男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第368回「理想的なこの世界のあり方」

著者近影

　今年で39歳，独身インディーゲイレスラー。家賃7万8千円貯金なし。あ，もちろん私のことなんだけど。
　この連載ではしょっちゅう上記のようなことを書いてきているわよね。「相手を知り己を知れば百戦危うからず」って言うからね。自分のことは希望的観測抜きできっちりと分析，把握しておかないと。問題としては，私がいったい誰と戦っているのかが分からないことね。そしてもっと言うと，そもそも私は一般的なメガネで見ると，まあまあ負けてるってこと。いや，私の人生的には充実してるんだけどね。
　まあ，それはいいわ。要は，連載によく出てくる話ってことは，イコール私の中で常に自問自答してるってことでもあるのよ。ホラ，更新が週一だから。そのときどきで思っていることがストレートに出ちゃうの。つまるところ私って，自分の歩んできた人生について思い返すことが多々あるってわけ。
　それでね，昔と同じことについて今あらためて考えてみると，当時とはちょっと意見が違うことっていうのがけっこうあるの。そのうちの一つが，「1を10に増やすよりも，0から1を生み出すほうが難しい」ってやつ。
　若い頃は，何の疑いも持たずそのまんまのことを思っていたわ。でも今は思うのよ。じゃあ0って何？　って。何もないところから生み出すことをきっとそう表現してるんでしょうね。それはいいのよ。今の私が引っ掛かってるのは，その0の状態って具体的に何なのかしらってこと。
　というのもね，ハッキリ言って，0の状態って，もはやこの世にないと思うのよ。例えば誰かが音楽を作ったとしましょう。これって，0から何かが生み出されたような感じがするんだけど，違うのよ。機材を使ってるでしょ？　PCだって使ってるでしょ？　根本的に楽器を使っているでしょ？　つまり，まったくの0からってわけじゃないの。
　ここまでだったらただの言いがかりなんだけどね，私がしたいのはそういう話じゃなく。使った機材や道具は，誰かによって作られたものなわけで。その道具に使う素材も，誰かが栽培したり生成したりしている。道具を使わない音楽，例えばアカペラの歌だったらどうなの？　って疑問が浮かぶかもしれないけど，それだって今まで自分が聴いてきた音楽なり何なりに意識的にしろ無意識にしろ影響を受けている側面はあるでしょう。まったくの0からってことではないと思うの。
　何が言いたいかというと，一人で成し遂げた気になるなよって話。別に言葉狩りをしているわけじゃないから，「0から1を生み出す」っていう言葉の使い方のニュアンスに噛みつくつもりはないんだけどね。要するに昔の私って，クリエイターは0から何かを生み出す職業の人だって，浅く信じ込んでいたの。もちろん，実際に何かを生み出しているからクリエイターって呼ばれているんだけど，クリエイターにもいろいろなタイプがいるってことを，昔の私は理解していなかったのよ。
　つまりこういうこと。0から1を生み出すのは難しい。それについて疑問を挟む余地はない。でも，1から2にすることも簡単ではないし，2から5に増やす人や，5から10にする人だってクリエイトしてる。そして基本的に何かのプロっていうのは，最終的に10なら10の商品を生み出すために働ける人のことなんだと思う。
　プロのスポーツ選手だってそうよ。ただその人達に与えられた仕事が「数字を残すこと」なわけで，その数字でお金を生み出すのは，周囲で働いている別職種や別業腫のプロ達なの。これ，大事。


　お待たせしました。今週は「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」（PlayStation 4 / PlayStation 3 / PlayStation Vita。以下，DQB）について。このゲイム，モノを生み出す楽しさが詰まっているのよ。
　「ドラクエ」の冠があるから，RPGなのかなって思う人もいるかもしれないんだけどね，それは違うわよ。RPG要素もなくはないけど，このゲイムの楽しさっていうのは断然“モノづくり”にあると思うわ。
　「Minecraft」系って言ってしまうこともできるんだけど，もうちょい正確に説明するならば，「ドラクエの世界にあるすべてのモノを一度解体して，自由にモノを作り直すゲイム」って感じかしらね。あるいは，レゴブロックのゲイム版とも言えるかもしれない。ゲイムの中で「これを作ってみろ」っていうお題が出るから，それを自由に作るっていう遊び。
　で，ここの絶妙な部分は，ドラクエの世界観が絶妙にマッチしているってこと。そもそも，ドラクエっておつかいゲイムじゃない。「ラーの鏡が必要だ」って言われてそれを手に入れる→先に進めるっていう繰り返し。そのおつかい感覚が，このDQBにもしっくりくる。

　まとめるわよ。DQBは，純RPGではございません。このゲイムの楽しさは，モノを作ることです。それは，武器や防具だけでなく，部屋や家具や街やお城そのものだったりもします。モノを作ることで人が集まってきて，強いモンスターとも戦えるようになる。
　すべての楽しさは，モノづくりの楽しさから派生していくのです。モノを作れと急に言われても，何をしていいのか分からない人もいるでしょう。でも安心してください。そこはドラクエっぽく，それとなく次の行動を示唆されて，徐々にヤるべきことが増えていきます。自由ではあるけど，ちゃんとナビゲイトはしてくれます。
　結果，楽しいんです。敵を倒すのが目的じゃなく，主人公を成長させるのが目的でもなく，ドラクエの世界を自分の手で作ること，厳密に言えば，壊れたドラクエの世界を自分の手で作り直すことが目的なのです。


　DQBをプレイしてると，どうしても“モノを作る”っていうことについて考えちゃうのよね。ゲイム内では自分の作った街に集まる人々が増えてくるわ。そして，集まってきた人のために，また新たなモノを作ることになる。街に集まってくる人々は，モンスターから街を守るために戦ったり，戦えない人はモノや料理を作ったりして，街のために働くの。そこはゲイムだから，主人公の働きが一番重要ではあるんだけど，基本的には“何かのために”っていう動機でモノを作るわけ。こういうゲイム，私は好き。
　いや，実際の社会もそうなんだけど，“誰かのため”と思って生活しているわけではないじゃない。私で言うと，別に具体的に誰かのために対戦相手を殴り，投げ飛ばし，股間をつかんでいるわけではないわ。でも，誰かが私の戦いを見て笑ってくれるなら，それでいい。何となく自分のために働く，それが私の知らないところで誰かのためになっている。だいたい，「俺がお前らのためにやってんだぜ」って恩着せがましく言いながら働くのは恥ずかしいじゃない。いや，エンターテイメント産業においては，それが必要な局面もあるにはあるんだけど。
　ゲイムでも誰かが誰かに一方的に施すだけってわけじゃなく，“自分のため”と“誰かのため”がバランスよく共存している世界観が，私は好きなの。それが理想的なこの世界のあり方だと私は思っているから。そういう意味じゃ，「皆さんのために働きます！」って仕事でも言わなきゃならない政治家って，たいへんだなぁって思うわ。まあ，本当に働いてもらえるなら，その分は稼いでもらっても構わないっていうのが，私の個人的な意見だけど。


　もしも「自分の仕事が報われない」って思ってる人がいるならば，少なくとも私は漠然とではあるけれども，あんたに感謝してるってことをお伝えしたいわ。直接の関係はなくても，あんたの仕事が巡り巡って私のためになっていることって，あるはずだから。ま，こうやってお互いを尊重して楽しく生きていきましょうやってことね。私は今年で39歳，独身インディーゲイレスラー。家賃7万8千円貯金なしではありますが。また来週。

今週のハマりゲイム
（文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム）
PlayStation 4：「三國志13」「ウイニングイレブン 2016」
PlayStation 3：特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita：「シヴィライゼーション レボリューション 2+」
PSP：「サモンナイト5」
Wii U：「Splatoon（スプラトゥーン）」
Wii：「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS：「モンスターハンタークロス」
Xbox 360：「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，今週末の2月20日に静岡・清水マリンビル大会「ドラマティック羽衣伝説2016」を開催します。ディーノ選手は大石真翔選手とのタッグで，勝俣瞬馬選手＆ワンチューロ選手と対戦予定。3月21日の両国大会における曙選手との対戦に向け，ケツ集めに取り組んでいるディーノ選手ですが，無事2人のケツを手中に収めることができるのでしょうか？　何を書いているのか自分でも分からなくなってきた。