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Access Accepted第787回:「GDC 2024」が開幕。IGFの大賞にノミネートされた6作品を紹介
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印刷2024/03/18 11:00

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Access Accepted第787回:「GDC 2024」が開幕。IGFの大賞にノミネートされた6作品を紹介

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第787回:「GDC 2024」が開幕。IGFの大賞にノミネートされた6作品を紹介

 世界最大のゲーム開発者会議Game Developer Conference 2024が開幕する。大量解雇の報が続く不穏な雰囲気に覆われ始めたゲーム業界だが,新しいエンターテイメントや表現について切磋琢磨するゲームクリエイターたちの姿は凛々しいものだ。本稿では,Independent Game Destivalの大賞にノミネートされている6作を紹介する。


今年のGDCではゲーム業界のどんなトレンドが見えてくるのか


 アメリカ時間の2024年3月18日から22日にかけての5日間,世界最大規模の参加者数を誇るゲーム開発者会議,Game Developers Conference 2024(以下,GDC 2024)が,カリフォルニア州サンフランシスコにあるモスコーニ・コンベンションセンターで開催される。今年で36回目となるGDCでは,ゲームデザインからプログラミング,テクノロジー,ビジュアルアーツ,サウンド,コミュニティマネージメント,マーケティング,さらにはWeb3やAR/VR,人工知能,そして法務や教育まで,幅広いテーマの講義が5日間で700セッションも行われる。コロナ禍以前と同規模となる,3万人ほどの参加が見込まれている。

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 GDC期間中のセッションの一種として,若いゲーム開発者にノウハウを伝授するワークショップが開催されるようになって久しいが,今年からはハラスメントやヘイトの助長といった行為を避けるための知識の共有やデザイン手法を学ぶ「Fair Play Workshop」,そして自作ゲームを販売まで持ち込むプロダクションのイロハを学ぶ「Production Essentials Workshop」が加わっている。
 もちろん,ゲーマーが視聴しても楽しい「クラシックゲーム・ポストモーテム」をはじめとするイベント要素の強いセッションや,数々の新作ゲームのショウケースなどもあり,プログラムは盛りだくさんだ。

 また,会期中に行われるイベントの1つに,1997年にスタートした「Spotlight」というイベントに始まり,今年で28回目という歴史を持つアワード「Game Developers Choice Awards」がある。今年の「生涯功労賞」に,「ストリートファイターII」や「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」など多数の名作ゲームの作曲を行った下村陽子氏が選出されたというのは,ニュース記事でも紹介したとおりだ。女性業界人としては3人目,日本人としては8人目となり,その偉業が称えられる。

 今年の大きなテーマの1つとなりそうなのが「雇用」であろう。当連載の「第776回:ゲーム業界にも冬が到来か。欧米メーカーで相次ぐ解雇の波」や「第786回:ゲーム業界の就職氷河期に光を照らす灯火たち」でも解説しているとおり,現在のゲーム業界の雇用状況は芳しいものではなく,ここ数年のGDCの動向を見る限り,就職口を探して参加する開発者たちも多いと思われる。

 世界中の個人開発者や中小デベロッパが,年間1万作以上と,あまりにも多くのインディーゲームをリリースしているのが,昨今のトレンドだ。そのため,身を削りながらも数年かけて作った作品が,消費者の目に止まることさえままならず,開発者がゲーム作りを諦めざるを得なくなる「インディポカリプス」(Indiepocalypse)などという状況も生まれつつある。そんなサバイバルモードの中,GDCでキラりと光る新作が公開されることにも期待したい。

 4Gamerでは例年どおり,GDC 2024にも取材班を送り込んで,現地レポートを掲載していく予定だ。ゲーム開発者たちがどのような問題に直面したり,あるいは問題を克服してサクセスストーリーを築いていったりしたのか。そして,ゲーム業界での新しいトレンドはどのようなものなのかといった,GDCならではの様々な側面に至る情報をお伝えできるだろう。

 GDC 2024では,前述した「Game Developers Choice Awards」に合わせて,インディーゲームの祭典である「Independent Games Festival」も開催される。本稿では,こちらの大賞である「Seumas McNally Grand Prize」にノミネートされた6作品を紹介しておきたい。


1000xRESIST

開発元:sunset visitor 斜陽過客
公式サイト:https://www.1000xresist.com/

 アニメ映画のようなカットシーンがふんだんに用意された「1000xRESIST」は,エイリアンの襲撃によって生き残った人類が地下生活を余儀なくされているという,1000年後の世界が舞台になるダークなSFアドベンチャーだ。プレイヤーは,「オールマザー」に仕える戦士「ウォッチャー」としてエイリアンとの戦いを続けていくことになる。
 開発を行うsunset visitor 斜陽過客は,アジア系カナダ人を中心とするバンクーバーのデベロッパで, ウォーキングシミュレーター的なナラティブ重視の冒険が10時間ほどにわたって描かれていく。オールマザーの記憶の中に飛び込み,シュールな世界の中で様々な問題を解決したりパズルを解いたりしていくという。



A Highland Song

開発元:inkle
公式サイト:https://www.inklestudios.com/a-highland-song

 「A Highland Song」は,「一刻もはやく灯台にまで来てくれ」という叔父の手紙を信じて家を出た少女のモイラを主人公に,スコットランドの原野をテーマにした100種のステージからなるマップを駆け抜けていく,2Dプラットフォームアドベンチャーだ。山頂に到達すると次に行くべき場所が見えるが,その道は様々に分岐している場合もあり,出会う人々や史跡をとおしてストーリーが紡がれていくという趣向だ。
 「Heaven’s Vault」(2019年)や「80 Days」(2015年)など,これまでもトゥーン調のアートワークが目を惹く作品を手掛けてきたinkleだが,この「A Highland Song」では激しい雨風とどのように対峙していくのかというサバイバル要素が加えられている。スコットランドのミュージシャンたちの協力を受けた,テンポの良いフォークソングが前面に押し出されたリズム感のあるゲームに仕上がっている。



Anthology of the Killer

開発元:Tommy Tone, A. Degen,thecatamites
公式サイト:https://thecatamites.itch.io/anthology-of-the-killer

 最新作の「Face of the Killer」をはじめとする,ヘタウマなアートワークで描き上げられた“コメディホラー”なアドベンチャーゲーム「Of the Killer」シリーズを,1つのパッケージとしてまとめてリリースされるのが「Anthology of the Killer」だ。「歴史は悪夢で,愛されている」という奇妙な町XXのローカル誌のライターBBとして,怪奇な事件を9つのエピソードにわたって体験していくことになる。
 これまで1年に3作,計9作が無料でリリースされ,凄まじい熱量が感じられる。また,全体的にコミカルなタッチながらも,アートや歴史,ファシズム,さらには死生観に至るまで,さまざまな要素を盛り込むクリエイターのA. Degen氏の深い洞察力に定評があるようだ。この手のインディー作品には珍しく,ファンメイドのゲーム解説ページ「Wiki of the Killer」も作られるなど,根強いファンベースを築き上げてきた。



COCOON

開発元:Geometric Interactive
公式サイト:https://www.cocoongame.com/

 今回のノミネート作品の中でも抜群の知名度を持つ「COCOON」は,「LIMBO」や「INSIDE」を生み出したゲームデザイナーのジェッペ・カールセン(Jeppe Carlsen)氏の最新作だ。古代文明が残した様々な機構が点在する異世界で,オーブの力を使ってパズルを解き明かし,それぞれの世界のラスボスであるガーディアンたちと戦っていく。
 先に進むには,オーブを設置してその重さで作動するドアを開けるといった簡単なパズルだけでなく,例えばオレンジ色のオーブならば橋を架けられるなど,オーブに秘められた様々な能力を使って攻略する必要がある。ほとんど説明されないままの感覚的なプレイをとおして,ゲーム世界に引き込まれていくはずだ。



Mediterranea Inferno

開発元:Lorenzo Redaelli, EYEGUYS
公式サイト:https://www.mediterraneainferno.com/

 「Mediterranea Inferno」は,2020年に世界を襲ったパンデミックから立ち直ろうと南イタリアへのひと夏の旅に出た,クラウディオ,アンドレア,ミダの3人が,強い友情で結ばれた絆を再確認していくビジュアルノベル風アドベンチャーゲームだ。3人が抱える秘密や恐怖,執着心が解き明かされていくなかで,身体的暴力,心理的虐待,合意のない性的接触などが,グロテスクなシーンも含みつつ,シュールなビジュアルアートで描かれている。
 2020年の「ミルキーウェイ・プリンス〜ヴァンパイア・スター〜」でも知られるロレンゾ・レダエリ(Lorenzo Redaelli)氏の最新作となり,彼自身が描き上げた数千枚のアートとBGMで構成されている。唐突に訪れる緊張感の高い選択枝を選ぶことで,異なる展開を楽しむという趣向になっており,2時間ほどのプレイスルーを何度か進めて異なる結末を見つつ,トゥルーエンディングに到達していく形式だ。



Venba

開発元:Visai Games
公式サイト:https://venbagame.com/

 「Venba」は,料理をパズル風に描き上げたアドベンチャーゲームだ。1980年代にカナダに移民したインド系タミル人家族にスポットライトをあて,渡航中に傷んでしまった祖母のレシピブックを再現するために奮闘する母,ベンバが主人公となる。まだ移民が少なく,南インド料理を作るための調理器具や材料を売っている場所もなかった時代に,様々な試行錯誤を繰り返しておいしい料理を作り,家族を支える母の姿を,子供の視点で描いたようなストーリーとなっている。
 パズルは調理道具として応用できそうなものを揃えたり,材料をタイミング良く入れたりといったパターンがあり,ストーリーも数時間で終わる短いゲームではあるが,病気の日でもケンカをした日でも,料理を食べることで家族の一体感を保っていくという,しっかりしたテーマが魅力的だ。実際に個人でも料理を楽しめるよう,それぞれのレシピも無料DLCとして公開されている。


※来週(3月25日)は筆者取材のため,休載となります。次回の掲載は4月1日を予定しています。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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