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id Softwareの野心作,「Rage」のシングルプレイキャンペーンを「QuakeCon 2011」会場でプレイ。開発キーマンへのインタビューも合わせて掲載
長く続いたRageの開発もいよいよ最終段階に入り,シングルプレイのキャンペーンは,ほぼ完成した状態にある。イベント初日ということで,「こちら」に掲載したジョン・カーマック(John Carmack)氏の基調講演以外,これといったものがなく,おかげでプレス用ブースが閉じられるまでの約2時間,延々とRageをプレイできた。今回,筆者が試してみたのはPC版だが,プレイの印象をお伝えしよう。
「QuakeCon 2011」公式サイト
「Rage」公式サイト
「QuakeCon 2011」そのほかの記事
→「RAGEはid Softwareの歴史で最高のゲーム」。id Softwareのファンイベント「QuakeCon 2011」で,ジョン・カーマック氏が2時間の基調講演
→QuakeCon 2011で,初めて一般公開された「The Elder Scrolls V: Skyrim」。トッド・ハワード氏が行ったデモに,会場は熱狂と興奮の渦
→ステルス系アクション「Dishonored」のプレス向けデモが「QuakeCon 2011」で行われ,そのゲーム内容が初めて明らかに
テンポの良さが印象的なゲーム序盤
オープニングムービーは,いびつな形の小惑星「99942 Apophis」が月に向かって突進し,衝突したあと,大きなカケラが地球の方向に向かっていくというもの。衝突によって起きるであろう大異変から人類を守るため,選ばれた一部の人間が冬眠装置に入るのだが,一連のカットシーンが終わるとプレイヤーの視点になり,突然,冬眠装置が再起動する。開いた扉から外に出ると,サークル状に並べられたほかの冬眠装置の中の人々はことごとくミイラのようになっており,この「The Ark Project」が失敗に終わったことが分かる。
武器もないままフラフラと外に出ると,広大な景色とダムのような巨大な建造物が目に入る。狭くて暗い場所で戦うことが多い印象のid Softwareのゲームだが,「今回は屋外マップの美しさに力が入ってますよ」と言わんばかりの演出になっているのだ。
小道を降りていくと,いきなり出現したバンディット,つまり盗賊に殴られて昏倒してしまう。いきなりのピンチだが,そこへバギーに乗った緑色のサングラスの男が現れ,危ないところを救われる。男はDan Hagerと名乗り,Danと共に彼がリーダーを務めるグループの施設(セツルメントと呼ばれる)へ行くと,そこは,ガソリンスタンドだった建物を廃車やトタンで囲ったような場所であり,Danを含めて7人ほどがいる。ほとんどがHagerというラストネームなので,もしかしたら一族なのかも知れない。
集落に着くと,バンディットに追われて怪我をした仲間を治療するため,隣の集落に医療品を取りに行くようDanに依頼され,最初の武器であるピストルと,移動用の小型のバギーを与えられる。文字で書くといろいろあるが,ここまで,ゲームのテンポは非常に速く,あれよあれよという間にゲームの世界に投げ込まれてしまうという印象だ。
走る,屈む,バギーから降りるといった操作方法は,そのつどポップアップで表示され,目的地への道のりは,画面右上に表示されるミニマップに点線で表示されるので迷うことはないだろう。もちろん,ルートをそれて好きな場所の探索も可能だ。
細部までが作り込まれ,練り込まれた世界
医療品回収のミッションの目的地は,バギーを1分ほど走らせれば到着する,Outrigger一族のセツルメントだ。ここにいるJanus Outriggerという老女は,左手が機械化しており,赤と青のフレームを真ん中で継ぎ合わせたような妙なメガネをかけている。荒廃した未来世界のシャーマンといった風情だが,ここでまた行方不明のセツルメントの仲間を探しに行くよう求められ,新たなミッションが発生する。
この救出ミッションはセツルメントのすぐそばの,もとはホテルだったような建物が舞台になっており,The Ghostsというバンディットを相手に戦うことになる。病的に白い肌にタトゥーを施したThe Ghostsは,ピストルで撃っても横転して弾を避けたり,天井や壁の突起を使って移動し,予測のつかない方向から攻撃してきたりと,なかなかやっかいだ。
また今回のデモでは,動きは遅いがなかなか死なない,The Wastedというバンディット達とも対決できた。本作にはこうしたさまざまな特徴を持ったバンディットのクランが存在するので,そのつど,相手に合わせた戦い方を要求されるようだ。
プレイを進めるにつれて,マップに散らばるアイテムを集めたり,倒した敵のお金を奪って良い武器やパーツを購入したりしていくことになる。インベントリを開けると,集めたアイテムの一つ一つにアイコンが付いており,それがお金のマークなら売り払うことができ,手のひら型であれば利用可能,歯車型なら組み合わせてガジェットを作成できるパーツだというのが一目で分かる仕掛けになっている。ちょっとしたことだが,親切な設計だ。
最も印象的なのは,やはりグラフィックスの見事さだろう。
「アポカリプス後の世界でのサバイバル」を描いたタイトルとしては「Fallout 3」や「Borderlands」などがあるが,開発時期が新しいだけ本作の美しさは突出している。とりわけ,上に登場したDan HagerやJanus Outriggerのような主要キャラクターは,顔のシワや体の傷,衣服の生地からすね毛に至るまで描き込まれており,一度会話すればもう彼らを忘れることはないだろう。とくに,ブーメラン式の必殺兵器“ウィンドスティック”の使い方を指南してくれるLoomis Hagerは,緑色の目でじっと見られるだけで,思わず惚れてしまいそう。
クリエイティブ・ディレクター,
ティム・ウィリッツ氏インタビュー
ゲームのインプレッションはこのへんで。今回,短時間ながらid Softwareのクリエイティブディレクター,ティム・ウィリッツ(Tim Willits)氏にインタビューする機会を得られた。ウィリッツ氏はもともと,「DOOM」のMOD制作者としてコミュニティでは有名な人物で,「DOOM II」の追加パックの制作が行われていた1995年に,レベルデザイナーとして入社したという古参メンバーだ。プログラミングに熱中するジョン・カーマック氏に代わって,同社の顔としてメディアに登場する機会も多い。
4Gamer:
ウィリッツさんは,クリエイティブディレクターとして,実質的にid Softwareの開発部隊を統括するという立場だと聞きました。
ウィリッツ氏:
ええ。ストーリーやセリフを書いたりするだけでなく,プログラマー,デザイナー,そしてアーティストが円滑にコミュニケーションできるような調整もしますし,マーケティング担当や広報係も務めます。必要に応じて,そのつど仕事内容が変わる感じですね。今では大きく成長したid Softwareですが,上下関係の少ないフラットな組織であるという特徴は,昔から変わっていません。
4Gamer:
Willitsさんがid Softwareに入社したとき,何人の社員がいたのですか?
ウィリッツ氏:
13人です。
4Gamer:
うわ,少ない。それが今では,200名ほどに増えたんですね
ウィリッツ氏:
そうです。とはいえ「QUAKE LIVE」担当のチームやモバイルゲームのチーム,それから品質管理部門などもありますので,200人のうち,実質的にRageを開発していたのは53人です。ゲームが完成すると,品質管理などせずパブリッシャに丸投げしていた昔とはずいぶん変わりましたね(笑)。ともかく,それほど大きなチームではないと思います。
4Gamer:
今回を含めて,Rageはすでに何度かプレイさせてもらっていますが,暗がりの少ない,明るいグラフィックスからは過去のid Software作品とは違った印象を受けます。
ウィリッツ氏:
Rageは,頭のてっぺんからつま先までid Softwareの作品だと思いますよ。確かにレースの要素が含まれていたり,シングルプレイを重視したゲームにはなっていますが,撃ったときの手応えとか,ゲームのペース,完成度の高さ,技術力……。とにかくゲームを遊んでみてもらえば,ああid Softwareの作品だなと,絶対に分かってもらえます。
4Gamer:
id Softwareが制作するゲームとしては初めて,PlayStation 3にも対応していますね。
ウィリッツ氏:
はい。他社に移植してもらったことはありますが,我々がPlayStation 3向けにゲームを開発するのは初めてのことなんです。逆に言えば,PlayStation 3のユーザーは我々のゲームをプレイしたことがないということになりますね。
とくに日本のゲーム市場ではPlayStation 3が優位ですので,このRageでid Softwareのゲームがどんな感じなのかぜひ体験してもらいたいですね。これまで,PlayStation 3対応のタイトルを作らなかったのは,CPUの制約のために我々の思ったようにテクスチャを表示できないという問題があったためですが,それも解決して,今回はPC版やXbox 360版と同じレベルのグラフィックスになりました。また,アクションも非常にスムーズで,我々としても満足しています。なによりPlayStation 3版は1枚のディスクでプレイできますしね。ほら,Xbox 360は3枚組になる予定ですから(笑)。
4Gamer:
PC向けに専用サーバーが用意されない,ということに一部のファンが反発しているようですが。
ウィリッツ氏:
それは分かっています。Rageはもともとクロスプラットフォームを念頭においたプロジェクトであることを分かってほしいと思います。昔から,我々のようなPC中心のゲーム開発会社は海賊版の問題に悩まされてきました。Epic Gamesが「Gears of War」をリリースしたように,我々も市場の変化に敏感にならざるを得ないのです。今では,多くのゲーマーが「Call of Duty」のようなFPSをコンシューマ機で楽しんでいます。Rageも,そういった新しい環境に十分適応できるに違いありません。
4Gamer:
バギーを使ったレーシングの要素は,そうしたコンシューマ機市場への浸透を意識してのことでしょうか?
ウィリッツ氏:
いや。バギーの登場は実は企画当初からあったことで,目的は「id Tech 5」エンジンがいかに広大なマップを描けるかという,技術的なイノベーションを表現するためです。シングルプレイのキャンペーンでは,実際にレースをしなければならないのは2か所のみで,そのほかに用意されている20回ほどのレースはオプションです。移動手段やマルチプレイ以外では,必ずしも利用しなければならないものでもありません。
4Gamer:
マルチプレイがバギーレースやCo-opだけで,伝統的なデスマッチが用意されていません。id Softwareにしては珍しい選択だと思えますが,DLCで新しいマルチプレイを追加するというような予定はありますか。
ウィリッツ氏:
それは,プレイヤーがどのような反応をするか,よく見てから決めようと思っています。続編やDLCに関しては,今の段階ではさまざまな可能性がある,としかお話できません。
4Gamer:
では,最後にRageの魅力を教えてください。
ウィリッツ氏:
Rageは,とても野心的な作品です。アイテム収集だけでなく,部品を集めてロボットを作り出すとか,武器に異なるタイプの弾丸を装填できるとか,マップに散らばるカードを集めてのゲームが楽しめるとか,さまざまな要素をたっぷり詰め込んでいます。どのプラットフォームであれ,ゲーマーには必ず満足してもらえるはずですので,発売を楽しみにしていてください。
シングルプレイのキャンペーンをプレイした限り,Rageは確かに,これまでのid Softwareには見られないほど野心的な作品だ。しかし,撃ち合いの感覚など基本的な部分は間違いなく同社のものであり,ウィリッツ氏の言うように,実際にプレイすればそれが,DOOM,そしてQuakeから連綿と続く正統派FPSの血統であることが分かるだろう。発売を楽しみにしたい。
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