連載
剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第104回:ナーガ(Naga)
前回ガルーダを主役にナーガとのライバル関係を紹介したので,今回はナーガ(Naga)について詳しく紹介しよう。
ナーガは,インド神話に伝わる蛇の魔物/蛇神だ。容姿についての記述はさまざまで,蛇として描かれる場合は,巨大なコブラだったり,複数の頭を持つ蛇だったりする。また,上半身は人間で下半身は蛇という半人半蛇の姿も有名で,こちらはファンタジーファンにもなじみ深いものだろう。半人半蛇の場合,頭部にコブラを象徴する飾りなどをつけていることが多い。
ちなみにナーガとは男性形であり,女性形はナーギー(Nagi)やナーギニー(Nagini)という。ナーガの女性は美しい容姿をしているので,木陰から美しい女性が呼んでいるので近づいてみたら,実はナーガだった……なんていうことも(インド神話の中では)あったのかもしれない。
強大な力を持ったナーガの王は,ナーガラージャ(Naga Raja)と呼ばれて恐れられている。王には,アナンタ(Ananta),ムチャリンダ(Mucalinda),タクシャカ(Taksaka)など,とくに有力なものも存在する。
ナーガは蛇をベースとしたモンスターなので,ゲームなどでは毒属性の特殊攻撃をしかけてくることもある。半人半蛇型の場合は腕があるため,武器をふるって襲いかかってくることもあるが,それには毒が塗られている可能性が高いので注意が必要だろう。
ナーガは比較的メジャーなモンスターであり,多くのRPGに登場している。モンスターファームシリーズやファイナルファンタジーシリーズ,真・女神転生シリーズなどで,ナーガと戦った(あるいは仲魔にした)という人もいるのではないだろうか。
ナーガという名前は,サンスクリット語で蛇という意味を持つ。有名な話だが,ガルーダとはライバル関係にあり,これは母親同士の争いに起因している。それについては,前回の連載記事で紹介しているので,まだ読んでいないという人はぜひ確認してほしい。
なお,ガルーダと雷神インドラにまんまと出し抜かれ,不死の霊薬アムリタを取り返されてしまったナーガ達だが,その後,アムリタがあった場所にその滴が残っていないかと舐めたところ,鋭い葉によって舌先を切ってしまった。今日,蛇の舌先が分かれているのは,このためだという逸話も残っている。
ガルーダとナーガの関係を見る限りでは,ナーガは悪者として見られがちだが,ナーガ信仰というものも存在した。これはナーガを,水と豊穣の神であるとしてあがめるもの。また,蛇の交尾の時間が長いことから,生殖や安産の神として信仰の対象になることもあったそうだ。
ナーガが活躍する有名なエピソードとしては,ナーガが釈迦の瞑想を守り続け,やがて釈迦が悟りを開くというものがある。ナーガの守護に感謝した釈迦はナーガと暮らすようになり,釈迦の弟子達もナーガを守護者として迎え入れたという。ほかにも,インドの戯曲には,ガルーダによって絶滅の危機に瀕したナーガを,一人の王子が命をかけて救うというものもあるなど,ナーガの人気もかなりのものである。なお,真偽のほどは定かではないが,こうしたナーガのイメージが中国などに伝播し,その後の龍のイメージに影響を与えたという説もある。
|
- この記事のURL: