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剣と魔法の世界における代表的な雑魚キャラとして,オーク,コボルド(コボルト),ゴブリンといった種族を連想する人も多いだろう。いずれも,一般的なファンタジー世界では定番といえる存在で,ひよっこ冒険者に経験値と小銭を提供してくれるモンスターでもある。ここでは,そうしたモンスターの中から,ゴブリン(Goblin)について紹介してみたい。
一般的にゴブリンは,人間よりも小柄で,醜く不潔な種族だとされている。主な生息地はダンジョンや地下の洞穴で,独自の社会制度や言語を持ち,作品によっては戦士だけではなく,シャーマンなど魔法を操るクラスも存在する。人間には敵対的で,戦闘では粗末な武具や爪を使って攻撃してくる。考えなしの数頼みといったところが基本戦術なので,数にさえ注意すればそれほど苦戦することはないだろう。たとえ数が多かったとしても,スリープなどの魔法を使えば楽に戦えるだろうし,ファイヤーボールなどの派手で強力な攻撃魔法を放てば,一瞬で片が付きそうだ。
いずれにせよ,初級冒険者にはいい相手,中級以上の冒険者にとっては雑魚でしかない。なお上位種としてホブゴブリンを設定している作品もある。こちらはゴブリンよりも立派な体つきをしており,場合よってはゴブリン達を率いるボスとして登場することもある。通常のゴブリンのつもりで手を出すと,思わぬ反撃を受けることもあるだろう。
ちなみに,ゴブリンをテーマにした映画が存在するのをご存じだろうか。それは1986年に公開された「ガバリン」で,自殺した叔母の館を舞台に,作家のロジャーが怪奇現象を体験するというお話。ヨーロッパの伝承におけるいたずら好きの妖精ゴブリンと,モンスターとしてのゴブリンを上手く反映した内容となっている。なお「ガバリン」というタイトルに違和感を持つかもしれないが,原題では「Goblin」となっている。続編も作られており,1987年には「ガバリン2」,1991年には「ガバリン3」が公開された。
西洋の民間伝承に登場するゴブリンは,ゲームの中ほど凶悪な存在ではない。そのほとんどは,鉱山などに生息するいたずら好きの小妖精でしかないのだ。鉱山でランプの炎が消えたり,置いておいたつるはしが移動したり,誰もいないはずの場所で石が転がる音がしたりといったことは,ゴブリンの仕業とされていた。
またホブゴブリンについては,家に住み着く善良なゴブリンをそう呼ぶとされており,どちらも多少は天邪鬼な性格であったかもしれないが,人間と近しい存在だったといえる。だからこそ,数々のおとぎ話などにも登場し,親しまれていたのだろう。
ところが,やがてゴブリン達は悪役として定義されるようになる。それは唯一絶対の父としての神をいただく,キリスト教が力を持っていったからだ。キリスト教にとって,民間信仰の類は布教の障害でしかなかった。そのためキリスト教が力を持った土地では,民間伝承に登場する妖精達はことごとく悪魔とされたり,邪悪なモンスターにされてしまったのだ。もちろん,これにはゴブリン達も含まれており,清教徒が伝える歌の中には,ゴブリンを悪とするものが残されている。
こうして,鉱山や家に住むいたずら好きな小妖精達は,次第に不潔で邪悪な種族という地位へと追い立てられていったのである。さらにゲームなどでも,ゴブリンは悪の手下として採用されるようになり,人々に害をなす存在として広く認知されていった。そして現在のゴブリン像が出来上がったというわけだ。
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- 著者:村山誠一郎
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- ISBN-10:4797346434
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