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極私的コンシューマゲームセレクション:第9回「ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜」
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印刷2007/07/24 21:03

連載

極私的コンシューマゲームセレクション:第9回「ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜」


» 本連載では,コンシューマゲーム機のタイトルを4Gamerのスタッフが思い思いに紹介していく。今回は,大路政志が,寝る間を惜しんで夜な夜なプレイしたという,「ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜」を紹介する。



■はじめに「Wizardry」ありき

エクス2のオープニングシーンの一コマ。この画面をいきなり見せられて,コンピュータRPGの古典にして名作「Wizardry」を連想できる,柔軟かつ豊かな妄想想像力を備えたスタッフは,4Gamer編集部の中では筆者とgingerくらいのものだろう
 現在「4Gamer」というオンラインゲーム/PCゲーム情報サイトで仕事をしていることからも推察できるように,筆者はゲームが大好きだ(読書のほうがもっと好きだが)。しかし,4Gamerで(不真面目な筆者としては精一杯)真面目に仕事をしていると,プライベートでゲームを楽しむ時間なんてほとんど取れないので,日々朝方までゲームをプレイしては,遅刻の理由をひねりだすために苦労している。
 おかげでボーナスはガッツリ減額されたものの,遊びに関するプロ意識の高い筆者にとっては,そんなペナルティも勲章だ。ゲームを楽しめなくなったゲーム業界人なんて,MPの尽きた魔法使いキャラクターにも劣る。4Gamerを「for Gamers」として機能させ続けるために,朝方までゲームで遊んで仮眠をとったあとに,「体調不良で(もしくは家庭の事情で)遅れます。申し訳ありません」という魔法の言葉をメールし続けるのである。その効果は気休め程度だけれども(いや,ネタですよネタ)。

 そんなことはさておき,最近筆者が夜な夜なプレイしているのは,プレイステーション2版「ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜」(Wizardry XTH Unlimited Students。以下,エクス2)だ。そのタイトルからも分かるように,これは「Wizardry」の流れを汲む,ダンジョン探索型RPGの2作め。マイケルソフト/Team Muramasa(!)が開発し,2006年3月23日に発売されたものだ(2007年6月7日に廉価版も発売されている)。

 Wizardryといえば,4Gamer読者になら説明する必要はないのではないかとも思われる,コンピュータRPGの古典にして名作だ。
 世界中のファンタジー作品が,J.R.R.トールキン著のファンタジー小説「指輪物語」から,直接的/間接的に大小さまざまな影響を受けていることは,「こちら」の記事を読むとなんとなく理解してもらえると思う。
 コンピュータRPGというジャンルにおいては,「Wizardry#1 Proving Grounds of the Mad Overlord」(以下,とくに明記のない場合,「Wizardry」は#1のことを指す)がそのルーツだと言える。ちなみに,指輪物語に大きな影響を受けたTRPG「Dungeons & Dragons」を,一人で遊べるコンピュータRPGにアレンジしたものが,Wizardryだ。
 個人的な問題としても,Wizardryの存在は極めて大きい。本格的なゲーム体験のルーツでもあるし,広義のファンタジーに興味を持ったきっかけでもあるし,より突き詰めていけば,この業界に入る/居座り続ける理由をくれたのも,Wizardryなのだから。

萌え風味の学園物とはいえ,その根底にはしっかりと「Wizardry」の血が流れている。マッピングは比較的ラクだが,序盤の戦闘の厳しさは,本家Wizardryと大差ない。人にもよるだろうが,よりゲーム性に結びついた設定項目やグラフィックスが用意されているため,キャラクターメイキングの面白さも十分だ。しかし,撮影のため適当に作成したキャラでボーナスポイント28が出るとは,つくづく不運だ


■Wizardryの基礎知識と,エクス2の立ち位置

図書室では,ゲームの世界設定やプレイデータが確認できるほか,クエストの受注もできる。クエスト名を見ているだけでも,あぁ,これは学園Wizardryなんだなぁ,と実感できる。この世界観を楽しめるかどうかで,プレイヤーの「ロールプレイ能力」が問われるわけだ
 Wizardryからダイレクトに影響を受けているエクス2を語るうえで,Wizardryの説明は欠かせない。まずは,そのあたりを軽く紹介しておこう。
 Wizardryは,1981年にSir-Techから発売された,Apple II用のRPGとして誕生したタイトルだ。プレイヤーは,人間/エルフ/ドワーフ/ノーム/ホビットの5種族と,善/中立/悪という三つの性格,戦士/魔法使い/僧侶/盗賊/ビショップ/侍/ロード/忍者という八つの職業を組み合わせてキャラクターを作り,魔術師ワードナが作り上げた10階層からなるダンジョンを攻略していく。
 キャラクターを作り,最大6人のパーティを組んだら,ワイヤーフレームで描画された擬似3Dダンジョンに潜り,そこに棲息するさまざまなモンスターを倒しつつ,行動範囲を広げていく。
 ゲームの雰囲気は「コマンド選択式/ターン制のハック&スラッシュ」そのもので,「拠点で冒険の準備をする」→「ダンジョンに潜りモンスターと戦闘する」→「戦闘を通じて得た経験値/財宝で,キャラクターを強化する」という流れの繰り返し。実にシンプルなゲームである。
 しかし,あまりにも簡素なグラフィックスやゲーム内メッセージは,プレイヤーの想像力を最大限に引き出す。低レベルキャラクターにも高レベルキャラクターにも訪れる“さまざまな形の死”が,ルーチンワークに陥りがちな戦闘シーンに緊迫感をもたらし,キャラクターに強い愛着を抱かせる。そして,モンスターの出現率/レアアイテムのドロップ率/呪文や特殊能力の成功率および抵抗率などの設定が,神がかったゲームバランスを生み出している。Wizardryの,想像力を刺激するゲームデザイン,過不足のないゲームシステム,恐ろしいまでの中毒性は,今なお色あせていない。

 Wizardryシリーズはこれまで,第8作まで発売されており,とくに人気の高い1,2,3,5などに関しては,さまざまなプラットフォームに移植されてきた。また日本においては,コンシューマゲーム機で人気の外伝タイトル(PC版の戦闘の監獄-五つの試練-も,外伝タイトルに含まれる)や派生タイトルなども,未だに作り続けられているあたり,その人気の高さがうかがえるところである。

 さて,今回紹介するエクス2は,上記のうち派生タイトルに属する作品だ(外伝よりもオリジナル要素が濃い)。基本システム/ルールはWizardryシリーズを踏襲しつつ,ストーリー性/キャラクター性/を高め,(もともとはパロディやオマージュに満ちているが,日本では硬派なイメージが強い)同シリーズに“萌え”を持ち込んだ“学園物”Wizardryの,第2作なのである。

本作にはさまざまなNPCが登場するが,その多くがクエストに関連している。ゲームの本筋とは無関係のクエストも少なくないが,とかく単調になりがちなWizardryタイプのゲーム展開の,いいアクセントになっている





■冒険者=式部京聖戦学府の学徒。
■ダンジョン=ロード。クラス=学科。


キャラクターメイキングで顔グラフィックスを作成できるのも,本作の特徴の一つ。色白な魔族(眼鏡を標準装備)だって,簡単に作れてしまう。本家Wizardryとは違った意味で,想像力が刺激されるという人も多いのではないだろうか
 萌えとか学園物とかいう単語を目にして,エナジードレインを受けたかのように脱力してしまったWizardryファンも多いことだろう。あるいは,「おおっとテレポーター!」「いしのなかにいる」のコンボをうっかり発動させたときのように,数秒間ポカーンとしてしまった人も少なくないだろう。PC-8801版「Wizardry #3 Legacy of Llylgamyn」で,レベル500くらいのキャラクターを育てればL'kbrethを倒せるのではないかと頑張ったことのある筆者も,学園物Wizardryにはびっくりした。萌えWizardryとは何事だ,けしからん,とも思った。

 しかし実際に遊んでみると,これが非常に面白い。Wizardryシリーズに興味を抱く若いゲーマーに「PC-8801版のWizardry#2超オススメ! 絶対遊ぶべし! もちろん実機で!」などとは,仕事柄,軽はずみに口にするわけにはいかない(ゲームとしての難度が高すぎるだけでなく,プレイするためのハードルが高すぎる)が,エクス2ならば,Wizardry初心者にも,声を大にしてオススメしてもいいのではないだろうか。

 基本的なシステム/ルールはWizardryシリーズに準じているため,ゲームとしてある程度の面白さが保証されている点は,シリーズのプレイ経験者なら理解してもらえるだろう。キャラクター育成やアイテム収集といった魅力も,もちろん盛り込まれている。では,本流のWizardryとエクス2の違いはどこにあるのだろうか。ここではそのあたりを紹介していこう。まずは,世界設定/背景ストーリーから。

 エクス2の舞台は,空と海が竜によって支配されている,和洋折衷な雰囲気のファンタジー世界。人々は危険な陸路/海路を避け,古代文明イカロスが遺した「ロード」を使って,世界を往来していた。しかしロードは,海を隔てた二つの大陸の住人,人と魔族の衝突を招く。
 人類軍と魔軍によるロードの支配権をめぐる戦争は数十年続いており,その歴史の中で,「イカロ戦役」や「メルキオ事件」,「準英雄同盟エクスの解体」など,さまざまな歴史的事件が起きていた。
 エクス2では,前作に当たる「ウィザードリィ エクス〜前線の学府〜」のメイントピックであった,「メルキオ事件」の数年後の世界が描かれている。プレイヤーは式部京聖戦学府に入学した学徒となって,魔軍との戦いに身を投じることになる。
 ストーリーや登場NPCなどは,前作から地続きとなっているが,ゲーム内の図書室(クエストの受注や各種データの確認ができる施設)で歴史を学ぶだけでも世界観は理解できるので,とくに前作をプレイしていなくても楽しめるはずだ。

 用意されている種族は,先述したWizardryの基本5種族に加えて,フェアリー/フェルパー/バハムーン(竜)/ディアボロス(悪魔)/セレスティア(天使)の,計10種類。
 性格は善/中立/悪の3種類だが,性格ごとに熱血/知的/傲慢/神秘といった,性格の詳細も設定できる。性格の詳細によって,能力値に基礎値ボーナスが得られるという要素が盛り込まれているほか,パーティメンバー間の相性にも影響する。相性が良いと,能力値が高まったり,パーティ一丸となって繰り出す合体技「陣形」(パーティスキル)が使いやすくなったりするので,なかなか奥が深い。
 クラスに相当する学科としては,Wizardryの基本8クラスに加えて,召喚士/狩人/錬金術士/超術士/修道士/神女/くノ一という7クラス(学科)が追加されている。それぞれの学科は特定レベルに達すると(あるいは最初から),「二刀流」「魔力回復」「斬り込み」「転生」といったスキルが習得できる点が面白い。
 ちなみに転生とは,高レベルキャラクターを転生させて,基本能力の高い低レベルキャラクターを作るためのシステム。キャラクターメイキング,キャラクター育成ともに,やりこみ度は極めて高いといえるだろう。

 なおキャラクターメイキングでは,キャラクターのフェイスパターンも設定できる。絵柄の好みは人それぞれだろうが,髪型/髪の色/顔/耳/メガネ/ペイントといった項目を任意に組み合わせられるので,比較的納得のいくパターンが作成できるのではないだろうか。
 一方,学徒確認画面には,キャラクターの種族/性別/装備が反映される「マネキン」も表示される。装備を変えるとグラフィックスも変わり,案外良くできてはいるのだが,マネキンの頭部および顔は,まさにマネキンそのもの。こちらに関しては,キャラクターに愛着を抱かせるためのアバター要素というよりは,純粋なペーパードールといった感じである。

(左)似顔絵のベースパターン。「こんなのWizardryじゃない!」という意見も当然理解できるのだが……,ほら,Wizardryはグラフィックスうんぬんでなく,ゲーム性で勝負ですから
(右)特定レベルに達すると,その学科固有(一部重複あり)のスキルが習得できる。高レベルになればなるほど学科の違いが体感できるが,スキルバランスは最適とはいえないかも
キャラクターのマネキン。キャラクター性を重視するなら,マネキンにも注力してほしかったが,あくまでマネキンと考えれば,我慢できなくもないはず


■Wizardryの基本を押さえつつ,
■新たなフィーチャーを大胆に投入

パーティは最大6人で構成され,先頭から3人までが前衛,それ以外は後衛という扱いになる。また武器にはレンジが設定されており,Mレンジ以上の武器を装備していれば,後衛でも敵に直接攻撃ができる
 教務室で学徒の入学手続き(キャラクター作成)を終え,簡単なチュートリアルクエストをクリアすると,隊(パーティ)一行は自由に行動できるようになる。ゲームの流れは,寄宿舎で隊を編成したのち,聖戦塔を通じてロードに進入し,クエスト条件を満たすための捜索をしたり,戦闘をこなしたりしつつ,ダンジョンを攻略していくというものだ。用語は本家Wizardryと違えども,楽しみ方の基本はほぼ同じと考えていい。

 しかし,より具体的なゲーム性に目を向けてみると,本家Wizardryには含まれていない,さまざまなフィーチャーが確認できる。
 エクス2の世界がロードでつながっていることは先ほど説明したが,ロードには自軍と敵軍(ディアブロ軍/イカロス軍)の“支配率”が存在し,戦況が刻一刻と変化するようになっている。支配率は,ロード内の探索や敵兵との戦闘,学徒の死亡やクエストのクリア状況などによって増減し,数値によって敵とのエンカウント率や,クエスト内容,アイテムの相場なども変化する。
 中継拠点に隊を駐留させると支配率が上がりやすくなるというのは,多くのキャラクターを育てたいプレイヤーにとっては,嬉しい目標になる。また支配率をうまくコントロールすれば,拠点間の交易で,コンスタントに(アイテムによっては大きく)お金を稼げる。本家Wizardryシリーズだと,基本的にゴールドは貯まる一方で使い道がなかったが,本作ではアイテムの識別や合成/分解に結構なお金がかかる(隊に司祭と錬金術士の両方がいる場合を除き)ため,お金を稼ぐという行為も,立派なゲーム性の一つとして機能しているのだ。

 なおロードは,入出門(“L”あるいは“R”)から内部に入り,中枢フロアを経由して反対側の入出門から出るような仕組みになっている。中枢フロアはマップデザインが固定されているのだが,それ以外のフロアはランダムマップ(特定のパターンのマップがランダムで出現するような形式)になっており,先に進むほど複雑な構造になってくる。
 ロード内には,回転床や隠し扉といったおなじみのトラップから,制御スイッチで開く「制御扉」,激突すると隊全員がダメージを受ける「漏電壁」,浮遊の魔法を使わないと通過できず,落ちると隊が溺れて全滅してしまう「深水域」など,面白いものも存在する。
 また,ロードには特有の時間概念「胎動周期」というシステムも盛り込まれており,一定間隔ごとに変化する火/水/雷/土/闇/光/無という7属性に応じて,敵の属性が変化する。同じロードに出現する敵でも,胎動周期によってはその強さが大きく異なるので,戦闘では,周期に応じた戦術を立てる必要がある。このあたりも,戦闘の作業感を軽減し,スリルを高めてくれる良いシステムである。

 Wizardryシリーズ最大の魅力ともいえる,キャラクター育成要素についても,前述した転生システムや,「練金」と呼ばれるアイテムの合成/強化/分解システムなど,大胆なフィーチャーが導入されている。とくに練金は,武器/防具/アイテム類を作るためのレシピを模索したり,その素材アイテムを収集する楽しみが得られて,実にやり込みがいのあるシステムだ。
 キャラクターの戦闘力強化が,極々低確率のレアアイテムドロップにかかっているというゲームデザインも,それはそれで楽しいものだ。しかし運だけでなく,努力や計画性といった,プレイヤーがある程度コントロールできる部分での魅力が味わえるのも,バトルマニアにはたまらないものがある。本家Wizardryシリーズには不要かもしれないが,少なくともエクス2では,うまく機能しているシステムといえるだろう。

(左)戦闘やクエストを通じて,テンションゲージというものが溜まっていく。それを消費すると,戦闘中にパーティスキル(陣形)が使用できる。パーティスキル必須と思われるイベント戦闘も発生するので,なかなか重要な要素
(中央/右)中央が戦況画面。右がマップ画面。ロードの支配率は,世界観とも馴染む面白いアイデア。複数パーティを育てることや,マップを埋めるという行為に,意味/価値を付与してくれる
(左)固定配置の敵を倒すと宝箱が出現。練金システムで合成ができるため,レア武器/防具ドロップだけでなく,レア素材ドロップのドキドキも楽しめる
(中央/右)練金は実験室で行える(錬金術士ならどこでも練金可能)。本家Wizardryで見たことのあるようなものから,エクス2ならではの装備(下着や制服類がポイントだろう)まで,多種多様なアイテムが合成できる


■「面白い」からこそ感じる「不満」もちらほら
■このシリーズの完成形を,ぜひともプレイしたい


ストーリー性とキャラクター性に軸足を置くのは面白いが,その部分でプレイヤーを満足させるのは,並大抵のことではないだろう
 筆者のような軟派なWizardryファンからすれば,Wizardryベースの外伝/派生タイトルであれば,たいてい楽しく遊べてしまうものだったりする。種族/職業/マップ/アイテム/モンスターといった要素が増量されているだけでも,「妄想を喚起する世界/ストーリーの見せ方」「シンプルにまとめられた各種システム」「キャラ育成/アイテム収集からくる中毒性の高さ」さえ備わっていれば,睡眠時間を削る価値は十分にあるといえる。
 今回,数ある外伝/派生タイトルの中からエクス2を取り上げたのは,同作が上記の条件を満たし,さまざまなアイデアを盛り込んだうえで,数十時間〜数百時間のプレイに耐えうる作品に仕上がっていると,プレイしていて実感したからである。

 とはいえ,エクス2には明らかな欠点もある。本作には,コンシューマのパッケージタイトルとしては,荒削りというか,突貫工事というか,やや“未完成”な印象があるのだ。その欠点は,クエスト/ストーリーの練り込み不足であったり,操作性の違和感であったり,一枚絵/マネキンなどの作り込み不足であったり,固定マップ/マップパターンの少なさであったり,モンスターの種類の少なさであったりする。そういった意味では,本作はあくまでWizardryファンにオススメしたいゲームであって,万人に遊んでもらいたいタイトルとはいえないのかもしれない。
 しかし,そういったアラが目についても,本作の魅力が減少するわけではなく,次回作での巻き返しに期待したくなる。Wizardryファンにとって,エクス2はそんなゲームになりうるのではないだろうか。いや,「萌え」とか「学園物」に抵抗がなければ,の話だけど。

 事実,前作に当たるエクスでは,かなり多くの問題点/欠点が散見されていた。しかしTeam Muramasaは,プレイヤーの意見や要望に真摯に耳を傾けたのか,大小さまざまな問題をほぼ修正し,さらなる新要素を盛り込んだ形でエクス2を仕上げている。「ユーザーの声」を(ユーザーが納得する形で)ゲームに反映させるというのは,オンラインゲームならばともかく,コンシューマゲームとしてはかなり珍しいことだと筆者は考える。Team MuramasaのWizardryに対する想いは,そのチーム名からも,公式サイトからも,エクス2そのものからもはっきりと感じ取れる。次回作は,よりボリュームアップ/クオリティアップしたエクスが楽しめるだろうと,個人的には強く信じている。

 風の噂によると,Team Muramasaは紆余曲折を経て,法人化する運びとなったそうだ。一時は「次回作は開発中止になるのでは?」という噂もファンの間で流れていたが,公式サイトを見る限りでは,エクス2の次回作「G-XTH(仮)」の開発も進んでいる模様。ゲームの詳細については公開されていないが,エクスシリーズ/Team Muramasaの一ファンとしては,期待したいところである。

 長々と書いてしまったが,要は,Wizardryシリーズの魅力はそのままに,ストーリー性/キャラクター性/さらなるやり込み要素を盛り込んだ,学園物Wizardry(萌え風味)が,ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜というわけだ。若干荒削りながら,Wizardryの本質的な魅力と,「Wizardryにこれを足したら面白いんじゃないの?」と思われる要素が,うまくミックスされたRPGとなっている。
 Wizardryシリーズの熱心なファンにとっては,やや易しすぎる難度かもしれないし,なによりグラフィックスに違和感を覚えるという人もいるだろうが……。とりあえず「騙されたと思って遊んでみる」だけの価値は間違いなくあると,個人的には思っている。いやいや,学園物とWizardryって,予想以上にいい組み合わせですよ,本当に。

ディアブロ軍四天魔の一人,「毒婦」の異名を持つパンドゥーラ。ちょっとやりすぎなんじゃないだろうかと心配になるようなキャラクター設定(というかテキストによる攻撃描写)が魅力だ。ゲームにさまざまなパロディやネタを盛り込むというスタイルまで,本家のWizardryから継承されている……のだろうか(その濃さや方向性は別として)
ゲームそのものは十分面白いのだが,ゲームの随所で,どうしても荒削りな印象を受けてしまう。その点に関しては,むしろ古き良き時代のWizardryファンよりも,最近のゲームファンのほうが厳しい意見を持っているかもしれない

■■大路政志(4Gamer編集部)■■
10年弱のフリーライター活動経験を持つ4Gamerスタッフ。4GamerではMMORPGなどのレビューを執筆することが多いが,プライベートでは,アクションゲームなどプレイヤースキルを問われるゲームを好んでプレイすることが多い。近所の高校生と「パワプロ」で遊んだり,小学生とポケモンの交換をしたりと,ゲームを楽しむ純粋な気持ちを今でも忘れない大きなお友達だ。

ウィザードリィ エクス2〜無限の学徒〜

対応機種:プレイステーション2
メーカー:マイケルソフト
発売日:2006年3月23日
価格:7140円(税込)/Wonder Price版は3129円(税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
公式サイト:http://www.michaelsoft.jp/wiz2/

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