レビュー
オープンワールドで展開する爆発の饗宴
マーセナリーズ2
ワールド イン フレームス
» PC版「マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス」は,コンシューマ機向けにリリースされた「マーセナリーズ」の続編。銃やロケットだけでなく,巡航ミサイルや衛星兵器といった常識外れのアイテムによるド派手なアクションが楽しめる,アメリカンテイストたっぷりの本作を,傭兵というよりはヤられるNPC側が似合う気がしないでもない川崎氏がレビューする。
お国がどうなろうが知ったことか!
手段を選ばない,傭兵流のアクションが登場
「マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス」は,Electronic Arts傘下のスタジオ,Pandemic Studiosが開発した三人称視点のミリタリーアクションだ。本作の舞台となるのは南米某国(英語版ではベネズエラになっている)で,豊富な天然資源を持ったこの国は,それを狙うさまざまな勢力による紛争が絶え間なく続いているという設定。プレイヤーはそんな政情不安定な地で,“傭兵”として戦い抜いていくのだ。紛争地帯こそ宝の宝庫。傭兵にとっての大きなビジネスチャンスが,そこらじゅうに転がっている場所というわけだ。
マーセナリーズ2はお手軽に派手なぶっ壊しを楽しめるアクションゲーム。TPS系タイトルとしては,難度はかなり低めなので,ビギナーでも安心してぶっ放せる |
傭兵は,軍隊のように規律に縛られることがないため,依頼目的さえ遂行できればその手段は問われない。なので,強奪や破壊など,その気になればなんでもアリ。建物などのゲーム内オブジェクトは,戦車やロケットランチャーなどの攻撃とHavok物理エンジンの効果によって,ガラガラと豪快に崩れ落ちる。サブタイトル「ワールド イン フレームス(世界は燃え上がる)」にもあるとおり,自分の手で思うがままに大都市をブッ潰してしまえるのが,このゲームの大きな見所である。
ミリタリーアクションといってもさまざまなタイプがあるが,本作では陽気でスリル満点の傭兵ライフを最大限に楽しむべく,リアルさやシビアさは抑え目に,ドンパチアクションを手軽に行えるゲームデザインになっている。
射撃全般に関しては,スコープによる細かなエイミングは必要とせず,たとえ移動しながらでも照準を合わせて,それが赤くなったところで撃てば当たる。逆に敵からの射撃は,弾道を確認してから避けられるほどのスピードだ。またヘッドショットのような即死攻撃もほとんどない。
もう一つ,ライフが急速に自然回復するため死亡率が低い。よって,相手からの攻撃を恐れずに前線へ出てバリバリと撃ちまり,ピンチになったらダッシュで逃げる,といったプレイスタイルになっているのだ。一歩一歩慎重に進んでいくタイプのスアクションゲームとは正反対である。
傭兵という職業はゲームによってさまざまな描かれ方をするが,このゲームにおける傭兵像は,映画「ランボー」やテレビドラマ「特攻野郎Aチーム」あたりのそれと同じと考えて,だいたい合っているだろう。本作では,ああいった映画/テレビで見られるような破天荒なプレイを満喫できるわけだ。
ゲーム内のインタフェースや操作については,「三人称視点+FPS」系タイトルをおおむね踏襲しており,そういったゲームをよくプレイする人なら簡単に理解できるものとなっている。
武器に関しては,マシンガンやロケットランチャーなどから,2種類の武器が携帯可能なほか,戦車などに搭載されている兵器の利用も可能。搭乗できる乗り物は一般車両やオートバイ,船舶や戦車,さらにはヘリコプターなど,実に130種類もあるが,それぞれの運転方法もさほど違わないので,乗り物の操作でも戸惑うことはないだろう。
ゲームの舞台となるのは南米の国をモチーフとした広大なマップ。精巧に作りこまれたこれらの地域を,思う存分に破壊し尽くせる |
これくらいの近距離で複数の敵兵を相手に撃ち合っても何とかなってしまう。シューティングが苦手な人でもプレイしやすい |
マップ内にはさまざまな乗り物があり,好きなように乗り込める。操作キーがある程度共通化されているので助かる |
ここは無法地帯。傭兵を縛る規則など何もない。長距離の移動には一般市民の車両強制拝借がデフォ(いいのか?) |
航空支援を依頼して爆撃を行う。写真のような距離で爆発してもダメージを受けないというのがスゴい。さすが傭兵 |
ゲーム内で移動できるエリアは広く,観光がてらブラブラするのも面白い。昼夜によって変化する色合いが美しい |
裏切った相手に落とし前を付けさせるべく
傭兵会社を一から設立
本作のゲームモードは,自由度が高めのキャンペーンが1種類のみというシンプルな構成である。また,シングルプレイのほか,もう一人のプレイヤーが「ジャンプイン」しての協力プレイが用意されているのは,最近のちょっとした流行(?)かもしれない。
これはハイジャックのシーンだが,中央の丸いアイコンにご注目。このアイコンの指示どおりにキーを押すのだが,押すタイミングは割とシビアで,対応するキーも秘密。根気よく挑戦しよう |
キャンペーンは,国内有数の富豪であるラモン・ソラーノから,捕虜となった陸軍指導者のカルモナ将軍の救出依頼を受けるシーンから始まる。プレイヤーが扮する傭兵は将軍の救出に成功するのだが,ここでソラーノは約束の報酬を支払わないどころか,逆にプレイヤーを抹殺しようとすのである。主人公はソラーノの攻撃を命からがら切り抜けるが,その後,ソラーノはカルモナ将軍の軍事力をバックに,今度はベネズエラを支配するべく,大統領に立候補する。
ヤツがそういう態度をとるならこっちにも考えがあるぜ,というわけで,ソラーノとその一派にキッチリ落とし前を付けさせるのが,このゲームの最終目標だ。割とありがちなストーリーではあるが,その結果,たとえお国がどうなろうが知ったこっちゃない,というところが個性的。
最初は,カルモナ将軍の軍隊と共にいるはずのソラーノがどこに潜んでいるかさっぱり分からず,一方の主人公はというと,手元には大した兵器はなく,ほとんど裸一貫という状態。そこでプレイヤーは,ソラーノ達に対抗できる組織を作り上げるべく,傭兵仕事をこなして資金を集めていくのだ。まがりなりにも一国の大統領(候補だが)相手に喧嘩を始めようというのに,「まず傭兵会社を設立」というあたりが妙に堅実だったりする。
プレイヤーはゲーム開始時に,「元暴走族」「元女スパイ」「元陸軍特殊部隊」といった,いかにもな経歴を持つ人物の中から一人を選ぶことになる。いずれも前作「マーセナリーズ」に登場していた連中だが,前作はコンシューマ機版しか発売されなかったので,読者に中には「知らない」という人も多いだろう。
三人はそれぞれ能力が異なっており,簡単に見ていくと,モヒカンのマティスは,ライフの回復スピードがとても速く,仮に被弾して深手を負っても,物陰に隠れてじっとしていればすぐに戦闘が可能だ。元女スパイのジェニファーは,移動スピードが速く,敵の懐の中に飛び込むといった接近戦を得意とする。三人目のクリスは,所持できる弾薬量がほかの二人よりも多く,銃器やミサイルなどによる遠距離戦がメインという戦闘スタイルだ。
三人の中から誰を選んでも,ストーリーに大きな変化はなく,またキャラクターの能力差がシューティング難度を左右するというほどでもないので,単純に見た目の好みで決めてしまってよさそうだ。
こう見えても,彼が主人公の一人,マティスである。軍隊を命令違反で除隊になったあと,暴走族に加わるという華やかな経歴を持つ |
主人公はカルモナ将軍を救出するも,今度は逆に命を狙われることに。ちなみに一番左の後ろ姿が,国の支配をもくろむソラーノ |
傭兵会社を設立する主人公。いくつかある勢力のうち,どことの関係を築き上げていくかによってミッションの展開が微妙に異なる |
ミッションを遂行中。PDAやミニマップを見て,黄色い矢印がある場所を目指していくと,何かしらの進展がある分かりやすい構成 |
ゲームの流れとしては,南米をイメージしたオープンエンドのマップを駆けめぐり,群雄割拠する勢力からの依頼をこなしていくことになる。石油会社や海賊,そしてこの国の崩壊を嗅ぎ付けた他国など,ゲームには数多くの勢力が登場する。ここは紛争地域なので,多くの場合,各勢力は激しく対立しており,よって,彼等が依頼するミッションの大半は敵対勢力への破壊工作がメインとなる。
プレイヤーはそれぞれの勢力に対するファクション値(友好度)というパラメータを持っており,その値によって各勢力から受けられるミッションが変わってくる。プレイヤーの評判が悪い勢力からは,顔が合った瞬間に銃口を向けられることになる。
依頼を無事に遂行してミッションを進めていくと,自らが設立したPMC(民間軍事会社)のアジトを拡大させ,活動の幅を広げられるようになる。ゲーム開始時点でPMCに所属しているのは,前作のプレイヤーにはおなじみの後方支援パートナー,フィオナだけ。
だがゲームが進むと,例えばヘリパイロットのユアンを仲間に加えて,彼のヘリコプターで戦場への物資輸送が可能になったりする。ほかにも車両のカスタマイズを行う整備士エヴァや,ジェット機のパイロットのミーシャなどといったさまざまな人物が登場して社員として活躍してくれるのだ。ちなみに,フィオナ自身からもミッションが受けられる。
ミッションを請け負うと,目的地などがPDAに表示される。かなりの長距離を移動させられることが頻繁にあるが,適当に車両を奪って利用しよう。目的地に付いたらたいてい派手なドンパチを繰り広げることになり,それに勝てばミッションクリア。ただし,偶然にせよ,一般市民を殺してしまうと報酬額にペナルティが課せられてしまう。
各ミッションにおけるクライマックスでは首謀者などと一騎打ちになるが,ここはキーをタイミングよく押すというミニゲーム仕立て。画面にアイコンが表示され,それに対応するキーをすかさず押していくというものだ。とはいえ。例えば手のアイコンが示されたら直接攻撃を行うFキー,足のアイコンだとジャンプを行うためのスペースキー,などといった対応は教えてくれないので,トライアル&エラーで見つけていくしかない。
最初は戸惑ってしまうだろうが,仮に失敗してもペナルティはなく,直前からリトライ可能。落ち着いて画面をよく見ていれば,いずれクリアできるはずだ。
マップには都市やジャングル,スラムなど数多くの地域がある。土地に慣れてくるにしたがって,ミッションも進めやすくなる |
破壊要素たっぷりだが残虐性はまったくなく,アクション映画のようにスカッと楽しめる。爆発も映画のように派手派手だ |
些細なことは考える必要なし
B級アクション映画顔負けの爽快系ゲーム
マーセナリーズ2は,細かいことはあまり考えずに派手なドンパチを楽しもう,という趣旨のゲームだ。よく言えば手軽なのだが,その一方で,やや大雑把ともいえなくもない。
例えば,猛スピードの車両に乗った状態で壁に激突しても,車両が破壊されるだけで自分は無傷。プレイヤーキャラクターの眼の前に爆弾が落下してもほとんどダメージを受けなかったり,あるいは「撃ってくれ」と言わんばかりに棒立ちになった敵兵が見受けられたりなど,リアリティという観点からは,「あれ?」と物足りなさを感じてしまうかもしれない。
戦車に乗って,なんとなくバラックを踏み潰して進んでみる。誰にも気兼ねすることなく,こうしたことが行えるのが面白い |
ただ,これらは豪快なプレイを実現するためのトレードオフと見るべきだろう。そう思わせるだけの魅力が,本作のにはあるのだ。とくにミッションを受けず,広大なフィールドを「ヒッチハイク」(元の持ち主は降りてしまうが)しながら走り回るだけでも結構楽しめる。
デフォルトのゲーム難度が低いうえ,難度調節機能がないのも,アバウトなノリでB級アクションをがんがん楽しんで欲しい,という開発側からのメッセージだと個人的には思っている。長時間のプレイや,やり込み要素を求めるのではなく,お手軽な箱庭系大爆破シューティング(?)として見れば,本作は十分にお勧めできるタイトルである。
ただし,ゲームバランスについてはとくに不満はないのだが,グラフィックス関連はもう少し頑張って欲しかったところか。今回のプレイに用いた筆者のPCは,CPUが「Core2 Duo E8500/3.16GHz」,グラフィックスカードが「ATI Radeon HD 4850」搭載製品といった構成なのだが,グラフィックスオプションを最高に設定すると,視点の切り替え時にややもたつきを感じる。その割にはグラフィックスのクオリティは普通レベルで,全体にもう一頑張りしてほしかったところ。「こちら」にデモ版を掲載したので,購入を考えている人はデモ版でチェックしてみよう。
本作はPCだけでなく,Xbox 360版やPLAYSTATION 3版もリリースされているが,どちらかというとコントローラでの操作にチューンされている印象を受けた。それだけでなく,Xbox 360/PS3版はスペシャルコスチュームのアンロックキャンペーンや,プレイアブルキャラクターの追加やチート集を含めたダウンロードコンテンツを配信したりしており,これはPC版のプレイヤーとしてはちょっと悔しいところだ。
細かい部分を見るとアバウトさが目に付くが,本作はリアルさよりも,縦横無尽に戦場を暴れまわる爽快感を追求したタイトルである |
たとえ銃器を持っていなくても,ジグザグに接近しながら銃弾をかいくぐり,敵兵に接近して殴り倒すようなワイルドな戦術もありだ |
左右の方向キーによる操作はかなりシビアで,真っ直ぐ進むことが難しい。まぁ,仮にぶつけたところで何の支障もないのだが |
静止画を見る限り,グラフィックスはそこそこ頑張ってる印象を受けるのだが,視点を急激に変えるとラグが目についてしまう |
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