インディーズゲームの小部屋：Room＃354「Pier Solar and the Great Architects」

　一人ぼっちでのハンター生活に限界を感じて，今は百合百合な学園生活に逃避している筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第354回は，WaterMelonの「Pier Solar and the Great Architects」を紹介する。本作は，2010年に発売された同名のメガドライブ用ソフトをHDリメイクしたものだ。女の子同士の友情（？）はとてもいいけど，謎解きがちょっと難しすぎやしませんかね，これ……。


　本作のメガドライブ版の企画がスタートしたのは，メガドライブの生産終了から5年以上が経過した2004年6月のこと。もともとは，Eidolon's Innというコミュニティサイトに集まったメンバー達によるファンメイド作品だったのだが，開発途中で構想が膨らみ，当初のシンプルなアイデアから本格的なファンタジーRPGへと方向転換が行われた。


　その後，いったんは2008年のリリースが発表されたがゲームは完成せず，紆余曲折を経てメガドライブ版は2010年12月に発売されている。さらに，2012年11月に本作のHD化企画が立ち上がり，Kickstarterでの資金集めを開始。目標金額を大きく上回る資金獲得に成功し，メガドライブ版でも当初は予定されていたが実現しなかった日本語化も決定，このたびついにリリースされたのが今回紹介する“HD版Pier Solar”というわけだ。


　このあたりの経緯については「こちら」の記事に詳しいので，興味がある人は合わせて目を通してほしい。うーん，ずいぶん長いこと待ったなあ。ちなみに本作は，当初は「Pier Solar HD」のプロジェクト名で呼ばれていたが，最終的なタイトルは原題と同じ「Pier Solar and the Great Architects」となり，邦題は「ピアソーラーと偉大なる建築家」と名付けられた。


　さて，そんな本作は主人公のホストンが，父親の病気を治すために，幼なじみの少女アリーナと発明家の少年エデソットの2人と連れ立って，森の奥にある洞窟に薬草を取りに行くところから始まる。無事に薬草を入手し，父親の病気も快復したところで，再び洞窟の探検に向かったホストン達は，森の中にある“天使の祭壇”と呼ばれる遺跡で起こったとある出来事をきっかけに，古代人の謎を追って冒険の旅に出ることになる。

主人公のホストン

左から，アリーナとエデソット

　ゲームはまさに，古き良きJRPGを彷彿とさせる内容で，HD化の恩恵は主に，格段に美しくなった背景グラフィックスに現れている。グラフィックスはオプションの設定を変更することで16bit風にすることもでき，これはこれで味わいがあって個人的にかなり好みだ。戦闘はオーソドックスなターン制だが，ちょっと変わったシステムとして“ギャザー”と呼ばれるものが用意されている。


　これは戦闘中に攻撃する代わりに力を溜め，それを任意の味方に渡すというもの。ギャザーを受け取ったキャラクターは攻撃力がアップするので，ボスなどの強敵と戦う際にうまく活用しよう。また，戦闘中に「ぼうぎょ」コマンドを選択すると，自分だけでなく味方をかばうこともできる。戦闘はなかなかシビアなバランスなので，体力が少ない仲間を守りたいときに使うといいだろう。ちなみに，AIによるオート戦闘も可能だが，あまり頭がよろしくないというか，無駄な行動が多いので，見なかったことにして手動で戦うほうが安全だ。


　待望の日本語訳はやや気になるところもあるが，全体的にはまあまあな出来。多少，おかしなところがあっても，日本語化されているとすんなりと物語に入り込めるので，やはりありがたい。ただ，グラフィックス以外はほぼそのまま移植されているのか，エンカウント率の高さや敵の不意打ちの多さ，セーブポイントが街中でさえ決められた場所にしかないなど，現在の基準で見ると不便に感じられる点がいくつかある。

オプションで16bitを選択するとこんな感じに。これはこれでなかなかいい雰囲気

　純粋に“2014年にプレイするRPG”としては，洗練されていない部分が多く残されており，せっかくリメイクするならこのあたりもぜひ改善してほしかったところ。最近のゲームと比較すると遊びにくい部分があるので必ずしも万人向けとは言えないが，メガドライブ版の発売当時に気になっていた人や，ノスタルジックなJRPGで昔を懐かしんでみたいという人はぜひどうぞ。そんな本作はSteamにて1480円で発売中だ。

■「Pier Solar and the Great Architects」Steam紹介ページ

http://store.steampowered.com/app/286220/