連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第641回「ゲイムで情緒を感じる時代」
最近のことは知らないけど,一昔前は“自分探し”のために海外へ行く人がけっこういたような気がする。まあ,今の今は情勢的によっぽどの理由がないと海外には行けないんだけども。その,自分探しで海外へ行くっていう感覚が,私には理解できなかったのね。「日本で見つけられなかったものが海外にあるもんなのか? しかも,場所は関係あるか?」と思っていたので。
ただ,それは昔の私がそう思っていたっていう話。今も理解できないのかと言われると,実は必ずしもそうでもなく。そもそも自分を探しに海外へ行く人を見聞きしなくなったのもあるけど,仮に今そういう人がいたとして,「まずは日本で探せよ」と思わなくもないけれども,「ひょっとしたら海外に自分のいるべき場所があるかもしれないね」と思えるだけの余裕ができつつあります。これが歳をとるってことなのかなあ。
というのもね,この世界には同じ場所なんてないんです。同じような風景はあるけども。それでも,誰かが何かを思って物を置いたその場所は,似ているかもしれないけれどまったく同じではないんですよ。それが面白い。
昔の私だったら,風景なんて,美しいかそうでないかぐらいにしか考えていなかったんですね。ただ,今の私は「あの建物はどれくらい前からここにあるんだろう」とか,「この畑でできた作物は,どれくらいの人々の胃袋を満たしてきたんだろう」ということを考えられるようになった。
これが成長なのか老化なのかは分からない。でも,通り過ぎるただの風景の中にも人間のドラマが潜んでいるってことが身に染みるようになってきた。だから,ここには無い自分が別の場所に行けばあるのかもしれないなとも思ったわけです。
とはいえ「自分とは何か」なんて考えたって,どうせ経験によっても変わるから,探しても意味なんてないんじゃないかとは思っているけどね。どんな場所にいても,そこにいる自分こそが自分なわけで。自分を好きになれるかどうかはまた別問題だけども。甘やかしすぎず,厳しくしすぎずっていうラインをうまく定めるのが,自分のことを好きになるコツなのかなあと。自分のことが好きでも嫌いでもないけども,どちらかというと好き寄りの私が言ってみる。
話がそれたわね。世界は,似たような場所はあっても同じ場所はないって話です。人間にも言えるけども。
ただ,このゲイムのキモはルポライターという主人公の属性ではなく,岐阜県をバイクで回るってところ。バイクでの移動シーンがあるんだけど,その道中が360度カメラで撮影された実写で味わえるのです。だから,風景のリアリティがとてつもない。もちろん道中の移動シーンをカットすることもできるんだけど,カットするのがもったいないくらいの情緒なのよね。道もある程度自由に選べるし。こういう楽しみ方を提供してくるとは思わなかった。
風雨来記4ってことでナンバリングタイトルみたいなんだけど,本当に申し訳ない。今までこのシリーズを知らなかった。そして,今作をプレイしたら知らなかったことを恥ずかしくなるくらいのいい作品だと私は思った。まさかゲイムがこんな楽しませ方をしてくるとは。
もちろん,ゲイムだから目的はあるのですよ。名所を巡って写真を撮ってそれを定期的にWebマガジンに載せることで,メディア対抗記事コンペのランキングを上げていくっていう目的が。ただ,繰り返しになるけどこのゲイムのだいご味は情緒なのです。キャンプをしながらバイク旅をしてっていう設定なんだけど,キャンプのときの食事の描写も素晴らしい。ここも情緒。
なぜ岐阜県なのかっていうと,おそらく発売元の日本一ソフトウェアが岐阜に根付いた会社だからっていう理由もあるんだろうけど。
これまた話がそれるけど,日本一ソフトウェアが中心となって岐阜で行われてきた「全国エンタメまつり」は,コロナで昨年から休止しているんだけども,早く再開できる世の中になってほしいなーと思うよ。あんなに企業の都合よりも町おこしのほうが優先されてる(と私が感じる)大規模イベントって,なかなかないからね。快適さだとか(真夏の商店街で行うので),スマートさだとか(ゲイムを知らないような地元の商店街の皆さんが協力してくれている)は置いておいて,とにかく岐阜を好きにさせるような力強いイベント。あれもまた情緒。
こう書いてきて気付いたんだけど,日本一ソフトウェアは情緒を大切にする会社なんだねきっと。風雨来記4,情緒を感じたいならばぜひ。しっかりとオススメですね。
てなわけで,今週はゲイムから情緒を感じましたよっていうお話でした。コンシューマも次世代機に移り変わろうとしてる昨今。ゲイムの技術やら表現方法やらがどんどん向上して,ゲイムの未来ってどうなるんだろうなって思っている最中,結局提供してくるものが情緒って。やっぱりなんだかんだ言って,ゲイムを作るのもプレイするのも人間で,人間が何を感じるかがゲイムにとって大切なんだなあってことを再確認し,感動している今週でしたとさ。
いや,ぜひプレイしてほしいですね。ではまた来週!
今週のハマりゲイム
PlayStation 5:「バイオハザード ヴィレッジ」
Nintendo Switch:「風雨来記4」
iOS:「龍が如く ONLINE」
iOS:「今三国志」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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(C)2021 Nippon Ichi Software, Inc./FOG
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