男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第258回「澱んだ心に『メタルマックス4』」

著者近影

　私はゲイレスラー男色ディーノ。一応はプロレスを生業としている36歳。18歳で学生プロレスを始めてから18年。6年大学に通った末に24歳でプロになってから，早いもので12年が経つわ。いまだにプロになった自覚はないんだけど，プロになるという段階から，ずっと覚悟だけはしていたことがあるの。それは，こういう職業に就いた以上は，休みなんてないようなものだということ。
　プロレスを始めて最初の頃は，まあまあ暇だったわ。試合が一か月に一度しかないこともしばしば。私のようなインディーレスラーは基本，歩合というかファイトマネー制だから，試合があればあるだけお金が入ってくるっていう仕組みなのね。当然，駆け出しのころは一試合あたりの単価が低いし，数多く試合をしてなんぼっていう世界だったわけ。
　だからもちろん，ほかにバイトをしないと生活できない状況だったわ。それが今では，毎週土日のスケジュールは何かしらの試合で埋まっていて，一応はプロレスだけで食べていけるようになっているの。まあ，同じぐらいのキャリアの人に比べて，私はけっこう恵まれているほうだから，収入はさておき，土日のスケジュールがけっこうな確率で埋まっているこの状況には，感謝しなきゃいけないわ。
　で，何が言いたいかというと，先日，半年ぶりぐらいに何の予定もない日曜日を過ごしましたってことなの。昔は日曜日といえば寝ているだけだったんだけど，試合が無いと思うと不安になっちゃって，食事が喉を通らなくなり，結果寝てしまうという感じだったわ。これは，一種の職業病なんでしょうね。
　さすがに久々の休日を寝て過ごすだけなんてもったいないと思って，ちょっと早めの大掃除に取り掛かってしまったんだけど，始めて30分くらいで飽きて，結局，積んであったゲイムをプレイするという，文字通りただの休日になってしまいましたとさ。
　……というお話がしたいために，ここまであれこれ書き綴って参りました。いつもだったらゲイの説得力に任せた説教的ないい話をブッ込むんだけど，今回に至ってはそれもなし。これも休日が影響してると思うわよ？　やっぱり時間に追われる緊張感の中で原稿を書いているのとは違うのよ。ホラ，私，世の中への怒りによって言葉を紡ぐタイプだから。一見いいことを書いているときは，不条理な世の中への怒りに満ち溢れてると思ってもらって構わないわ。主に〆切のことなんだけど。

　というわけで，今週は持て余した時間を「メタルマックス4 月光のディーヴァ」にぶつけたわけだけれども。これがね，面白かったんですよ。
　簡単に説明すると，戦車を手に入れてそれに乗って戦うRPGなんだけど。難度が高いわけでもないし，自由度もあるし，戦闘もテンポが良くて楽しいしで，ストレスを感じさせないていねいな作りなのよね。毒がないというかなんというか。ちょっと言い方は悪いかもしれないけど，無難なRPGと言えるかも知れない。
　けど，ここまで遊びやすいと，続けちゃうわよねついつい。このゲイムは平均点が高いというか，RPGとして穴がない感じなのね。そういうRPGってだいたい「面白いけど続けてプレイするほどでもない」っていう風に，勝手にプレイヤーが見切ってプレイをやめたりするじゃない。でも，メタルマックス4は，ついついプレイし続けちゃえる。
　それはなぜかというと，目的の与え方がうまいからだと思うの。RPGって，クリアまでに数十時間かかる場合もザラにあるじゃない。RPGじゃないけど「モンスターハンター」シリーズの場合だと，最長50分のクエストを何回こなしたかっていうのが重要になるゲイムなわけ。誤解を恐れずに言えば，ストーリーなんてあってないようなもんなのね。だから，しばらく遊ばない期間があっても，すんなり続きを始められる。


　でも，ほぼすべてのRPGは，そういうわけにはいかない。どれだけ連続でプレイしても，結局は中断しなきゃいけない瞬間がやってくる。で，再開までの時間が長ければ長いほど，ストーリーの細かい部分を忘れちゃって，感情移入ができなくなる。遊んでいたRPGを挫折するのって，だいたいこのパターンだと思うの。
　その点，メタルマックス4は，あまり大きなストーリーを追う感じではないのよ。目の前で起きた物事を追いかけていって，その結果また違う物事が起きる。そうやってストーリーが動いていくの。だから，根本のストーリーを忘れていてもさほど影響はないのね。目的地は地図に記入されているし，そこまで長い時間が必要なサブクエストもないし，このユーザーフレンドリーさから，プレイヤーに継続的にプレイさせ続けるために，こういう構成を選んだんじゃないかという気がするわ。
　たとえどんなに優れたストーリーだとしても，プレイヤーが内容を覚えてなきゃ意味がないからね。そして，どれだけメッセージ性が高くても，プレイヤーに最後までプレイさせなきゃ意味がない。ことストーリーに関しては，だけどね。おいしいラーメンを作っても，食べてもらえなきゃ意味がない，っていうのと同じ。そういう意味では，メタルマックス4の穴のない作り方や目的を小出しにする感じから，プレイヤーの立場に寄り添っているのが伝わってきて，とても好感が持てるわね。
　なので，最近RPG気分になってるって人や，来るべき外界の浮かれた雰囲気から逃げ出すかのようにゲイムに没頭したい人には，このメタルマックス4をオススメしようと思うわ。RPG好きには安心して紹介できるゲイムよ。12月には毎年決まって心が澱んでいる人，通称澱人（よどんちゅ）はぜひいかがでしょうか。


　そんな感じで，今週は比較的平和な心でお届けいたしました。12月23日には，私の所属するプロレス団体DDTが後楽園ホールで試合を行い，30日には他団体に出場するため後楽園ホールに行き，大晦日は毎年恒例の後楽園ホールで年越し。そして年が明けて2014年1月3日にもDDTの新春興行で後楽園ホール。もうね，いっそ住みたい。後楽園ホールに。
　先の予定を想像するとゾッとするけども，だからこそこうやってお休みを満喫するのもまた，プロの仕事の一つなのかなあと思った今日この頃です。皆さんも休めるときには休んで，働けるときには働きましょうね。人生，波があるから。いいときはいいし，悪いときには悪い。忙しいときには忙しいし，時間があるときにはある。
　時間だけは，自分の都合のいいようにならんものですよ。それを含めて，今この瞬間を楽しむとしましょうや。ではまた来週な，澱人達よ。

今週のハマりゲイム
（文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム）
PlayStation 3：「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2014」
PlayStation Vita：「サカつく プロサッカークラブをつくろう！」
PSP：「サモンナイト5」
Wii U：「The Wonderful 101」
Wii：「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS：「メタルマックス4 月光のディーヴァ」
Xbox 360：「Minecraft：Xbox 360 Edition」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ 先週もお伝えしたとおり，ディーノ選手は今週末の12月15日（日），15：15から福岡県の博多スターレーンで開催される「天下三分の計〜DDT〜」に出場します。当日は，大石真翔選手と福岡を拠点とするアイドルグループLinQの伊藤麻希さんとのタッグで，高木三四郎選手＆大鷲 透選手と対戦予定。ディーノ選手に意気込みを聞いてみたところ，「私と伊藤ちゃん，アイドルとしての総合力で上回っているのがどちらか。それが白日の下にさらされる試合になることは間違いないわ。LinQファンの皆さんには，ちょっとつらいことになっちゃうかもしれなくて，今から心が痛んでいるの」と，いらぬ心配をしていました。