連載
インディーズゲームの小部屋:Room#554「Return of the Obra Dinn」
ゴジラ座とか超人ハルク座とか,かなり強そうだなと思っている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第554回は,「Papers, Please」の作者として知られるLucas Pope氏の新作「Return of the Obra Dinn」を紹介する。本作は,出航後に消息不明となり,無人のまま港に帰還した商船オブラ・ディン号で何があったのかを探っていくというアドベンチャーゲームだ。ゴジラ座の聖闘士とかいたら,きっと最強に違いないよね!
西暦1803年に,ロンドンから東方に向けて出航し,そのまま消息不明となってしまった東インド会社の商船オブラ・ディン号。しかし4年後の1807年になって,損傷し,まったくの無人となったオブラ・ディン号が突然ファルマスの港に姿を現した。東インド会社の主任保険調査官である主人公は,この船の損害査定を行うため,オブラ・ディン号に乗り込むことに……。
プレイヤーの仕事はそんな主人公となり,オブラ・ディン号の乗員・乗客60名全員の安否を確認すること。氏名はもちろん,生死や死因,殺人だった場合はその犯人など,すべてを正確に把握しなくてはならない。そのために役立つのが,オブラ・ディン号に乗船する際に渡された,ヘンリー・エバンスなる人物の手記と,死者の残留思念を再現できる謎の懐中時計という2つのアイテムだ。
長い間,行方知れずとなっていたオブラ・ディン号はあちこちが壊れ,船内にはいくつもの白骨化した死体などが転がっている。その死体のそばで懐中時計を使用すると,その死の瞬間の情景が,いくつかのセリフと共に静止したビジョンとして再現されるのだ。プレイヤーはこれを手掛かりにして,その死体が誰のもので,どのように死亡したのかを特定していくことになる。
もう1つのアイテムである手記には,船内の情景を描いたスケッチや乗員名簿,船内見取り図などが記されているほか,調査によって得た情報が書き加えられていく。これにより,手記の空白のページを埋めていくことで,徐々にオブラ・ディン号を襲った事件の全容が明らかにされていくという寸法だ。
とは言え,当然ながら死体には名札など付いていないし,全員の安否を正確に突き止めるのはそう簡単ではない。死の間際の会話で誰かの名前が呼ばれていたら,またとない幸運と言ってもいいだろう。あとは,この少ない手掛かりを積み上げ,複数のビジョンから人間関係を推測し,ときには消去法も駆使して,誰に何が起こったのかを手記に記録していくのだ。
手記に書き込んだ情報の正否は,正確な安否情報が3人分集まるごとに,それが確定されていくことで判明する。オブラ・ディン号には60人もの乗員・乗客がいるため,当てずっぽうで氏名や死因を特定するのは難しく,論理的な推理が求められる。そのぶん,小さなヒントから一度に複数の人物が判明したときの快感は格別だ。オカルトめいたストーリーも先が気になるもので,筆者も朝まで夢中になってプレイしてしまった。
また,“1bitレンダリング”と命名された,古いMacintoshのゲームを思わせる白黒のグラフィックスはゲームの雰囲気とマッチしており,要所を盛り上げる音楽も素晴らしい。オプションからカラーリングの変更を行うことで,IBMやコモドール風の色調にできるのも面白い要素だ。本格的な推理アドベンチャーとして,しっかりと作り込まれているので,興味を持った人はぜひオブラ・ディン号の調査に乗り出してほしい。そんな本作の製品版は,Steamにて2050円で発売中。オススメです。
■「Return of the Obra Dinn」公式サイト
https://obradinn.com/- 関連タイトル:
Return of the Obra Dinn
- この記事のURL:
(C)2012-Forever, Lucas Pope. All Rights Reserved.