連載
大網亜矢乃の構成要素:第10回「遠回りしてたどり着いた」
先週末(9月1日)に公開されたばかりの「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」を早速見に行ったという大網さん。テレビシリーズの本放送は,1995年10月4日〜1996年3月27日と,もう10年以上も前のこと。しかしながら,大網さんが初めてこの作品に触れたのは,割と最近のことだとか。そこに,どんな遠回りがあったのかというと……?
こんなことが言える女性になりたい。強くて無駄がない,かっこいい女性に。
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の名前を知ったのは,高校生の時のこと。
当時,仲のいいグループの一人にNちゃんという,普通の子より,動きがオーバーで,元気で,写真が好きな子がいた。
そんなNちゃんが,どんな授業も窓から空をボーっと見上げている私に,ある本を勧めてくれた。
「ラブ&ポップ」という村上龍さんの小説だった。
この本は,16歳の私にとって衝撃的だった。
何をしても何を見ても,常に水に浮いてる感じがした。
Nちゃんに
「凄く良かった!」
と興奮気味に伝えると,
「映画もあるんだよ」
と教えられ,ルンルンで自転車をこいで潰れかけのビデオ屋に向かった。
映画では,主人公が水に浮いていた。
小説を読んだときの誰にも言えない感情を,その映画は表現してくれていた。それが凄く嬉しかった。映画「ラブ&ポップ」の監督は,庵野秀明さんだった。
その後,Nちゃんから
「絶対好きだから見て!」
とアニメを勧められた。ん……アニメ?
アニメを小学5年で見なくなった私は,そのころから「高校教師」や「未成年」(ともに野島伸司脚本作品)のような,ちょっと暗い感じの大人びたドラマがいいと思っていた。
なので正直なところNちゃんの言葉を聞いて,
「今更アニメなんか……」
と思ってしまった。
今でも,
「絶対好きだから見て!」
「やだよ〜オタクじゃん」
「オタクって言うな〜! マジ凄いから!」
「やだやだ〜」
そんな会話をしたことを,よく覚えている。
あれから5年,今じゃ私の携帯の待ち受け画面は綾波さんだ。
ネルフのストラップを9か月の子供が掴んで放さなくても,絶対に
「欲しいの〜? あげる〜」
なんて言わない。ガチャガチャは,何が出るか神のみぞ知る,いわば戦いなのだ。その戦いの末に得た宝を,簡単に手放すことなどできっこない。
私が出演していたテレビ東京のアニメ情報番組「あにてれ情報局」(現在は「Re:あにてれ」という題名で放送中)で,エヴァンゲリオンを特集したとき,ある人にこの作品を見たことがないと言ったところ,その人はとても怖い眼をして,
「それ,人生の半分損してますよ」
と言われた。
そのときも,
「マジ? そこまで言っちゃう? へ〜だったら試しに見てみるかっ」
と,少し上から目線な私がいた。
おめでとう |
初めてアニメで涙を流した。
アニメで人間をあそこまでリアルに描けることを,初めて知った。
まずNちゃんに,
「すいませんでした!」
と謝った。
「でしょ〜? だから言ったじゃん。5年もかかったか〜」
と,美大生になったNちゃんが笑いながら許してくれた。
それからの私は,先に書いたとおり,グッズ集めにまで走ってしまっている……。
きっと,この世の中にはヘンな先入観がじゃまをして,スルーしてしまっていることがたくさんある。
もしかしたら,脳に衝撃を与えてくれる爆弾が,ゴロゴロ落ちているかもしれないのに,それに気付けないとしたら,それはとってももったいないことなのだろう。
エヴァンゲリオンといえば,ご存じのとおりさまざまな形でゲーム化されてきた作品でもあります。そこで今回は素直に,PCで遊べる一番新しいエヴァゲーをご紹介しましょう。プレイステーション2版から半年以上遅れ,6月28日に発売された「シークレット オブ エヴァンゲリオン」がそれです。アニメ本編では語られなかった事件の裏側なども登場するので,エヴァファンはぜひプレイしてみましょう。まあ,多くのエヴァファンはプレイ済みのような気もしますが,新劇場版をきっかけに興味を持った人もいるでしょうし……。
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シークレット オブ エヴァンゲリオン
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