インタビュー
サービス開始から足掛け4年,「MHF」は大型アップデート「フォワード.1“襲来,双極の脅威”」で新たなステージへ。運営プロデューサー・杉浦一徳氏へのインタビューを掲載
フリーカメラに対応し,メゼポルタ広場がリニューアル
4Gamer:
フォワード.1では,メゼポルタ広場が再びリニューアルされますよね。
杉浦氏:
メゼポルタ広場をリニューアルするということは,けっこう大きな意味を持っているんです。メゼポルタ広場は見た目の変更とフリーカメラの対応で,お客様にアップデート感を伝えられるのではないかと期待しています。
「MHF」のアップデートというと新モンスターが中心ですから,実際にクエストに出るまでは,なかなか新しさを感じていただけないんです。一方,メゼポルタ広場はログインした直後に目にするものですから,今までとは違うビジュアルが目に飛び込んでくると,やはり変わったという印象を抱いていただけます。
これはシーズン5.0のリニューアル以降,ずっとやろうと考えていたものです。パローネ=キャラバンと同じようにカメラ視点を変更できるようにしたかったのですが,ズーム機能が付けられなかったので,ズーム機能に対応させるために,少し遅れてしまいました。やはり,メゼポルタ広場で装備をじっくりと見られる,アバター面での楽しみが半減しては台なしなので。
4Gamer:
広場は具体的にどう変わるんですか?
これまでは,中央をはさんで西区と東区という3つのエリアに分かれていましたが,それが全体で3分の2くらいの広さになって,各施設間を行き来しやすくなります。NPCは,基本的に以前と近い場所になるように配置したので,戸惑うことは少ないんじゃないでしょうか。
また,高低差を付けるなど立体感も出しているので,体感的には広くなったように感じられるかもしれません。
4Gamer:
主にビジュアル面のリニューアルというわけですか。
ほかにも,ルコディオラのクエスト配信中には,「迎撃拠点」のある方角から煙が上がるといった演出も加わっています。全体にけっこう凝ったものになっていると思います。
4Gamer:
交流区に新設される「交流酒場」とはどのようなものですか?
交流酒場は,機能的には大衆酒場と同じで,交流区用に新たにデザインを起こしたものです。30人部屋ということで交流区に大衆酒場を用意したのですが,大衆酒場は4人向けのデザインだったので,30人で入ると狭いと感じられるお客様が多かったんです。
そこで,交流区専用の交流酒場として,新たにデザインから起こしました。大衆酒場は地下にあるイメージですが,交流酒場は天幕が張られていて,ちょっと開放感のあるビジュアルになっています。
そのほか,猟団関連では,ハリセンネコから狩人弁当を注文できるようになります。これで,猟団部屋の機能もほぼメゼポルタ広場と同じになったのではないでしょうか。
そのほか,新マスコットキャラとして登場する「グーク」について教えてください。ゲーム中には,どういった形で登場するのでしょうか?
杉浦氏:
マイガーデンに登場します。当面は,服の着せ替えができて,あとは愛でることができるという内容です。
4Gamer:
当面は,というとマイトレのように,のちのち要素が拡張されていくのでしょうか?
杉浦氏:
ええ。そういったイメージで,お客様の反応を見ながら進めていきます。登場は,6月末を予定しています。
寄せられた意見・要望をもとに,多くの部分にリニューアル/リファインをかけた
4Gamer:
そのほかのリニューアル/リファインについて教えてください。
杉浦氏:
この先1〜2年を見越した措置として,アイテムボックスと装備ボックスのページ数を大幅に増やしました。
4Gamer:
ボックスは,それぞれどのくらい増えたのですか?
アイテムボックスは20ページです。内訳は,スキルランク(SR)が100上がるごとに1ページずつ増えて計10ページ,そしてパローネ=キャラバンの知名度に応じて計10ページです。装備ボックスは10ページで,SRが100上がるごとに増えます。
こういった形式を取っているのは,SRとパローネで素材が相当量増えるので,以前のときと同様に,必要に応じて増やしていくというコンセプトからです。やはり,始めたばかりの方にもすべて開放してしまうと,サーバーの負荷が高くなりすぎてしまうので。
4Gamer:
以前,装備のマイセットが40まで増えましたよね。アイテムセットは増えないんですか?
杉浦氏:
お待たせしていましたが,今回,実現します。お客様のPCローカルではなく,サーバ側にデータを保存する形式になります。
4Gamer:
狩人珠のスキルを確認できるようになったことなども,プレイヤーからの要望が多かったからでしょうか。
杉浦氏:
ええ。リファイン要素は,ほぼご意見,ご要望をあまり捻ることなくそのまま実現しています。
4Gamer:
「秘伝防具」の性能が見直されるとのことですが,具体的にどうなるのでしょうか。
まず,すべての秘伝防具で,FXまで強化して各秘伝スキルの最上位が発動すると,「超高級耳栓」の効果がスキルとは別に発動するという形にしました。それに伴い,耳栓のスキルにポイントが振られていたものは,別のスキルに変更しています。そのほかにも,性能的に見劣りしていたものは強化しました。
4Gamer:
従来の秘伝防具は,意図していたイメージよりも弱いという評価を受けていたわけですか?
杉浦氏:
ええ。実際に遊んでくださっているお客様の評価ですから,これは上方修正するしかないだろうと。SR関連の防具については,素材排出なども含めて,重点的に取り組まなければならない課題と考えています。
4Gamer:
課金面では,新ボイスの追加もありますよね。今回は誰が声を当てるんですか?
杉浦氏:
宮野真守さん,田中理恵さんをはじめ,声優陣は前回と同じラインアップです。ただ,イメージはがらりと変わっています。
4Gamer:
アシストコースには,新たに「レジェンドラスタ」が追加されて11人が揃いますが,そのほかに変更点はありますか?
杉浦氏:
お客様のご意見に基づいて,行動パターンの改善や武器種ごとの挙動の変更など,10項目以上のリファインをかけています。4月20日にその改善が適用されますが,レジェンドラスタ4体の追加は,6月末の実装になります。
4Gamer:
ちなみに,アシストコースの利用状況はどうですか?
杉浦氏:
非常に多くの方にご利用いただいています。4人揃わないときの支援として利用されるケースが目立っています。
4Gamer:
レジェンドラスタの選択基準は何でしょう? やはり武器種ですか?
杉浦氏:
一つは攻撃力,もう一つは見た目ですね。アシストコースとプレミアムコースを併用して,土日はガッツリとプレイする方は,双剣を選ぶことが多いです。
6月末に11種全部が揃ったら,武器種間のバランス調整を図る予定です。またバランス調整については何度かお話している通り,一度きりということはなく,随時行っていきます。
4Gamer:
そのほか,フォワード.1に関して,今,お話してもらえることはありますか?
杉浦氏:
アップデートに先駆けて実施される「VS.クエスト チャンピオン トーナメント」ですね。今回開催する中では,福井大会の応募数がかなり多いです。
今回は,事前の配信クエストで専用の素材を溜めておくと,会場で,Nポイントやマイトレポイントなどと交換できるという,新しい試みにも挑戦しています。
いずれはゲーム内のポイントやアイテムだけでなく,交換用のノベルティを用意するなど,オンラインとオフラインのイベントを連動させるようなことも,今後さらに強化していく予定です。
4Gamer:
ちなみに申告には,IDの情報などが必要になるんですか?
杉浦氏:
こちらで専用サイトを用意して,そこにログインしていただければプリントアウトできるようになっています。したがって,アカウント情報などを教えていただく必要はないので,セキュリティ面での心配は無用です。
あとは,このインタビューの掲載から数日後に正式発表される予定なのですが,4周年記念パッケージに注目して欲しいです。
4月20日に予約開始となりますが,発売される8月には,お店の売り場にプーギーのぬいぐるみが並ぶことになります。そのぬいぐるみの腹部を開けると,パッケージと書き下ろしのコミック1冊が入っているんです。ぬいぐるみは,パッケージを抜いても大丈夫なよう,綿はたっぷりと詰めています。記念装備も,一つは割と普通な感じのものですが,もう一つは面白くて,二本足で立ったプーギーになりきれるというものになっています。
4Gamer:
ここで一度,フォワード.1に期待する人に向けてメッセージをお願いします。
このアップデートの1か月前に,大きな震災が発生して日本全体が暗くなってしまうような事態となりました。私達も,このアップデートをどういう形で迎えるべきか,悩みましたし,影響を受けたところもありました。
それをどう乗り越えていくのかというところですが,すでに発表しているとおり,サービスは継続していきます。そしてアップデートの日付もずらさず,予定通りがんばっています。実装が4月20日,5月11日,6月末と3回に分けてのリリースとなってしまったのは申し訳ないのですが,逆にここまで持ち直してくれたスタッフには感謝したい気持ちです。
そういったことを踏まえて,あらためてフォワード.1についてお話しすると,過去最大級のアップデートとなります。何よりもリファインコンテンツが相当量ありますので,これまでお客様からいただいたご意見は決して無駄にしていません。
新モンスターや迎撃拠点のような新コンテンツ,リファインに対するご感想が非常に待ち遠しいです。これだけのコンテンツ量になると,怖いのはバグですが,発生しないよう努力しているのはもちろん,発生した場合にも最大限努力して素早い修正を行います。
4月は世間的にも新しいことが始まる時期ですから,新規のお客様が増えます。新規の方にも,既存のお客様や休眠している方にも楽しんでいただけるよう,士気の高いアップデートになったと思っていますので,ぜひ遊んでみてください。
シーズン10では,コンテンツ追加に伴うバグ/不具合対策という大きな課題も
それでは,シーズン10を振り返って,いくつか話を聞かせてください。シーズン10では,ログイン率などに変化は見られましたか?
杉浦氏:
反省すべき点もあるのですが,おかげさまで数字に関してはがんばったといえるものになりました。2010年12月には数字が落ち込んだのですが,2011年1月のシーズン10実装以降は順調に回復して,ほぼそれ以前の状態に戻っています。
4Gamer:
新モンスターの追加がなかったことについて,何か目立った意見などはありましたか?
杉浦氏:
特にありませんでした。事前に告知したときは賛否両論だったのですが,シーズン10実装後は,きちんと受け止めていただけたのではないかと捉えています。
4Gamer:
シーズン10では不具合やバグが目立っていた印象があるのですが,今後の対策などはどうお考えでしょうか?
先ほどお話ししたとおりですが,常に迅速な対処を心がけています。「課金関係の不具合ばかり素早く対処している」というご意見も見受けられますが,追加で料金を支払っていただいているのに放っておくことはできませんから,優先順位を上げているのは事実です。
また,同じような修正を二度三度と繰り返してしまっては,それだけご迷惑をおかけしますから,時間をかけて慎重にやっているケースもありますし,重要度がそれほど高くないトラブルに関しては次回アップデートでまとめて修正することもあります。早く対応できないのは,やっていないからではなく,ほかの理由があると考えていただけると幸いです。
トラブルが人的ミスから生じたものであれば,それを回避するフローを考えますし,そうでなければ都度考えているようにしています。不具合を出さないためには,アップデートのボリュームを絞るのが一番ですが,それをやってしまっては,お客様が物足りなくなってしまうかもしれません。決して不具合ありきで考えているわけではありませんが,コンテンツ量が増えると不具合の発生率が高まってしまう点については,いつも頭を悩ませている部分です。
4Gamer:
特異個体モンスターが11種類登場し,クエストも配信されましたが,それぞれの反響はいかがでしたか?
杉浦氏:
正直な話をすれば,私個人としては一部のモンスターへの評価として,当たり外れがあったと感じましたね。とはいえ,全体的には当たりが多かったんじゃないでしょうか。まあモンスターによって,いじりやすいものとそうでないものがあるんですよね。いじりにくいものは,どうしても変化に乏しくなってしまいます。
お客様からすれば,元と比較したときにどれだけギャップを感じられるかが面白いところですから,「変化がない」とお叱りを受けることもありました。
4Gamer:
一番人気はどれでしょう? 以前のインタビューでは,ドスランポスをオススメに挙げていましたが。
杉浦氏:
ドスランポスは,シーズン10の体験会で披露した際の反応や感想も考慮して,かなり作り直したんです。当初は一番に実装する予定だったのですが,結局3月末まで引っ張ることになってしまいました。
4Gamer:
シーズン10で実施された,武器バランスの調整はどう受け止められたのでしょうか?
杉浦氏:
へビィボウガンに関しては,告知から期間が空いたことでアップデート前は反響が少なかったのですが,いざシーズン10になると,相当に熱いご意見をいただきました。ただ,たいへん申し訳ないのですが,武器の調整はSRの防御力補正のように極端なことはできないので,少しお時間をいただかなければなりません。
私達から何らかの見解を表明する予定ですが,早くてもフォワード.2になってしまうでしょう。現状のまま終わりにするつもりはありませんので,いただいたご意見を参考に,へビィボウガンの装着率や使用率を見ながら決めていくことになります。
4Gamer:
嵐ノ型や,追加アクションの評価はどうでしょう?
杉浦氏:
おおむね好評です。武器ごとに評価が分かれますし,厳しいご意見をいただくこともあったのですが,新しいアクションを使った狩り,新しい感覚は評価していただけました。今回,不遇といわれてしまったガンナー系に関しては,いずれリファインしていこうと考えています。
4Gamer:
人気の高い武器種はどれでしたか?
杉浦氏:
片手剣の評価が高いですね。あとは大剣も,天ノ型と比較して取得率が高いです。データ的にも,ほぼお客様からいただいた感想通りの結果が出ていますね。
4Gamer:
そういえば,変種モンスターの肉質変更はどうなりましたか?
杉浦氏:
今のところ,フォワード.2で実施する予定です。それに先駆けて,お客様のご意見を聞くため,公認ネットカフェからテストサーバにアクセスできるような,いわばロケテストを企画しています。形式としては,VS.クエストのトーナメントのように,イベントスペースをお借りして開催するイメージですね。
とはいえ,すべてのモンスターの肉質変更は難しいでしょうから,これまでいただいているご意見や,あらためて行うアンケートなどを元に,上位のものをいくつか修正していこうと考えています。
4Gamer:
プレミアムコースの仕様が変わりましたが,反響はどうでしたか?
杉浦氏:
結論からいえば,ご利用数が非常に増えました。リファインした理由がもっと利用していただこうというものでしたから,ニーズに合致したといえます。
それまでの仕様では,プレミアムコースの人同士でしか遊べないという課題がありましたから,そこをきちんと解消できたのがよかったのではないでしょうか。
またアシストコースとプレミアムコースとのセット販売も好調です。
4Gamer:
アシストコースといえば,公認ネットカフェで無料付与したところ,好評だったとの話を聞きました。
杉浦氏:
シーズン10の初週は,それまでと比較して300%以上の稼働時間を記録しました。そのあとも売上の推移は非常に順調です。
4Gamer:
全般的に,シーズン10の新コンテンツは評価が高かったという感じでしょうか。
杉浦氏:
ええ。シーズン9.0は新モンスター以外のコンテンツ部分の評価が厳しく,「1か月くらいでやることがなくなってしまった」という厳しいご指摘もお客様から多数いただきました。
そこでシーズン10では,「なるべく飽きたといわせない」ということを強く意識しました。それでも,お客様の評価からすると60〜70点といったところかなと思います。
ただ,今回の続くフォワード.1は,80点以上を目指していますし,またそれだけの内容に仕上がったと思います。
4Gamer:
先日,Xbox 360版でサーバーの統合が行われた理由を教えてもらえますか?
杉浦氏:
Xbox 360版はPC版よりも日々の数字のブレが少なく,同時接続者数がとても安定しているんです。アクティブユーザー数は,PC版とXbox 360版とで2:1くらいです。
また,Xbox 360では,「MHF」のサービス開始前からユーザーコミュニティが形成されていたこともあって,「MHF」でサーバーが違ってフレンドと一緒に遊べないという苦情が非常に多かったんです。
今回,サーバーを強化したことで,先にお話ししたようにアイテムボックスなどの機能強化も行えたのですが,それに伴ってネットワーク担当者に相談したところ,現在のアクティブユーザー数であれば,統合しても大丈夫という判断だったので,統合を決断しました。
4Gamer:
そのほか,シーズン10についてお話ししてもらえることはありますか?
震災の被害に遭われた地域への支援ですね。該当地域の公認ネットカフェが30店舗ほどあるので,支援を検討しています。個々のお客様にどれだけ恩恵があるかは分からないのですが,当面,ネットカフェは大きなインフラとして機能するのではないでしょうか。
また,被災者の方で,ご家庭で「MHF」を遊んでいた方に向けても,被災で遊べなかった期間を割り出して,該当期間分の補償を行うことなども検討しています。
4Gamer:
それでは,この7月に「MHF」が4周年を迎えることですし,今後の展開や抱負などを聞かせてください。
杉浦氏:
4周年に向けて,既に気合を入れた準備を進めています。2周年記念だったキノス防具などのFX強化もできるようになりますし,もちろんオリジナル武器も登場します。
そのあとは例年通り,秋冬とアップデートを予定しています。フォワード.1同様に多くのリファインをかけて,魅力ある武具を提供していく中で,「モンスターハンター」本来の面白さを見失わないよう心がけていきます。
あとは6月末にVS.クエスト チャンピオントーナメントを開催できないか検討しているところです。これまで開催していない地域の皆さんは,期待してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
2010年度の「MHF」は,まさに順風満帆の安定した年だったといえる。杉浦氏も述べている通り,バグや不具合などのトラブルは発生しているものの,そのあとの適切な対応によって大きな問題に発展する前に解消されている。
しかし,杉浦氏をはじめとする「MHF」の運営・開発チームは,そうした安定に留まるのではなく,さらに前進することを“フォワード”という言葉に込めて表明した。フォワード.1では,顧客満足度(CS)を上げるべく、これまでは手が回らなかった細かい部分にまでリファインをかけており,続くフォワード.2〜3ではそれに加えて,また新たな変化を加えていくという。今や日本のオンラインゲームタイトルとして名実ともにトップクラスとなった「MHF」が,これからどのような発展を見せるのか,今後とも見守っていきたい。
「フォワード.1 “襲来、双極の脅威”」プレビューサイト
(2011年3月28日収録)
- 関連タイトル:
モンスターハンター フロンティアZ
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