レビュー
「プロ野球 ファミスタ オンライン」は紛れもなく「ファミスタ」
■ファミスタシリーズの歴史を振り返ってみる
本作の源流である「プロ野球 ファミリースタジアム」(以下,ファミスタ)が,ファミリーコンピュータ(以下,ファミコン)向けにナムコ(当時)からリリースされたのは1986年12月のこと。
それまでファミコン用の野球ゲームといえば,任天堂が1983年にリリースした,チームも選手も色以外はみな同じという「ベースボール」ぐらいのもの。そこに,実在するプロ野球団をモチーフにした球団と,実在のプロ野球選手のデータを基に能力が設定された架空の選手(当時はほぼ実名だったりもしたのだが)を操って楽しめる野球ゲームとして,ファミスタが投入された。その結果,全国の野球ファンとファミッ子達は,一斉にファミスタの虜(とりこ)になったものだ。
かくいう筆者もその一人。当時,クリスマスプレゼントに購入してもらったファミスタで,冬休みの間中,友達と延々対戦していた記憶がある。
瞬く間に野球ゲームの代名詞的存在に上り詰めたファミスタは,基本システムはそのままに,チームのデータやゲームバランスを変更したり,チーム名および選手名の実名使用ライセンスを獲得したり,プラットフォームやタイトルを変えたりしつつシリーズを重ねていった。
が,1994年にコナミ(当時)が「実況パワフルプロ野球'94」(以下,パワプロ)をリリース。音声による実況が収録されているだけでなく,実在する球団や選手のデータをこれでもかとばかりに詰め込み,それでいて難解な野球シミュレータになることなく,ゲームとしての完成度も高かったパワプロが,ファミスタに代わり野球ゲームのスタンダードの座に着くまで,そう時間はかからなかった。
ファミスタシリーズの良さは,野球ゲームが持つ,投げる楽しさ,守る楽しさ,打つ楽しさ,走る楽しさを,ファミコンのスペックに合わせてデフォルメ/単純化し,ゲームとしてまとめ上げたところにある。細かな作戦や選手の表情,気持ちなどは,プレイヤーの脳内で常に補完され,CPU相手に心理戦を気取ることだってできた。
だが,好評だったそのスタイルに固執するあまり,コンシューマゲーム機が高性能化していく時代の流れの中で,新しさを提示できなくなっていたのかもしれない。いつの間にか,ファミスタシリーズは姿を消し,バンダイナムコゲームスのプロ野球ゲームはリアル志向のプロ野球 熱スタシリーズに置き換わっている(ちなみに最新作「プロ野球 熱スタ2006」には,ファミスタモードが搭載されている)。
■標準的なオンライン対戦ゲーム+標準的な野球ゲーム
さてそんな中,突如として発表され,それからわずか1週間後にプレオープンテストがスタートしたのが,ファミスタ オンラインである。スーパーファミコン版のファミスタ(つまり,スーパーファミスタシリーズ)をベースに,バンダイナムコゲームスが開発したという本作は,ゲームの内容を細かく説明するのもバカバカしくなってしまうほどに,ファミスタになっている。
だからファミスタを知っている人に対しては,「インターネットを通じて,見知らぬ人とファミスタで対戦できるぜ! ファミスタが好きだった人は遊んでみても後悔はないはず!」ぐらいしか書くことはない。それほどまでに,ファミスタなのだ。
と,さすがにここで筆を置くわけにもいかないので,ゲームの概要と遊び方についても,一応紹介しておこう。
ゲームを起動したらまず,監督名(つまりプレイヤー名)を決め,使用するチームを選ぶことになる(使用チームはいつでも変更可能)。選べる球団は,実在する12球団+ナムコのゲームにちなんだ選手で構成された架空の球団「ナムコスターズ」の13種類。もちろん,プロ野球選手は実名で登場する。
その後,対戦ロビーに入室したら,ルームを作成してルールを設定し,対戦相手の入室を待つことになる。ちなみにルーム作成時に設定できるルールは,DH(指名打者)制の有無,イニング数の選択(3/6/9回の3種類),延長戦の有無,コールドゲーム成立の点差設定(5点か10点)の四つ。ルーム作成後には,先攻/後攻の設定も可能だ。また,対戦相手を限定するためにパスワードをかけることもできる。
もちろん逆に,誰かが作成したルームに入室し,対戦することも可能。ロビーでは,対戦相手を募集中のルームだけを表示させることができるほか,「いきなり対戦」ボタンを押すことで,対戦相手を募集中のルームにランダムで入室することもできる。このあたり,オンラインゲームとしてはごく当たり前な機能ではあるが,これがファミスタに実装されている思うと,何かしらの感慨を覚える人もいるかもしれない。
試合中の操作は,A/S/Dキーとカーソルキー,そしてチャットマクロに割り当てられた0〜9の数字キーのみで行う。ロビーやルームではマウスの操作も可能なだけに,一瞬とまどってしまうかもしれないが,「トレーニング」(チュートリアルモード)で一通り操作を学んでおけば,それほど悩むことはないだろう。
それ以外は,野球のルールを知ってさえいれば,問題なくプレイできるはず。自分が攻撃側のときは,ピッチャーの投球のタイミングとコースに合わせてバットを振り,ヒットを打ったら盗塁などをして塁を進め,最終的にホームベースを狙う。守備側のときは,ピッチャーを操ってコースや変化球をうまく使い分けて,相手バッターの空振りを誘ったり,うまく打たせて野手に取らせたりしながら,三つのアウトを奪う。といった具合だ。
なお,デフォルトでは捕球時の野手の移動はオートになっているが,これをマニュアルにすることもできる。内野手も外野手もプレイヤーが指示した方向へ一斉に動いてしまうので(ファミスタだし),どう見ても外野に飛ぶであろうフライを内野手がふらふら追いかけた結果落球し,一度下がった外野手がふらふら前に出てきて捕球,その間に打者は三塁へ……みたいなこともある。オートでこれをやられるとストレスが溜まってしまうような人は,好プレイも珍プレイもすべて自分の責めに帰するマニュアルモードを選択したほうがいいだろう。
■ファミスタ オンラインならではの新要素
と,細かく野球ゲームの遊び方を解説していてもきりがないので,ファミスタ オンラインならではの新要素「カードシステム」についても説明しておこう。
これは,試合前に「選手カード」や「アイテムカード」をデッキとして組んでおくと,ドリームチームを作れたり,試合中に一時的なパワーアップができたりといったもの。
プレオープンの段階では,打撃時にミート力が上がるもの,絶好調になるもの,投球時に球速が上がるものと,試合中に使用できる3枚の「アイテムカード」が各プレイヤーに与えられている。各カードは一試合につき一度しか使用できないので,ここぞという勝負の場面にこれを使えば,形勢を逆転できたり,急場をしのげたりするというわけだ。が,実際のところ,それほど劇的な影響はないような印象を受けた。
とはいえ,いずれはアイテムカードの種類が増えるようであるし,本作では基本プレイ料金無料のアイテム課金制が採用されることになっているため,相当強力なアイテムカード(「ボールに当たれば百発百中ホームラン」なカード……は,さすがにないか)が販売されることもありそうだ。
こう考えていくと,自由に使えるお金が多い人ほど,試合を優位に進められるようになるのでは? という懸念を持つ人もいるかもしれない。だが,現在はオフになっている機能には,対戦ルーム作成時に「デッキレベル」を設定する項目があり,高いレベルのカードでデッキを組んでいる人は,対戦相手として除外することも可能になるのではないかと思われる。この問題については,それほど心配することではなさそうだ。
また,Web上に「達成記録:投球回100回達成まで,あと16回!」といった具合に,記録の目標も表示されるので,「今日はこの記録を達成するまで遊んでみよう」といった具合にモチベーションを高めやすい。
確かに,グラフィックスもシステムも最先端とは言い難い。だが,とにかく対戦が面白いのだ。打席では,次に来る球を予想し,マウンドでは,打者の読みの裏をかくコースを狙う……。ことごとく外れた読みに焦りが募り,あからさまなボール球に手を出して空振り三振……。人間相手の対戦だからこそ,こんなドラマを一球ごとに楽しめる。プロ野球中継を見るのが好きな人や,野球マンガが好きな人ならば,おそらく一球ごとに実況/解説をしてしまいたくなるはずだ。
ファミスタ オンラインでは,一か所に集まって,大勢でわいわい声を上げながら対戦する,お祭りのような楽しさは味わえない。でも,隣に対戦相手がいないからこそ,大人げないまでに本気で勝負にのめり込めるのは,オンラインならでは。この熱を,かつての野球少年や野球ゲーム少年には,ぜひ味わってもらいたいと思う。
ちなみに,9月11日(月)までは「開幕記念イベント」が実施中だ。この期間にさまざまな記録を達成したり,監督レベル(試合ごとに得られる経験値が一定を超えるとレベルが上がる)を上げたりしておくと,オープンサービス時にはなんらかの特典を得られる模様。いつか遊んでみようと思っている人は,今日にでも始めておいて損はないだろう。(TeT)
- 関連タイトル:
プロ野球 ファミスタ オンライン 2013
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