レビュー
シムズ2シリーズの最新データセット「シーズンズ!」のプレイレポートを掲載
3月22日にエレクトロニック・アーツから発売された「ザ・シムズ2 シーズンズ! データセット」(以下,シーズンズ)は,世界的に大人気の人生シミュレーション,「ザ・シムズ2」の気がつけば5番目の追加データ集となる。今回のテーマは「自給自足」である。いや,メーカー側のコピーは「ようこそ,四季(シーズン)のある生活へ」となっているのだが,たいていの場合,一筋縄ではいかないのがシム人ワールド。お店を経営して大儲けするはずだった「ハッピーショップライフ!」で破産し,象牙の塔の住人になるはずだった「キャンパスライフ!」では成績不振から退学を余儀なくされ,彼女ができてウハウハのはずの「ホットナイト!」では三角関係のドタバタに巻き込まれてきたという経験豊富な私が言うのだから間違いはない。
なにしろこのデータセットは,庭に作物を植えたり果樹を育てたり,池では魚釣りしたりと,第一次産業に大胆にスポットライトを当てた全米驚愕の一本なのだ。ここまでやられては,あとには退けないというものであろう。
というわけで,新しい町「リバーブロッサム・ヒルズ」へやってきたのは“シーズン・マツモト”という前途洋々たる好青年。彼の希望は「農園王」である。コロンビアのコーヒー王のような,フィリピンのサトウキビ王のような,アメリカ南部の綿花王のような,やがてはそんな大規模農園を経営して大金持ちになって豪邸に住んで,えーと……(編集部注 筆者は金持ちの暮らしが思いつかない),えーと,メイドさんを30人ぐらい雇いたいというのが彼の希望なのである。本当は私の希望だが。とりあえず買った家の庭についていた,なんちゅうか,大きめのネコの額ぐらいの家庭菜園に肥料をまくことからスタートする。千里の道も一歩からというが,なんだかこれはアリの一歩のようにも……。
例によって,家を買って引っ越しをしたら手持ちの資金はほとんど残らない。普通はここで就職するわけだが,テーマが自給自足である以上,そういうわけにはいかないと固い決意のマツモトだ。たまに来る請求書の金額は微々たるものだからいいとして,まあ,家具もしばらく耐乏生活を送るからいいとして,問題は食費だ。当然ながら冷蔵庫の中身は使うと自動的に減っていく。なくなれば配達を呼んで補給するか,どこかへ買いに行かなくてはならない。生きていくということは大変なのだよ,諸君。
だが,この自給自足をテーマにしたシーズンズでは安心だ。野菜を作って食べられるし,裏の池で「釣り」もできる。釣った魚は魚拓というか剥製というか,食べるだけでなく壁に飾ったりもできる。というわけで,しばらくは釣った魚を食べるのである。なんだかいきなりビンボーっぽい雰囲気だが,やがて大農園王になった暁には,膝の上に乗せた孫に若い頃の苦労話を聞かせてやるとしよう。
さっそく菜園に肥料をまき,トマトを植える。スキルが低いうちは,トマトしか植えられないが,経験を積むにつれてコショウやイチゴ,ナスやキュウリ,インゲンなど,さまざまな作物を植えられるようになるので安心だ。それから,裏の池に行って魚釣り。最初はエサとしてワーム(虫ですね)しか使えないが,スキルを積んで才能バッジを手に入れればさまざまなエサを使えるようになり,高い釣果が期待できるので,これも安心だ。なんだか絶好調だ。しかも,これまでのシム人は食べ残した食事を惜しげもなくゴミ処理機に放り込むという1950年代のアメリカを思わせるライフスタイルだったが,今回から,食べ残しを冷蔵庫にしまうことができる。大家族にはあんまり関係ないかもしれないが,私のような独身者には嬉しい機能。いや,ゲームの話です。
■大農園王マツモト,田園生活を始める
ところが,である。その晩から突然の降雪。はじめはパラパラという感じで「ああ,いいねえ」てなもんだったが,雪は降り止まず,やがて激しい吹雪となって,翌朝にはすっかり一面の銀世界だ。育ち始めのトマトは菜園ごと雪に埋もれ,クリックしてみるとどれも「病気」。雪の下なんだから,そりゃそうですね。
「たくさん手入れする」や「たくさん水をやる」などを選んでトマトの救済に努めたが,いくつかは無情の「枯死」で,未来の大農園王マツモトのささやかな家庭菜園はシシルイルイの悲惨な状態に。すでにお気づきかと思うが,だいたい冬の最中に作物を植えようというのがイカンのであり,うーむ,まいったなあ。仕方がないから雪ダルマを作成したり,スノーエンジェル(雪の上に寝転がって手足をバタバタさせる)作ったりして冬をエンジョイしてみたが,今度はマツモトが寒さで“凍って”しまって病気になり,夕食のために魚を釣ろうと池に行ったら,池の表面が凍ってしまって釣りも不可能である。
うう。ふ,冬は厳しい。アメリカ大陸にたどり着いた清教徒102人のうち約半分が最初の冬に死んだというが,そんな雰囲気さえ漂って来るではないか。それほどでもない?
そうこうしているうちに,ページもあまりないため,やっと待望の春が訪れた。いよいよ大農園王マツモトの季節である。ちなみに,にっちもさっちもいかないので,ちょっと就職して資金を貯めたというのは,最初に掲げた自給自足という目的に反するので,ここだけの秘密にしていただきたい。
だいたい,ちまちま菜園なんか作っているからダメなのである。生き残ったトマトの木からは「味気ないトマト」が8個しか採れず,売値は一個あたりたったの6シムオリオン。肥料が一袋10シムオリオンかかっており,それを10袋以上使ったので,難しい表現を使うと赤字である。大赤字。
というわけで事業には冒険が必要だと,「心地よい地球の泥」を大量購入して菜園の面積を広げると同時に,果樹園も作る。シーズンズには「いいにおいの木」シリーズ3種類(オレンジの木,リンゴの木,レモンの木)が用意されているので,かなり高価なのだが奮発して庭に並べてみたのである。さらには,もうほとんど破産寸前なのだが,エコな害虫駆除システム「テントウムシの小屋」だの「たい肥製造器」だのスプリンクラーだのを腹をくくって購入する。
これでもう豊穣の秋は約束されたも同然である。あはははは。大農園王マツモト。
■それぞれの季節には,それぞれの持ち味がある
そんなベティとマツモトは恋に落ちているのである。なんでそんなことになっちゃったのかといえば,もちろん私のせいだ。冬,お金のない大農園王があんまり腹を空かせてかわいそうなので,私は手近なヴィージョ家をプレイしてマツモトを家に招待し,夕食をごちそうしたのである。ベティとは,ヒルズ・コミュニティセンターの池で釣りをしているときにすでに知り合っており,まあ,相性も良かった。
とはいえ,シムズ2プレイヤーならとっくにご存じの通り,これはまったく意味なし。ヴィージョ家を抜けてマツモト家に戻ると,大農園王は相変わらず腹ぺこ状態のままで,夕食に招待されたことは“なかったこと”になっている。だが,それを機縁としてベティとマツモトが急速に接近したのだから,男女の仲とは分からぬものである。年上好み?
だが,二人が恋に落ちたもう一つの理由は,「春は恋の季節」だからだ。たぶん,Electronic Artsのシーズンズ開発チーム世界戦略会議で「夏は暑く,冬は寒い。秋は収穫の季節。でも,春ってなんすかね?」「恋だよ,キミィ」てな会話が交わされたのだろう。そう,春は恋人のシーズンなのである。
……それにしても,いや,困ったなあ。お金も持っていそうだから,いっそのことベティと同棲しちゃおうかなあ,うーん……。
ここでまあ正直に告白してしまうのだが,このプレイレポートではマニュアルにも載っている禁断の秘技を使って加齢を停止している。春夏秋冬合わせてシム人時間で約20日ほどだが,普通,成人でいられるのもそれくらい(願望の報酬で「命のエリクサー」を使う手もある)なので,シム人はたったの一年で成人から老齢者になってしまうわけだ。ヒヨコ並の成長速度である。健康でいる限り老後もけっこう長いのだが,それでは青雲の志を抱いた青年が農業で成功する物語を堪能したい私としてはちょっと不満なのね。いろいろと実験もしたいし。
■農園王マツモトを襲う,大自然の脅威
ホタルを捕ってビンに入れることもできるが,地べたに座って星空を眺めるのもまた田園生活の楽しみといえるだろう。ときどき昼間にもホタルが飛んでいることがあるが,これはホタルじゃなくて木に害虫がついてそれがブンブン飛んでいるだけなので,ああ情緒があるなあ,と言ってる場合じゃないだろう。さっさとスプレーしたほうがいいので要注意。
さあ,いよいよ果樹園のレモンやオレンジ,リンゴが色づいてきたようだ。だが,まだ収穫の季節ではない。木々をせっせと世話して,その状態を「健康」から「繁栄」まで持って行かなくては「よだれが出そうなリンゴ」「よだれが出そうなオレンジ」などといった優秀な果実を収穫できず,ひいては高値で売れないのである。
しかし,基本的に果樹や菜園の世話は楽しい。普段,あまり働くことが好きではなさそうなシム人も,これをやらせると「楽しさ」レベルがみるみるアップする。雑草を取り,水をやり,農薬をスプレーし,またスプレーし……。そんなある日,マツモトにとんでもない異変が起きた。
大切なオレンジの木の周りを害虫が飛んでいるのを見つけた彼は,さっそく農薬のスプレーを開始したが,そのとたんボワーン! と緑色の煙が彼を包み,煙が薄れたとき,そこに立っていたのは,えー,なんというか,すっかり緑色になって葉っぱの服を着たマツモトである。これがウワサの「植物シム」だ。農薬を使いすぎることによって変身してしまうというのだが,とはいえ,テントウムシの小屋はあんまり役に立たないので,虫が付いたらスプレーしかないと思うのだけど。
だが,なってみると植物シムはいろいろと便利であることに気がついた。なにしろ食事の必要がない。彼らに必要なのは「水分」と「日光」と「愛情」だけで,空腹や便意もなく,疲労もしないのである。しかも,植物とお話できるうえ,話しかけられた植物はみるみる健康を取り戻していくから大変助かる。まさにスプレーいらずなのだ。さらに驚異的なのは,「植物ベビーを増やす」こと。頭を振ってタネをまくだけで,あーら不思議,そこに赤ん坊が出現するのだ。これまでは,どこかで相手を見つけ,あれやこれや手を尽くして愛情度を高め,結婚式を挙げて(これはまあ,オプションだが)初めて子供が生まれたわけだが,植物シムにはそんな手間ヒマは不要。家族の系譜が妙な具合になってしまうが,男女交際まわりに弱点を抱えた私は,以前から「人間もミジンコみたいな単為生殖ができないかなあ」という希望を持っていたこともあり,これはすばらしい。これこそまさに究極の自給自足といえるだろう。
かくして,農園王マツモトの野望はまた一歩その実現に近づいた。近づきはしたのだが,とはいえ,なんとか彼を元の姿に戻す方法はないかと模索中でもある。なんだかピーターパンみたいで,豪邸の農園王としてはいかがなものかという雰囲気なきにしもあらずだからだ。新アイテム「圧搾マシン」と野菜やフルーツを使って作るジュースに秘密があるのではないかとやぶにらみしているのだが,今のところ見つかっていない。
そんなわけで,シーズンズ。いつもながら駆け足のプレイレポートで恐縮だが,既発売のデータセット中,最も地味な印象を与えつつも,例によってシム人社会にさまざまな面白みを加えるツボを押さえた作りとなっている。言うまでもなく,ほかのデータセットや追加パックとの連携でさらに多彩な展開が期待できるはずで,ハッピーショップライフ! を使った八百屋さんの経営や,ペットライフ! による雪上犬は喜び庭を駆け回る状況,そして「ウィンターパック」と「ゴージャスパック」によるセレブなホワイトクリスマスの演出などなど,あなたのシム人ライフをより豊かなものにしてくれるだろう。
たぶんないとは思うが,続きはいずれまた。(松本隆一)
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ザ・シムズ2 シーズンズ! データセット
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