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印刷2008/08/25 21:28

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剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第98回:開明獣(かいめいじゅう)

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第98回:開明獣(かいめいじゅう)
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 中国最古の地理書といわれている「山海経」(せんがいきょう)によると,中国の西方には,崑崙山(こんろんさん)があるとされている。そこには天帝や西王母といった神や仙人,鳳凰などの神獣が生息するほか,不死の植物,食べても減らない鳥など,摩訶不思議な生き物が多数存在するとされていた。崑崙山は「封神演義」「西遊記」などにも登場する場所なので,名前くらいは聞いたことがあるという人も多いだろう。今回は,崑崙山の門番である開明獣(かいめいじゅう)について紹介してみたい。
 「山海経」の11巻にあたる「海内西経」によれば,崑崙山は四方が八百里,標高一万仭,九つの井戸と門がある山であり,東の正門(開明門)の前にある大岩の家には,門番として開明獣という神獣が鎮座しているという。
 開明獣は,虎のような身体に九つの人面を備えている(虎の体に人の頭,9本の尾を持つともいわれる)。明確な記述はないが,神の命で崑崙山の門番の任についていることと,名前に“開明”(聡明などの意味)を冠していることから,高い知能を持っていると考えられる。また虎は中国やインドにおいて,強力な獣の代表格であることから,戦闘力が高いとことも想像できるだろう。
 高い知能と戦闘力,そして門番という特徴は,どことなくスフィンクスを彷彿とさせる。門番としてのモンスターには,スフィンクスとエディプス,ケルベロスとヘラクレス,カロンと勇者達のように,モンスターと英雄との駆け引きをテーマとした逸話が残されていることが多い。これらの逸話では,強力な門番をどうだますかが最大の見どころだが,残念なことに開明獣に関しては,英雄と知を競ったり,力比べをしたりといった記録は残されていない。ひょっとすると,門をくぐろうとした者は一人残らず倒されてしまったのかもしれない。

 

 崑崙山には開明獣だけでなく,山の四方を守護する神獣/神がいるらしい。四聖獣というと,青龍,朱雀,白虎,玄武が有名だが,崑崙山に住むのはそれとは別のものだ。こちらも,開明獣に負けず劣らず興味深い存在なので,ここで紹介しておこう。

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・句芒(こうぼう)
手に方位磁石を持った,人の頭を備える鳥人間。2匹の龍に乗り,空を駆ける。寿命などを司る能力を持っており,崑崙山の東を守護する存在と言われている。
・蓐収(じょくしゅう)
2匹の龍に乗り,空を駆ける子供(?)。左耳に蛇をつけている。崑崙山の西を守護する存在と言われている。
・祝融(しゅくゆう)
神農の玄孫として知られる。人の頭に獣の身体を持ち,2匹の龍に乗っている。火を操ることに長け,崑崙山の南を守護する。
・禺彊(ぐうきょう)
人の頭を持つ鳥人間。2匹の青い蛇を両耳の飾りとし,足下にも2匹の蛇がいる。崑崙山の北を守護する存在。疫病を運ぶと恐れられているが,天帝の命令で大亀たちを率いて渤海の島々を安定させた功績を持つ。
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 これらの4種類の神が崑崙山を守護しており,天帝などの命によって,付近を監視しているという。なお中国の伝承によれば,東の果てには度朔山(どさくざん)というものもあるそうで,崑崙山と対になる山とも考えられていた。崑崙山にはさまざまな神獣や仙人が住んでいるが,果たして度朔山はどうなのだろうか。機会があったら,ぜひそちらに関しても紹介してみたい。

 

次回予告:九尾の狐

 

■■Murayama(ライター)■■
奥さんとの話し合いの結果,来月から「お小遣い制」が導入されることになったというMurayama。お小遣いがいくらなのかは詳しく聞かなかったが,「ゲームを取るか,酒を取るか悩む」とのことで,なかなか厳しい状況が彼を待ち受けていそうだ。とはいえ,以前から大注目していたMMORPG「Warhammer Online: Age of Reckoning」のCollector's Editionを,2パッケージ分買っているところを見ると,酒よりもゲームを取るということなのだろう。
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