男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第330回「『トロピコ 5』が面白くて良かった」

著者近影

　人間は衰える。曲がりなりにも，プロレスというちょっぴり特殊な世界で生きてきた私は，最近とくに実感している。私は，次の月曜日で38歳になる。誰がどう見ても，いいおっさんだ。おっさんになる前は，私もおっさんではなくお兄さんだった。お兄さんになる前は，少年だった。
　少年は，ゲイムが好きだった。ただひたすら好きだった。たぶん，ゲイムの世界に入り込むことが好きだったんだと思う。現実の世界ではなく，ゲイムの世界。
　いや，当時はそんな理由なんか関係なく，ただひたすらゲイムが好きだった。世の中ではアレだと言われているゲイムも，何だかんだで好きだった。「カラテカ」はなぜ負けるのか分からないなりにチャレンジし続けたし，「たけしの挑戦状」も2時間待ったりした。もちろん両方クリアできなかったが，それでもゲイムをヤってる時間は，とても幸せだった。
　そんな元少年がお兄さんを経て，今ではすっかりおっさんになった。いつからだろう，無意識にゲイムを楽しむんじゃなく，考えながらゲイムをプレイするようになったのは。
　しかしそれはきっと，ゲイムに限った話じゃない。感覚だけで突っ走れなくなった分，世の中についても，いろいろなことを考えながら生きるようになった。それがいいことなのかどうかは分からない。ただ，いつの間にかこうなってしまったこと。それこそが，衰えたということの証なのかもしれない。
　でも，今のスタンスでもそれはそれで楽しかったりもする。それに，「衰える」なんて言葉を使うと聞こえは悪いけど，それの何が悪いんだ？　とも思っている。腰は痛いし，疲れは抜けないし，肉体的には文字通り衰えを隠せない。それでもそれなりの戦い方はあって，それなりの楽しみ方もある。
　人間，いつ死ぬかなんて分かんないじゃん？　生きている限り，人間としては現役なわけじゃん？　だったら，そのときの自分に合わせて楽しんでいくしかない。


　で！　「トロピコ 5」（PlayStation 4 / Xbox 360）が面白いのが嬉しいの。箱庭シミュレーションゲイムの最新作なんだけどね。ぶっちゃけ，このジャンルってパッケージ市場的には衰えてきていると思うのよ。一方，ソーシャルゲイムに目を移せば，定番中の定番。これはつまり，箱庭系ゲイムが面白いことの証明でもあるんだけど，そのほとんどが無料で遊べる時代なわけ。だから，こういうパッケージ版で遊べるケースって，ことコンシューマ市場においては，いつの間にかレアになっていると思うの。でも，トロピコ 5はソーシャルゲイムではなくパッケージで発売されて，しかもちゃんと面白い。
　奇しくも，今回のトロピコは，時代の要素が加わったの。これすなわち，植民地時代→世界大戦時代→冷戦時代→現代。ゲイムの目的としては，プレイヤーがカリブの島国を統治するんだけど，その時代によって統治の仕方が変わってくるのね。植民地時代は独立を目指し，世界大戦時代は戦火からいかに島を守るかに苦労し，冷戦時代はソ連とアメリカという二大国とのバランスをどうとるかで悩む。そして現代では，国内のいろいろなイデオロギーを持った人々をどのように管理していくか。この変化が楽しいの。
　そして，ときに考えさせられるの。かつて主流だった施設や制度が，時を経るごとに古くなっていく。プレイヤーはそれら古いテクノロジーや施設をうまく扱いながら，一方で新しいものを開発し，取り入れていかなければならない。これを言い換えれば，我々は今を生きなければならないってことにほかならない。
　そうなのよ。人類の歴史ってこうやって繰り返してきたわ。今の積み重ねが未来を作るのね。国家も，個人も。そして人は年をとっていく。自分が，どんどん古くなっていく。ガタもくる。屁も臭くなる。白髪も増える。最近は鼻毛まで白くなってきた。でも，生きている。
　「昔は良かった」って言う人は多い。違うね。良さに慣れただけ。年と共にいろんな経験が積み重なって，ちょっとやそっとじゃ興奮できなくなってるだけ。幸い，今は昔に比べてゲイムでもほかのことでも，選択肢が多い世の中になっているわ。だから，そのときどきで楽しいことを探して選べばいいのよ。


　衰えるのはもう仕方がない。でも，弱くなったかというと，そんなことはない。肉体だけに依存しなくても戦えるからね，今の世の中は。サッカーで言えばキングカズ。野球で言えば山本昌。プロレスで言えばグレート小鹿。
　プロスポーツ選手って，夢を与えることが仕事なのね。ゲイムとか，ほかのエンターテイメント産業にも言えることだけど。勝つためっていうのもそうだけど，勝つことで夢を与えられるから「勝ち」を目指すわけ。見てる人に夢を与えられる。少年には無条件でただひたすら夢を与え，お兄さんには「こうなりたい」という夢を与え，おっさんには「まだ戦える」という夢を与える。素晴らしいじゃない。
　そして何より，その当事者って，戦ってる本人がまだ夢を見続けているんだと思うのよね。そこが凄い。やっぱり，夢を与える人が夢を見ないと，その夢をアウトプットできないじゃない。きっと，たとえその競技を辞めたとしても，別の方法で自分が見る夢を作り出すことができると思うわよ，その人達。
　おっさんになって，世の中をちょっとは考えられる年齢になった私世代が見習うべきは，そこよね。衰えても，その状況なりに夢は見なきゃ。そこで諦めたら昔に逃げ込んじゃう。

　すっかりトロピコ 5はおろかゲイムの話から離れてしまったけど，トロピコ 5ってそういうことを考えさせてくれるゲイムです。だから，このゲイムがちゃんと面白くてよかった。この手のシミュレーションゲイムはまだ夢を見せてくれる。願わくば，次回作も出ますように。
　本来ならば好き嫌いがハッキリするから無条件にオススメするのは，はばかられるジャンルではあるんだけど，ソーシャルゲイムで箱庭系をヤったことある人が多いであろう今，あえてまっとうにオススメしてみるわ。こういう系統のゲイムを面白いと思ったことがあるならば，楽しめるはず！　ぜひに。
　あと，どうでもいいけど日本国内はスクウェア・エニックスがパブリッシャってことに，地味にビックリ。面白いよ！


　てなわけで，今週は時代の流れについてマリッジブルーならぬバースデーブルーの独身ゲイレスラー男色ディーノ現時点では37歳がお届けしました。いや，負け惜しみでもなんでもなく，今楽しいよ！　周りと比べると切なくなることはあるけど！　さようなら37歳。一年間よろしく38歳。ではまた来週。

今週のハマりゲイム
（文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム）
PlayStation 4：「トロピコ 5」
PlayStation 3：特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita：「剣の街の異邦人 〜黒の宮殿〜」
PSP：「サモンナイト5」
Wii U：「ゼルダ無双」
Wii：「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS：「ブレイブリーセカンド エンドレイヤー」
Xbox 360：「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，今週末の5月17日，名古屋国際会議場大会「友情、努力、勝利 in NAGOYA」を開催します。何を言っているのか分からないかもしれませんが，このところディーノ選手は男色人生を名乗って試合に出場しており，この名古屋大会ではその元ネタである新崎人生選手とシングルマッチで対戦します。ディーノ選手によると「誕生日の前日に，まさしく人生を賭けた勝負がやってきちゃってね……どうしたらいいのかしら」とのことで，この試合の結果が今後のファイトスタイルに大きな影響を及ぼすこともありそうです。