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これぞまさに“完全版”,満を持して登場するPC版「ラスト レムナント」のレビューを掲載
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印刷2009/04/06 13:13

レビュー

まさかここまで大幅な改善が施されていようとは思ってもみなかったPC版

ラスト レムナント

Text by ginger

»  Xbox 360版から半年の間をおかず発売される,PC版「ラスト レムナント」。「バトル倍速モード」の実装や,敵のボス“七人衆”がバトルユニットとして登場するなど,PC版オリジナル要素が満載された“完全版”ラスト レムナント。編集部きってのひなはな支持者ことgingerが,Xbox 360版との違いを良くなった点も悪くなった点も洗いざらいぶちまけてくれるだろう。


 スクウェア・エニックスから,4月9日にいよいよ発売されるPC版「ラスト レムナント」。同社としては初めて「Unreal Engine 3」を採用した作品で,「GDC 2009#07」の記事にもあるとおり,その開発にはさまざまな苦労があったようだ。2008年11月20日にはXbox 360版が先行して発売されており,そのXbox 360版に数多くの要素をプラスし,満を持しての登場となったのが,今回のPC版ということになる。

画像集#001のサムネイル/これぞまさに“完全版”,満を持して登場するPC版「ラスト レムナント」のレビューを掲載

 本作の主人公は,ユラム島に妹のイリーナと二人で暮らしていた青年ラッシュ。両親は共に,聖都エリュシオンのレムナント研究機関「アカデミー」に勤務する,世界的に高名なレムナント研究者で,ラッシュ達とは離れて暮らしている。レムナントとは,この世界の各地で発見される謎の遺物のことで,その契約者には大きな力が与えられる。そんなある日,ラッシュとイリーナの元に,「研究が長引いてすぐに戻れなくなったので,二人にエリュシオンに来てほしい」という両親からの便りが届く。

 もうすぐ家族一緒に暮らせると喜ぶイリーナだったが,その直後,突然現れた謎の集団に,抵抗むなしく彼女はさらわれてしまう。必死でイリーナのあとを追うラッシュは,偶然の成り行きでアスラムの若き領主ダヴィッドと出会い,ダヴィッドの助力を得てイリーナの行方を探すことに。そして次第に,ラッシュとダヴィッド,ダヴィッドの腹心であるアスラム四将軍達は,イリーナ誘拐の陰に見え隠れする,レムナントをめぐる巨大な陰謀に直面していくことになるのだった。

ラッシュに助力を申し出るアスラム領主ダヴィッド(左上),イリーナをさらった張本人ワグラム(右上),物語の鍵を握る重要人物・覇王(左下),覇王の腹心ロエアスとカスタネア(右下)など,多彩なキャラクターによって,レムナントをめぐる重厚なストーリーが織り成される
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ユニオン同士が激突する大規模集団戦が本作最大の見どころ


 本作の一番の魅力であり,同時に最も大きな特徴となっているのは,敵味方のユニオンが入り乱れて戦う集団戦闘であるといって間違いない。しかし,ほかに例を見ない,あまりにも独創的なシステムであるため,初心者にとっては少々分かりにくいものとなってしまっているのも事実。そこでまずは,本作の戦闘システムを紹介していこうと思う。

本作では戦闘終了後に体力が全快するので,毎回全力で戦える。ただし,一度戦闘に突入すると途中で撤退することはできない
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 ユニオンとは,1〜5体のユニットで構成された小隊のことで,本作では最大5ユニオン,18ユニットが一度に戦闘に参加できる。当然,敵もユニオンを組んで戦いを仕掛けてくるため,戦闘中は両軍合わせて数十体のユニットが攻防を繰り広げる。こうしたスケールの大きな戦闘は,本作ならではのものだ。

 もちろん,ゲームをはじめてすぐに最大人数のユニオンが組めるわけではなく,メインストーリーを進めるにつれ徐々に最大ユニオン/ユニット数が増えていく。序盤のうちは,ゲストユニオンとしてあらかじめ決められたユニオン/ユニットが戦闘をサポートしてくれるのみだが,序盤のストーリーを終えて,自分で自由にユニオンを編成できるようになってから,俄然ゲームは面白くなってくる。

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ユニオンの編成時には,まず「陣」を選択する。攻撃力アップや防御力アップなど,陣ごとにさまざまな効果が得られるので,状況に応じて使い分けよう
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ユニオンの中心となれるリーダーユニットは,各街のギルドで仲間にできる。PC版でリーダーユニット数の制限がなくなったのが嬉しいところ

 一つのユニオンに複数のユニットが参加していると書くと,それ自体が一般的なRPGにおけるパーティに相当すると思われるかもしれない。筆者も最初はそう思っていたが,プレイを進めていくうちに,実はそうではないことに気づいた。戦闘中にプレイヤーが操作するのは,ユニットではなく“ユニオンそれ自体”であることから,本作ではユニオンがいわば一つのキャラクターに相当し,複数のユニオンで構成された戦闘集団全体が,一般的なRPGでいうところのパーティに当たると考えるべきなのだ。

 したがって戦闘中の指示も,個々のユニットに対してではなく,ユニオン単位で行うことになる。その指示も,「ファイティングアーツで攻めろ」「状態異常を狙え」「急いでHP回復だ!」といった具合に,コマンドとその実行内容(=個々のユニットが何を行うか)が一対一で対応していないものが多い。

戦闘中は,画面上部に表示されるモラルゲージにも注意。モラルが高いほど味方のパラメータがアップするが,モラルが低いと敵から大ダメージを受けることに
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 たとえば,「ファイティングアーツで攻めろ」という指示を出した場合,ユニオンに所属するすべてのユニットがファイティングアーツを使うわけではない。また,ファイティングアーツを使う場合でも,どの技を選択するかは各ユニットの判断に任されている。しかも,戦闘中に選べるコマンドは,毎ターンの戦況に応じて刻一刻と変化し,その数は何と100通り以上にもなる。

 PC版では,各ユニットが戦闘中に使用する技(アーツ)を個別に選択できるようになったが,それでも各ユニットの動きを完全にコントロールできるわけではない。また,ユニオンのHPは個々のユニットのHPを合計したもので表され,敵の攻撃を受けてユニオンHPが無くなると,個々のユニットが生存していても戦闘不能になってしまう。

 だが,こうしたある種の“曖昧さ”や“ままならなさ”をあえて残すことで,現実でも必ずしも型どおりには進まないであろう集団戦闘が,本作ならではのゲームシステムとして,うまく組み込まれているのだ。

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一つのユニオンに複数のユニオンで攻撃を仕掛けると,サイドアタックやリアアタックなどが発生。攻撃側にアドバンテージが与えられる
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本作にはレベルの概念がなく,戦闘中にとった行動によって,新たなアーツの習得やパラメータのアップが行われる
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ユニークリーダーをパーティに加えていると,それぞれのキャラクターにちなんだ街で会話イベントが発生。すべての会話をこなすと能力がさらにアップする
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アスラムの中央広場で借りられる無料のアスラム兵。Xbox 360版ではかなりお世話になったが,リーダーユニット数の制限がなくなったPC版では出番が少ない


戦闘システム以外は意外とシンプルかつ,やり込み要素十分


 では続いて,戦闘システム以外の主なゲームシステムを見ていこう。まず,戦闘システムと関連が深い装備品について。

お金と必要なマテリアルを持っていれば,カスタマイズ屋で装備品の強化を行える。カスタマイズ屋では強化のほかに,新たな装備品を生産することも可能
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 本作でプレイヤーが自由に装備を変更できるのは,主人公であるラッシュのみ。ラッシュの装備は,各街のショップで購入したり,カスタマイズ屋で生産/強化したりできるほか,ダンジョンやフィールドにあるトレジャー(宝箱のようなもの)からも入手できる。ここまではごく普通だが,仲間の装備は,戦闘終了時に各ユニットが入手したお金やマテリアル(素材)を使って,仲間自身が勝手にアップグレードしていくというのが特徴的だ。

 戦闘に参加できる最大人数が18人,仲間になる可能性があるユニットは,ユニークリーダーだけで40人以上(一般リーダーや一般ユニットを入れると,軽く200人を越える)にもなる本作で,一人一人の装備に頭を悩ませていては前に進めなくなってしまう。仲間が勝手に自分の装備を強化していくこの方式は,素直に大変ありがたい。仲間はときどき,自分の装備のアップグレードに必要なマテリアルを欲しがることがあるので,そのときはケチらずに譲ってあげよう。

仲間はそれぞれ,戦闘終了時に入手したお金やマテリアルを使って,自分で装備品をアップグレードしていく。仲間が素材を欲しがっていたら,取りに行ってあげよう
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 また,世界各地への移動は,ワールドマップから移動先を選択する方式になっており,一度ポイントを発見してしまえば移動に時間がかからないのも特徴の一つ。移動ポイントは基本的に,ストーリーを進めることで増えていくのだが,ダンジョンやフィールドの特定の出口(エリア切り替えポイント)から出ることで,ストーリーとは関係のない新たな街やダンジョンなどを発見できる場合がある。さらに,特定のクエストを受けることで見つけられるものもあるので,世界をすみずみまで見て回ろうと思ったら寄り道は欠かせない。

世界各地で見られる雄大な景色も,本作の大きな見どころの一つ。ときにはメインストーリーから離れ,のんびり世界を見てまわるのもいいだろう
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 一方,ストーリー面に目を向けると,本作のメインストーリーは完全に一本道で,マルチエンディングなどは用意されていない。しかし上述のように,プレイヤー自身による冒険や発見の余地が十分に残されており,やり込み要素も豊富に用意されているため,プレイ中に窮屈に感じることはないだろう。そのやり込み要素の代表的なものとしては,各街のパブなどで受けられるクエストがある。

 クエストには本作の世界観を補完する内容のものが多く,クリアすることでアイテムやお金といった報酬が得られるほか,新たに仲間にできるキャラクターが増えたりする。また,ギルドからの依頼である「ギルドアドベンチャー」も,ゲームの進行にしたがって次々と追加されていくので,メインストーリーばかりを追わずに,これらをこなしながらじっくりとプレイするほうが本作をより深く楽しめるはずだ。

各街のパブなどで,依頼人からさまざまなクエストを受けられる。吹き出しに赤い縁取りがあるキャラクターを見かけたら,忘れずに話しかけよう。ギルドアドベンチャーは知らないうちに達成していることがあるので,こちらも小まめにご確認を
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 ユニオンを中心とした戦闘システムが複雑なぶん,そのほかのゲームシステムはかなりとっつきやすくなっており,なおかつ,その気になればとことんやり込めるのが本作の特徴といえるだろう。

雄大なのはフィールドの風景だけではない。この世界におけるほとんどの街は巨大なレムナントを中心に作られており,街中の風景にも思わず目を奪われてしまう
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本来あるべき姿を取り戻した,これぞ“完全版”の出来ばえ


 これまでにお伝えしてきたとおり,Xbox 360版からの変更点は主なものだけで,

1. バトル倍速モードの搭載
2. リーダーユニット数の解放
3. 武器/防具のプレビュー機能の搭載
4. 英語ボイスへの切り替えが可能に
5. 「七人衆」がバトルユニットとして参戦
6. キルネアに新たなアーツが追加
7. パーティメニューの大幅な改善
8. クリアデータを2周めに引き継ぎ可能に
9. 2周め以降,上級者向けモード「乱殺マニアクス」が選択可能に

と非常に多岐にわたっている。中でも1と2は,これだけでもXbox 360版での不満点の大部分を取り除くもので,同時にXbox 360版で発生していた戦闘中のラグも解消されているため,PC版では本作ならではの大規模戦闘を余すところなく満喫できる。

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PC版では,武器/防具のプレビュー表示が可能になった。普段使用していない武器や盾のデザインもじっくりと鑑賞できる
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戦闘中に使用するアーツ/使用しないアーツを個別に指定できるようになったのは大きな変更点。また,味方ユニットの装備スタイルも変更可能になっている

 また,5,8,9などはPC版からのプレイヤーはもちろん,Xbox 360版をプレイした人にとっても魅力的な新要素だ。加入条件は秘密だが,七人衆はかなり強力なキャラクターなので,ぜひユニオンに加えてアゴでこき使ってやってほしい。ストーリー終盤の戦闘で,こやつらにどれほど苦労させられたことか……。

 さらに細かく見ていくと,PC版における変更点は上述のものにとどまらない。筆者はXbox 360版を一通りクリアしたうえで,今回のレビューのためにあらためてPC版をプレイしているのだが,どうやらPC版では,一部の強力すぎる敵の攻撃の緩和などを含む,ゲーム全体のバランス調整が行われているようだ。はじめてXbox 360版をプレイしたときは,あれが一つの完成形だと思っていたのだが,今こうしてあらためてPC版と見比べると,これこそが本作の本来あるべき姿だったと個人的に思えてくる。

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クリティカルトリガーのマニュアル/オートの切り替えも可能()。オートにしてしまうとちょっと味気ないが,便利な機能だ
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七人衆は敵として戦ったときも強力だったが,味方に加わってからもその戦闘力の高さを遺憾なく発揮してくれる。その彼らをこき使えるのは,PC版ならではの特権だ

 ただ一点だけ,あえて本作に対して残念に思う点を挙げさせてもらうとすれば,本作がGames for Windows-LIVEに非対応で,Xbox 360版では実装されていた「実績」がないという点だ。「Microsoft Xbox 360 Controller for Windows」には完全に対応しており,このコントローラを使用することでXbox 360版とまったく同様の操作性が得られるだけに,PC版でXbox 360版と同等の実績が稼げるのであれば,非の打ちどころがなかったのだが……。まあ,これはさすがに贅沢すぎる不満というものだろう。

 全体を通じて,本作の完成度はただの移植作品というレベルを超えて,まさに“完全版”という表現にふさわしい域に達している。正直なところ,本作のPC版がついに発売されると聞いたときには,まさかここまで大幅な改善が施されていようとは思ってもみなかった。Xbox 360版からは約5か月遅れての発売ということになるが,待っただけの甲斐は十二分にある。骨太のRPGを探しているPCゲーマーはもちろん,すでにXbox 360版を遊んだことがある人にも,再度のプレイをお勧めしたい。

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初出時にPC版での新機能となっておりましたが,Xbox 360版でも同機能が存在していたため,該当記述を修正いたしました(2009年4月30日)
  • 関連タイトル:

    ラスト レムナント

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