NEXTGEAR-NOTE M720WXV1
メーカー&問い合わせ先:G-Tune(マウスコンピューター)
BTO標準構成価格:32万9910円(税込)
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2008年1月時点におけるノートPC向けGPUの最高峰
「GeForce 8800M GTX」。これを搭載する国内初の製品
「NEXTGEAR-NOTE M720WXV1」(以下,M720WXV1)が,マウスコンピューターのゲーマー向けPCブランド
「G-Tune」から登場した。BTOに対応する本製品の詳細なスペックは
別記事を参照してもらうとして,本稿では,ノートPC用GPUとして初めてハイエンド型番「8800」の与えられたGeForce 8800M GTX,そしてそれを搭載するM720WXV1が,果たしてどれだけの3Dパフォーマンスを持っているのか,実機の検証から明らかにしてみたい。
テンキーを用意した日本語キーボードは,テンキー部分の配列が少々特殊。一方のタッチパッドにこれといったクセはないが,標準で「G5 Laser Mouse」が付属するから,通常はそちらで操作することになりそうだ。ACアダプタは大きめだが,とてつもなく巨大というほどでもない
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GPU動作クロックはリファレンスどおりのM720WXV1
GeForce 8800 GT搭載のデスクトップPCと比較
GPU-Z実行結果
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GeForce 8800M GTXについては
2007年11月19日の記事が詳しいが,実際にM720WXV1上でTechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z 0.1.5」で確認してみると,コアクロックは500MHz,メモリクロックは1598MHz相当(実クロック799MHz),シェーダクロックは1250MHzと,リファレンスどおりのクロックであることが分かる。
ここで注目したいのは,“その時点”のGPUクロックを示す「GPU Clock」の値だ。GeForce 8800Mは省電力機能「PowerMizer 7.0」をサポートするが,M720WXV1ではアイドル時にコアクロックが383MHz,メモリクロックは602MHz相当(実クロック301MHz),シェーダクロックを767MHzにそれぞれ引き下げることで消費電力の低減を図っているようだ。
M720WXV1の底面カバーを外すと,二つの冷却機構が見て取れる。左側はCPU用で,より大きな右側がGeForce 8800M GTX MXM用だ。MXMは銅製のカバーに覆われ,そこから2本のヒートパイプが排気口へ伸びている。なお,2007年11月19日の記事でCLEVOが「M57RU」(M570RU)という型番のPCを設計したと紹介しているが,M720WXV1のベースはまさにそれだ
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なお,GPU自体はPCI Express 2.0 x16接続をサポートしているが,M720WXV1はチップセットにMobile Intel PM965 Expressを採用しているため,PCI Express 1.1 x16動作となる。このほかM720WXV1の主なスペックは
表1のとおり。
GV-NX88T512HP
Zalman製クーラー搭載のOCモデル
メーカー:GIGABYTE UNITED
問い合わせ先:リンクスインターナショナル(販売代理店) support@links.co.jp
実勢価格:3万5000円前後(2008年1月18日現在)
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今回M720WXV1の比較対象として用意したのが,
表2に示したデスクトップPCである。ただし,CPUは「Core 2 Duo E6850/3GHz」の倍率をBIOSから変更して2.33GHz,つまり「Core 2 Duo E6550」相当とし,さらにクロックアップ版カードである「GV-NX88T512HP」は,「RivaTuner」(Version 2.06)を用いて,コア600MHz,メモリ1.8GHz相当,シェーダクロック1.5GHzのリファレンスクロックへ引き下げている。つまり,「M720WXV1が,Core 2 Duo E6550+GeForce 8800 GTベースのデスクトップPCと比べて,どの程度のパフォーマンスを発揮できるか」を見てみようというわけだ。
P5K Premium/WiFi-AP
人気P35マザーシリーズの最上位製品
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:3万1000円前後(2008年1月18日現在)
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ベンチマーク方法は4Gamerの
ベンチマークレギュレーション5.1に準じるが,M720WXV1は32bit版Windows Vista Ultimateプリインストールということもあり,今回は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)以外は「Crysis」「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット),「Company of Heroes」のDirectX 10モードで検証を行う。とくにロスト プラネットでは「影の品質」「モーションブラーの品質」「フィルターの品質」「Furの品質」を「DX10」に設定し,Company of Heroesも「シェーダーの質」を「Direct3D 10」に変更しているのでご注意を。また,とくに断りがない限り,以下の文&グラフでは,搭載するGPU名で表記を行う。
総じて「GeForce 8800 GT」にあと一歩
多くのゲーマー向けノートPCと一線を画す
テスト結果を順に見ていこう。
グラフ1,2は3DMark06の結果だが,同ベンチマークテストのデフォルトとなる「標準設定」の1280×1024ドットでは,800弱のスコア差がある。
グラフ2のCPU Scoreで明らかなように,CPU性能の比較ならGeForce 8800M GTXを搭載するM720WXV1のほうが有利なので,もし仮にCPUスペックを完全に揃えたとすると,差はもう少し開くはずであることは憶えておく必要がありそうだ。また,高負荷になると,96基対112基というストリーミングプロセッサの数が,負荷の上昇に応じて少しずつ影響してくるのも見て取れる。
続いてFPSであるCrysisの結果をまとめたのが
グラフ3,4だが,さすがに描画負荷が高く,“GPU勝負”となるCrysisだと,CPU性能の違いはほとんど意味をなさない。もっとはっきりいえば,GeForce 8800M GTXはGeForce 8800 GTより一段落ちる印象だ。
ただ,DirectX 10モードで,さらにグラフィックスオプションを高めに指定しているにもかかわらず,標準設定の1024×768ドットで平均30fpsを超えているのは評価に値する。
グラフィックスオプション解説記事を参考に少し設定を落とせば,レギュレーション5.1で合格点とする40fpsを超えるはずで,ノートPCで美麗なグラフィックスのCrysisを快適にプレイするというのは,もはや夢物語ではない。
ロスト プラネットの結果を見てみると,より実際のゲームに近い「Snow」において,GeForce 8800M GTXのスコアはGeForce 8800 GTに迫っている(
グラフ5)。ロスト プラネットは,GPUだけでなく,CPUパワーも要求するゲームだが,M720WXV1が搭載するCore 2 Duo T9500は,GPUパフォーマンスを損なうことのない,十分な性能を持つといってよさそうだ。CPUベンチマーク色が濃い「Cave」で,M720WXV1のほうがスコアが高いのも,それを裏づけている(
グラフ6)。
また,GeForce 8800M GTXが「DirectX 10モードで快適にプレイできる」点も重要だ。アンチエイリアシングこそ適用されていないとはいえ,DirectX 10エフェクトを有効化したことで描画負荷が高くなっている標準設定。そんな負荷状態で,1024×768ドット設定時にSnowの“合格点”である40fpsを軽々とクリアしている点はポイントが高い。
最後にRTS,Company of Heroesの結果だ(
グラフ7)。全体的にはCrysisと同様の結果だが,しかし標準設定の1024×768ドットで60fpsを超えるなど,高いグラフィックス設定でプレイできる水準に達しているのも分かる。
低解像度ならほとんどの3Dゲームを快適にプレイ可能
絶対性能に価値を見いだせるのであればアリ
GeForce 8800M GTX MXM
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以上,今回は時間の都合もあってパフォーマンスのみにフォーカスしたが,GeForce 8800 GT搭載機に迫るスコアを叩き出すM720WXV1は,一般的なゲーマー向けミドルハイクラスのデスクトップPCに遜色(そんしょく)ない性能を備えている。高いグラフィックスオプション設定で最新世代の3Dゲームタイトルを実行しても,低解像度であれば難なく動作してしまうのだから,「(Windows Vistaで動作するものなら)現行3Dゲームはほぼすべてプレイ可能」と断じて問題なさそうだ。
本体重量は4.1kgで,バッテリー駆動時間は2時間。屋内で自室とリビングを行き来できるくらいのモビリティは確保されている
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もちろん,BTO標準構成で32万9910円(税込)という価格は,いくら1920×1200ドットの17インチ液晶ディスプレイを搭載するといっても,絶対的に高価であり,万人向けではない。また,決して音質に優れているとはいえない内蔵2chスピーカーや,やや窮屈に感じるキーボードなど,細かい部分には不満もある。
とはいえ,現時点で普通に買えるノートPCとして,M720WXV1が最高の3D性能を持つ製品であることは間違いない。デスクトップPCほどには場所を取らないのも魅力で,3Dゲームを満足にプレイできるノートPCを購入したいと考えている人にとっては,有力な選択肢となるだろう。