連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第720回「『ファイアーエムブレム エンゲージ』が面白いのはなぜか」
なので,今週はファイアーエムブレム エンゲージの面白さの正体について私なりに考察してみようと思います。今回は読者に対して面白さを伝えるというよりも,自分自身に問いかけているさまを読んでもらうことになると思いますのでご容赦ください。
前述のとおり,私がシミュレーションRPG好きだから面白く感じるっていう面もあるんだけど,じゃあどんなシミュレーションRPGでも私は面白く感じるのかって問われたら,決してそうでもないんですよね。このジャンルが好きでよく遊びはするんだけど,エンディングまで遊び続けられた作品はむしろ多くはない。最後まで遊び続けられる作品とそうでない作品。これって何が違うんだろう。
ところで,私はプロレスを本業としているプロレスラーです。プロレスで考えてみました。「同じ技を使っても,使った人によって効果が違う」という現象がこの疑問の答えに近いのかな? と思ったので,掘り下げてみます。
例えば,プロレスにはムーンサルトプレスという技があります。コーナー最上段からバック宙しながらボディプレスするという技ですね。この技を武藤敬司選手が使うのと軽量級の選手が使うのでは意味合いが違ってきます。同じ技を,同じタイミングで使ったとしても,見ている人の印象は変わります。
軽量級で飛び技が得意な選手はいとも簡単にこのムーンサルトプレスを使いこなします。でも,武藤選手の場合は膝が悪く,人工関節の状態で立って歩くのもままならなくてもこの技を繰り出します。文字通り,命がけです。だから,同じムーンサルトプレスでも見ているほうの印象が変わってくるのです。
これは技の威力がどうって話じゃないです。厳密には威力も関係あるんですけど,それは一要素にしかすぎません。プロレスは,見ている人にどういう印象を与えるかという商品を取り扱っています。「相手に勝つ」要素と「観客に何かを与える」という要素が混ざり合って商品として成立しているのです。
商売において自分が何を売っているか,自分が売った商品にはどんな価値がついているかはとても重要なファクターです。……ってことを昨年末に出した私の著書「イロモノの野望」に書いています。ビジネス書です。ええ,宣伝です。読みやすさには気を遣ったんでプロレスを知らなくても読みやすいはずです。
……話を戻しましょう。同じ技でも違いはあるんですよ。ファイアーエムブレムシリーズにも,おそらくそれに近い何かがあるはずです。同じシミュレーションRPGでも,ほかとは違う何かがある。たぶん,それはシリーズを通して育ててきた秘伝のタレ的なものだと思うんですね。作り手はおそらく言語化できている。でも,いちプレイヤーの私には言語化できていない何か。これが違いなんだと思う。
なので,ほかのシミュレーションRPGは,ファイアーエムブレム的な面白さを追求してはいけないと思うんですよね。いけないってわけじゃないけど,同じ方向を向いてもファイアーエムブレムには勝てない。別の要素で勝負しないと商品力で勝つことはできない。武藤選手に勝つには,武藤選手の得意とする要素以外で戦わないと商品として勝てないように。
ただ,実際にエンゲージをファイアーエムブレムたらしめているのは,ゲイムの間であったりユーザビリティだったり,あとはちょっとした技術的なことだったりの,作り手にしか分からない伝統のなせる業なんだろうなあと感じました。
「違い」を生み出すのって大変だよなあ。ぱっと見では気付かれなかったり,評価されにくかったりする部分での積み重ねが,「違い」を生み出すんだと思う。あらためて,自分なりの積み上げをしないといかんのだなと,作り手視点で今回ファイアーエムブレム エンゲージをプレイして思い知らされたってお話でした。
来週は,作り手視点ではなくプレイヤーとしての視点で同じくファイアーエムブレム エンゲージを語ろうと思います。来週までにはプレイもだいぶ進んでいることだろうし。そんな感じで今週はここまで。また来週!
今週のハマりゲイム
PlayStation 5:「eFootball 2023」
Nintendo Switch:「ファイアーエムブレム エンゲージ」
iOS:「ロードモバイル」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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