インタビュー
韓国WeMade Entertainmentと資本提携した,YNK JAPAN(旧社名)の今後はいかに。WeMade Online社長インタビュー
筆頭株主がYNK KOREAから韓国WeMadeに変わったが,会社や既存のタイトルに大きな変化はなし
韓国WeMadeが筆頭株主となったことで,会社の実務的な意味合いで,何か影響を及ぼしそうなことはありますか。
崔氏:
YNK KOREAは自社IPを持っていなかったので,今まではすべて他社の作品でしたが,それが比較できるようになること。もう一つは,何かをやるときに,情報を共有し,参考にして判断できるといったこと。いまは,実務レベルで韓国WeMadeと繋げているところです。
4Gamer:
それはディビジョン(部門)の変更とかですか?
崔氏:
ディビジョンに変更はありません。というよりも,本件とは別に,去年末に変更を行いました。それは,組織がゲームごとに分かれていたのを束ねて,二つのグループを作りました。
4Gamer:
そのそれぞれのグループは,同じタイプの作品に分かれてまとまっているわけですか?
崔氏:
当初はそうしようと思ったんですが,そうではなく,人的な繋がりというか,そのグループの人がもともと運営していたゲームを集めたという感じです。
4Gamer:
なるほど。これによって,リソースの共通化と情報の共有化,GMの共有ができると,だいぶ運用体制が整ってきますね。
崔氏:
そうです。これまでは,一つのゲームは,一つの独立したチームが全部担当していて,営業マーケティングもそこに入れていました。現在は,第1と第2にそれぞれに,営業マーケティングの業務と,開発とのやりとり,企画,それからQA(品質保証)チームを一本化しています。
4Gamer:
なるほど,第1/第2というのはそれぞれがスモールカンパニーのようになっているわけですか。
崔氏:
そんな感じですね。このグループ構成は,今年に入ってから動いています。これによって,グループごとにコスト意識が芽生えています。また,新規に立ち上げたタイトルについては,第1が「81Keys」を,第2が「AILA Online」を担当しています。
81Keys |
AILA Online |
4Gamer:
では逆に,いまWeMade Onlineのゲームを遊ぶ既存のプレイヤーにとって,何か変わることはないですか? 例えばアップデートの頻度が上がるとか,下がるとか。
崔氏:
基本的にプレイヤーサイドから見て変わることはありません。
4Gamer:
分かりました。既存のプレイヤーにとっては一安心といったところでしょう。ところで,中国では「Mir2」の人気が高いそうですが,日本には持ってくるんですか?
崔氏:
検討はしています。
4Gamer:
しかしさすがに,いまの日本マーケットでは,ちょっと厳しい作品ですよね……。
崔氏:
そうですね。日本に持ってくる作品については,韓国WeMadeからは「自分で選択を」と言われています。
4Gamer:
なるほど。さっきの話ともちょっとカブっちゃいますが,作品を「選択」しろというのは良いですね。
崔氏:
ええ,決まったタイトルがなければ積極的に検討しますし,決まっていればやる暇がないですから。加えて,韓国WeMadeが,プラスアルファをやってくれるのであれば,というのはあります。というのも,これからはやり方を変えなくてはいけないと思っています。普通のマーケットを狙っても失敗します。
4Gamer:
具体的には,どんなマーケットを狙う必要があると思ってますか?
やるなら……そうですね,分かりやすく言うと,iPadや安いノートパソコンで動作するオンラインゲームですね。このプレイヤー層を抱えることで,将来性も出てきます。
4Gamer:
今はまだ誰も「完全な勝利」を持って押さえられていない層ですから,最初に押さえられれば安泰ですよね。昨今流行りのブラウザゲームはいかがでしょうか。
崔氏:
ブラウザゲームは,韓国WeMadeで一つ,CBTを予定しているタイトルがあります。実は昨年から,SNSゲームやブラウザゲームも検討していたのですが,もう少し様子を見てみたいなという気持ちがあります。
4Gamer:
それはどういった面からですか。
崔氏:
経験を積むのも良いとは思いますが,オンラインゲームである以上,立ち上げまでのプロセスは同じだと思うんですよ。
4Gamer:
費用対効果の問題ですか?
崔氏:
そうですね。いま慌ててやるよりは,将来的に,SNSとモバイルとパソコンを,PCオンラインゲームで合体させた形にできれば,一番いいかなと思っています。
4Gamer:
ブラウザなんかはとくに汎用性の高いプラットフォーム――というのも変ですが――ですしね。
崔氏:
それは,うちの社員からも声が上がっていますね。実は最近,私はiPhoneのゲームをプレイして楽しんでいるんですよ。そういった面でも,Webゲームやモバイルなどの準備はやるつもりではありますが,焦らずに進めていこうと考えています。
4Gamer:
まずは,本業からですね。
崔氏:
そうですね。そこをまず固めて,時間をかけて次のトレンドを作ってみたいなと思っています。そのときは,やはりモバイルが主役だと思いますし。
4Gamer:
それはどこまでを含んだモバイルでしょうか。昨今の「モバイル」という言葉の定義は広すぎて……。
ステップがあると思いますよ。モバイルゲームについては,我々は未経験なので,いずれはやってみないといけないのですが,例えば,PCオンラインゲームとの連係ですね。リアルタイムではシンクロできないとしても,何らかの形で繋げてみたい。そして,ブラウザだけでよいゲームですね。これらを,プレイヤーの行動パターンを考えたうえで,開発に提案すれば,楽しいゲームを作ってくれるだろうと思います。
4Gamer:
ブラウザゲームなども,携帯はもちろん,ツールバーのような形で小さく常駐させておくとか,極論,テレビのブラウザとかでも遊べていいと思います。
崔氏:
狩りではなく,生産系などなら,モバイルのアクセスで十分でしょうね。データをうまくモバイルに入れておけば,移動中に生産ができると思います。シンクロまでできれば最高です。
4Gamer:
生産とかは通勤時間などにやっておきたいですから(笑)。こういった多方面にわたるサービスが,これからのオンラインゲームにとって大事なことになるんじゃないかと思います。
崔氏:
私自身も,PCオンラインゲーム用のIPを調査しなきゃいけないのに,モバイルばっかり見てますよ(笑)。
4Gamer:
日本は,モバイルゲーム系の開発会社はいっぱいありますよね。
崔氏:
ええ,実はすでにコンタクトは取り始めています。といっても,今はまだお付き合い程度の段階です。
4Gamer:
今後の動きが楽しみです。
では最後に,ちょっと話が前後しちゃいますが,韓国WeMadeとの資本提携について,いまどう感じているかを教えてください。
崔氏:
韓国WeMadeは,日本ではまだあまり知られていませんが,韓国のオンラインゲーム企業のトップ10に入っている会社です。海外展開を考えていない一社を除けば,WeMadeよりも売り上げが上の会社は,すべて日本企業と契約しているんですよ。
そんな中で,韓国WeMadeと資本提携をし,そのメリットの大きさを考えると,我々がWeMade Onlineとなったことは,いろいろな面で最高のチョイスだったと思います。
4Gamer:
なるほど。現時点でのベストチョイスなんですね。
崔氏:
と言うと,YNK KOREAが悪者のようなイメージになってしまいますが,もちろんYNK KOREAも良い会社ですよ。YNK JAPAN設立時からいろいろありましたけど,うまくやってきたと思ってます。
4Gamer:
一般的なプレイヤーや業界から見たときに,単に資本が変わって名前が変わっただけではなく,この先,YNK JAPANとはまた違った展開を期待しています。
崔氏:
ええ,期待に応えられるよう頑張ります。韓国WeMadeとも話していますが,WeMade Onlineになった成果が出てくるには,年内では難しいと思います。ですので,2011年以降,形になるように協力を促していますので,しばらくは見えづらいかもしれませんが,湖の白鳥のように水面下でバタバタする感じで,一生懸命準備していきます。
4Gamer:
分かりました。本日はありがとうございました。
突然の社名変更でやや驚かされた,WeMade EntertainmentとYNK JAPAN(旧社名)の資本提携は,敵対的買収などとはおよそ無関係の,好意的なものであったようだ。
資本提携,そして社名変更となれば,内外を問わずそれなりの影響が出て然るべきかと思うのだが,今回聞いた限りでは,社内も,作品も,そしてプレイヤーにも,メリットこそあれ,デメリットになりそうな要素は特に見当たらないように思える。
プレイヤーとして気になるのは,YNK JAPAN(旧社名)からの既存作品の今後はもちろん,WeMade Entertainmentの持つ作品群が,どう扱われていくのかというところだ。とくにWeMade Entertainmentは,「TARTAROS-タルタロス-」など,パブリッシャとしても活躍するメーカーなので,ゆくゆくは,有力なタイトルがWeMade Onlineからサービスされる可能性が高くなったと言える。また,同社がグローバルパブリッシング権を持つ作品である,MMORPG「Zwei!! Online」など,キャッチーなタイトルも抱えている。今後のWeMade Onlineの動向に注目しておきたい。
(――5月11日収録)
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