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インディーズゲームの小部屋:Room#697「Road 96」
パラアスリート達が困難を乗り越えて躍動する姿を見ていると,人間の強さや可能性を痛感させられる筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第697回は,Digixartの「Road 96」を紹介する。本作は,独裁国家からの脱出を目指す若者となって旅をする,ロードトリップアドベンチャーだ。せめて自分も,日頃の運動不足から改めていこう……。
舞台となるのは,1990年代のアメリカに似た架空の国・ペトリア。この国では,暴君と呼ばれるティラック大統領が圧政を敷いており,3か月後に予定されている次期大統領選挙に向けて,反対派への締め付けがますます強まっている。そんな中,多くの若者達が自由を求めて国を出ようと,国境を目指して旅している状況だ。
しかし,これは違法行為となるため,警察に見つかればただでは済まない。ゲームの目的は,そんな名も無き若者達の一人となって国境の検問所がある“Road 96”まで旅を続け,どうにかして無事にこの国から脱出することだ。
国境までは,徒歩やヒッチハイクで移動するのが基本だが,お金があればバスやタクシーに乗ることも可能。選んだ手段によって,一度に移動できる距離や消費する体力が変化する。そしてその過程で,主人公と同じように国境を目指している少女・ゾーイや,女性警官のファニー,怪しげな雰囲気のタクシー運転手・ジャロッドなど,個性豊かな登場人物と出会うことでストーリーが進んでいく。
本作の大きな特徴は,旅の途中で誰と出会い,どんなイベントが起こるのかがランダムで変化することだ。また主人公も一人ではなく,誰かが途中で倒れたり,国境を越えたりすると少し時間軸が進み,そこからまた次の若者を操作して,同じように国境までの旅をすることになる。これを3か月後の選挙の日まで繰り返し,この国の行く末を見届けるのがプレイヤーの役目だ。
上述した,ゾーイやジャロッドといった登場人物とは,主人公が変わっても繰り返し出会いがあり,彼らがどんな信念やバックグラウンドの持ち主なのかが徐々に判明していくのが面白いところ。また,ゲーム中のプレイヤーの選択は,暴力に訴えて革命を起こすか,次期大統領選挙への投票を促すか,自分自身の脱出を第一に考えるかの大きく3つに分けられ,各主人公の小さな行動の積み重ねによって結末が変化する。
印象的なストーリーをさらにセンチメンタルなものにしているのが,1990年代のヒット曲を思わせるBGMの数々で,これがまた素晴らしい。先の読めない展開に夢中にさせられるだけでなく,危険と隣り合わせのロードトリップを雰囲気たっぷりに味わえるゲームに仕上がっている。そんな本作は,PC版がSteamにて2196円で発売されているほか,Nintendo Switch版もニンテンドーeショップで発売中。ストーリー重視のアドベンチャーゲームを探している人に,ぜひオススメしたい。
■「Road 96」公式サイト
https://www.road96.com/Road 96 is a trademark from Digixart Entertainment. Published by Koch Media GmbH. Ravenscourt is a division of Koch Media GmbH, Austria. All rights reserved.
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Road 96