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印刷2009/01/29 11:45

連載

Fallout 3 連載 荒野に咲いた一輪の花 / 第6回:子供達

荒野に咲いた一輪の花
第6回:子供達

 

メガトンのそばをうろつく

 

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 ここは,肌に透明感のある美少女が生きていくにはあまりにも,あまりにも過酷な世界。裸同然で放り出され,頼れる人もなく,食べ物や寝る場所すらない。何かをしようとすれば人を撃たずにはおられず,撃った相手の身体からは肉が剥がれ血が噴き出す。仲良くなった犬は戦闘で殺されてしまった。

 これだけ人を殺しているんだから,あたしだって遠からず死ぬだろう。これまでに自分がしてきたのと同じように,あたしはきっととても汚くつまらない殺され方をするんじゃなかろうか……。

 

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 Fusion Pulse Chargeをにぎりしめて,あたしはメガトンの町のまわりをうろついている。Fusion Pulse Chargeを使うのに特別なスキルは必要ない。仕掛けるだけ。そうすれば吹き飛ぶ。あれだけ大きな爆弾なんだから爆発させればこんなちっぽけな町はキレイに吹き飛ぶに違いない。上空にはさぞ大きなキノコ雲が浮かぶことだろう。

 仕掛けるだけでいいんだ,たぶん仕掛ければ一発だ。それで終わり。こんなゴミほどの価値もない世界から汚いものを少しでも取り除けるのであれば,それはやるべきではなかろうか,的な。

 町がなくなる様子を想像しつつ,あたしは町の近辺をぐるぐる回っていた。ぐるぐるぐるぐる回っていると……,廃墟が並んでいる高台の麓にさしかかったところで,銃声が聞こえてきた。こちらに向かって撃っているのではなく,数人のゴロツキが何かを追いかけている。追いかけられているのは,……子供だ。
 気がつけば,ゴロツキの一部はあたしのほうも攻撃している。身体は勝手に応戦して,すべての敵をスムーズに倒し終えた。追いかけられていた子供はこちらにやってきて,あたしに話しかけてきた。

 

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 本人の話によれば,彼の名前はBryan Wilks。高台にある廃屋の一つに父親と一緒に滞在中だったのだが,突然,あたりを根城にしているファイヤーアントによる襲撃を受け,自分は逃げてきたが,父親がいまどうなっているかは分からない。その父を探してはもらえないか――というのが,彼の説明だった。

 あんたもあたしと一緒か。父親の行方が分からないんだ。しかも,あたしより小さな子供だ。こんな数歩ごとに死の気配にぶち当たるような世界で,身よりのないこんな子供がどうやって生きていけるというのだろう? ああ,もうまただ。ここにもこんなに絶望的な状況がある。

 うん,いいよ。一人ぼっちの辛さは分かるから,探してあげる。でも……口に出しはしないけれど,お父さんが生きているってことはないと思う。この世界にはそんな幸運は転がっていない。これまでの経験から,あたしにはよく分かってる。

 

 

父親がいない二人

 

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 Bryanから聞いた情報を頼りに,その父親と住んでいたという家を探すことにする。家の周囲には,……なるほどファイヤーアント達がうろついている。
 数体を遠距離からハンティングライフルで撃ち倒して道を作り,家の前までたどり着いたので入ってみる。まず目に飛び込んできたのはかなり大きめなファイヤーアントの死体だった。それも1体ではなく数体の死体が,屋内の床のかなりの割合を覆っている。部屋の中央には人の死体。これがBryanの父親に間違いない。ほら,やっぱりね。アリに襲われて,戦って,死んだんだ。

 

 あたしはいつもの習慣で死体のポケットをあさってから,家の外で待っているBryanのところに戻った。そして事実を彼に告げる。彼も覚悟はしていたようで,あたしの言葉を取り乱すことなく聞いた。

 「何となくそうじゃないかと思ってました。もう泣き過ぎてしまって,涙も出てこないみたいです」

 ここから去ることを促すが,Bryanはここに残るという。そんな馬鹿な。ここにいたってアリかゴロツキに殺されるだけだ。そしたら,このチビスケはこんなことを言った。

 

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 「ぼくは逃げるようなことはできません。前に……父さんと約束したんです」

 ――なんだって,そんなことを言うかなあ。そんなこと言わないで,いいじゃんよ,べつにさぁ……イヤなの?

 「それに……,もうほかの家族にこんなことが起こらないようにしないと」

 こんなやせこけたチビスケに,このあたしの受けた心の傷が分かるわけがない。あたしがどれだけがんばって,あたしがどんな思いをして……。
 ……でもそんなこと言っても仕方がない。相手は子供なんだし。そんなわけでアリの巣の除去は,あたしが,引き受けることにした。

 

 

アリとの戦い

 

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 アリがわき出てくる巣穴の場所を特定する手がかりはすぐに見つかった。近くにファイヤーアントの研究をしていた科学者が建てた小屋があるというのでいってみたら,置いてあるコンピュータの中に情報が入っていた。

 それによると女王アリがいるのは地下鉄跡の深いところ。研究のためにその科学者もそちらに行っているらしい。地下への入り口は近くにあるようなので向かってみる。

 地下鉄跡へと降りていくと,内部はファイヤーアントの巣になっていた。
 戦って分かったが,このファイヤーアントは非常に危険な相手だ。名前のとおりに火を噴いて攻撃してくることは,すでに野外で戦ったときに分かっていたが,実際に浴びてみると非常に痛い。相手の射程内に入って炎で攻撃されると,すぐにやられそうになる。
 だからこいつらを相手にするときには,遠距離から銃で攻撃するのが望ましい。しかし,屋外なら簡単に距離をとれるが,この地下鉄跡のような狭い場所ではそううまくはいかない。大きな個体は防御力も高く,一撃で殺せることはまれなので,戦闘のたびに接近を許して火を吐かれ,多くの体力を持って行かれてしまう。

 

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 今はプレイにもやや慣れて,弾丸もそれなりの量を持っているので,とりあえず遠距離対応が可能な場合は気がねなく銃を使えるが,プレイの序盤にここに来ていたらさらなる苦戦を強いられたはずだ。序盤で貴重な弾薬を減らしたくないので,メレー武器も積極的に使っていきたいところだが,このファイヤーアントの場合は近づかれるとまずいわけで,弾を使うしかない。だがそうなると,いつ弾切れに陥るか分からないという状態で戦うことになり,これはかなりハードだ。
 さらに言えば,人間以外の敵の場合,倒しても武器弾薬を落とさないので,これまた痛い。弾は補給されずに減る一方,武器も落とさないのでリペアも行えない(本作では武器の修理は同一タイプの武器を組み合わせることで行う)という,かなりの逆境に立たされることになる。

 かようにやっかいなファイヤーアントだが,こいつらには弱点もある。それは「アンテナ(触覚)」だ。V.A.T.S.を使った精密射撃で触覚のみを破壊すると,アリは「狂乱状態」になって敵味方かまわず近くのものを攻撃し始める。

 

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 アリ同士が近くにいる場合はこれを使って同士討ちをさせると戦闘がとてもラクになる。ただこの手が使える状況は,少なくもないが,多くもない。単独でうろついているアリも結構いるので,やはりここは,準備が整わないうちに訪れてしまったプレイヤーにとってはひどい難所となりそうだ。

 

 

女王アリ

 

 アリを蹴散らしながら先に進む。炎で受けたダメージは倒したアリをガツガツ食べて回復させた。そうやってしばらく進み,奥の深いところで鉄の扉を見つけた。開けてみると簡単な研究施設になっていて,そこに科学者がいた。

 

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 科学者はいかにもギークで,自分と自分の研究のことだけをしゃべり続けるので,会話もなんだかかみ合わない。とにかくアリの件を解決するにはどうすればいいか教えろと迫ったが,実験だから女王アリは殺すなとか,護衛のアリだけ殺せとかいってくる。はっきりいってコイツはダメだ。無視して女王アリを駆除することにした。

 巣穴の奥に入り込む。護衛アリはなかなかの強さだったが,こっちとしては,いることはもう分かっているんだし,距離を取りつつミスしないように対処することですべて撃破した。そして女王アリだが,これが想像していたよりもデカい。

 

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 チクチクやっていたのではラチがあかない別格の強さ。だから,こういうときのために使わずにとっておいた小型の核爆弾とミニガンを使用した。

 

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 始末したあと,一応あの科学者にそのことを伝えると,思ったとおりに腹を立て始めた。だがこれについては聞く耳は持たない。試しにブライアンの話も振ってみるが,彼のことを気に掛ける様子はまったくない。実験のほうが大事なんだそうだ。
 ああ,もうこいつは放っておこう。それに……そうだ,これはこの腐った世界では正常な反応だ。他人を助ける余裕はない。全員が自分のことで手一杯。

 来た道を逆にたどり,地下鉄跡から外に出ると,あたりはもう朝になっていた。むかつくガキのBryanは約束どおり,家のそばで待っていた。屋外に残っていたアリ達は気が狂ったようになってお互いを攻撃しあい,最後にはいなくなってしまったとのこと。
 あっそ。まあよかったんじゃないの? あたしには関係ないことだけど。子供は子供らしく喜んだら? バンザーイ,チンチンプラーンとか言ってさ。

 

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 「あなたに何か差し上げられるものがあるといいのですが……,ごめんなさい,本当に何も持っていないんです」

 な,なんだよこいつは! いいこちゃんか? え?

 「本当にお世話になりました。ここからは僕一人でがんばってみます。では,お元気で」

 一人でどうすんだっつーの? 親はもう死んでて,何も持ってなくて。こんなところに一人ぼっちで置いていかれたら,あっという間になんかがやってきて,ちっちゃな死体の出来上がりだ。ほんっとに……ちくしょう! どっか行く当てとかないのかよ。

 

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 「前に父が,リベットシティという町にVeraという名前のいとこがいると言っていました。でもその町がどこにあるのか僕は知りません」

 親戚いるんなら,とっとと言えっつーの! ああいいよ。あたしがその女を探してやるよ。リベットシティなら前に人から聞いて場所は知ってるんだ。見つけたら迎えに来るから,そこの家の中に隠れてろ。

 だけど……この世界では誰にも他人を助ける余裕なんかない。全員が自分のことで手一杯だ。あんたみたいな足手まといを引き取ってくれるような人がいるとは思えない。いるはずがない。――あたしが帰ってこなかったら,そういうことだと思ってあきらめな。

 

 

リベットシティへ

 

 そうしてあたしはリベットシティを目指した。パパの行方を探しているときに,そこに手がかりがあると聞いて,場所は知っていたのだ。位置が分かれば,あとは進むだけだ。
 ミュータントがひしめく壊れた町と地下通路を通り抜ける。あたしはイライラした気持ちをぶつけるように,敵の腹や胸や頭に弾薬を送り込んだ。だってそうでしょ? そんなに甘いわけがない。簡単に人が死ぬウェイストランドで,自分以外はみんな敵の世界で,子供を引き取って育てるなんてそんな人間はいない。少なくともあたしはそんなのには出会わなかった。一人も出会わなかった。
 だから彼女が気持ちの良い返事でそれを引き受け,それを聞いたあたしが少し取り乱し,気持ちが落ち着いたあとBryanを迎えに行く道をたどっていたとき,あたしはこれまでとは違うことを考え始めていた。

 

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 左のCtrlキーを押しっぱなしにすることでプレイヤーキャラクターはしゃがむ。
 Fallout 3では,キャラクターがしゃがむとスニーク状態になる。「スニーク」は,Sneakのスキルを伸ばしたステルス系のキャラクターでないと使えないというものではなく,たとえSneakの値が低くても,しゃがめばスニーク状態にはなれるのだ。ただスキルが低いと見つかりやすくなる。
 実際にやってみると分かるが,スキル値の低いキャラクターが行ったスニークでも,敵の死角からこっそり近づければ,意外とすぐそばまでバレずに接近できたりする。そして,バレていないスニーク状態から放って命中した弾丸や攻撃は,たとえスキル値が低くてもすべてクリティカルになる。
 つまり,スニーク型のキャラクターではないからといって初めからあきらめて突っ込んでいくよりは,とりあえず敵を見つけたときにはしゃがんでおくと,ひょっとしたらうまくいってクリティカルが発生するかもしれない分だけオトクということだ。お分かり?

 しゃがむことの利点はほかにもある。攻撃の命中率が若干アップし,また敵の正面にさらされる身体の面積が小さくなっただけ,物陰にも隠れやすくなる。Fallout 3のプレイヤーキャラクターは,特殊な育て方をしない限り,基本的にはみなレンジド型であるはずなので,命中率アップやカバー効果の上昇は,多くのプレイヤーにとって嬉しいはず。

 以上のように,いいことがたくさんあるため,「とりあえずしゃがんでおく」のはFallout 3では割とアリな作戦。少なくともまったく“しゃがみ”を使わないで進めるよりは,うまく戦えるようになる。ただ他方,しゃがみには移動速度が下がるという欠点もある。そのあたりを理解しつつ,適切なタイミングで使えるようになれば,心強い武器となるだろう。さあ,しゃがもう。

 

■■星原ミッシェル昭典(ライター)■■
 というわけで(前回の著者紹介参照),決意して液晶モニターを購入したライターの星原氏だったが,よく調べずにネットで買ったため,届いたモニターは光沢仕様。まあ,光沢には光沢のよさがあると自分自身を納得させているが,やはりテラテラは苦手で困っている。もっともイヤなのが,電源を切った瞬間に自分の顔がモニターに反射してしまうことで,ゲームの世界からあっという間に現実世界に引き戻されてしまうらしい。なんとなく分かります。
  • 関連タイトル:

    Fallout 3

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