レビュー
「バトルフィールド2142:ノーザンストライク」のプレイレポートを掲載
日本はすっかり春だが,地球は氷河期である。ヨーロッパ連合(EU)軍とアジア連合(PAC)軍の存在を賭けた戦いは苛烈の度をさらに深め,ミサイルサイロを取ったり取られたり,タイタンを落としたり落とされたり,地雷を踏んだり踏まれたり(踏まれませんが)といった阿鼻叫喚の戦闘がネットワーク上で果てしなく続いているのである。
とはいえ,本編「バトルフィールド2142」の発売(2006年10月)からすでに約半年が過ぎ,例えばミンスクのマップなら,真ん中の広場に置いてあるへんてこ彫刻の形もソラで画用紙に描けるほどだなぁ,ボカぁ,というベテラン兵士もずいぶん多いだろう。それに伴い,それぞれのマップ攻略法なども次第に確立しつつあり,ベテラン未来兵士としては,そろそろ新しい戦場に出たくなってきたのである。ああ,新鮮な戦場。
と,そんな我々の前についに登場したのがこの「バトルフィールド2142:ノーザンストライク」(以下,NS)なのである。自分で言うのもなんだが,ここまではいい流れである。相変わらず,仕事の早いEA DICEだ。
NSは,エレクトロニック・アーツ言うところの“ブースターパック”。ブースターパックとはそれほど規模の大きくない廉価な追加データ集のことで,欧米では基本的にネット販売だけが行われる(日本ではパッケージ版もあり)。前作である「バトルフィールド2」のときにブースターパック形式の販売が開始され,「アーマードフューリー」と「ユーロフォース」の2種類がリリースされている,ってのはまあ,釈迦に説法でしたね。
このNSはバトルフィールド2142としては初めてのブースターパックで,これまでお伝えしてきたように,3種類のマップと2種類の大型搭乗兵器,そして数々のアンロックアイテムとアワード(勲章とかバッチとかピンとか),さらには「Assault Lines」と名付けられた新しい対戦モードが追加されるのである。
EAによると,今回のブースターパックは「接近戦に焦点を当てた」とのこと。もともと現代戦を背景にするBF2に比べ,歩兵携行武器の火力がSFチックに大きく向上した未来戦争において,歩兵の役割は割と大きいのだが,今回用意されたマップを見ると,なるほどそうか,という印象は強い。
3種類のマップはいずれも適度な大きさで,しかも建物や障害物が多くて高低差も大きいため,いきおい進行ルートは多彩かつ複雑になり,不期遭遇戦が頻発する印象。ビルの屋上に陣取ったスナイパーもいやらしいし,出会い頭の戦闘も多いため,本編のマップと比べてもなかなか緊張感が高いものに仕上がっている。
もちろん,ゲームモードや参加人数などによって同じマップでも雰囲気が異なるのは百も承知,二百も合点なのだが,というわけで,今回は新マップ紹介を中心にNSのファーストインプレッションをお伝えしたい。とりあえずAssault Linesモードで64/32人マップをプレイした戦場経験がメインとなるが,タイタンモードや少人数のマップではまたそれぞれに戦略やセオリーが違ってくるのがBFシリーズのいいところ。なので,「私はその見方にはうなづけん!」という人がいたとしても,ぜひそっと胸にしまっておいてほしい。
■Bridge at Remagen(レマーゲン橋)
新登場のマップのうち,戦域としては最も広く(Port Bavariaもそこそこ広いマップだが,戦闘区域に限ればそれほどでもない),凍てついた大河,ラインにかかる巨大なレマーゲンの橋が戦場の中心となる。ほかの2マップと同様,攻撃側がEU軍,守備側がPAC軍という設定で,Titanモード以外ではガンシップは出てこないため,戦場を圧倒する強力な火力を持った兵器としてはバトルウォーカーおよび新兵器 Goliathが活躍することとなる。
作ったEA DICEはもちろんそれを狙ったのだろうが,橋を挟んだ戦闘がメインとなる展開が非常に多い。スパンの両側にそれぞれの軍勢が陣取り,バトルウォーカーを前進させては破壊され,Goliathを前進させては歩兵の対戦車ライフルで返り討ちにあう。歩兵を高い位置に陣取った狙撃兵が狙い撃ちし,凍てついた川を強行突破しようとする分隊は,対岸と橋梁からの十字砲火を受けて雪原に次々に横たわる。
大変スピーディで分かりやすい戦闘が展開するが,このように橋梁部で戦線が膠着するととくに32人用マップでは攻撃側が不利になる(拠点を一つも取れないわけだ)ので,EU軍には速攻が要求される。64人用マップではまた輸送機の使い方も重要だろう。
■Port Bavaria(ポート・バイエルン)
雪に覆われた山の斜面から中空に突き出された3基の“タイタンポート”が印象的なマップだが,山の麓に陣取る攻撃側のEU軍は,何はともあれどうにかして山頂部に到達しなければ戦争が始まらない。とはいえ,徒歩で駆け上がるのは,まあ無理ではないにしろかなりやっかいで,ポートの下で右往左往しているうちに敵偵察兵の良い標的になってしまうはずだ。
方法としては,APCからのポッド射出が最善というかそれしかなく,とりあえず分隊長をバカスカ打ち上げて,リスポーンポイントになってもらうと同時に,山上にビーコンを設置してもらわなければならない。もちろん,PAC軍はそれを十分承知で防御を固めており,緒戦はEU軍にとって苦しいものになるだろう。しかし中には,よりによってセントリーガンの真ん前に着地するやや抜けたEU軍兵士もいるが,実はそれは筆者のことであり,なんでそんなことになっちゃうかなあ? 斜面を駆け下ってAPCを破壊するPAC軍兵士もおり,これはこれでかなりたまらないので,攻撃一辺倒というわけにもいかないところが悩みのタネ。
しかし,拠点を一つでも制圧すれば,そこを足がかりにあとは総力戦が展開される。山上にはごちゃごちゃと建物が多く,PAC軍はバトルウォーカーや軽ホバーを持っているが,拠点を制圧することでEU軍にもバトルウォーカー,Goliathといった重兵器が登場するため,登っちまえば攻撃側は互角以上に戦えるはず。メリハリのある,面白いマップであり,見晴らしもいい。
■Liberation of Leipzig(ライプチヒ解放)
バトルフィールド2142初のナイトシーンは,毎年8月にGC(Games Convention)が開催されるドイツのライプチヒ市を舞台にした凄惨な市街戦だ。戦域は狭くはないが,廃墟となったビルが建ち並び,また,通れない道路も数多くあるので,出会い頭の息詰まる接近戦があちこちで起きる,非常にエキサイティングなマップになっている。
ナイトシーンと言っても,「バトルフィールド2 スペシャルフォース」にあったような,暗視ゴーグルが必要となるほど真っ暗な場所はなく,夜であることが戦略に影響する局面はほとんどない。とはいえ雪明かりには風情があり,満天の星もまた美しく,地上の喧噪をしばし忘れ,上を向いて歩いていた……ら,平均してほぼ30歩以内で満身に銃弾を浴びることになるので注意が必要だ。
Goliathの頑丈さと攻撃力は圧倒的だが,障害物で道路が塞がれている場所も多いため,スタックしている間にPAC軍歩兵にやられてしまうケースも多い。というわけで,不期遭遇戦はとても興奮できて面白いのだが,自軍の必勝を期するにはこれを避けるにしくはないのである。分隊のNetBatを活用したり,ソナーで敵の位置をいち早く発見したり,UAVを適切に飛ばしたりといった,毎度毎度同じこと言っているようで恐縮だが,各分隊およびコマンダーとのチームワークが重要。ゲームのアクション性を好むプレイヤーにはオススメのマップと言えるだろう。いや,出会い頭で必ず撃ち負ける私としては苦手なんですけどね。
■新兵器
A-3 Goliath(EU軍)
Goliathは装軌式の兵員輸送車で分隊人数と同じ5人乗り。リスポーンポイントとしても機能するところは従来のAPCと一緒だ。さすが,2142年だなあと思うのは自己修復機能を持ち,自動的にダメージから回復するところ。青く光る7か所の修復セルがおしゃれだが,ここを破壊されると回復不能になるので,まさに弱点としか思えない。中にしまっておけばいいのにとも思うが,それは言わない約束なのである。きっと外気が必要なのだ。
武器としてはキャノン砲と,ターゲットにくっついて爆発する対車両用の爆弾もあるが,スプラッシュ効果はそれほど期待できない。移動速度もジリジリするほど遅いので,攻撃兵器というよりは,移動基地/リスポーンポイントとして機能させるのが理にかなっているような気がする。周辺にいる味方兵士に対する,補給と回復の効果もあるし。
Goliathは,それに乗るよりむしろ攻撃して倒すことが面白い。分隊のメンバーと一緒に遮蔽物に隠れ,通りの向こうからゆっくり迫ってくるGoliathを待ち受けるのはまるで戦争映画のワンシーンを体験しているようで,いやなんか,病みつき。いずれにしろ,NSの主役の一人という雰囲気さえしてくる存在感だ。
Type 36 Hachimoto(PAC軍)
PAC軍の新兵器は,EU軍とはきわめて対照的な高速軽ホバー。後部席の連射式グレネードランチャーや,当たり所によってはバトルウォーカーも一撃で倒す誘導式対戦車ミサイルなど,なかなかな侮れない攻撃力を持っているのである。
問題は,ドライバーシート,後部席ともむき出して,攻撃に対してちょっともろすぎるんじゃないの,と思えるくらいもろいことだ。搭乗兵器と乗員は通常,運命を共にするものだが,Hachimotoに限っては,Hachimotoは大丈夫だったが乗務員はやられた,という状況が起こりがち。兵器開発思想として,いかがなものであろうか。
というわけで,攻撃よりはその高速性を生かした拠点制圧に効果を発揮させるといいだろう。操縦は自走砲類と同じく,マウスで方向を決めるタイプ。私は苦手だが,最近これにはね飛ばされることも多いので,上手な人は上手らしい。ホバー式なので,多少の障害物は乗り越えられる。Goliathの陰に隠れがちだが,これはこれでまた面白い兵器と言えるだろう。
■バトルフィールドプレイヤーなら,買って損はない
というわけで,結論。くやしいことに時間がないという人はここから読んでもらっても大丈夫である。
NSで追加された3種類のマップはいずれも個性的で,「接近戦にフォーカスした」という狙いに関してもうまくいっている。2種類の新登場兵器も魅力的だ。ただ,すべてAssault Lines(とTitanモード)なので,これまでのConquestを楽しみにしていた人にはちょっと残念だったかもしれない。
また,新しいアンロックアイテムも現在のところ「こ,これは!」という雰囲気はやや薄いようだ。すべて新アイテムがアンロックツリーの一番上,すなわちその下のアイテムをすべてアンロックしていないと手に入らないわけで,そもそもハードルが高く,その高いハードルを越えてまで……,となるとどうかなあ,という雰囲気。このあたりは人によって,また戦い方によって変わってくるので,個人差の大きいところでもある。
いずれにしろ,販売価格から考えてマップ1種類あたり400円少々となり,新アイテムや新兵器などを勘定に入れなくてもコストパフォーマンスは驚くほど良好だ。さらなるブースターパックの登場を促すためにも(?),未来兵士諸君にはぜひプレイしてほしい。(松本隆一)
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バトルフィールド2142:ノーザンストライク
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