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[GDC 2009#17]なんのためにボスキャラがいるのか? 「Left 4 Dead」に見る,プレイヤーをCo-opに誘う仕掛け
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印刷2009/03/27 17:05

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[GDC 2009#17]なんのためにボスキャラがいるのか? 「Left 4 Dead」に見る,プレイヤーをCo-opに誘う仕掛け

 Co-op(協力プレイ)に特化したFPSとして開発された「Left 4 Dead」(以下,L4D)は,当初言われていた「そのような人気のないゲームモードをメインにして大丈夫なのか?」という疑問を吹き飛ばす,世界的なヒットとなった作品だ。メディアの評価も総じて高く,現在までに250万本近いセールスを記録している。

 Co-opというニッチ市場をターゲットにしながら,なぜこのようなヒットに至ったのか。その秘密を解き明かそうというのが,今回の「Replayable Cooperative Game Design: Left 4 Dead」(Left 4 Deadの繰り返し遊びたくなるゲームデザイン)と題されたレクチャーだ。
 ちなみにL4Dについて詳しくないという人は,下記の4Gamerで掲載したレビュー記事を参照していただきたい。

【関連記事】
ゾンビで溢れる町に生き残った4人の男女の運命は? Valveの新作FPS「Left 4 Dead」のレビューを掲載

立ち見まで出た,超満員のレクチャールーム。「Left 4 Dead」の人気の高さを証明しているようだ
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特殊感染者(ボスキャラ)の存在理由


ゲームデザイナーを務めるMichael Booth氏は,軽妙な語り口で会場を沸かせていたが,レクチャーの内容はかなり突っ込んだもので,Co-opモードをメインとしたゲーム開発を考えている開発者には刺激的だったのではないだろうか
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 登壇したのは,本作の開発元であるValveのMichael Booth氏だ。氏は,長いキャリアをもったベテランプログロマー。現在はValveの傘下に入ったTurtle Rock Studiosで働いており,以前はマルチプレイFPSの金字塔である「Counter-Strike」の開発にも携わったという経歴を持つ。そんな彼の中で,L4Dは「もう一つのCounter-Strike」だという。

 4Gamer読者にはご存じの方も多いと思うが,Valveは,「Half-Life」「Half-Life 2」というシングルプレイFPSで名を挙げたデベロッパだ。そのHalf-LifeをベースにしたマルチプレイFPSであるCounter-Strikeシリーズは,多くのコミュニティを形成するロングセラータイトルであり,また同作に採用されているAI-BOTにも定評がある。

 L4Dの開発は,そうしたValveの持つ経験やノウハウを集約させることで,「何度でも遊べる新しいオンラインマルチプレイゲームを作れないか」という試みからスタートしたものらしい。企画当時は,Co-opはあまり人気があるジャンルではなく,それをメインとするデザインに高いリスクがあることは,もちろん彼らも十分に承知していた。しかし,そこをどうするかも,開発の重要な眼目(がんもく)になっていたようだ。
 そこでBooth氏らは,次のような方向性を打ち出したという。

・自然に協力プレイをするようなシステムを盛り込む
・協力プレイでなければ絶対に勝てないようにする
・チーム全体を一人の「プレイヤー」として取り扱う


 具体的には,

・チームから離れて単独行動をした場合,即死
・非協力的なプレイヤーには重大な罰が下る
・プレイヤー同士が見えないヒモでつながっていたり,チームから離れたプレイヤーがテレポートで戻ってきたり,見えない場所からダメージを受けたりするといったことはナシ


という感じに,ともかくスタッフはいろいろ頭を絞ったのである。

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 Counter-Strikeシリーズがテロリスト対特殊部隊というシンプルな戦いを描いているように,マルチプレイのFPSの設定は,より簡単なほうが望ましい。Half-Life 2のような込み入った物語は必要ないのだ。
 L4Dの“ルール”は,先ほどの話の繰り返しっぽくなるが,「いい人達が協力して戦う」「バカなヤツは勝手にグループを抜けて無惨に死ぬ」「敵は無慈悲で,止めることはできない」というシンプルなものだ。
 本作のテーマを「ホラー映画の登場人物」という設定にしたのもそのためであり,映画では普通,いい人達が生き残り,自己中心的なヤツや敵はやられてしまうもの。さらに,なぜウイルスが蔓延したか? 四人はなぜ生き残ったのか? などといった疑問も“映画だから”という理由で(納得できない人もいるかもしれないが)解消できる。

 さて,団体行動しないと死ぬ,とはいっても,ゲームに慣れて腕が上がってくれば,単独で血路を開こうとするプレイヤーも出てくるだろう。もちろん,それをさせないために「大量のゾンビが出てきて,一人では倒しきれない」という基本設定があるのだが,それだけでは弱い。ネット上には驚くほど腕の立つシューターが山ほどいるし,四人でなく,二人で脱出されてしまっても,このゲームは失敗だといえるからだ。
 そこで考えられたのが,「特殊感染者」達……いわゆるボスキャラだ。ボスキャラには,それぞれの役割が振られている。


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The Hunter

 存在理由としては,単独で行動しているプレイヤーがいた場合,逃げられないほど高速で飛びかかって倒す。Hunterから脱出するためには仲間に助けてもらわなければならない。


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The Smorker

 長い舌でプレイヤーの体をからめ取る。脱出するためには仲間に助けてもらわなければならない。というあたりは同じだが,実はその役割が開発の途中から変わってきたボスキャラでもある。
 テストプレイの結果,四人のプレイヤーがSWATチームのように固まって四方を守りながら移動するという場面がしばしば見られた。それはそれで狙いどおりなわけだが,単調で面白くないという意見も出てきた。
 そこで,そうした固まっているプレイヤーから一人を“引っこ抜く”ことで,プレイに刺激を与える役割を受け持たされることになったという。


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The Boomer

 近寄ってゲロを吐きかける(うう……)。これを浴びると視界がしばらく曇ってしまううえ,撃つと爆発してダメージを受ける。Boomerは,動くものはなんでも撃っていればいいという単調さを打破するために導入された。
 ゾンビの大群が迫っているときに視界を失うという恐怖はまた,プレイにおける刺激的なスパイスになるはずだ。


The Tanker/The Witcher

 Booth氏の話しぶりでは,この二種類が真のボスキャラらしいが,いずれにしろ,これらは絶対に一人では倒すことができず,チームに戦術を要求する。戦術とはつまりコミュニケーションであり,要するにボスの存在が,仲間と連携するきっかけ/楽しみを産むことになるわけだ。
 前述のBoomer同様,ゲームの単調さを打ち破る要素としても重要で,とくにWitcherに襲われた場合,仲間の誰かが必ず死ぬ。死んだプレイヤーは,どこか自分では脱出できない小部屋にリスポーンするため,残りの三人で倒れた仲間を探し,解放しなければならない。
 Witcherはまた,光を当てたり銃で撃ったりしない限り襲ってこないので,ここでもコミュニケーションが重要になる。すすり泣きが聞こえてきたとき,ライトを消せだの迂回しろだのといった命令が飛び交い,協力し合っているという雰囲気が高まるはずだ。

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さらに数多くの要素がCo-opモードを盛り上げる


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 プレイヤーをCo-opにフォーカスさせる要素としては,声出し(Vocalization)も重要だとBooth氏はいう。これは,プレイヤー同士のボイスコミュニケーションではなくて,ゲーム側で用意した音声演出のことだ。
 というのも,本作では,弾倉を交換したり,オブジェクトを発見したりするたびにキャラクターが大声を上げる。これにより,仲間の状況がいちいち見なくてもよく分かるし,「地下鉄はこの先だ」「ヘリコプターに乗れ!」といった言葉は,状況をドラマチックに伝えてくれる。つまり,このような「状況を常に伝えるゲームデザイン」を施すことで,プレイ自体でも,自然な形でコミュニケーションを図れるというわけだ。

 また銃弾や補給物資の少なさも,Co-opを楽しむためには欠かせない要素だとBooth氏は付け加える。とくにヘルスパックは,一つのシーン(マップ)を通じて一つであり,お互いに助け合わなければすぐになくなってしまう。仲間をヘルスパックで助ける場合にそれなりの時間がかかること,そして1クリックでそれが簡単にできるようにしたことも,いろいろなテストの結果決められたことなのだという。

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 さて,知っている人も多いはずだが,状況によってダイナミックに変わるサウンドや,プレイするごとに異なるゾンビの出現場所などは,本作のために開発された「AI Director」が受け持っている。
 どういう状況を用意すれば,プレイヤーが最も恐怖を感じるのか。あるいは,どのようなパラメータを参照してAI Directorが判断を下しているのかといった,本来ならば企業秘密ともいえる数々のシークレットについても,このレクチャーで細かく説明された。しかしながら,ここについて書いていくとキリがないので,読者の皆さんには申し訳ないが,今回は割愛させて頂きたい。AI Directorの秘密については,いずれ稿をあらためて紹介したいと思っているので,どうか一つお楽しみに。

 開発がアナウンスされてから,何度も発売日の延期が繰り返され,一時はキャンセルの噂まで流れたL4D。だがValveの開発陣は,我々の知らない間にこうした細かい部分に頭を絞っていたようだ。
 発売前年のスニークプレビューで見たL4Dの単調さに比べ,見違えるように洗練された製品版の充実ぶりに,クオリティの向上に人と時間を惜しみなく投入する,欧米のゲーム開発現場の底力を見たような気がする。普段,なにげなくプレイしていたL4Dだが,ボスキャラ一つにしても,いろいろと考えた結果なのだというがよく分かるレクチャーであった。

AI Directorと,それが生み出すドラマチックな状況についても時間をかけて説明された。こんなに細かく話してしまうと,裏をかこうとするプレイヤーも出てくることだろう。それは私だが
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    Left 4 Dead 日本語版

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    レフト 4 デッド

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