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SteelSeries製キーボード「Apex M800」レビュー。独自のメカニカルキースイッチ「QS1」は,ゲームプレイに何をもたらすか
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印刷2015/08/13 00:00

レビュー

独自のメカニカルキースイッチ「QS1」は,ゲームプレイに何をもたらすか

SteelSeries Apex M800 Customizable Mechanical Gaming Keyboard

Text by 米田 聡


SteelSeries Apex M800 Customizable Mechanical Gaming Keyboard
メーカー:SteelSeries
問い合わせ先:お問い合わせページ
直販価格:2万4500〜2万7000円程度(※2015年8月13日現在)
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 2015年1月上旬の時点で世界市場に向けて発表されていた,SteelSeriesの新作キーボード「SteelSeries Apex M800 Customizable Mechanical Gaming Keyboard」(以下,Apex M800)が,ついに8月13日,発売の日を迎えた。SteelSeriesが,社名未公開のパートナー企業と共同開発したという,独自のメカニカルキースイッチ「QS1」を搭載するゲーマー向けキーボードが,ついに日本市場へ登場するわけだ。

 名前付きのオリジナルスイッチがゲーマー向けキーボードに採用されるのは,Razerと中国KaiHua Electronicsが共同開発した「Razer Mechanical Switch」,そしてLogitech/ロジクールとオムロン スイッチアンドデバイスが共同開発した「Romer-G」に続いて3例めとなるわけだが,QS1スイッチ,そしてそれを搭載する初のキーボードとなるApex M800は,どんな製品に仕上がっているのだろうか。テスト結果をまとめてみたいと思う。


フラットなキーボード面が特徴的なApex M800


 Apex M800は,USB接続のワイヤードキーボードで,日本では,英語配列モデルが数量限定版,日本語配列モデルが通常版という扱いになる。今回4Gamerが入手したのは,通常版となる日本語109キー配列モデルだ。

Apex M800。キートップ上の文字は多くが中央に配置されており,カナ表示はない。これには理由があるのだが,それは後ほど
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 Apexという製品名に聞き覚えがある人もいるだろう。Apex M800は,2013年8月にリリースされた「SteelSeries Apex」(以下,初代Apex)の後継製品である。ただ,初代Apexは,「メンブレンキースイッチを採用しつつ,いかに高速にコマンドを入力できるか」というポイントに開発の力点が置かれ,実際,素早くコマンドを入力するため,マクロ用に多数の追加キーを持つキーボードだった(関連記事)。

初代Apexの日本語配列版。ファンクションキーの上にキーが一段分追加され,左メインキーの左にもキーが2列分追加される,いかにもな多機能キーボードになっていた
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 それに対してApex M800では,外観の基本デザインは踏襲しつつ,コマンド入力速度ではなく,打鍵速度そのものを高める方向で,独自のメカニカルキースイッチを採用してきた。似て非なる製品となり,対象ユーザーも,初代Apexのカジュアル寄りから,ぐっとコア寄りになったといえる。

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単位では左右がやや持ち上がった形状ながら,キートップ面全体は完全なフラットだ。その表面はつや消し加工されており,質感は高い
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フラットで低いキートップを求めたゲーマーは,[W]キーの目印も欲したとのことで,Apex M800の[W]キーには2つの突起が設けられている
 一方で,初代Apexにあった「フラットな外観」は,Apex M800でも,ほぼそのまま継承された。
 ゲーマー向けメカニカルキーボードの多くは,キートップ面を横から見ると,階段状の段差によって上下が緩やかに湾曲した「ステップスカルプチャ」という構造を採用しているのだが,Apex M800のキートップ面は完全なフラットだ。しかもキートップの高さは実測6mmと低いため,キーボード全体のフラット感はさらに強調される格好になっている。

 少々うんちくを述べておくと,キーボードの構造はタイプライターに準じたステップ構造という階段状のキー配置が原型だ。それにキータイプのしやすさという観点から段差を付けたスカルプチャ(sculpture:彫刻の意)を加えたものがステップスカルプチャである。
 つまり,キータイプのしやすさを追求して生まれたのがステップスカルプチャで,ゲームにおけるキーボードの使いやすさはまた別の話になってくる。SteelSeriesのCEOであるEhtisham Rabbani(エティシャム・ラバーニ)氏は先に,4Gamerの質問に答えて,キートップの高さを低く,フラットにするというのは,ゲーマーからのフィードバックを受けてのものだと述べていたので(関連記事),今後,QS1キースイッチの採用が広がっていくにつれて,SteelSeries製キーボードのキートップは,Apex M800風のデザインで揃えられていくのかもしれない。

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本体左端に並んだキーは,ちょっと特殊な呼び名だが,見ればすぐ分かる。0〜5の数字が○で囲まれた“丸数字キー”だ
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こちらが超大型[Space]キー。非常に押しやすいが,トレードオフもある
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[Space]キーの右に並んだ6キーのみ,キーピッチが短くなってしまった
 というわけでApex M800だが,追加のキーは,メインキーボードの左に6個並んだ[Circle 0]〜[Circle 5]キーのみとなっている。初代Apexでは追加キーが22個もあったので,総量は3分の1以下に削減されたわけだ。

 キー関連ではもう1つ,非常に大きな[Space]キーの存在も特徴として挙げられるだろう。
 この大きな[Space]キーは初代Apexから受け継がれたものであり,Apex M800の場合,そのサイズは実測で約100(W)×36(D)mmもあるのだが,キーの端を押してもしっかり沈んでくれるため,左手がちょっとホームポジションから外れたとしても,造作もなく[Space]キーを叩けるのは明らかなメリットといえる。[Space]キーを連打したい人にとっては最適なサイズになっているわけだ。

 ただ,大きな[Space]キーのアオリを喰らって,その右に並ぶキーは,少し小さくなってしまった。とくにApex M800の場合,右[Alt]キーの右隣に,標準的な日本語109キー配列にはない[SteelSeries]キーが追加されていることもあって,かなり混雑してしまっている。
 ちなみにキーピッチは,メインキーボード部が約19mmなのに対し,[Space]キーの右に並んでいる6キーは約16mmと,3mm短い。ゲーム用途でこの部分のキーを積極的に使う人はほとんどいないと思われるため,大勢に影響はないだろうが,ゲーム以外でApex M800を使うときには,多少なりとも違和感を覚えるはずだ。

横方向のサイズは,一般的なフルサイズキーボードよりも長い。これは日本の住環境においてマイナスポイントになるだろう
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 なお,キーボード自体のサイズは,底面部の実測で約495(W)×175(D)mm。メインキーの左に追加キーのあるフルキーボードとしてはやや大きめといえる程度である。机上からの高さは標準の状態で手前側キーボード面が実測約19mm,奥側キーボード面が約35mmで,キーボード面全体にゆるやかな傾斜が付けられている。一般的なキーボードと比べると奥側は少し高めか。

 Apex M800で面白いのは,一般的なチルトスタンドを装備せず,代わりに本体向かって奥側の滑り止め用ゴムを交換する仕組みになっているところ。チルトスタンドはワンタッチで傾斜が変えられるのが便利だが,立てるとガタツキやすいという欠点がある。そこでSteelSeriesでは一計を案じ,本機ではゴムを交換するという大胆な方法を採用したようだ。

底面には,球状をした滑り止めのゴム4個が装着されている(左)。設置面の直径は約15mmと,かなりしっかりした印象だ。右は標準のゴムと大きめの交換用ゴムを並べたところ
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 傾斜を好むプレイヤーも交換用ゴムで対応でき,しかも傾斜をきつくしても一般的なチルトスタンドよりしっかりしていて滑りにくいというのは,なかなかいい工夫だと思う。その日の気分次第でキーボードの高さを変えたいという奇特な人でもない限り,この仕様は好ましく感じるのではなかろうか。
 なお,Apex M800の実測重量は,ケーブル込みで約1400g,ケーブルを重量計からどかせた参考値で約1320gと,十分に重い。激しい操作でキーボードが動いてしまうような心配は,まずもって無用だろう。

標準の滑り止めゴムを装着した状態(左)と,大きめの滑り止めゴムを装着した状態(右)で,側面から見たところ。ゴムを大きめのものに変更すると。キーボード奥側は標準より7mm高い約42mmまで持ち上がる
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ショートストローク&軽いバネとフルカラーLEDを内蔵するQS1


 さて,Apex M800におけるキモとなるQS1だ。
 SteelSeriesといえば,「ゲーマー向けキーボードは『Cherry MX』メカニカルキースイッチを搭載するもの」という定番の流れを作った企業の一社だが,Cherry MX搭載モデルが乱立し,差別化が難しくなってきたことを受けて開発してきたQS1では,当然のことながら,Cherry MXとは異なる味付けがなされている。

Cherry MX Redと同じく,クリック感がなくストレートで軽いバネを使ったキースイッチだが,ストローク,アクチュエーションポイントともにCherry MX Redより25%短い。軽く浅いスイッチで高速操作を行えるようにするという,その発想はRomer-Gと同じである
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 公開されているスペックだと,キーストロークは3mmで,スイッチが作動するアクチュエーションポイントの深さは1.5mm,バネ荷重は45g。Cherry MXだとそれぞれ4mm,2mmなので,いずれも25%短くなっており,それを根拠にSteelSeriesは「従来よりも25%高速に操作できる」とアピールしていたりするが,実のところ,いま挙げたQS1のスペックはRomer-Gと同じだ。

 Romer-Gと異なるのは,QS1だとクリック感がなく,ストレートな押し心地になっている点と,Romer-Gだと底打ち感を和らげる工夫が盛り込まれているのに対し,QS1にはそれがない点の2つである。Romer-Gは,「Cherry MX Brown」風の打鍵感を目指して開発されたが(関連記事),QS1では,ストレートな押し心地が特徴である「Cherry MX Red」のショートストローク版を実現しようというコンセプトで開発されたのかもしれない。

キートップを外したところ。少しでも幅のあるキーにはキートップ支持のための金属製バーが組み込んであり,キーの端を押しても,安定した沈み込みが得られる
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 「ショートストロークで平らなキートップ面」ということで連想されるのはノートPCで,実際,Apex M800を初めて触ったときに思い出したのは,かつての大型ノートPCに採用されていたキーボードだった。ただ,キースイッチは往時のそれよりも明らかにしっかりしており,バネ荷重やアクチュエーションポイントのバラツキ感もない。品質はかなり高いレベルにあると評していいだろう。
 また,前段でも軽く触れたが,[Space]キーに代表される大きなキーの端でも,押下するとすんなり沈み込んでくれるのはいい。

QS1(左)とLEDイルミネーション付きCherry MX(※Cherry MX RGBではない)の比較。LEDが中央部にあるため,美しいバックライトイルミネーションが得られるという
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 ここまで掲載してきた写真ですでに把握済みという人も多いだろうが,フルカラーLEDを搭載するのも,QS1の持つ大きな特徴の1つだ。前段で,キートップ上の文字が中央にあることを紹介したが,これは,QS1でLEDがキースイッチの中央部に埋め込まれ,下からまっすぐ文字部分を照らすような設計になっているためだ。「中央にあるLEDが,文字をムラなく照らせる。また,ライティングが均一なので光が台座部に漏れない」というのが,SteelSeriesのメッセージでもある。

(SteelSeriesの本社がある)デンマークの国旗風にLEDを光らせたところ。一般的なLEDバックライトと比べると漏れている光の量は確かに少ないが,「漏れていない」とまではいえないことも分かる
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 ただし,キートップを外してよく見ると,QS1のLEDは中央からわずかにズレていることが分かる。
 Romer-Gを開発にあたったオムロン スイッチアンドデバイスは,4Gamerの取材に対して,LEDをキースイッチの中央に埋め込むのが大きな課題だったと話していた(関連記事)。「プランジャー」と呼ばれる機構によってLEDユニットを囲むというデザインコンセプト自体はRomer-GとQS1で同じながら,ハードウェアとしての完成度ではRomer-Gに軍配が上がる印象を受けた。

G310 Atlas Dawn Compact Gaming Keyboard」に搭載されるRomer-G(左)とQS1(右)の比較。非常によく似た構造だけに,ちょっとした違いが分かりやすいのではないかと思う
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Apex M800にはMacユーザーのための交換用キートップが3つ付属するので,代表してこれらを掲載。ご覧のとおり,キートップは低背である
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 また,LEDの配置が中央から若干ズレて,それで光が均等に回らないからか,筐体の台座部が白い樹脂製になっているためか,キートップ側が低背のためか,あるいは,それらが複合的に組み合わさった要因によるものなのか,断定はできないのだが,「漏れない」とされている光が台座部にわずかながら漏れている点も,指摘しておく必要がありそうだ。

SteelSeriesが公開しているQS1の分解図。接点がスイッチの一辺に入っているため,LEDを含む部分が接点の分だけ中央からずれていることが,図から読み取れる
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 ではなぜQS1でLEDはキースイッチの中央に来なかったのか。それを理解するヒントが,SteelSeriesの公開しているQS1の分解イメージカットにある。これを見ると分かるように,接点が,プランジャーの一辺に埋め込まれているのだ。この接点を入れるために,LEDの配置が中央から少しズレることになった可能性が高い。
 Romer-Gでは,とにかくLEDを中央に配置するため,L字型の接点を2つ組み合わせて「ロ」の字状とし,それでLEDを囲むようなデザインになっていたので,ここの違いが,最終的な見栄えの違いを生んだということなのだろう。

 ところで,QS1の公称耐久性は6000万回。Cherry MXの公称5000万回と比べて1.2倍となる(※Romer-Gは公称7000万回)。
 もっとも,公称の耐久性というのは,テストを基準に決められるとはいえ,「どの程度の余裕を持たせるのか」の判断によって数字は大きく変わるため,横並びの比較にあまり意味はない。Cherry MXと同等以上が謳われている,くらいの認識が妥当ではないかと思う。


全キーへの機能割り当てとLEDイルミネーションは,SteelSeries Engine 3から


もはやお馴染みといっていいだろう,Engine 3のランチャー画面。ここに「接続されているSteelSeries製デバイス」が表示されるので,そこから,設定変更したいデバイスを選択したり,ファームウェアを更新したりすることになる
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 SteelSeries製品の常ではあるのだが,Apex M800も,いわゆるドライバレスでキーボードとしての基本機能は利用できる一方,個々のQS1スイッチに埋め込まれているLEDの挙動を制御したり,キーボードそのものの機能を設定したりするには,統合ソフトウェア「SteelSeries Engine 3」(以下,Engine 3)をSteelSeriesの公式Webサイトからダウンロードして導入する必要がある。

 SteelSeriesによると,Apex M800では「600 APM」と呼ばれるプロセッサを2基搭載し,1基にキーボードの処理,もう1基にLEDやマクロなどの機能の処理をさせているという。そのため,LEDで凝ったライティングパターン設定を行っても“キーボード側”の負荷は高まらないため,操作点灯させていてもキーボードの処理の負担にはならず,押下時のラグは最小限に抑えられているというのが,SteelSeriesの主張だ。

USBケーブルが2系統あるのは,片方がキーボードとしての基本機能用,もう片方がLEDイルミネーションや機能割り当てなど用になっているからだ。後者にはUSBハブ機能も用意されており,ケーブルの付け根部分には,2系統のUSB 2.0ポートが並んでいる
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 さて,Engine 3の「機材」タブにおいて「Apex M800」をクリックすると,下に示したとおり,Apex M800に最適化された状態でEngine 3のメインウインドウが開く。左ペインにある「設定」はほかのキーボード用設定ツールでいうところの「プロファイル」にあたるもので,初期状態では「Default」「Lights Out」「Minesweeper」「Snake」という4種類のプロファイルが用意されているのだが,実のところ,Default以外の3つはLEDを使ったミニゲームだったりする。

Apex M800に最適化された状態で開いたEngine 3。2ペイン構成なのが分かる
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Lights Outを選択したところ。「キーパッドのEnterキーを押してゲームを開始します」と記されたダイアログが出る。[オーケー]をクリックしてダイアログを閉じ,10キーパッドの[Enter]キーを押すとゲームがスタートする仕様だった
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 たとえば,左ペインでLights Outを選択する(か,ランチャーの「設定」プルダウンでLights Outを選択する)と,ミニゲームのプログラムがキーボードに読み出され,プレイできるという趣向である。
 まあ,どう考えてもLights OutとMinesweeper,Snakeはオマケであって,暇つぶしくらいにしか使えない。正直にいうと「なんだこれ?」と戸惑う要因になるだけの,蛇足であるように思う。


[+新規]ボタンをクリックすると「新しい設定」ウインドウが開く。「アプリケーションで自動起動する」の下にある[+]ボタンをクリックして,ゲーム(など)の実行ファイルを割り当てれば,割り当てたアプリケーションの起動に合わせてプロファイルが自動適用されるようになる
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 いずれにせよ,キーボードを自分好みにカスタマイズしたい場合は,左ペインの下にある[+新規]ボタンをクリックし,自前のプロファイルを作成・追加していくことになる。
 プロファイルはゲームタイトルごと,あるはゲームタイプごとなど,ユーザーの好み次第で追加でき,そのプロファイルとゲームの実行ファイルを関連付けることでゲーム起動時にプロファイルを自動的に適用することが可能となっている。

 プロファイルに保存できるのは,キーへの機能割り当てとLEDイルミネーションの2つだ。ウィンドウ上部に表示されている[キーバインド]ボタンを選択すればキー割り当ての変更や無効化,マクロの登録といったことが,[イルミネーション]ボタンを選択すれば全体や個別のLEDイルミネーション設定を行えるようになる。

「新しい設定」ウインドウで[保存]すると,空のプロファイルが左ペインに追加され,プロファイル単位でキーへの機能割り当てとLEDイルミネーションを設定できるようになる
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[半角/全角]キーに対してポップアップメニューを表示させたところ。この状態ではキーボード上にある別のキーを割り当てられるようになっている
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 キーへの機能割り当ては,[Circle 0]〜[Circle 5]キーだけでなく,すべてのキーに対して行うことができる。たとえば,一部のFPSで不都合が出やすい[半角/全角]キーを無効化したいと思った場合,まずは,Engine 3のメインウインドウに表示されているApex M800の製品イメージ上で[半角/全角]キーを左クリックしてポップアップメニューを表示させる。このポップアップメニュー最上段にある「キーボードボタン」のところはプルダウンになっており,ここから,キーやマウスボタン,マクロ,メディア操作系,無効化などのなかから割り当てるものを選択できるようになっており,無効化したいならば「解除する」を選べば,設定完了だ。

ポップアップメニューのプルダウンから「解除する」を選ぶと(左),「Deactivated」と表示されて無効になった
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 なお,プロファイルは,実行ファイルへの関連づけによって手動で切り替えられるという話を先ほどしたが,任意のキーにプロファイル切り替えを割り当てることもできる。

[Circle 0]キーに,特定のプロファイル切り替えを割り当てようとしているところ。なお,プロファイル順繰りの切り替え機能は用意されていない
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 続いてLEDイルミネーションのほうだが,[イルミネーション]ボタンを押すと,メインウインドウは下のような感じになる。右ペインの右端に「テンプレート」という項目が表れるのがポイントだ。

[イルミネーション]ボタンをクリックしたところ
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 Apex M800におけるLEDイルミネーションは,個別に色や光り方を調整できるだけでなく,「テンプレート」から好みの発光パターンを選んでそのまま使ったり,たたき台にしてカスタマイズしたりすることもできる。
 テンプレートは19種類もあり,常時点灯系からアニメーションするものまで,いろいろ用意されている。どんな感じかまとめてムービーにしてみたので,参考にしてもらえればと思う。


Apex M800では本体両側面にもフルカラーLEDが埋め込まれている。両側面のLEDは選択したテンプレートに合わせた色で発光する仕組みだが,どういうわけか,単体でのカスタマイズはできない。ちょっと不思議な仕様である
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 カスタマイズ方法は,キーへの機能割り当てとほぼ同じ。変更したいキーを選んで左クリックし,メニューから選択するだけだ。LEDイルミネーション変更用のメニューはポップアップせず,右ペインの左端に常時表示されているので,ここから選ぶことになる。

 選択できる発光パターンは6種類。常に同じ色で光る「ステディー」,ある色から別の色へと変化を繰り返す「ColorShift」,同じ色で光りながら明るさが定期的に変化する「ブリーズ」,キーを押したときに発光させる「反応キー」,キーを押した後一定の時間だけ発光色を変える「クールダウンタイマー」,LEDを消灯する「イルミネーション無効化」から選択して設定できる。イルミネーション無効化以外では,発光色や明るさも任意に変更可能だ。
 キーボードの操作中(「アクティブ」)と,放置してしばらく経った状態(「アイドル」)で,異なるライティングを設定することにも対応している。

[半角/全角]キーのLEDイルミネーションを変更しようとしている例
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「ライブラリ」タブ
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 以上がおおまかな説明だが,Engine 3のランチャーにもちょっとした機能があるので,簡単に紹介しておこう。
 「ライブラリ」タブでは,プロファイルを集中的に管理できる。SteelSeries製デバイスで身の回りを固めている場合は,ここから一括でプロファイル設定を行えるわけだ。

「GAMESENSE」タブ
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 「GAMESENSE」タブでは,「ゲームのシーンに応じた発光パターンを実現する」という,かなり意欲的な機能の設定を行える。たとえば,ゲーム中でヘルスパックを取ったら特定のキーが点滅する,なんてことを設定できるのだが,残念ながら,現時点で対応しているのは「Counter Strike:Global Offensive」と「Dota 2」「Minecraft」のみだ。

 GAMESENSEはApex M800における大きなアピールポイントの1つだったりもするのだが,対応タイトルが3つ限りというのはさすがに寂しい。フルカラーLEDを搭載するキーボードは増えているわけで,誰かが音頭を取って,ゲーム中にLEDを光らせるためのAPIを整備し,標準化してくれるといいのだろうが……。

 なお,Engine 3で設定したプロファイルは,そのとき選択している1つだけが,Apex M800本体に搭載されたフラッシュメモリへ保存される仕様だ。Engine 3は設定ツールであってドライバツールではないため,保存されているプロファイルのキー割り当てやLEDイルミネーションの設定は,Engine 3が導入されていないPCでも利用できる。
 「Customizable Mechanical Gaming Keyboard」は,伊達ではないというわけだ。


最大256キー同時押し(?)に対応し,ゲームプレイには最適


 Apex M800は,SteelSeriesの新しいハイエンドモデルということで,キーボードそのもののスペックも非常に高い。Anti-Ghosting仕様で,Nキーロールオーバー,256キーの同時押しに対応というものだ。そもそも,キーの数が256個もないうえ,仮にマクロまで計算に入れているとしても,ゲームでそんな数の同時押しに対応するものが存在するとは思えないので,「256キーの同時押し」はジョークなのだと思われるが,ゲーム用途で必要十分な仕様を獲得できていることは間違いない。
 実際,「4Gamer Keyboard Checker」(Version 1.0.0)によるテストでも,無意味なくらい大量のキーの同時押しに反応しているのを確認できているので,基本性能には何の問題もないと述べていいだろう。

4Gamer Keyboard Checkerでテストした結果。ここでは34キーの押下を認識しているが,物理的に押すことさえできれば,全キーの同時押しも不可能ではない感じだった
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 今回はPC版「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」(以下,MGSV:GZ)を中心に,アクション性の高いタイトルをApex M800(とマウス)でプレイしてみたが,端的に述べて,非常にいい感じである。
 とくに気に入ったのが大きな[Space]キーだ。左手の人差し指から小指がどんな状態になっていようと,親指で確実に,かつ素早く[Space]キーを探り当てられるので,よく使うようなコマンド,たとえばMGSV:GZなら匍匐に割り当てたりすると,さっと匍匐に切り替えることができ,すこぶる快適だった。

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 肝心要のQS1はどうなのよ,という話だが,SteelSeriesの謳うとおり,25%高速に操作できるのかはともかく,確かに素早く操作できる。
 Romer-Gの場合,「慣れれば」というただし書きが必要なのだが,QS1の場合は,低背のキートップのおかげで,ほとんど苦もなく,高速な操作を行えるようになるのだ。キートップが低いおかげで指の動きがスムーズになるため,すぐに,軽いタイピングでキーを次から次へと押せるようになる,といった感じ。
 キーストロークとアクチュエーションポイントが短いことも,間違いなく効果的なのだが,個人的にはそれ以上に,「キートップの背が低く,指の引っかかりがないこと」が,高速入力に貢献している印象である。

 なお,コアゲーマーであればあるほど,メインキー部の左に追加のキーがあるのが気になるのではないかと思うが,[Circle 0]〜[Circle 5]キーが,ゲーム中,邪魔になることはなかった。メインキーから実測約10mm離れているため,誤爆の心配はまずない。


 ただし,100%手放しで褒められるかというと,そうでもないので,その点も忘れず指摘しておく必要があるだろう。
 まず,スイッチの段でもしてきたとおり,QS1には固い底突きがある。ストロークもCherry MXより1mm短いので,ゲーム中,キーを強く叩き続けるタイプのプレイヤーだと,ほかのキーボードを使っているときよりも指が疲れやすいと感じたり,最悪,痛めたりする可能性がある。とくに,底が柔らかなメンブレンキーボードからApex M800へ乗り換える場合は注意が必要だ。

画像集 No.041のサムネイル画像 / SteelSeries製キーボード「Apex M800」レビュー。独自のメカニカルキースイッチ「QS1」は,ゲームプレイに何をもたらすか
 また,普段使いにあたって若干のマイナスポイントもある。低背でフラットなデザイン自体は,慣れてしまえばどうということもない一方,[Space]キーの右側に並んだキーのキーピッチが狭いのは,通常の文字入力時に不便さを感じたのだ。
 幸いにして,Engine 3を使えば,全キーの機能を再割り当てできるので,[Space]キーの右に並ぶキーのうち,使わないものを使うもので“上書き”し,誤爆しても問題ないようにするといった対処は行える。ただ,日本語配列モデルを通常版として展開する以上,もう少し日本語レイアウトへの配慮をしてほしかったとは思う。


QS1キースイッチの実力は疑いなしだが

できれば「RAW」が欲しいかも


製品ボックス
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 以上,Apex M800を見てきた。QS1は,Cherry MXともRomer-Gとも異なるキャラクターを持ったスイッチであり,それがこうして製品に搭載されて出てきた意義は大きいと思う。実際にゲームで使いやすいのも素晴らしい。
 スイッチの耐久性だけは,まだ時間が経っていない以上,最終判断は下せないのだが,過去の実績からして,何かあればSteelSeriesは(対応に時間はかかるかもしれないが)サポートしてくれるはずなので,いまから心配することでもないのではないかと思われる。

 問題があるとすれば価格だろうか。フルカラーLEDにデュアルプロセッサ搭載,機能てんこ盛りの新世代ハイエンドモデルなので,しょうがないといえばそれまでだが,税込の実勢価格が2万4500〜2万7000円程度と聞いて,さすがに手が出せないと思うゲーマーは少なくないはずだ。正直,LED周りの機能がここまで充実している必要はないので,LED関連の機能をばっさり落とすなどした,それこそ,初代Apexにもあった廉価版たる「RAW」エディションを出してくれると,よりよいのではなかろうか。

 ともあれ,現時点でQS1を搭載する製品は世界でApex M800のみだ。いい感じの操作性に仕上がっているのは間違いないので,気になる人は,ぜひ一度,SteelSeries取扱店でチェックしてみてほしい。

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SteelSeries公式Webサイト

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