インディーズゲームの小部屋：Room＃773「Loretta」

　マイナポイント取得のために，駆け込みでマイナンバーカードのオンライン申請を行った筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第773回は，個人制作者のYakov Butuzov氏とDaria Vodyanaya氏が開発した「Loretta」をご紹介。本作は，夫に掛けられた多額の保険金を手にするため，恐ろしい犯罪に手を染めた女性の姿を描いたアドベンチャーゲームだ。最大2万円分のポイントがもらえたら，何に使おうかなあ。


　本作の舞台は1947年のアメリカ。主人公の女性ロレッタは，借金の沼にはまった夫のウォルターと共に，華やかなニューヨークでの暮らしを捨てて，南部の田舎にある荒れ果てた農場への引っ越しを余儀なくされる。夫はそこでようやく作家として成功を収めたもののギャンブル癖は直らず，生活は困窮しており，しかもロレッタは夫が別の女性と不倫していることに気づいていた。


　そんな生活のすべてに嫌気が差していたロレッタは，ローンの申請のために訪れた銀行で，出版社が人気作家の夫に多額の生命保険を掛けていたことを知る。そして，帰り道に立ち寄った雑貨屋で強力な殺鼠剤を手にしたとき，彼女の中に恐ろしい計画が芽生え始める。そう，密かに夫を殺害して保険金を手に入れ，今の最低な生活に終止符を打つのだ……。


　本作はアルフレッド・ヒッチコック監督やスティーヴン・キングの作品にインスパイアされた，アンチヒーローのスリラー系アドベンチャーゲーム。ストーリーは過去と現在，妄想と現実が入り混じった複雑な構成で，プレイヤーは主にロレッタを操作して，彼女の傷ついた過去や，夫であるウォルターがひた隠しにしている重大な秘密を目の当たりにしていく。


　基本的なゲーム内容は，要所での会話や行動の選択によってその後のストーリーが変化するというもので，複数のエンディングが用意されている。中でも特徴的なのは，ロレッタの犯罪をどこまで進めるかはプレイヤー次第であるという点。物語の進行上，ウォルターが死亡するのはほぼ確定だと思われるが，ロレッタのその後の行動が結末に大きく影響するのだ。


　ゲームには，夫の不倫相手の女性や，借金の取り立てのためにニューヨークからやって来た探偵など，さまざまな人物が登場する。どれもロレッタにとっては邪魔者に過ぎず，その気になれば殺害のチャンスがある……。そんなとき，どんどん追い詰められていくロレッタの立場から，どのような行動を選ぶのかは非常にスリリングな体験で，物語にぐいぐい引き込まれてしまう。


　どう転んでもハッピーエンドには終わりそうにない破滅的なストーリーの本作だが，一度遊び始めたら目が離せず，ラストまで一気にプレイしてしまうこと間違いなし。あのとき別の決断をしていたらどうなっていたのかを知りたくて，気づけば筆者もゲームを3周もプレイしてしまった。

　そんな，背筋がぞくぞくするようなフィルム・ノワールの雰囲気が好きな人にオススメしたい本作は，Steamにて1700円で発売中。興味を持った人は，ぜひ遊んでみてほしい。

「Loretta」公式サイト