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Access Accepted第581回:「E3 2018」で見えてきた欧米ゲーム業界のトレンド
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印刷2018/07/02 12:00

業界動向

Access Accepted第581回:「E3 2018」で見えてきた欧米ゲーム業界のトレンド

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 もはや時間が経ち過ぎた気もするし,読者の皆さんはもう新情報でお腹いっぱいかもしれないが,今週は「E3 2018」で見えてきた欧米ゲーム業界のトレンドについて考えてみたい。キーワードは「バトルロイヤル」「落ち葉の表現」,そして「女性主人公の台頭」だ。それぞれに,欧米ゲーム業界の最近の傾向が現れているように感じられる。


例年になく新情報が多かったE3 2018


 北米時間の6月12日〜14日に開催されたイベント「Electronic Entertainment Expo」(以下,E3)はもともと,業界関係者オンリーのトレードショーとして始まり,続いてきた。そのため,参加人数で見れば8月にドイツで開催されるgamescomや,9月の東京ゲームショウ,さらにPAX Primeのようなインディーズイベントにもはるかに及ばないが,大手パブリッシャのほとんどが加入する業界団体ESA(Electronic Software Association)が主催するイベントだけに,その影響力は計り知れないほど大きい。
 4Gamerではこの2018年も,開催前に行われるメディアイベントや発表会,開催日のデモ,デベロッパへのインタビューなどを掲載し,関連記事の数はついに200本を超えた。まさに情報の洪水という雰囲気だが,そんな多忙な取材中,会場を歩いていて見えてきた欧米ゲーム業界のトレンドをいくつか紹介したい。

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「E3 2018」公式サイト

4Gamer「E3 2018」特設ページ



バトルロイヤル花盛り


 2017年から一般客の入場が許可されたことで,E3のショーフロアに未発売の新作だけでなく,すでにサービス中のオンラインゲームやアーリーアクセス版を展示するパブリッシャも増えてきた。一般入場者にアピールし,販促につなげようというわけだが,その中で大きなプレゼンスを発揮していたのがEpic Gamesの「Fortnite」だ。
 2017年9月からテストが始まった「Fortnite」は動画配信で徐々に人気を獲得し,E3 2018開催中には同時接続者数でついに「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」を超えたとアナウンスされた。

 Epic GamesはE3初日となる12日に,「FORTNITE Pro-Am 2018」と題されたチャリティイベントが会場近くのスタジアムで行い,歌手や俳優,スポーツ選手らからなるアマチュアのセレブ達とプロゲーマーがタッグを組んでのマッチを披露した。日本からも,女性ゲーマーのななかさんと,タレントでYouTuberのてんちむさんが招待されている。イベントフロアでも,サウスホールに「バトルバス」などの大型プロップを持ち込んだ派手なブースを構えていたほか,任天堂ブースでは発売されたばかりのNintendo Switch版が公開されるなど,全体的にかなりのイケイケムードだった。「PlayStation 4ユーザーはNintendo SwitchでFortniteアカウントにアクセスできない」ことがバズったのもE3 2018期間中の出来事だ。

大型プロップが並び,インスタ映えするEpic Gamesのブースには,多くの「Fortnite」ファンが詰めかけた
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 「Fortnite」に限らず,バトルロイヤルの人気が高まっていることは,会場を少し歩けばさらに明白になる。Activisionの「Call of Duty: Black Ops 4」とElectronic Artsの「Battlefield V」という,まさにFPS界の双璧とも呼べるタイトルが独自にアレンジしたバトルロイヤルモードを追加するとアナウンスしたほか,Microsoft Gamesは8人のプレイヤーがバトルロイヤルを行う「Darwin Project」のアーリーアクセス版をストリーミング配信。Hi-Rez Studiosはファンタジーベースのバトルロイヤル「Realm Royale」を展示し,Focus Home InteractiveとVostok Gamesは,チェルノブイリ原発事故で発生した汚染地帯を舞台にした「Fear the Wolves」を展示していた。
 インディーズでは,1000人のプレイヤーが対戦する「Mavericks: Proving Grounds」や,見下ろし型視点の「Rapture Rejects」が公開されており,それぞれにユニークなバトルロイヤルゲームが,これでもかというほど姿を見せていたのだ。

 かつてはデスマッチぐらいしかなかったFPSにチーム対戦が登場し,ミリタリーものの人気の波に乗って一大勢力を築き,次いで「Left 4 Dead」を嚆矢とするオブジェクティブなCo-opが流行した。バトルロイヤルも今後,オンラインゲームでは普通にあるモードになっていくのだろう。


偶然か必然か,
紅葉の表現がグラフィックスのトレンド?


 Microsoftが北米時間の6月10日に開催した「The Xbox E3 2018 Briefing」。そこに登場したオープンワールド型のレースゲーム「Forza Horizon 4」で大きく注目されたのが「四季の表現」だ。驚いたことにゲームの中で夏から秋へと景色が移り変わり,冬になれば池が凍り付いて新たなコースが出現し,やがて氷が溶けて新緑の春を迎えるといった四季の変化が表現されていたのだ。
 面白かったのは,スクリーンに映るゲーム映像が秋になると共に,会場であるMicrosoft Theaterの天井から赤や黄色のプラスチック製の紅葉が大量に投下されたことだ。映像に合わせて雨や雪はさすがに降らなかったものの,印象的な演出だった。

 翌11日には,Sony Interactive Entertainmentが「PlayStation E3 Media Showcase」を開催したが,こちらでは日本の鎌倉時代を描くSucker Punch Productionsの「Ghost of Tsushima」が公開された。上映されたトレイラーの中で印象的だったのが,主人公のジンと武芸者マサコが対決するシーンで,キャラクターの足の動きに応じて舞い上がる紅葉の表現だ。こちらも,イベント後のパーティ会場の床にプラスチック製の紅葉が敷き詰められるという演出が行われていた。

キャラクターが動くと,その動きに応じて紅葉の葉が舞い上がる,非常に美しいグラフィックスが印象的な「Ghost of Tsushima」。2019年発売のPlayStation 4向けタイトルの中でも注目すべき作品の1つだ
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 さらに同日,Bethesda Softworksが開催したイベント「2018 Bethesda E3 Showcase」で,またしても紅葉が。「Fallout 76」のトレイラーで主人公が核シェルターから外界に出てきたとき,最初に目にするブルーリッジ山脈に広がる秋の風景だ。名曲「カントリー・ロード」でも歌われている山々だが,「核の冬」で植物が全滅したはずなのに,なぜ,あれほど美しい景色が広がっているのかは謎である。いずれにせよ,「Creation Engine」で描かれたゲーム世界では,ヒラヒラと風に舞う落葉の様子が表現されていた。

 もちろん,異なるメーカーのデベロッパが示し合わせてリアルな落葉の表現に挑戦するわけはなく,たまたま重なっただけだろう。とはいえ,コンピュータの能力が向上していくに連れて,例えば影の表現だったり,雲や波の物理演算だったりなど,そのときどきのトレンドに合わせて各メーカーが技術を競ってきたという歴史もある。2018年以降,「弊社の落葉表現は他社に比べてここがすごい」といった競争が繰り広げられることになるかもしれない。


キャラクターの性別についての話題


 今年のE3では,「女性キャラクター」にまつわる話が多く聞かれた。森に隠れて戦うという新たな技術を獲得した「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」ララ・クロフトと,残酷な世界で復讐に燃える「The Last of Us Part II」エリー・ウィリアムズは,どちらも戦う女性の代表だ。The Coalitionの「Gears 5」(Gears of War 5)では,シリーズ初となる女性主人公のケイトが登場して我々を驚かせたし,Remedy Entertainmentの新作「CONTROL」ではジェシーという女性が,そしてFocus Home Interactiveの「A Plague Tale: Innocence」では混乱の中を生きる少女アミシアが主人公になっている。

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 もっとも,トレンドとしては男女どちらかのキャラクターを作成または選択する場合が多い。「Mass Effect」シリーズの伝統を受け継ぐElectronic Arts/BioWareの「Anthem」や,CD Projekt REDの「サイバーパンク 2077」では,男女いずれのキャラクターが選ばれてもいいようにボイスデータが用意されるし,Ubisoft Entertainmentの「アサシン クリード オデッセイ」では男女どちらかのキャラクターを選んでゲームをプレイしていくことになる。Deck 13 Interactiveの「The Surge 2」も,前作とは異なりプレイヤーが好みの主人公キャラクターを作成できるようになった。

 また,「Battlefield V」でも,第二次世界大戦の歴史では取り上げられることの少ない女性兵士達にスポットライトが当てられるようだが,史実を改変してまで女性キャラクターの出番を増やすことにどれだけの意義があるかという議論も,ファンの間では行われているようだ。女性キャラクターの多い作品に女性ファンが多いことから,そうした層を開拓しようとしているのかもしれない。

 「PC Gaming Show」で映像が公開された「Rapture Rejects」に至っては,キャラクター制作時の性別の項目を撤廃し,例えば女性っぽいキャラクターでもひげを生やしたり,男性っぽいキャラクターなのに胸があったりなど,いわゆる「ジェンダーニュートラル」なキャラクターを作り出せる。

前作「バトルフィールド 1」でも女性キャラクターにスポットライトが当てられたが,「Battlefield V」にも同様に,個性的な女性キャラクターが登場するようだ
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 ゲームは,クリエイターが表現を行うメディアであると同時に,販売目的で作られる商品だ。メーカーが少しでも多くゲームを売ろうと思えば,トレンドに敏感にならざるを得ないし,結果として過度のバトルロイヤル人気や,増える女性主人公など,同じような方角に向いてしまうのも仕方ないことだろう。つまり,E3 2018で見られた欧米ゲーム業界のトレンドは,我々ゲーマーの多数が求めている何かが形になって出現したものだとも言えそうだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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