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剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第114回:ブルーマン(Blue Men of the Minch)
古くから海の冒険には危険がつきものとされ,モンスターなどが棲息する伝説の危険水域も多く言い伝えられている。代表的なところでは,スキュラやカリュブディスが生息するメッシーナ海峡,船の墓場として知られるサルガッソー,バミューダトライアングルなどが良く知られている。
ミンチ海峡も,そうした魔の海域の一つ。この海峡は,スコットランド北西沖のシーアント諸島とヘブリディーズ諸島の間にあり,ブルーマン(Blue Men of the Minch)と呼ばれるゴーストが,船人達を襲うという伝承が残されているのだ。
ブルーマンは海の悪霊で,その名前は青ざめた顔をしているからだとも,青い刺青を入れているからだともいわれている。普段から海中を漂っているようで,船を見つけると沈没船とともに浮かび上がり,集団で襲いかかるとされている。
伝承によればブルーマンの船長は,これから繰り広げられる惨劇を歌い上げ,その歌が終了すると共に攻撃を開始するという。しかし,ブルーマンの歌が終わりそうになったら,その内容を否定する歌を返すと,ブルーマンはもっと恐ろしい歌を歌うので,今度はそれをさらに否定する歌を返し……といった具合に時間を稼げば,襲われずにすむかもしれないそうだ。もしブルーマン達の歌が終了したところで否定の歌を返さなければ,歌の内容どおりの惨劇が繰り広げられることになる。
ちなみにブルーマンの船は,異常な速度で海を走るため,逃げ切ることは難しい。彼らが悪霊であるならば,ホーリーシンボルや聖なる祈りで撃退できる可能性もあるが,そうした手段を用いて追い返したという伝承は残されていない。
ブルーマンのルーツにはいくつかの説があるが,その中でも有力なのは,ノルウェーの海賊によって捕虜となり,アイルランドに置き去りにされてしまったムーア人ではないか,というものだ。ずいぶんと生々しい話だが,当時の歴史を考えると,ありそうな話ではある。
伝承を調べていたところ,ブルーマンを捕獲したという記録も残されていたので紹介してみよう。これは1900年に書かれた「スコットランド高地地方と島々の迷信」に書かれている逸話だ。ある晴れた日,とある水夫が,水面を漂っていた人を船に引っ張りあげたという。しかし,なにやら怪しい雰囲気が漂っていたので,念のために縄でぐるぐる巻きにしたのだ。
その後航海を続けていると,水面に何かがうごめいた。それはダンカンとファークハーという名前の二人のブルーマンで,船めがけて一直線に進んできたのである。二人のブルーマンの声を聞くと,縛られていたブルーマンはムクリと起き上がった。そして,縄をするりと抜けると,二人のブルーマンと共に海中に消えていったという。
ちなみに,ブルーマンが寝ている間は嵐などは起こらず,晴れているという言い伝えもあるので,下手にちょっかいを出して嵐などに巻き込まれないよう注意したいところだ。
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