レビュー
資源の採取,加工,そして物流に重点が置かれた箱庭系シム
The Settlers 6 Rise of an Empire
日本語マニュアル付英語版
資源の採取から加工までの流れが
しっかりと作られた箱庭系シム
具体例を挙げて見ていこう。野生動物が群生しているポイントの近くに狩猟小屋の“Hunter's Hut”を建てると,セトラーズはそこに狩った鹿などを運んでくる。これらの動物は何通りもの用途に使われ,例えば肉はソーセージにして食料品に,皮は裁縫して衣類に,そして脂肪分は石鹸に加工可能だ。これらの用途に必要な施設がそれぞれ別にあり,どれを建てるかによって生み出される加工品が変わるのである。
狩猟のほかにも,漁業を行って最終的に魚の燻製を作ったり,小麦を栽培してパンを焼いたり,蜂の巣を育てて蜂蜜から酒を醸造したりと,資源によってさまざまな採取/加工方法が用意されている。このゲームでは,肉や乳牛などといった一次リソースだけでも10種類あり,そこから加工に至る工程も全部違っている点が,こだわりどころだ。
セトラーズがせっせとハチミツを採取しているところ。リソースの種類によって,収穫方法や加工法はまるで違う |
石材や鉄鉱といった資源は埋蔵量に限りがある。この二つは中盤以降で大量に必要となるので,枯渇する前に何らかの手を打たねばならない |
セトラーズを働かせるために,プレイヤーは彼らが必要なものを随時提供していかねばならない。まずは仕事以前の問題として,彼らが生きていくための食料が必要だ。また,厳しい冬を越すには暖かい衣類が必要だし,健康的な生活を送るには衛生用具もあったほうがいいだろう。彼らはこういった必需品が満たされた時点で初めて,仕事を始めるという寸法だ。人を働かせるための環境作りは大変なのである。
ただし,セトラーズを取り巻く環境は刻一刻と変化しており,彼らをうまく働かせ続けるのはなかなか一筋縄にはいかない。例えば冬の間は海が凍って漁業を行えなくなるし,一度伐採した木材が再び生い茂るには長い年月を要する。また,石材や鉄鉱はいずれ枯渇してしまう。仮に採取/加工場を建設しても,そのために必要な物資が行き届かないと,セトラーズはたちまち働くのをやめてしまい,それが長く続くと国家運営は頓挫してしまう。
そのためプレイ中は,マップ内でサボっているセトラーズを探したり,彼らがいったい何を求めているかについて常に神経を尖らせたりする必要がある。彼らは一人一人が3Dユニットとして描かれており,状態を直接見られるので,例えばせっせと小麦を収穫したり,牛の乳を搾ったりしている姿には「いいぞ,その調子だ」と思わず頷いてしまうだろう。しかし目を離すと,すぐ仕事がなくてあくびをかみ殺すセトラーズが出たりするので油断はできない。
各建築物のグレードを上げると,蓄えられる量が増える。つまり一度のStorehouseとの往復で,より多くの物資を運べるようになるのだ |
「着るものが欲しい」「食料が欲しい」といった要望が,吹き出しで示されている。このような状態になってしまうと領主として失格だ |
資源の採取と加工のほかに“物流”に重きを置いているのも,本シリーズの特徴の一つだ。採取された資源は,そこから加工場へ直接運ばれるわけではない。国家の倉庫ともいえる“Storehouse”に一度蓄えられてから,それぞれの用途に見合った施設へと再び運ばれる。このStorehouseは事実上,国家の中心ともいうべき存在である。
仮にStorehouseから遠く離れたところに採取/加工場を建てると,両者間で物資を運ぶだけでもかなりの時間がかかり効率が悪い。したがって,主要建築物は極力Storehouseの近くに集結させておきたいが,ハーブなどの貴重な資源を採取する場合など,どうしても遠方まで足を運ぶ必要が生じることもある。せめて物流効効率を改善すべく,道路を敷設したり,採取場のグレードを上げて一度に運ぶ量を増やしたりしていくわけだ。
またStorehouseは,物資を保管できる量に制限が設けられているため,季節や外敵などの移り変わる環境に対応しながら,いかにして必要な分だけのリソースを確保していくかが,プレイの大きなポイントといえるだろう。
ちなみに上級者のプレイにおける都市の町並みは,Storehouseを中心に放射状に広がったレイアウトとなる。各建築物が無駄なく機能している様はなかなか壮観な眺めで,操作する手を止めてユニットの動きをじっと見入ってしまいたくなる。
物流ルートを極限まで短くしていくと,必然的に国家はStorehouseを中心に,加工場などの建築物が放射状に広がっていく |
中盤以降ではセトラーズの生活水準を高めよう。画面は公衆浴場を建築したところで,周囲の評判を高める効果がある |
領土を広げ,外交を駆使しつつ国家を発展させていこう
ゲーム内には資源の採取や加工とは別に,「Castle」(城),「Cathedral」(聖堂),そして先述した「Storehouse」(倉庫)という三つの重要建築物がある。これらの重要建築物をまんべんなくグレードアップすれば,プレイヤーの領主としてのランクが上がり,より高度な建築物を建てられるようになる,という仕組みだ。ただし,重要建築物のグレードアップには多額の金銭が必要で,いかにしてこれをかき集めるかが大きな目標となる。
●領地の広げ方
金銭獲得の最もオーソドックスな手段は,領土内で運用している各施設からの税収である。税収額は働いているセトラーズの数に比例するが,自分の領土には限りがあるので,いずれ頭打ちになってしまう。
そこで領土を広げていくというのが有効な手段の一つだ。このゲームではマップ内が“テリトリー”という単位で細かく区切られており,誰の管理下でもない区域は,“アウトポスト”を建てることで自分の領土にできる。新たな領土には数多くの資源が眠っているので,そこでセトラーズを働かせれば国家はさらに大きく発展していくことだろう。
聖堂では定期的に献金を受けられ,それは国家にとっての重要な資金源となる。宗教的な要素も箱庭シムの視点で見るとまた違った印象 |
アウトポストを立てればテリトリーを広げられるが,その場所はほかの国も狙っているかもしれない。そのような場合は紛争の火種ともなりうる |
●交易
さて,マップ内には自分以外の領主も居を構えているので,彼らとどのような関係を結ぶかの判断が重要だ。例えば友好的な相手とは,Storehouseで備蓄している余剰リソースを売却し,逆にこちら側が相手のリソースを購入するといった交易を行える。ちなみに“牛”や“羊”といった動物は,交易が主な入手手段となる。牛からは“牛乳→チーズ”,そして羊からは“羊毛→ウールの衣類”といった加工品が手に入り,それはまた新たなビジネスチャンスにも結びつけられるだろう。
また,交易を行うときの相場は,両国家のパワーバランスによっても変わってくる。分かりやすい例としては,砂漠のマップでプレイヤーがオアシスを独占している場合,そこでしか栽培できない農作物などは,ほかの領主に対してかなり強気な価格設定ができるだろう。
こちらは交易を行っている場面。自分の領土では得られない資源や,加工品などを獲得するときには大いに役立つだろう |
外敵から「金銭をよこせ!」と脅されている。軍隊がない場合は従うしかないが,いつまでも下手に出ているわけにもいかない |
●戦争
他国との関係は良いことばかりではなく,ときには蛮族や敵対勢力との戦闘も避けられない。国家の内政が充実しているということは,他国の目にはそれだけ魅力的に映るわけで,ゲームの中盤以降では我が領土を守るべく,いかにして軍隊を運用するかが大きなポイントとなる。
軍隊を作るためにまず必要なのは,剣や弓などの武器の素材となる鋼鉄。次に,鍛冶屋などの加工場,そして兵士に対し定期的に支払う給与だ。これら全部が揃った時点で初めて,兵士のユニットを運用できる。
強力な軍隊を築き上げて維持していくには大きな労力がかかるが,もしそれが実現できたら,今度はいっそ自ら他国を侵略してしまうのも一つの手だ。ほかのテリトリーにあるアウトポストを破壊すれば,自分の領土を広げられるのである。本作は内政要素を重視したタイトルだが,こういった血なまぐさい展開もないわけではない。
ようやく兵士のユニットを揃えられた。彼らが持っている武器も,リソースレベルからやりくりしているので愛着が湧く |
ゲームはリアルタイムで進行するが,戦闘がメインのRTS(リアルタイムストラテジー)に比べれば,本作の戦闘そのものはあっさりな内容 |
●ヒーローユニット
スキルを使うと,「兵士ユニットの雇用費用を抑える」「交易を行う際の収益が上昇」「税収率が上昇」などといった特典的な効果を得られるので,都市運営や外交など自分のプレイスタイルに適したものを選べば,よりスムースにゲームを進められるだろう。
「アウトポストの建築」「他国との交易」「テリトリーの視界を拡大」などは,ヒーローユニットの重要な役割だ。これらの役割をこなす過程で,ときには危険に見舞われることもあるだろうが,本作は「WarCraft III」のヒーローユニットのように突出した戦闘力を持っているわけではないので注意しよう。しかしヒーローユニットは万が一死亡しても,一定時間後には自動的に復活するのでご安心を。
プレイヤーへの配慮不足が若干見受けられるが
“箱庭好き”ならプレイして損のないタイトル
実をいうと,本作をプレイする前にマニュアルを読んだときは,「資源が10種類もあって面倒そうだなあ」という第一印象であった。確かにこれらの内政システムは複雑なのだが,しかし理にかなっており,それぞれに対応したコツを覚えれば,必ず結果として自分に返ってくる。これらの知識を元に,「今の領土で最も効率良く作れる食料品はなんだろう」「希少資源を入手するルートはどうしよう」などといった長期展望を視野に入れつつ,国家を発展させていくのがとても楽しいのだ。よって“箱庭系”としての面白さのコアの部分は,本作にもきっちりと秘められていると感じられた。
交易を通じて購入した羊を,牧場へ運んでいるところ。セトラーズの動きの一つ一つが本当に緻密に出来ており,見ていて飽きない |
スパイのユニットを敵対国家へ侵入させ,密書を奪おうとしているところ。本稿ではすべてを紹介しきれないが,幅広い外交手段が用意されている |
レビューの総合評価としては,「セトラーズ6 ライズ オブ アン エンパイア」はゲームバランスに少々ぎこちなさを感じさせるものの,昔ながらの箱庭系シミュレーションの良さが生かされたタイトルである。それぞれの役割によって変わるセトラーズ達の動きを,現代の3Dグラフィックスで満喫できる点も面白い。本シリーズは日本ではそれほどメジャーとはいえないが,もし箱庭系のシミュレーションが嫌いでなければ,今回がシリーズ初挑戦だとしてもお薦めできるタイトルといえるだろう。
前述のとおり本作は日本語マニュアル付きの英語版である。この点が気になっている人のために最後に補足しておきたい。ゲーム内テキストは全編英語だが,遊ぶだけなら英語力はさほど求められない。本作で大事なのは資源の採取から加工までのプロセスで,これについてはバルーンヘルプを見れば,「資源→加工品」の流れが単語レベルで記されている。辞書を片手にこの部分さえ理解すれば,それ以外にプレイ上は大きな支障はないので,本稿で興味を持った人は安心してパッケージを手に取ってみてほしい。
中立国と同盟を結び,傭兵として働いてもらうことも可能。直接戦闘を行うよりは,こういった外交を駆使するほうが本作らしい遊び方かも |
箱庭系シム好きにはお勧めの内容。興味を持った人はとりあえず,本作のデモ版を一度プレイしてみてほしい |
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