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[GTMF]国産オールインワンゲームエンジン「OROCHI」が「4」になり,実写クオリティの新世代レンダラー「Mizuchi」を統合
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印刷2015/07/18 22:59

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[GTMF]国産オールインワンゲームエンジン「OROCHI」が「4」になり,実写クオリティの新世代レンダラー「Mizuchi」を統合

 日本のゲーム開発スタイルに適合するように注力して制作された純国産ゲームエンジン「OROCHI」がバージョン4となり,今回のGTMF 2015ではその概要が発表された。
 登壇者は,現在のOROCHIエンジンの実質的なプロジェクトリーダーを務めるシリコンスタジオの原田喜仁氏(技術本部応用技術部 ソフトウェアエンジニア)と,OROCHIに統合されることとなった新世代レンダリングエンジンのプロジェクトリーダーを務める辻 俊晶氏(技術本部研究開発部 部長)だ。

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原田 喜仁氏(シリコンスタジオ技術本部応用技術部 ソフトウェアエンジニア)
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辻 俊晶氏(シリコンスタジオ技術本部研究開発部 部長)


国産オールインワンゲームエンジン「OROCHI」とは?


 まず,原田氏が紹介したのは「OROCHI」のゲームエンジンとしての概要だ。
 日本のゲーム開発者は,各々が比較的幅広くそして深い知識を持ち合わせており,それらを結集させて何かを作り上げていくスタイルを好む。一方,欧米のゲーム開発シーンでは,業種(職種)が細かく細分化されて,作業もある程度,定式化が進んでいる。

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日本と欧米(海外)のゲーム開発シーンの違い
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OROCHIの開発コンセプト

 OROCHIは,日本のゲーム開発者に適合するように,あらかじめ豊富な機能やツール群,ライブラリ群を提供しつつも,OROCHIを利用するゲーム開発スタジオ側が作業しやすいように,シリコンスタジオがOROCHI自身をカスタムして提供するスタイルを執っている。いわば,ゲームエンジンのセミオーダーメイドのスタイルをとっているわけである。
 エンジン提供後も,手厚い技術サポートがされており,必要であればシリコンスタジオのエンジニアが訪問しての技術指導や対応も行われるという。
 さらに日本時間ベースの時差のない迅速なサポートも特徴として挙げられている。そして改めて言うまでもないだろうが,近代ゲームエンジンなのでマルチプラットフォームにも対応しており,PlayStation 4,PlayStation 3,PlayStation Vita,Xbox 360,Windows PC(DirectX 9/DirectX 11) ,アーケードといったプラットフォームへのクロス開発が可能となっている。

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豊富な機能とカスタマイズ性の高さがOROCHIのウリ
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マルチプラットフォーム対応は当然。さらに手厚い技術サポートも特徴

 そんなOROCHIエンジンは,PS3,Xbox 360時代に産声を上げ,採用処女作として「ガンスリンガー ストラトス」というヒット作に恵まれて業界の注目を集めるや,続々と採用事例を増やしており,最近では「Rise of Incarnates」や「World of FINAL FANTASY」への採用も発表された。そんな実績を積み上げてきたOROCHIの新バージョンが発表されたわけである。


OROCHI 4とは?


 「OROCHI 4」の最大のトピックは,一言でまとめれば,シリコンスタジオが開発した新世代レンダリングエンジン「Mizuchi」を統合したことにある。

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OROCHI 4の最大の特徴はMizuchiを統合したところにある
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光学シミュレーションベースのポストエフェクト「YEBIS3」も引き続き搭載される

 Mizuchiについては,筆者が昨年のCEDEC 2014レポートでまとめているが,実写と見間違いそうなレベルのリアリティを実現するために開発されたリアルタイム物理ベースレンダリングエンジンだ。


 もともと「Mizuchi」はシリコンスタジオがグラフィックスミドルウェアとして単体リリースを予定しているもので,既存のゲームエンジンに組み込むことで,少ない手間でゲームグラフィックスを一段上のクオリティに引き上げられることをウリにしていた。その実力を証明するために,いっそのこと自社のOROCHIに組み込んでしまえ……ということでできたのが「OROCHI 4」なのだ。

OROCHI 4は,Mizuchiを統合することで,ゲームエンジンとしての機能性や使い勝手はそのままに,グラフィックスをPS4,Xbox One,DirectX 11世代基準の表現に引き上げることを可能にした
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 なので,OROCHI 4は,OROCHI3までを使って制作されたゲームであれば,ゲーム本編にはほとんど手を入れずとも,グラフィックスだけをMizuchiクオリティにすることも可能なのだ。

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OROCHI 4は,グラフィックス部分以外に大きな変更はない。ゲーム本編制作スタイルは従来通り。グラフィックス部分については,Mizuchiを活用する場合には,物理ベースレンダリングを想定したコンテンツ制作パイプラインの導入が必要になる
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 OROCHI 4には,OROCHI3以前の内蔵グラフィックスエンジンは搭載されたままなので,PS3版やPS Vita版では内蔵グラフィックスエンジンを用い,PS4版をMizuchiを活用する……といったワークフローを選択することが可能となっている。
 新規開発タイトルを,いわゆる縦マルチ展開(同一タイトルを新旧世代向けに開発・リリースすること)する際にも,ビジュアルクオリティを低スペックマシン側に引っ張られることなく,それぞれのプラットフォーム上の最高の映像で実現できるというワケなのだ。

グラフィックスをPS4版ではMizuchiベースで,PS Vita版ではOROCHI内蔵エンジンで……といった縦マルチ展開開発が可能に
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Mizuchiの主要機能の実例一覧。物理ベースレンダリングは「エネルギー保存則」に則ってライティング,シェーディングを行う手法で,照明環境が変わってもその材質感が維持される特徴がある。今世代のリアルタイムグラフィックスの標準的概念だ
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 なお,このOROCHI 4に統合されたMizuchiは,「Mizuchiエクステンション」という拡張機能の形で提供される。
 従来のOROCHIではインゲームツールでグラフィックスの各種設定や細々とした制作が行えたが,OROCHI 4にて「Mizuchiエクステンション」を活用してグラフィックスを制作していく場合には専用のMizuchiEditorを利用することになる。
 MizuchiEditorは,ゲームメカニクスの制作パートと,ほぼ切り離されたグラフィックス制作専用ツールで,独自シェーダ設計,光源の編集,Image Based Lighting用のキューブマップ設定,マテリアル設計,ポストエフェクトデザインといった作業が行える。

MizuchiEditorによる光源やImage Based Lighting用のキューブマップ設定の様子
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MIZUCIエクステンションを活用する場合,マテリアル設計やポストエフェクトデザインもMizuchiEditorで行うことになる
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 Mizuchiエクステンションを使わない,旧世代プラットフォームのグラフィックス制作は,従来どおり,インゲームツールを使ってもいいのだが,MizuchiEditorで制作したグラフィックスを旧世代プラットフォームに最適化して自動生成する機能も提供されるため,Mizuchiエクステンションベースで開発したタイトルは半自動で縦マルチ展開ができるようになっている。

MizuchiEditor/Mizuchiエクステンションを活用して制作したグラフィックスについては専用最適化ツールでOROCHI内蔵グラフィックスエンジン向けに半自動変換が可能
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左は従来式,右はOROCHI 4+Mizuchiエクステンションによる描画(物理ベースレンダリング)
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 PS4,Xbox One時代に移行してまだ2年足らずといったところで,まだまだ当面は,新規開発タイトルも縦マルチ展開が求められている。とくに日本ではPS Vitaの存在感はそこそこに大きく,PS3だけでなくPS Vitaまでの縦マルチ展開を考えてゲーム開発を行っているゲームスタジオにとっては,OROCHI 4のこのMizuchiエクステンションの仕組みは魅力的に映ることだろう。
 今後のOROCHIの進化の方向性についてだが,原田氏によると,今後は,現在はエクステンションの形で統合したMizuchiを,OROCHIコアに完全統合していくことも検討しているとのことだ。

 最近のスマートフォンやタブレットの性能強化ぶりを見れば想像できると思うが,時代が進めば縦マルチ展開先のロースペック側のプラットフォームも性能の底上げがなされることは必至だ。ロースペック側プラットフォームでも物理ベースレンダリングが実用レベルで動くことになるのにそうは時間も掛からないだろう。そうした時代を迎えることを想定し,OROCHI内蔵グラフィックスエンジンそのものをMizuchi相当にしていこうという検討も始まっているということなのだろう。
 ところで,ブースで取材したところ,OROCHI 4は仮想現実(VR)への対応も進められているそうで,シリコンスタジオによれば,東京ゲームショウのタイミングで,OROCHI 4のVR対応の成果を披露できるかもしれないとのことだった。こちらも楽しみである。

OROCHI公式サイト

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