連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第707回「初心者に向けて何をどこまで教えるべきか」
で,ジャンルがなんとビジネス書。私がプロレス界で20年間行ってきた問題解ケツ法をビジネスに応用できる形で紹介する,という内容。これもまあいいです。それなりに書けてきてます。問題はここから。
執筆にあたって,私がプロレスラーとして活動してきた20年を見つめ直している日々なのですが,やっぱ難度は高いよね。私のファイトスタイル,というよりはプロレス自体が。これはゲイムというジャンルにも言えることだとは思うんだけども。どういうことかと言うと,そのジャンルを骨の髄まで楽しんでもらうべく説明しようとすると,簡単なようで難しいってことなのですよ。
私はゲイムが趣味で,仕事でもある。だから,最低限の知識はあったりする。だけど,ゲイムに興味がない人にゲイムについて伝えようとするのは,想像以上に難しいんですね。スタートでつまずいちゃう。
例えば,プロレスのルールを説明するのに「相手の両肩をマットにつけて3カウントで勝ちだよ」って説明するじゃないですか。でも,これって案外説明できてなかったりするのです。なぜなら,本当に何も知らない人からしてみれば「3カウント」って何? って話になっちゃうから。私はプロレスラーだから,相手の両肩をマットにつけて,レフェリーがマットを一度叩いたら1カウントだということは知っています。でも,知らない人はカウントが何であるかがまず分からないのです。
で,だ。ここからが今日の重要な考察ポイント。あらゆるジャンルの趣味は,初心者でも楽しめるほうが良いとは思う。だけど現実問題,どこまで説明する必要があるのかねえ? っていうお話です。初心者とはいっても,いろいろな人がいます。まったく興味ない人も初心者と呼べるだろうし,何かをきっかけに興味を持ってそのジャンルに近付いてきた人も初心者でしょう。たまたま知り合いの付き合いで体験することになった人も初心者です。
つまり,どの初心者に合わせた説明が必要なのか? って話なのです。覚える気がない人に説明しても,たぶん覚えようとはしません。ちょっと興味がある人であっても,覚えることが多すぎると挫折してしまう可能性は十分にある。
そりゃね,どのジャンルの人も「どなたにでも楽しんでいただきたい」と言うとは思う。でも,現実的にそうもいかないケースだってあるのですよ。いくらていねいな説明があったとしても,覚えることが多すぎると逆に頭に入って来なかったりするしね。
プロレスのような特殊な娯楽は「見たら分かる」と「ルールが細かくてよく分からない」という,相反する要素があるのですよ。だからこそナビゲイトが難しい。
これ,問題提起はしたものの,私の中でも答えは出てません。ただ特殊で複雑なジャンルこそ「よく分からないなりに見ていて楽しい」って要素は,結局のところ初心者獲得のために必要なのかなって思っていたりします。
この手のゲイムって初心者獲得がかなり難しいと私は思っています。私はシミュレーションゲイムが好きだからなんとなくプレイはできるのだけれど,やはり同じシミュレーションゲイムでもタイトルによって操作方法だったりルールだったりが変わります。それをいちいち覚えなきゃいけないってのが,まず高いハードルなのですね。
ごくたまにチュートリアルが無いに等しいシミュレーションゲイムもありますが,私からすると正直意味が分からないです。プレイして楽しんでもらいたくて作ったのであれば,プレイして楽しくなるまでは説明してほしいと思います。まあ,これはプレイヤーのエゴなのかもしれないけれど。
ただでさえ,シミュレーションゲイムは遊ぶ人を選んでいる現状があります。この連載で,私はよくシミュレーションゲイムを紹介するけど,だいたいは「シミュレーション好きにはオススメ」という表現をする。それほどシミュレーションゲイムには取っつきにくいイメージがあるのです。
だから,私はこのRAILGRADEに関しては,「チュートリアルが楽しくてちょうどいい」という表現でオススメしたいと思う。実際,そうなんですよ。ゲイムとしては,施設間に鉄道を敷いて稼働させ,街を発展させるという内容。しっかり硬派なシミュレーションゲイムです。自分が作った施設の効果で結果が出ると嬉しい。現状で足りないものを考えてやりくりするという要素も,しっかりとシミュレーションゲイムしてます。シミュレーション好きの私から見ても,奥は深い。
だけどこのゲイムの何がいいって,チュートリアルが初心者でもギリ分かる作りになっている点なんですよ。覚えるべきことはいっぱいあるんだけど,一気に教えようとはしない。あくまで,少しずつ。そして,序盤はとくに1ステージの時間がさほどかからない。覚えることが少なくて済む印象を維持しているわけです。
それでいて,分からないなりにヤっていてもなんとなく楽しい。言われたことをヤっていて,気付いたらステージをクリアしている。この感じが素晴らしい。
結局のところ,面白いです。鉄道経営シミュレーションという響きほど難しく感じない。それでいてシミュレーションの楽しさはしっかりと確保できている。これがこのゲイムの売りでしょうか。チュートリアルが難しくなくて楽しいです。オススメ。
そんなわけで,RAILGRADEを通じて,初心者にどのように説明するのがちょうどいいのかを考えさせられた今週でした。繰り返すけど,私の中でも答えは出ていない。ただ,今のところの暫定的な答えとしては「勢い」なのかなあ。よく分かんないけどなんか面白い。細かいルールは後々に。ゲイムとプロレスではまた違うだろうけども。
でも,少なくとも初心者にも「楽しい体験」を提供できれば細かいことは後から覚えてくれるんじゃないか。チュートリアルが楽しさを減らしてはいけない。2022年秋の段階では,こう思っておる次第です。そんな感じでまた来週。さて,では引き続き本の執筆に戻りますかね。
今週のハマりゲイム
PlayStation 5:「地球防衛軍6」
Nintendo Switch:「RAILGRADE」
iOS:「ロードモバイル」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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