連載
インディーズゲームの小部屋:Room#735「Obsidian Prince」
20年以上前に東京ドームの2階席からフェアウェル・ツアーを見たKISSが今年もラスト・ツアーを行っていることに,何とも言えない複雑な気持ちを抱いている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第735回は,Unleash the Giraffeの「Obsidian Prince」を紹介する。本作は,ローグライクにトレーディングカードゲーム的な要素をミックスさせたゲームだ。さすがに歳も歳だし,いよいよこれが本当に最後のツアーになるのかな……。
ゲームの舞台となるのは,異次元からの脅威にさらされている剣と魔法のファンタジー世界「エマロン」。プレイヤーの使命は,タイトルにもなっている“黒曜石の王子”を冥界に送り返し,この世界に平和を取り戻すことだ。ゲームモードは,ひたすらダンジョンを攻略してハイスコアを競うローグライクモードと,ストーリーに沿ってクエストをクリアしていくキャンペーンモードの2つ。まずは後者のキャンペーンモードから遊び始めるのがオススメだ。
本作の特徴は,毎回ランダムで生成されるダンジョンや,自分が一歩動くごとに敵も一歩だけ前進するというローグライクのお約束に,TCGのようなデッキ構築要素をミックスさせたゲームシステムにある。と言っても,よくあるカードゲームのように,手札の中から1ターンごとにカードを選んでスキルを使用するのとは,ちょっと違う。
まず,本作のデッキには「インスピレーション」と「バックストーリー」の2種類があり,それぞれ使用するタイミングが違うというのがポイント。インスピレーションデッキに入っているのはすべてパッシブスキルのカードで,毎ターン,3枚がランダムで引かれる。カードの効果は通常攻撃や特定のスキルを強化するものがメインで,引いたカードに合わせた攻撃を繰り出すことで,効果的に敵にダメージを与えられるのだ。
ダンジョンは部屋単位で攻略することになるが,新しい部屋に入ったときに一度だけ使用するのがバックストーリーのデッキだ。こちらには,インスピレーションデッキとは異なるパッシブスキルや,キャラクターの体力などを回復するカードが入っており,提示された5枚の中から3枚を選ぶことができる。毎ターン変化するインスピレーションのカードと違い,バックストーリーのパッシブ効果はその部屋にいる間はずっと有効になるのが特徴だ。
つまり,どちらのデッキもプレイヤーにとってプラスの効果ばかりで,「良いカードが引けなくて攻撃できない」という状況が発生しないのが面白いところ。自分自身の行動を制約されることなく,その時々で変化するパッシブ効果に合わせて行動することで有利に立ち回れるというシステムになっており,ローグライク本来の面白さと,デッキ構築の要素が絶妙なバランスで組み合わされているのが素晴らしい。
ただし,ダンジョン内で倒されるとマイナス効果のカードがデッキに追加され,取り除くにはお金を支払って治療しなければならないので要注意。ボクセルアートで描かれた可愛らしいグラフィックスが魅力的で,ここでは紹介しきれなかったキャラクター育成要素なども盛り込まれているので,ひと捻りあるローグライクゲームに挑戦してみたい人はぜひどうぞ。そんな本作はSteamにて,1520円で発売中だ。
■「Obsidian Prince」公式サイト
https://www.unleashthegiraffe.com/- この記事のURL:
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