テストレポート
SteelSeriesの新型ヘッドセット「Arctis 5」ファーストインプレッション。少なくとも出力品質は同社史上最高だ
採用する40mmスピーカードライバー「S1」と,「エアウィーヴ」素材のイヤーパッド,双方向指向性のマイクといった,音質および装着感を左右する仕様は全モデルで共通としつつ,基本的には接続周りとバーチャルサラウンドサウンド対応周りのみで差別化するという,分かりやすい製品展開が大きな特徴だ。SteelSeriesは,「Arctisでは,エントリーモデルを買おうが,ミドルクラスモデルを買おうが,ハイエンドモデルを買おうが,まったく同じヘッドフォン品質,まったく同じマイク品質,そしてまったく同じクッション素材からなる製品を手に入れられる」とアピールしている(関連記事)。
今回4Gamerでは,「北米市場では3製品の中で最も人気がある」とSteelSeriesの言うArctis 5,正確を期すと,黒と白の2モデルから黒いほうの「Arctis 5 Black」を発売直前に入手できたので,まずはファーストインプレッション的に,テストできたところまでをお伝えしたいと思う。
まずは3モデルの基本仕様をおさらい
一方,アナログ接続にあたっては,付属のケーブルを差し替えることにより,4極3.5mm
一方の後者はArctis 5からUSB接続機能を省いたモデルで,そのため,DTS Headphone:XとLEDイルミネーションが無効になり,USB ChatMix Dialも付属しない。ただし,Engine 3側でソフトウェアベースのバーチャルサラウンドサウンドは対応できるとのこと。標準で,4極3.5mmミニピン
装着感と音響にこだわった新世代モデル
とくに柔らかさは特筆もの。スキーのゴーグルで採用されているのと同じ素材だというヘッドバンドは,それ自体に伸縮性があり,頭部への圧力を分散してくれるため,本体の重量からすると驚くほど重さを感じない。
また,交換してカスタマイズ可能という仕様を実現するため,長さは両端のマジックテープで調整する仕様だが,全体的にアナログなので,ざっくりした調整で構わないのもいい。
エアウィーヴを用いたイヤーパッド部のクッションが,びっくりするほど柔らかいのも,特筆すべきポイントの1つだ。それを覆うクッションカバーは布製だが,これはいい意味でややドライな肌触りとなっており,長時間のゲームプレイだと汗でべとべとになる,合皮製カバーのような感じはしなかった。ちくちくすることはなく,肌当たりもよいと言える。
おそらくArctisの装着感におけるSteelSeriesの開発方針は「ふわっとした感じ」なのだろう。これは長時間のゲームプレイに相当“効く”はずで,実機に触れる機会があれば,まず一度装着してみることを勧めたい。これまでのゲーマー向けヘッドセットとは一線を画すかけ心地を体感できるはずだ。
「高品質なホームオーディオヘッドフォン」のような音がするArctis 5
4Gamerのヘッドフォン出力テストでは,ダミーヘッドを用いた測定と筆者の耳による試聴を行っている。ダミーヘッドによる測定法はいずれ別記事にまとめるつもりだが,現時点における詳細はヘッドセット46製品一斉検証記事,そして「G231 Prodigy Gaming Headset」テストレポートにある説明を参照してもらえれば幸いだ。
それに先だって,“素”の出力を確認すべく,「Sound Blaster ZxR」の外付けデバイス「ACM」(Audio Control Module)とアナログ接続した状態を検証する,という流れになる。
差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。
というわけでアナログ接続時からだが,周波数特性は,1.5kHzあたりが谷になる,分かりやすいドンシャリ傾向だ。差分を取ってみると,12kHzより下の帯域ではほとんど±7dB程度に収まっており,大きな乖離は生じていない。つまり,「リファレンス波形との違いは小さいものの,確実に軽いドンシャリ波形を形成している」わけで,ここがミソである。
ヘッドセットやヘッドフォンの場合,単純にフラットへ近づけただけだと,たいていの場合はつまらない,あるいは“ぬるい”音になってしまう。そのため,ホームオーディオ製品のメーカーは少しずつ色を付けるのだが,Arctis 5の波形からはまさにそうした「意図的な味付け」が感じられる。
ゲーマー向けヘッドセットの場合,「どう見てもハードウェアの問題」で特定の周波数が落ち込んでいたり,低域がむやみに大きくなっていたりすることが多いのだが,Arctis 5の波形には,きちんと制御されている印象がある。
なお,左右のバランス差は約1dB程度なので,左右の音量差問題は生じていないという理解でいいだろう。
続いては,USB接続,かつEngine 3側のイコライザを標準のフラットにした状態の周波数特性だが,下の波形を見てもらうと分かるように,出力レベルが全体的に8dBほど下がっている以外は,非常によく似ている。
先ほど述べたとおり,USB接続時はEngine 3経由でイコライザプリセットを適用できるため,以下,プリセットを適用したときの周波数特性も掲載しておこう。
総じて言えることは,プリセットによるイコライザ設定の実用性が高いということだ。よくある,極端すぎて使えない設定はないので,購入したら気楽にいろいろ試してみるといい。
さて,実際にiTunesで楽曲を聴いてみたが,得られたのは,アナログ接続,USB接続とも,何と言うか,「ホームオーディオの音」である。それも,世間一般で言う「価格がやや高め」――つまり実勢価格で1万5000〜3万円くらい――の,いい音だと定評があるホームオーディオ用ヘッドフォンの音が鳴っているのだ。しかも,没個性なものではなく,軽いドンシャリで,低域と高域のバランスがよい,Arctis 5ならではの音になっている。
とくに印象的だったのは,歪み感がまったくないことだ。歪みがないため,軽いドンシャリなのに,中域の解像度は恐ろしく高い。中域をしっかり出すのは難しいようで,中域が充実しているゲーマー向けヘッドセットにはなかなか出会えていないのだが,Arctis 5はその点で非常に完成度が高い。中域の解像感では間違いなく歴代トップクラスだ。
最後にとても重要な点として付け加えておくと,Arctis 5は,おそらくスピーカードライバー自体の駆動力が高く,そのため,アナログ,USBと接続形態を問わず,音量は十分に大きい。USB接続型ヘッドセットの場合,電源供給が足りず,音量が小さくなるということもままあるのだが,Arctis 5でその心配は無用だ。
ちなみに筆者は比較的大きめの音量を好むのだが,USB接続時でシステムボリュームは66,アナログ接続時は45〜55で,十分な音量が得られていた。
SteelSeries起死回生の一撃か
あくまで筆者の経験に基づく見解だが,ゲーマー向け,とくにPCゲーマー向けヘッドセットの市場は,SteelSeriesとRazerの2強時代が続いた後,最近はLogitech G(日本ではLogicool G)とSennheiser Communicationsの2強時代へ切り替わったと認識している。日本市場において,と前置きすれば,Logitech G/Logicool Gの1強時代と言ってもいいくらいだ。
はっきり言えば,SteelSeriesの存在感は相対的に低下の一途を辿っており,少なくともここ数年にわたって,パンチの効いたヘッドセット製品は1つも出ていなかった。
また,他社との比較においても,Arctis 5のステレオ出力品質は,最近急激にレベルが上がってきているゲーマー向けヘッドセットの中で間違いなくトップクラスである。しかも,装着感は極めて良好なうえ,SteelSeriesが「スカンジナビアンデザイン」と呼ぶミニマルな外観は,外出時にスマートフォンとつないで持ち出しても違和感のない,よいものだ。
繰り返すが,まだすべてのテストを終えたわけではない。遅延状況やマイクのテスト結果次第で,評価は変わる可能性がある。なので,最終評価は後日掲載予定のレビューを待ってほしいと思うが,ただ,出力品質は本物だ。発売に合わせて“特攻”する予定の人は参考にしてほしい。
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