連載
インディーズゲームの小部屋:Room#171「Minecraft」
「インディーズゲームの小部屋」の第171回は,スウェーデン生まれの箱庭型ゲーム「Minecraft」を紹介する。本作は,NotchことMarkus Persson氏がたった一人で開発を始め,2009年5月にα版をリリース。その後,細かいアップデートを繰り返しつつ,2010年12月にようやくβ版が公開されたという作品。つまり,まだまだ開発中のゲームだ。
そんな本作はα版の段階からプレオーダーが受け付けられ,早期に購入すると後に発売予定の製品版よりも安く,その後のアップデートもすべて無料で受けられるという特典付きで販売が行われており,現在はβ版が14.95ユーロで販売中。いつ出るともしれない製品版は,20ユーロで販売される予定で,これだけ見ると確かにお得だが,一方では未完成のゲームにお金を払う人がどれだけいるのかしらと思う人もいるかもしれない。
しかし,こうした販売方法や,無限に広い箱庭で自分だけの世界を思う存分作れるというゲーム性が受けて,インディーズゲームとしては異例とも言える人気を獲得。2011年1月には,ついに100万本のセールスを達成したことは記憶に新しい。
また,Notch氏は2010年9月に,Minecraftの販売に使用していたPayPalのアカウントが,「疑わしい引き落とし,もしくは預金」という理由で同社によって凍結されたと自身のブログで明かしており,本作が一体どれほどの勢いで売り上げていたのかが想像できる。Notch氏によれば,そのときすでに60万ユーロ(約6780万円)以上の預金があったということだから,PayPalがびっくりしたのも頷ける話だ。
当初は一人で本作の開発を始めたNotch氏だが,現在は本作の売り上げ資金を元にスウェーデンはストックホルムに新会社Mojangを設立し,自身を含む7人のメンバーで本作および未発表の作品の開発を行っているとのこと。スウェーデンのゲーム事情に関しては,奥谷海人氏の「こちら」の記事に詳しいので,合わせてご一読を。
さて本作は,集めた素材を加工して道具を作ったり,夜になると出現するモンスターから身を隠したり戦ったりしながら,自動生成される無限の広さを持った大地で,岩や木などのブロックを組み合わせて自分だけの世界を作るという箱庭型ゲームだ。言ってみればただそれだけの内容なのだが,これが楽しい。筆者など,ただ穴を掘ってるだけでも時間が経つのを忘れてしまうほどだが,この楽しさを説明するのはとても難しい。
しかし,その理由の一つには,どこか懐かしさを感じさせるレトロ調のグラフィックスと,創造力をかき立てられる広大な世界があることは間違いないだろう。先に“無限の広さ”と書いたが,これは決して誇張ではない。本作では,水平方向にほとんど無限といってもいい,40億9600万平方kmもの広さを誇っており,これは地球の表面積の約8倍にも相当する(上下方向には,海水面を基準に±64ブロック)。
マップは進むたびに自動生成されるのだが,これがときにハッとさせられるような景観を作り出しており,どこまでも歩いていきたくなる。歩けども歩けども,見渡す限り見知らぬ風景が広がっているというこの感覚は,一度体験したら病みつきになること間違いなしだろう。そして何より,キャラクターの手に持たせたブロックを一つ一つ積み上げてモノを作っていくという,誰にでも分かる直感的なシステムが素晴らしい。
Minecraftの世界は重力の縛りが弱く(まったくないわけではない),プレイヤーの創造力次第で,森の中の一軒家から,それこそ天を突くような超巨大構造物まで,思いのままに生み出せる。プレイヤーは気に入った風景を見つけたら,その場所に自分の好きなように家を建てたりできるのだ。
もちろん,巨大なものを作るには相当の時間と労力が必要だが,どのようなものが作れるのかについては言葉で説明するよりも,YouTubeなどに投稿されているファンメイドトレイラーを見てもらうほうが早いだろう。グラフィックスは確かに簡素だが,それでも思わず息を呑んでしまう風景がそこには広がっている。
冒頭で述べたように,本作のβ版は現在14.95ユーロで販売されている。果たして,このゲームに値段に見合う価値があるのかと問われたら,筆者は間違いなくあると断言する。最後に,YouTubeに投稿されたファンメイドトレイラーから2本を紹介しておくので,ムービーを見て興味を持った人は,まずは公式サイトで無料で遊べるWeb版として公開されている“クラシック版”を試してみるといいだろう。
■「Minecraft」公式サイト
http://www.minecraft.net/- 関連タイトル:
Minecraft
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