScarが雇用されることになるのだ。

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イントロムービーでは,主人公Scarが科学者の一団を率いてゾーン内部を進んでいる場面が映し出される。このあと,中央部と思われる地域において,エネルギー放出(Energy Emission)と呼ばれる大爆発が起きる
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オープニングの爆発で気を失った主人公を救い出し,さまざまな任務を与えてくれるClear SkyのLebedev。本作ではPDAを使って彼と交信したり,サブクエストのログがアップデートされたりする。PDAも使いやすくなった
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2度目のエネルギー放出により,目の前のストーカーがポックリ死んでしまった。この放出にもScarが生き残ったことから,彼になんらかの耐性があると見たLebedevが,大きなミッションを要請してくることになる
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ゲームが始まり,Lebedevのいる小屋を出たシーン。Clear Skyは前作でも使われたグラフィックスエンジン「X-Ray」のver.1.5を利用して開発されており,モヤなどを通して光の質感が表現されるVolumetric Lightingはその新機能の一つ
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また,ゲームをプレイし始めてすぐに気づくのが,銃のリロードの際に遠方がぼやけるDepth of Field。さまざまな新機能が追加されたX-Ray 1.5が描き出すZONEの景観は非常にリアルで雰囲気がいい
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Sidrovichだけでなく,前作に登場していたキャラクターが何人も登場するので,ファンにとっては懐かしいかも。相変わらず,会話メニューの選択やトレーディングの際に何度も同じセリフを繰り返すうっとおしさも健在だが

新たに加わったFactions Warというゲーム要素


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かつての強敵,SnorkやBloodsuckerも,ストーリーの長さに比較して出現率が高く,真っ昼間からウヨウヨしている地域もある。インタフェースは非常に洗練されており,ストーカー達から情報収集を受ける際のPDAにも改良が施されている。前作と違って本作では「飢え」の概念がなくなったが,食料アイテムは存在する
 Clear Skyでは,全体のおよそ50%程度がShadow of Chernobylのマップを継承したもので,ほかは新たに作られている。ゲームエンジンも前作のアップデート版であるため,「大規模な拡張パック」という見方もできるが,Clear Skyの起動に前作は必要なく,スタンドアロンでプレイ可能。ストーリーの関連もそれほどではなく,前作をプレイしていなくても十分に楽しめるようになっている。

 前作と併せてこのゲームの特徴を簡単に説明するなら,FPSを基本としつつ,ホラー系アドベンチャーとオープンワールドなRPGを組み合わせた独特の――まあ,最近の流行でもあるが――ゲーム感覚を持った作品だ。プレイヤーは,広いマップを自由に行き来しながら,謎のストーカー“Strelok”を追って情報収集をしたり,目の前に立ちはだかる敵やクリーチャーとの戦闘を楽しむ。
 遠くから聞こえるミュータント犬の遠吠えや銃声,そしてZONEの異常現象である「アノマリー」が発するうねるような響きなど,この世界を演出する音響効果は圧巻で,広々としたマップが多いながら,真夜中を懐中電灯の光だけで歩くような孤独さ,そして恐怖を感じさせる演出にあずかって効果がある。

 さて,Shadow of ChernobylとClear Skyの異なる部分は,やはりFactions Warという新要素を盛り込んだところだろう。
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現在すでに1.5.05版パッチも登場しているが,今回のレビューは1.5.04版で行っている。バグに関しては,徐々に改善されていくはずだ
 本作には,無法地帯のZONEに規律をもたらすことを使命とするDuty,そして思うがままの生活をするために「自由の戦い」を選んだFreedomという2大ファクション(組織)のほか,上記のClear Sky,外部から送られてきたものの,さまざまな理由でZONEに取り残されてしまったMilitary,そしてどのグループにも属さないLonersと盗賊であるBandits,さらには裏切り者集団であるRenegadesという六つのファクションが存在する。
 そしてFactions Warとは,プレイヤーがこれらファクションの中から好みの勢力に誓いを立て,陣取り合戦を楽しむというものなのである。
 Clear Skyでは,前作もそうだったように「A-Life」と呼ばれるAIシステムでNPCが制御されており,それぞれのクリーチャーや人間は独自の意志を持ってZONE内を行動している。
 そのため,たとえプレイヤーの目には見えなくてもマップのどこかで常に戦いが繰り広げられており,プレイヤーが特定のファクションに属していれば,この戦闘に加わることができる。戦いに勝ち,ファクションのコントロールしている地域を広げていくことで,プレイヤーは敵の攻撃にさらされることなく行動できるようになるわけだ。

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赤いドラム缶を見つけて爆破させるのはFPSのお約束。グレネードだけでは逃げられてしまい,敵をカバーからいぶり出すくらいにしか使えないが,ドラム缶ならかなりの確率で仕留められる
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ファクション同士が戦っているところに頻繁に遭遇する。アップグレードされた武器が一団のリーダーと思われるキャラクターの傍らに落ちていることがあるので,ここはひとつ漁夫の利を得たい
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Factions Warでメインとなるのは,やはりDutyとFreedomの二大勢力による戦いだ。ただ,現在のところはどんなに頑張って敵のベースまで攻め込んでも,完全には敵を殲滅できない
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戦闘シーンの多くで,こうしたスコープを覗きながらのスナイピングが多用される。戦闘の難度は非常に高く,遠距離から確実に敵をしとめつつ,ゆっくり前進していくという戦い方になる
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メインストーリーは,ある程度まではどのファクションにも属さず中立を保ったほうがゲームを進行させやすくなる
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地下道のマップも残っており,ここではどちらかというとランボースタイルのシューターっぽい雰囲気のプレイが楽しめる

 いくつかのサブミッションをこなすことで友好を高め,特定のファクションに入隊することが可能であり,その際には専用の装備アイテムを与えられて仲間として認められる。
 一つのファクションに属すると,特定の拠点の攻撃や防衛への参加要請が頻繁に来るようになる。また,単独行動中も敵対するグループからの攻撃に晒されることになるが,プレイヤーの助っ人となってくれるNPCが非常に心強く思えてくる。

 このように,Factions Warという機能の追加はゲーム世界に広がりを与えており,人によってはメインクエスト以上に面白く感じるかも知れない。同じマップでも,時間が経過してファクションの力関係が変わっていくにつれて異なる体験ができるし,「次は弱小ファクションに加わって,強敵 DutyとFreedomを追い払おう」などと,リプレイバリューの高さにも貢献している。

理不尽とさえ思えるシビアさ・・・・・・も魅力の一つ?


S.T.A.L.K.E.R.: Clear Skyのマップデザインは,前作同様にとても雰囲気のよい秀逸なもの。昼夜や天候の概念はもちろん,BGMではなくアンビエントサウンドで臨場感を盛り上げる手法も健在
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 戦闘に関していえば,敵がグレネードをプレイヤーに向けて投げつけてくるのが(あまり嬉しくない)新要素だろう。筆者の感覚ではNPCの投擲は非常に正確であり,こちらの足もとにきっちり転がしてくるため,ダッシュむなしくやられてしまう可能性が高い。
 AIの改良によって, Clear Skyの難度は前作以上に高い印象だ。NPCはかなり夜目が利き,ライトを消して茂みに隠れてもピンポイントで狙ってくる。じっとしていればこちらを見失ってくれることもあるのだが,茂みは弾丸が貫通してしまううえ,プレイヤーにとっては敵の位置が判断しづらくなるだけなのでかなり不利。

 この難度の高さが,本作を評価する上でネックになってくる。一番低い難度であっても複数の敵の中に突っ込んでいくのはほぼ自殺行為で,じっくりと攻めていくような戦い方が要求される。A-Lifeそのものもアップグレードしているため,そのハードさはもともと難度が高めなタイトルが多いヨーロッパ産のゲームの中でもトップクラスなのではないだろうか。
 この難度の高さから,どうしても理不尽にしか思えない場面にも遭遇することもしばしばある。別のマップに移動した途端,チェックポイントを押さえている敵のファクションからの銃撃を受けたりするのだ。
 エネルギー放出のとき,逃げ込むべき地点が敵ファクションの拠点になっており,どうしても時間制限内にたどり着けず,結局かなりゲームを遡ったセーブファイルを使ってプレイし直すしかないようなこともあった。

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今回からは,アーティファクトはデフォルトでは目に見えず,ディテクター(探知機)を手にアノマリーの発生している地点に突入して回収する必要がある。トレード品として重宝だが,アノマリーでヘルスがどんどん削られるので要注意
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最大32人までのマルチプレイでは,指定されたファクションに分かれてチームデスマッチを楽しんだりするモードなどが用意されている。プレイしていくうちに所持する武器が向上していくという趣向が面白い

 もっとも,このシビアさこそが前作を含めてS.T.A.L.K.E.R.の魅力といえば魅力なのであり,頻繁にセーブして何度も何度もやり直しながらコツコツと進めていくゲームスタイルは,ほかのFPSとはタイプの異なるものである。爽快感は微塵もないが,弾丸やヘルスパックが尽きかけながらも最後の敵を仕留めてミッションを達成したときなど,非常に達成感があるのは間違いない。
 残念ながら,Clear Skyにはゲームが落ちたり,セーブデータが頻繁に壊れたりといったバグは少なくないし,被爆を軽減するためのウォッカにはホットキーが設定できないなどといった細かい部分の仕様にも不満がある。こうした点が,ゲームとしての楽しさを半減させている場合が少なくない。このあたりは,今後のパッチによって改善してもらいたいところである。
 Factions Warのような新機能の追加により,前作のファンなら必ず楽しめるゲームになっているが,FPSビギナーにはやや敷居の高い,熟練者向けのゲームといえそうだ。

諸般の事情により,今回の画面写真は全てDirectX 9.0cのもの。よって,S.T.A.L.K.E.R.: Clear SkyのWinsows Vistaにおける実力は,公式にリリースされているこの3枚で確認してもらいたい
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ズーからまさかの日本語版が本日リリース
(2009年2月27日追記)


 ウクライナのGSC Game Worldが開発した「S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky」の完全日本語版となる「ストーカー 〜クリアスカイ〜 日本語版」が本日(2月27日),ズーから発売された。

DirectX 10に対応したグラフィックスエンジンによって描かれるゾーンの存在感は圧倒的だ
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 ゲームの詳細については上記のとおりだが,前作となる「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」(「日本語マニュアル付き英語版」がズーから発売中)がコアゲーマーから高い評価を獲得しただけに,この続編を楽しみにしていた人も多かったはずだ。

 とはいえ,さまざまなミッションを受けてそれをクリアするというRPG的な要素の強いゲームシステムを持つうえに,舞台となる異世界「ゾーン」の最深部に迫るストーリーだけに,読まされる(聞かされる)テキストの量も半端ではなく,さらに「薄汚れた男しか出てこない」「戦闘の難度が異常なほど高い」というプラスαが付くため,つい二の足を踏んでいたというのは,実は筆者のことである。カジュアル方向にシフトするタイトルが多い昨今,珍しいほど骨太のゲームなのだ。

サムネイルでは分かりにくいが,たっぷり出てくるテキストがすべて日本語化されている。でもこんなにたくさん,日本語でも読む気にならない
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 さすがに,男ばっかりの部分と難度の高さはなんともならないが,日本語化されたことにより,「えーと,これから何をすればいいんだっけ?」という問題はかなり回避できる。基本的に人の話を絶対に聞かないという向きは,別途対応策を考えてもらう必要があるだろうが,今回の日本語版で,ゲームのハードルが低くなったのは間違いない。
 ただし,日本語になっているのはテキストだけで,ゲーム中,セリフにキャプションが付いていない場合は英語のままという部分もないわけではない。まあ,そういうところではたいてい,それほど重要なことは言っていないので安心だろう(と思う)。
 また,リリース当初はバグの問題が頻発した本作だが,日本語版にはすでに最新のパッチが適用されているので,その点も心配ない。

 というわけで,DirectX 10にも対応した見事な廃墟グラフィックスも魅力の本作。日本語で命令を受けて,驚異と恐怖に満ちたゾーンの探索に励んでほしい。

(編集部:松本隆一)



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  • 関連タイトル:

    ストーカー 〜クリアスカイ〜 日本語版

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