連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第181回「ダウンロードと遠距離恋愛」
諸行無常の響きあり
「平家物語」の冒頭でおなじみのフレーズよ。形あるものは常に移ろい,いつかは壊れる。永遠に続くものなど何も存在しない,ということね。いかにも仏教的な世界観に基づく言葉じゃないかしら。
永遠などどこにもない。今という時すら,個人にとっての意味しか持たず,物事の流れからすればほんの一瞬。モノっていうのは永遠ではなく,いつか必ず失われるのね。では,なぜそのモノによって価値が変わってくるのか。それは,そのモノを扱う人間にとって有益であるかどうか,これに他ならないわ。
人はいつからか,共通の価値を測るものとして「お金」を生み出した。このモノサシによって,人間の社会に秩序が生まれたわ。お金のために時間を使い,お金で自分にとって必要なモノを得る。こうやって,人間はある程度共通の価値観を持つことができているの。人間にとって有益であるモノは,基本的にそれを得るのに見合うだけのお金が必要となってくるわ。実際にはそうでもない部分もあるけど。
ともかく,人は金でモノを得る。これは永遠ではないにしろ,少なくとも人間が秩序を保っている間はきっと変わらないことよ。逆に考えると,人は金を作ってしまうほどモノを欲しがる生き物だ,とも言えるわね。形あるものはいつか壊れるのに。では,形ないものはどうなのか?
……ハイ,お堅い風の前フリ終わりましたよ! 要するにですね,最近,我々ゲイマーはゲイム業界からある一つの選択を強いられておりまして,それがまさに「形の無いモノにお金は払えるのか否か」ということ。もっと平たく言うと,ダウンロードコンテンツにお金を出せるのか? と。現時点ですでに払える,あるいは払ってるよって人はいいのよ。ただ,それが全員じゃないという現実があるわけで。
今までゲイムと言えば,お金を出してゲイムデータが入ったディスクないしカートリッジ的なモノを買って,それでゲイムをプレイしていたわ。でも今は,ダウンロードしてデータだけを買うという選択肢も現れた。
それ自体はいいのよ。モノに落とし込まなくてもいい分,コストの削減にもつながるし,モノじゃないから在庫も抱えなくて済む。売り手にとってのメリットは,まずこんなところにあるかしら。だから,それはそれでいいの。
ただ,問題は買う側にあるのよ。経済というものが需要と供給で成り立っているってことは,言い換えると売り手と買い手がいて初めて経済が成り立っているわけ。要するに,売り手の都合が良くても,買い手がそれを良しとしなければ経済活動は成立しないってこと。
この場合で言うと,売り手がモノではないゲイムにお金を出せるかどうかが,ポイントね。というのも,人間,形があると安心する,この心理って大きいのよ。目に見えているし,手で触れることができるから。
遠距離恋愛がうまくいきにくい理由と一緒。例えば,1か月に1回会うカップルがいるとしましょう。これが,近くに住んでいるか遠くに住んでいるかで,心境が変わったりするのよ。近いと安心するでしょ? 遠いと不安になるでしょ? 近いと「何かあったときにすぐに会える」って思える。そう簡単に何かなんてないのに。会う回数が同じでも,きっとそういう心理ってあると思うのよ。つまり私も遠距離恋愛をし,不安を消すという名目でとっとと結婚するという手段を選べば,先週の宣言どおり今年中に結婚できるような気がしなくもないんだけど,そう考えてみると本当に結婚したいのか? という問題に直面し,すぐにはうなずけない自分に気付いたり。
話を戻すわね。ゲイムも一緒で,そこに確実に存在するという,安心感にお金を払っている部分って,大きいんじゃないかと私は思ってるの。結果,メンタル的な部分に。
私が生業にしているプロレスで例えましょう。よく聞かれるんですよ。「なんであの関節技でギブアップしてしまうのか? ロープに逃げるまで我慢すればいいじゃないか」と。プロレスには,ロープから外に手首や足首が出れば,互いに相手から離れなければならないという不可解なルールがあるの。通常はロープエスケープと呼ばれるんだけど,要するにはロープに逃げればフォールや関節技・締め技が無効になるという認識でいいかと。だから,見ている側からすると,ロープを掴むまで我慢すればいいじゃないか,ということになるわけですね。
でもこれは,皆さん勘違いをしています。多くの場合,我々は関節技が痛くてギブアップするんじゃないんです。関節技は痛いんだけれども,我慢できます。もちろん,我慢ならないものもあります。でも,たいていは我慢できます。ただ,ロープが遠い場合,長く我慢しなきゃいけないという絶望感に,心が折れてしまうのです。突き詰めると,メンタル面が弱いからギブアップをしてしまうわけですね。
だから,身体を鍛えているイメージが強いでしょうが,プロレスラーにとって本当に大切なのは心の強さなのです。スクワットは身体を鍛えるためではなく,心を鍛えるためにヤっていて,気付いたら副産物的に身体も鍛えられていただけなのですよ。言い換えれば,プロレスラーに身体が大きな人が多いのはスクワットによる偶然なのです。要は,精神論なのです。
有料コンテンツのダウンロードも,心が強ければヤっています。実際に,ゲイムをヤりたい! という意思が強い人以外は今のところあまり踏み切れてないでしょ? なので,ダウンロードゲイムが完全に主流になっていくのには,もう少し時間がかかるのかなーと思ったりもするわ。
そういう意味では,無料コンテンツってとても重要ね。プレイヤーに対し,「ダウンロードする習慣を身につけさせる」っていう訓練になるわけだから。ま,それに関しては携帯電話でそういう文化が培われてきたことも,無視できないとは思うけども。
で,ここからがゲイム的には本題ね。私が今回,なぜこのようなことを考えたかというと,「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012」の「J.LEAGUEパック」を,今さらながらだけどダウンロードしたからなのね。配信自体は3月1日にスタートしていたんだけど,先月末に今年のデータへアップデートされたってんでね。
これはいわゆる追加コンテンツで,ダウンロードすればウイイレ2012にJリーグのモードが追加されたり,対戦でJリーグのクラブが使えたりするわけ。そして! 私が言及したいことは! まさにここからで!
このダウンロードコンテンツの存在が意味するのは,PlayStation時代から2010年まで,ほぼ毎年のように発売されてきた「Jリーグ ウイニングイレブン」の歴史が,ついに新たなフェーズに入っちゃったのかも? ってことなのよ。
もうね,先に謝っとくわ。ここまでダラダラと仏教だダウンロードだ文化だ経済活動だコストだ遠距離恋愛と一緒だ結婚しろだ相手がいないだ,そもそも結婚したくないだとどうでもいい前フリしてホントごめん。私が言いたいことは,ただひと言にまとめられた。
「ヤればできるじゃねーか!」
おおむねいい意味で,ね。毎年我々ウイイレファンは思ってたんですよ。「なんでワールドとJリーグをバラバラに出すの? わざわざ分けること無いじゃん!」って。
ともあれ,この問題がようやく,今年解ケツされたわけです。DLCによって。こういうアプローチならば,メンタルが弱いプロレスラーでもお金を出してもいい気になるわね。少なくとも,ウイイレヘビーユーザーの私の意見としては,ようやくこの形になったか,という気分なの。
とくに私は,マスターリーグオンラインではアジア人縛りでチームを作っているから,Jリーグの選手が追加で使えるのは非常に嬉しいわ。これまで以上に勝ちにくくはなるだろうけどね。
オンラインでは,もうほとんどのプレイヤーがメッシやクリロナが混在するドリームチームを作り終えてる状態。「スピードスター」持ち多数,チームタイプもスピード,3トップ。こういった勝つためのチームに,Jリーガーたちが立ち向かう。具体的には勝率33%くらいで立ち向かう。こんなに夢のあるプレイがあるだろうか。いやない(反語)。
そんな感じで,発売から半年経ったウイイレに,新たな刺激としてJ.LEAGUEパックを投入しましたよ。というご報告でございました。
なんか,これみたいに「追加の課金コンテンツを購入することで,ゲームの進行が有利になるわけでなく,楽しみ方の幅が広がる」というダウンロードコンテンツは,個人的には歓ゲイね。このダウンロードコンテンツが,ビジネス的にKONAMIにとって吉と出るのかどうか。シリーズ初の試みに注目してイきたいと思っておる次第です。
はい,今回はDLCに対して思うところとウイイレのJ.LEAGUEパックについて述べさせていただきました。
どうでもいいけど,前回の連載で「今年中に結婚します!」って宣言したのに,ビビるくらい反響が無かったことに関して,誰にどう苦情を言えばいいか分からないのが目下の悩み。どうせ結婚しないだろ! もっと言うとできないだろ! ってみんな思ってんだろ! もしくはどうでもいいやって思ってんだろ! そういう他人に対して興味がない世の中の風潮はどうかと思うなあ。確かに逆の立場だったら,どうでもいいことこの上ないんだけどさあ,なんつーか,もっとさあ,熱く生きようよ! みんな! 困ってる人に手を差し伸べようよ! 私のコンテンツもダウンロードしてみようよ! チクショウ,そんな貴様らに目にモノ見せてくれるわ! 覚えてろ! また来週な!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012」
PlayStation Vita:「プロ野球スピリッツ2012」
PSP:「CONCEPTION 俺の子供を産んでくれ!」
Wii:「いただきストリートWii」
ニンテンドー3DS:「ファイアーエムブレム 覚醒」
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版」
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ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012
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