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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」
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印刷2017/11/09 12:00

連載

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」

画像集 No.001のサムネイル画像 / 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」

 禅問答というものがあるわ。元々の意味としては,禅僧が悟りを開くために行う問答のこと。現代では真意がとらえにくい問答や会話という意味で使われることが多いわね。
 例えば,以下のようなものが禅問答。
師匠が弟子と歩いていると,野原から鳥の一群が飛び去っていった。
それを見た師匠が,弟子にたずねた。
「あれは何だ」
「鳥です」
「どこへ飛んでいったのか」
「分かりません。ただ飛んでいったのみです」
答えを聞いた師匠は,いきなり弟子の鼻を強くつまみあげた。
「痛い!」
「なんだ,飛び去ったというが,鳥はここにいるではないか」

 意味分かんないでしょ? でも,これが禅問答ってやつなのね。禅問答に正解はないとされてはいるんだけど,一応の解釈としては……。

著者近影
画像集 No.003のサムネイル画像 / 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」
 物理的な空間という視点からいえば,確かに鳥はどこかへ飛び去っていった。しかし,それはあくまでも“自分”から見た場合で,飛び去っていく鳥を見たとき,その存在が消えてしまったかのような印象を受ける。けれども,鳥の存在は消えてしまっているのではない。もしも鳥の立場になってみれば,自分達は飛び去って消えてしまったわけでもなく,突然にこの世に「現れた」というわけでもない。
 つまり,鳥の存在が消えたり現れたりしたように思えるのは,“自分”という意識に閉じこめられている結果として生じる“幻想”なのである。

 ということらしいわ。ま,簡単に言えば世の中に起こっていることは,いくとおりもの視点で捉えられるよって話だと私は思っているのだけど。私的には,弟子に教えるためとはいえ,軽い暴力に訴えなくても……って気はするのよね。今で言うとパワハラってやつね。時代によっていい話にも悪い話にもなるんだなあ,という私の考え方もこの話の解釈の一つ。
 答えがあるようでない。これが禅問答。自分にとって正しくても,ほかの人や物にとって正しいとは限らないってことなのです。で,なんで禅問答の話をしたかというとですね。「アサシン クリード オリジンズ」PC / PlayStation 4 / Xbox One)が禅問答のようなゲイムだったから。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」
 どういうことかというとね,正解がないのよこのゲイム。もちろん,ストーリーを進行させるための目標はあるわよ。例えば,「○○を殺せ」であったりとか。でも,その目標を達成するための行動に関しては正解がない。正確に言うならば,どの方法でも正解。正面突破で敵を全滅させるもよし,ステルスで身を隠して一人だけ暗殺するもよし。毒殺するもよし,火で燃やすもよし。どうやったっていい。
 で,このゲイムの何が優れてるって,どういう手段を取るにしても楽しいってこと。殺し方にバリエーションがあって,どの方法にも違うアプローチの爽快感があるのよね。これは,凄いことだと思う。

 ……いや,話はちょっとそれるわよ。今,ゲイムの話じゃなければかなり物騒なことを書いている自覚はあるんだけどね。人を殺す体験なんていうのはゲイムの中だけで十分だから。だからこそゲイムの存在価値があると私は思っているの。人を殺すことなんて,現実ではやってはいけない。だからゲイムでヤる。
 昨今,世の中はエンターテイメントの中も命を奪うことや血を流すことについて避ける方向に進みがちだけれども,実際には誰もが生死について考えるものだと思うの。避けては通れないことだからね。
 で,その結果として,他人の命を奪うことは悪いことだという認識が,ある程度は共通して持たれるんだと思うわけ。その前提さえ守っていれば,ゲイムは現実には体験できないことを疑似体験する場であってもいいと私は思っているわ。現実では目の前の相手をリスペクトする。ちゃんとゲイムと現実を自分の中で正しく認識する。これさえできれば,ゲイムで生死を描いてもいいと思っているわ。私なりの解釈では,だけどね。

 話を戻しましょう。この作品は,人を殺すゲイムなの。でも,殺すべき敵も悪人なら悪人なりにちゃんと生活があって,夜になれば寝たりするの。そこもちゃんと描かれている。そのうえで殺すことになるのね。
 それこそ禅問答じゃないけど,古代エジプトの世界がリアルに描かれているからこそ,自分がどのように行動するべきかを自分で考えて実行できるし,どういう行動をとってもそれ相応の楽しさが用意されているわ。

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 私,このシリーズの常連プレイヤーではないの。だから,シリーズファンがどう思うかの視点では語れないわ。でも,今回たまたまプレイしてみたという立場で言うと,この作品はとても面白い。これは自信を持って言えるわね。
 アクションが爽快なのは大前提としても,私が知ってもらいたい面白ポイントは,完璧なプレイじゃなくていいってところ。さっきも書いたけどこのゲイム,けっこう緻密に世界が作られているのよね。それでいて舞台が広大なの。だから,いちいち完璧を追い求めていたらキリがないの。サイドミッションにしても,武器集めに関しても。適当にヤって,自分のペースで進めていいんだって気になれる。
 これが,プレイするモチベーションとしては大きいのね。完璧にヤることでご褒美がもらえるタイプのゲイムって,ご褒美欲しさに気が張りすぎて逆に自分の中でのハードルを高くしてしまいがちじゃない。でも,このゲイムはご褒美もあるにはあるんだけど,基本的にはランダムだから,そこは気にしなくていい。適当にヤって楽しむタイプのゲイムなのね。そこが心地いい。
 好きなように寄り道して,好きなように武器を集めて,好きなようにミッションをこなして,好きなように敵を殺せばいい。自由に。好きなように。それが楽しいゲイム。答えはあるんだけど,ない。まさに禅問答ゲイム。禅問答って例えたけど,それほど難しいこと考えずにプレイできるから,ぜひプレイしてみてほしいわね。単純に,このゲイムの世界にいることが楽しいから。

画像集 No.009のサムネイル画像 / 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」 画像集 No.010のサムネイル画像 / 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第455回「禅問答」
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 今週,実は私,祖母を亡くしましてね。そこで仏教について調べることになって,禅問答にたどり着いたという経緯がありまして。人生そのものに答えがないように,答えがないゲイムっていうのもまた面白いものだなあと思った今日この頃でございました。
 解釈や自分なりの考え方で意味を作っていく。これもまた人生の目的なんだろうか。と,センチメンタルな気持ちになっておる次第です。私にファミコンを与えてくれたばあちゃん,ゆっくり休んでね。

今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「アサシン クリード オリジンズ
PlayStation Vita:「GOD WARS 〜時をこえて〜
Nintendo Switch:「ファイアーエムブレム無双
ニンテンドー3DS:「スナックワールド トレジャラーズ
iOS:「クラッシュ・ロワイヤル

■■男色ディーノ(プロレスラー)■■
ディーノ選手がプロデューサーを務めるDDTプロレスは,今週末の11月11日に埼玉・所沢市民体育館サブアリーナ大会「石井慧介主催興行『桃色ニールキック2017〜いい日旅立ち〜』」を,翌12日に宮城・夢メッセみやぎ西館ホール大会「ドラマティック独眼竜!2017」を開催します。先週末,AbemaTVで配信された「72時間ホンネテレビ」に出演し,インターネット上では大きな話題を呼んだディーノ選手ですが,「これで故郷に錦を飾れるかと思いきや,その辺の情報は高齢の親類にはまったく届いていなかった」とのことでした。
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