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インディーズゲームの小部屋:Room#761「Cats and the Other Lives」
最近は,サッカーW杯で繰り広げられるハイレベルなプレイに目が釘付けの筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第761回は,Cultic Gamesが開発した「Cats and the Other Lives」を紹介する。本作は,家飼いの猫であるアスペンの視点から,さまざまな問題を抱えるメイソン家の人間模様を眺めるというポイント&クリックアドベンチャーだ。残念ながらベスト8進出は逃したけれど,日本代表チームの活躍も素晴らしかった!
舞台となるのは,アメリカ・コネティカット州に居を構えるメイソン家の古い屋敷。メイソン一族は,数十年にわたって地元の名士として地域に貢献してきた歴史を持ち,その長であるバーナード・メイソンの訃報を受けたメイソン家の人々が葬儀のために屋敷に集まってきたところから物語が始まる。
そんなメイソン家の人々にとって葬儀以上に大きな関心事は,古くなって維持費ばかりが掛かるようになってしまったこの屋敷をどうするかだ。バーナードの娘であるシャノンは屋敷を手放すことに反対の立場だが,その夫であるドクター・カーマイケルや弟のリアムは,買い手が付くうちに売りに出してしまうのが合理的だと考えている。
そのことで言い争いが絶えないメイソン家の人々だが,シャノンもリアムもそれぞれの家庭に問題を抱えており,ぎくしゃくした人間関係や思いどおりにいかない日々の生活に悩まされている。また,メイソン家は過去に暗い事件を経験しており,徹底した秘密主義者だったバーナード自身,必ずしも良き父,良き夫ではないなど,彼らを取り巻く事情は非常に複雑だ。
プレイヤーはバーナードが可愛がっていた老猫のアスペンとなり,ソファの足で爪を研いだり,ネズミを追いかけ回したりと猫らしく自由に振る舞う中で,家族で交わされる会話を聞き,ときおり亡霊のように現れる過去のビジョンを目撃する。それによって謎めいたメイソン家の歴史が少しずつ明かされ,アスペンの気まぐれな行動が,やがて彼らの未来に大きく影響するというストーリーが見どころだ。
丁寧なドット絵で描かれたグラフィックスも印象的で,とくにアスペンの愛らしさを引き立てる自然な動きはお見事。それでいてアスペンは主役ではなく,あくまで傍観者として物語を眺めるだけという,独特の立ち位置にいるのも面白い。ミステリー要素が強く,先の読めない展開にぐいぐい引き込まれること間違いなしのゲームなので,家猫になって,なかなかうまくいかない人間達の関係にやきもきしてみたい人はぜひどうぞ。そんな本作はSteamにて,2300円で発売中だ。
■「Cats and the Other Lives」公式サイト
https://catsvideogame.com/- 関連タイトル:
Cats and the Other Lives
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