連載
インディーズゲームの小部屋:Room#384「KHOLAT」
とうとうE3が開幕し,普段の1.634倍くらい忙しい筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第384回は,IMGN.PROの「KHOLAT」を紹介する。本作は,極寒のウラル山脈で地図とコンパスだけを頼りに雪山探索を行う,実話を基にした一人称視点のホラーアドベンチャーだ。助けて,ベリーさん!
4Gamerでもこれまでに何度か紹介しているが,本作のストーリーは1959年に当時のソビエト連邦領ウラル山脈北部で起こった“ディアトロフ峠事件”と呼ばれる怪事件がモデルになっている。これは,スノートレッキング中だった男女9名の学生グループ全員が謎の死を遂げたというもので,救助隊が彼らのテントを発見した際,テントは内側から切り裂かれ,中には荷物が残されたままだったという。
さらに,テントの周囲には靴下や裸足で逃げ出したことを示す足跡が残されており,下着姿のままだったり,争った形跡もなく頭がい骨が骨折していたり,舌が失われていたり,外傷がないのに体の内部が激しく損傷していたり,肌が奇妙なオレンジ色に変色していたりといった,不可解な遺体が発見された。
そもそも,零下30度にもなる極寒の冬山で衣服を脱ぐこと自体,彼らが正気を失っていたことの証拠であり,この事件の原因ついては,雪崩,先住民や野生動物による襲撃など,さまざまな説が唱えられたものの,真相は現在でも解明されていない。果たして,彼らは何にそんなに怯えていたのだろうか。もしかするとその答えは,深い雪の下に隠されているのかもしれない……。
というわけで,プレイヤーはたった一人で事件のあったホラート(KHOLAT)山に足を踏み入れ,事件の真相を探ることに。本作は一人称視点のホラーアドベンチャーで,Unreal Engine 4で描かれた雪山の風景は,見ているだけでも涼しくなってくるほど。びゅうびゅうと吹き抜ける風の音や,要所で不気味な雰囲気を盛り上げるBGMも素晴らしく,思わず鳥肌が立ってしまう。これは,クーラーいらずで暑い夏にぴったりですね……(震え声)。
本作の大きな特徴は,そんな雪山を地図とコンパスだけを頼りに探索していくというところ。これがまた,本当にただの地図とコンパスで,昨今のゲームのように現在地を分かりやすく表示してくれるといった,親切な機能はない。自分がどこにいるのかは,誰かがところどころの岩などに刻んだ緯度・経度と地図をにらめっこしながら探るしかない。地図には山中の道なども記されてはいるものの,割と大雑把なので,しょっちゅう道に迷ってしまい大変だ。
ゲームは山中のあちこちに残されているノートの断片を拾い集めながら,地図に書かれた9つのスポットを巡ることで進めていく。どの順番で回るかはプレイヤーの自由だが,とにかく迷いやすいうえに,誰が仕掛けたのか木の杭が突き出た落とし穴が隠されていたり,不意にプレイヤーに襲い掛かってくる悪霊が出現したりして,理不尽な死に方をすることも多く,一筋縄にはいかない。とくに後者は,薄暗い森の中で突然襲われたりすると,とにかく心臓に悪い。やめてよもー。
ストーリーを十分に満喫するためには,それなりの英語力が必要だが,凍てつくような冬山の表現がとにかく見事で,その雰囲気だけでもひんやりすること間違いなしの本作。夏はやっぱりホラーゲームで涼みたいという人にはぴったりの一本なので,興味を持った人はぜひお試しを。そんな本作は,Steamにて1980円で発売中だ。