レビュー
ゲーム性を大きく拡張するPSUの続編
ファンタシースターユニバース イルミナスの野望
多くのファンの期待を背負い,「すべてのRPGを過去にする」というキャッチコピーとともに,大々的に売り出されたPSU。しかしサービス開始直後から,接続障害やキャラクターデータの入れ替わりなど,さまざまなトラブルが発生。正式サービスの開始が2006年9月15日に延期されたうえ,その後も不安定な状態が長い間続いてしまった。
このように,お世辞にも順調とはいえないスタートを切ってしまったPSUだったが,それらの問題点が改善されるにつれて,次第にサービスは安定していった。
そして,それから約1年後の2007年9月27日,PSUの続編にあたる「ファンタシースターユニバース イルミナスの野望」(以下,イルミナス)が登場。これにより,PSUは大きな進化を遂げたのである。
では,イルミナスの導入によってPSUはどう変わったのか。少々前置きが長くなってしまったが,本作のレビュー記事をお届けしよう。
なお本稿は,イルミナスの新要素およびオンラインモードに焦点を当てたレビューとなっている。PSUの基本要素やストーリーモードの詳細については,PSUのレビュー記事や,公式サイトを参照していただきたい。
パーティーを組んでミッションに繰り出す
MOタイプのアクションRPG
モトゥブ始原祭の模様。激しく燃え盛る炎が,惑星の個性をよく表している |
MMORPGと比べ,6人パーティというのは小規模に思えるかもしれないが,アクションRPGというジャンルの性質上,物足りなさを感じることはない。小規模というよりはむしろ,“少数精鋭”と表現するのが適切なプレイフィールが味わえる。少人数でミッションをプレイすることにより,戦闘には緊張感と一体感が生まれ,その結果,非常に密度の濃い戦闘が楽しめる。後ほど詳しく紹介するが,本作の戦闘システムはPSUよりも,さらに磨きのかかったものになっている。
イルミナスで新たに追加されたミッションは黄色い文字で表示されるので,一目瞭然だ |
ミッションを選択すると,次はルームの作成を行うことができる。ここではパスワードやアイテムの分配についての設定が可能だが,パスワードについては,基本的に設定する必要はない。本作では,パーティ人数が限界数に達していない場合,ミッション中誰でもパーティへの乱入が可能となる。なので,仲間内だけで遊びたい場合など,特別な理由がない限りは,パスワードを設定することはないだろう。
積極的に乱入し,乱入され,パーティを組んだ人とすぐ仲良くなれるのも,本作ならでは。イルミナスの大きな魅力の一つであるといえる。
またPSUと比べ,イルミナスでは多数の新規フィールドとミッション,モンスターが追加されている。さらにフィールド内のチェックポイントからすぐにロビーへ帰還できるようになっていたりと,利便性の向上やバランス調整も行われている。その結果,PSUよりもコンテンツが拡充され,初心者にとってもより取っ付きやすく,遊びやすいゲームとなった。
ちなみにイルミナスでは,現在ストーリーモードのEpisode 3が配信されている。そのストーリーの展開については,プレイヤー自身の目で確認してほしいのだが,基本的には新規追加ミッションとして楽しめるようになっている。新規ストーリーは,今後も適時実装されていくものと思われるので,まだ進めていないという人は,少しずつ攻略しておくといいだろう。
多くの敵を蹴散らす快感はPSUならでは! フルパーティ時の乱戦は迫力満点だ |
ミッション開始時と終了時の挨拶はしっかりと。円満な人間関係の秘訣は,リアル世界でもゲームでも変わらない |
ギャンブルの快感と巫女の癒し
新たに追加された中間ロビー
まず,惑星モトゥブにあるカジノ・ボルワイヤルには,巨大なスロットマシンとルーレットが用意されており,プレイヤーはメセタではなく,金/銀/銅の専用コインを資金として,本格的なギャンブルを楽しめる。
カジノでは1日1回,NPC受付嬢から銅コイン100枚分の価値に相当する銀コイン1枚が受け取れ,それを元手に,スロットやルーレットでコインを増やしていく。ちなみに,稼いだコインは,景品カウンターでレアアイテムと交換できるため,カジノには暇つぶし以上の意味と利用価値があるのだ。
女性ディーラーのアナウンスが場内に響き渡り,プレイヤー達の喜びと絶望の声が絶えないカジノ内は,そこにいるだけでテンションが上がってくる。ギャンブル特有の病み付きになる快感を,一度でも味わったが最後。きっと毎日でも足を運びたくなることだろう。
ボルコインをくれるビーストのお姉さん。彼女に会いたいがために,日々カジノに通うというプレイヤーもいるだろう。筆者のことである |
フィーバー狙いのスロットマシン。いつも気づけばスッテンテンである |
来ることを信じて……ひたすら念じながら待つ! ハズレました |
相変わらず華美な装飾が目立つグラール教団。長い階段を上がって神殿へ |
荘厳にそびえる神殿の前には賽銭箱が置いてあり,その近くにはおみくじを引かせてくれる巫女さんが立っている。賽銭箱にはメセタではなく,アイテムを奉納可能で,ごく稀に見返りとして,巫女装束やミレイ様関連のレアアイテムなどが入手できる。入れるアイテムのレア度が高ければ高いほど入手確率が上がる……などといった説もあるが,実際のところはどうなのだろうか? もしそうだとしたら,随分と現金な神様だ。
それはともかく,おみくじ売りの巫女さんは,大胆な巫女装束でプレイヤーの目を楽しませてくれる(罰当たり)ほか,おみくじの結果によって星霊運(アイテムドロップ率や武器強化の成功率に影響)が変動するという効果がある。引けるおみくじには松/竹/梅とランクがあり,ランクが高いほど星霊運がアップする確立が高いようだ。
また,普通のおみくじだけでなく,稀に「イーサン・ウェーバー」や「ルウ」など,ストーリーモードで活躍した特定のキャラクターのメッセージを引くことがある。イーサンやルウのメッセージを引ければ嬉しいが,かの悪名高き「レンヴォルト・マガシ」のメッセージなんて引いてしまった日には……。また辛辣な内容なんだ,これが。
無尽蔵にアイテムを飲み込んでゆく悪魔の箱……もとい賽銭箱。巫女装束出せよー! |
清楚ながらも刺激的なファッション。彼女に会いたいがために,日々神殿に通うというプレイヤーもいるだろう。筆者のことである |
PSOからPSU,そしてイルミナスへ
進化していく戦闘システム
ゲーム初心者でも操作しやすいようPSOのシステムを発展させ,ボタンを押しているだけで爽快感のある連続攻撃が繰り出せるようになったPSUだが,半面,「ボタンを連打するだけで単調」という意見も多かった。また,敵の攻撃範囲が見た目よりも広く,前衛は敵の攻撃モーションを確認してから行動を取っても,回避が間に合わないという点も気になった。
そういった問題は,イルミナスでは見事に改良されているといっていいだろう。まず「戦闘が単調」という点については,“ジャストアタック”と“ジャストカウンター”が実装され,さらに通常打撃攻撃でPPが回復するようになった。反則的だった敵の攻撃範囲の修正も行われ,全体的に戦闘のバランスは良くなっている。
ちなみにジャストアタックとは,攻撃ボタンをタイミングよく押すことにより,連続してクリティカル攻撃を繰り出せるというシステム。PSOで好評だった,タイミングよく攻撃ボタンを押して発動する連続攻撃を彷彿とさせる。
正直言って,最初は「この程度の追加要素で戦闘が楽しくなるわけが……」などと思っていたのだが,実際にプレイしてみて驚いた。ジャストアタックの発動タイミングは意外とシビアで,なおかつ,通常攻撃からスキル発動へと繋ぐことも可能。連続でジャストアタックを決めたときの爽快感は,想像以上のものだった。ただボタンを連打するだけでよかった,少々マンネリ気味だった近接戦闘に,ジャストアタックが特別な魅力を与えてくれたという印象を受ける。
一方のジャストカウンターは,敵からの攻撃を防御したとき,攻撃/射撃/法撃のいずれかをタイミング良く実行することで発動できる。成功すればガードモーションをキャンセルし,素早いカウンター攻撃を敵に叩き返せるのだが,そもそも防御自体がランダム発動(いわゆるオートガード)なため,狙って発動させるのは難しい。ボタンを連打しているときに偶然成功するパターンが多く,効果はあまり実感できなかった。ジャストカウンターについては,意識して発動させる努力をするよりも,「成功したらラッキー」程度に考えておくといいだろう。
ジャストアタックは成功すると効果音が鳴り,黄色い光の波紋が広がる |
防御は腕でかばうモーションと青い波紋で見分けられる。このタイミングで反撃すれば,ジャストカウンターが発動する |
PSOからの復帰組モンスター,「グラス・アサッシン」。倒すと……気持ち悪い! |
新たなる力,アクロファイターとアクロテクター
まずアクロファイターについて,このタイプは反応速度が高く,命中力と回避力に優れ,打撃系武器の攻撃速度が速くなるという特性を持っている。片手武器の扱いに特化した戦闘タイプで,ほとんどの片手武器をSランクまで装備可能。その中でも,イルミナスで追加された新武器である,フォトンの刃を射出する“スライサー”と,一定間隔で自動的に敵を射撃する“シャドゥーグ”の扱いに長けている。また,“ダメージ”,“バーン”,“ウィルス”,“ポイズン”といった,4種類のトラップも扱える。
全体的な印象として,やはり打撃系武器の攻撃が速くなるという特性が非常に強力。シャドゥーグによる援護射撃も含め,スキのない連続攻撃で敵を圧倒し,反撃のタイミングを封じることが可能だ。また,近接武器のPP回復量が非常に高く,他の戦闘タイプとは一線を画す持久力も,特筆すべきポイントである。
ウィークポイントとしては,スピード重視である小型武器の扱いに優れる半面,攻撃範囲の広い大型武器をいっさい装備できないこと。とはいえ,スライサーを活用すれば手数で勝負できるため,たいした弱点ではない。結論としては,あまり弱点らしい弱点の見当たらない,非常に有能な戦闘タイプといえるだろう。
一方,アクロテクターは補助能力と命中力の高さが魅力で,打撃系武器と法撃系武器の攻撃が速くなるという特性を持つ。法撃系だけでなくいろいろな武器をSランクまで装備できるというオールマイティな戦闘タイプだ。“バーン”,“ポイズン”,“ウィルス”以外のトラップも使用でき,プレイヤー次第でさまざまな戦い方ができる。また扱える新武器の中では,広範囲攻撃に特化した“フォトンウィップ”,敵を自動的に法撃する“マドゥーグ”の2種類と,とくに相性が良い。
法撃のほか,さまざまな武器を扱えるという万能性から,アクロテクターはソロプレイに非常に適している。そしてパーティプレイにおいても,法撃に加えて,広範囲の攻撃が可能なフォトンウィップにより状態異常をばら撒いてくれるので,非常に役立つ。弱点らしい弱点はとくになく,強いていうならば,いろいろな戦い方ができる半面,プレイヤースキルがなければ器用貧乏的な立ち位置になってしまうところだろうか。さまざまな戦闘タイプを試した上級者にこそ,向いているかもしれない。
我が家の機能も大幅にパワーアップ
可愛い相棒もより役立つ存在に
妖しい雰囲気を醸し出すクラブ風のマイルーム。このリフォームチケットはカジノの景品で手に入る |
イルミナスでは,やはりマイルームにも大幅なアップデートがなされており,魅力溢れるリフォームチケットとルームグッズが多く追加された。中でも目新しいのが,倉庫の容量を拡張できるアイテム「ナノトランサーEX」や,惑星パルムへと引越しができるリフォームチケット,「ムーブパス・パルム」だろう。
また,以前は特定の場所に限定されていたルームグッズの設置場所を,かなり自由に設定できるようにもなった。マイルームを訪れたほかのプレイヤーが観覧できる掲示板や,ルーム内でBGMを流せるジュークボックスも設置され,マイルームはより楽しく,よりくつろげる空間として機能するようになった。
そして,とくに便利になったと感じたのが,ショップ検索機能だ。以前はごく限られた条件でしか検索できず,決して使いやすいとは言えなかったショップ検索だが,「アイテム名」,「価格設定」,「レアリティ設定」,「カテゴリ設定」,「ソート設定」といった豊富な条件検索が実装され,利便性が飛躍的に向上している。地味ではあるが,一プレイヤーとして非常に嬉しい改善だ。
パルムに引っ越すと窓の外の景色も変わる。これから追加されるであろう,他惑星のムーブパスにも期待だ |
光の枠で囲まれている場所すべてに,ルームグッズの配置が可能。机の上に小物を置いたりもできる |
使いやすくなったショップ検索。新武器の中には恐ろしい値段がついているものもあり,価格チェックをしているだけでも楽しい |
さらに,ショップを開いているプレイヤーは,パートナーマシナリーに「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」など,自動応答メッセージを設定できるようになった。
たいしたことではないようにも思えるが,無言でのショップ巡りはなかなか寂しいものがあったので,個人的には非常に嬉しい追加要素だと感じる。正統派の接客で行くか,少しネタに走ったメッセージをしゃべらせるか,そういったこともプレイヤーのセンスに委ねられている。
このように,家の留守を守り,ときには戦闘にも参加してくれる女房的存在のパートナーマシナリーだが,その新たな進化形態がイルミナスでは追加された。従来の少女タイプだけでも随分と種類が豊富だったが,今回は新たに,お姉さま方(と,一部の兄貴達)にはたまらない「少年タイプ」と「執事タイプ」が登場している。新たな進化形態ということで,今後どのような派生系が生まれるのか,非常に楽しみだ。
少女タイプGH450。戦闘ではレスタを連発してくれるため,非常に重宝する。つい可愛いセリフを言わせてあげたくなるのは親バカ? |
短パンに生足が眩しい少年タイプ。う〜む,しっかりと基本が押さえられている |
執事タイプは旧型のロボットをイメージしているのだろう。ちなみにプレイヤーが男なら旦那様,女ならお嬢様と呼んでくれる |
ゲームとして秀逸なだけに
運営の頑張りに期待がかかる
今回追加された新モンスターのなかでもとくに人気の高い「ディー・ロレイ」。グラス・アサッシンと同じく,PSOからのモンスターだ |
なぜなら,最初に述べたように酷いトラブルが続いて発生していたうえ,しばらく障害が継続していたという事実は,未だに筆者を含めたPSO,PSUファンの心に大きな不安を残しているからだ。ゲームとしての質には何ら不満はない。サービス面の安定性に,若干の心配を抱いてしまう。そんなプレイヤーは決して少なくないだろう。
一度失われた既存ユーザーからの信頼を取り戻すのは,かなり難しいと思うが,開発/運営は,あのセガだ。セガには,誰もが認める地力があるのだから,これからはファンの期待を裏切らず,安心させてくれるような開発/運営を行ってくれることを,心より願いたい。
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キーワード
(C)SEGA
(C)SEGA Corporation, 2005