インタビュー
遊びやすさが劇的に改善される「AION」 2.0そして2.1到来,導入直前開発/運営インタビュー
本稿では,オフラインイベントの終了直後に行ったインタビューをお届けしよう。インタビュー相手は,韓国NCsoftでAIONの海外開発チーム長を務めるイ・ジホ氏と,AION日本プロダクトマネージャーの張 盛然(ジャン・ションヨン)氏の2名だ。
「AION」“エピソード2.0 新世界”の実装を記念するオフラインイベント開催
あらためてAION海外開発チーム長に聞く
各国のAIONプレイヤーの傾向など
NCsoft AION海外開発チーム長 イ・ジホ氏 |
エヌ・シー・ジャパン AION日本プロダクトマネージャー ジャン・ションヨン氏 |
本日はお忙しい中,対応していただき,ありがとうございます。オフラインイベントを終えてみて,現在の心境はいかがですか。
ジャン・ションヨン氏(以下,ジャン氏):
イベント中は,来場された方達に喜んでいただいているのが伝わってきて,スタッフ一同とても嬉しく思っています。自分は今回初めてAIONのカンファレンスでステージに立ちましたが,想像していた以上に緊張しました。自分の発言の責任の重さを実感するとともに,こうやって発表したからには,なんとしてでも実現せねばならないと,あらためて決意した次第です。
イ・ジホ氏(以下,イ氏):
ステージに立つ前はかなり緊張しましたが,今は無事に終えることができてほっとしています。
意外に思われるかもしれませんが,韓国ではこういったオフラインイベントはあまり行われません。ほとんどが記者向けの発表会です。それらと比べるとだいぶ雰囲気が違いますね。この様子を,韓国NCsoftの開発チームの人達にもぜひ見せてあげたいと思いました。
4Gamer:
それではさっそく本題へ移ります。イさんは,AIONのローカライズ作業を統括されていますが,各国のAIONのプレイヤーからの要望を,どのように把握されているのか簡単に聞かせてください。
イ氏:
ざっくりとした説明になりますが,ヨーロッパとロシアではRvR(PvP),中国と台湾ではレベル上げ全般,そして日本とアメリカではソロプレイに関する要望が多いです。
4Gamer:
なるほど。日本についてですが,AIONを遊んでいる人達が,どの部分をとくに評価してくれていると考えていますか?
イ氏:
マイキャラの外見を愛してくださるという意味では,日本のユーザーさん達が一番ですね。台湾もそれに近い傾向がありますが,日本はずば抜けて高いと思います。AIONはグラフィックスが非常に凝っているので,そういった反響はスタッフにとってとても嬉しく,やり甲斐があります。
4Gamer:
先ほどのステージイベントで,アンケートをもとにした質疑応答が行われましたが,アバターアイテム関連の要望が多かったですね。
ジャン氏:
スク水やエプロンといった要望を聞いたときは,思わず顔がにやけてしまいました(笑)。
私も,まさかあそこまでストレートな要望が集まるとは思いませんでした(笑)。
話を戻しますと,キャラクターの綺麗さや可愛らしさといったところがモチベーションになっている人が多くて,女性のプレイヤーさんが多いというのも,日本のAIONの特徴といえると思います。
あとは,日本のユーザーさん達はイベントが大好きですね。「こういったイベントを行ってください!」といった要望も,他国と比べてとても多いです。
4Gamer:
3月に行った白熊イベントの辺りから,日本独自のイベントが少しずつ増えてきた印象があります。
イ氏:
そういったイベントの必要性は前々から感じていましたが,これまではなかなか手が回りませんでした。現在はNCsoftの社内に,海外でのイベントを専門に開発するスタッフがいるので,これからの動きにも期待してください。
ちなみに,その開発スタッフが大の日本好きで,目を離すと日本のイベントばかり次から次へと開発しようとするんですよ。私としては,他国用のイベントを均等に開発してもらわないと困るので,なかなか悩ましいです(笑)。
勢力バランス調整策として発表された4項目
それでは逆に,日本のAIONで厳しいと感じられている部分についてお聞かせください。先ほどのカンファレンスでは,要塞戦や種族間の人数差や勢力差について言及されていましたが。
イ氏:
要塞戦に関しては,実はすべてのローンチ国から改善要望がきています。しかもそれぞれの国によって状況が異なっており,要望の内容も違っているのです。そのため国別対応の必要性を強く感じていますね。
4Gamer:
原因を辿っていくと,まず最初に種族間の人数問題があって,それが要塞戦のバランスに影響を及ぼしているのかな? と思ったのですが,実際のところはどうなのでしょうか。
種族間の人数差そのものは,本質的な問題ではないと考えています。国やワールドによっては,日本以上に極端な差が付いているケースもありますが,要塞戦が盛り上がっていないかというと,一概にそうとも言い切れません。
では何が大事なのかというと,PvPに熱心な人やレギオンがどれだけいるかという部分でしょうね。
4Gamer:
総人口ではなく,いうならば“PvP人口”ということですね。
イ氏:
はい。たとえ総人口では差を付けられていても,パワフルなレギオンは少ない人数で結果を出しているケースが多々あります。むしろ,逆境を覆すことにモチベーションを感じている人もいます。
4Gamer:
そういった気概のあるチームが,戦局に影響を及ぼしていると実感できるゲームバランスなら,人によってはかなりのやり甲斐がありそうですね。
イ氏:
そうですね。ただ,要塞戦の支配状況では,大きな差がつき,覆しにくいという現状が続いています。これに関しては,先ほどのカンファレンスで発表したとおり,今後対処を行っていきます。
4Gamer:
カンファレンスでは要塞戦に対する改善策がいくつか挙げられました。その中で気になった点を伺いま。まずは“劣勢バフ”に関しては,どういった方向性なのでしょうか。
イ氏:
劣勢バフに関する現在の要望をまとめると,「発動条件が分かりにくく,仮に発動しても効果が実感しにくい」です。なので,発動条件を緩和するとともに,発動時の効果を大きく引き上げます。
4Gamer:
続いて,要塞が占領できないために楽しめないコンテンツに対しては,別のアプローチで提供したいとのことですが。
これは突き詰めると,要塞のインスタンスダンジョンと,そこでの活動を通じて得られるアビスポイントの2点に集約されます。現在は,具体的にどういった形でそれら提供するのか協議を進めている段階で,まだ詳細をお話しできるところまでは進んでいません。
4Gamer:
実際にゲーム内に反映されるのは,いつごろを予定されていますか?
ジャン氏:
これは現時点での考えと前置きしますが,年内は2.0と2.1を実装し,それらに関するフィードバックの獲得に専念します。要塞戦に関する,今挙げた2つのシステムの開発作業に取り掛かるのは,来年(2011年)の話になりますね。
AION 2.0で導入される日本独自仕様とは
続いては“エピソード2.0 新世界”で盛り込まれる,日本独自仕様についてです。カンファレンスでの発表を見る限り,韓国版と比べてゲームバランスを大分ライト寄りにしたという認識で正しいのでしょうか。
ジャン氏:
そうです。この方向は今後も継続して行う予定で,その第一弾が今回の2.0ということになります。
4Gamer:
正式サービスから1年3か月が経過して,ようやく本格的なカルチャライズが施されることになります。日本サービスのこれまでの推移を鑑みて,いまの心境はいかがですか。
イ氏:
各国のニーズに合わせた調整の必要性は感じていましたが,当時はNCsoftの開発リソースが足りず,なかなか手が回りませんでした。本当に長らくお待たせしました,といった気持ちです。
4Gamer:
2.0で導入されるそのほかのコンテンツも含めると,ゲーム全体の雰囲気が大きく変わってきそうですね。
ジャン氏:
ええ,カンファレンスでは詳しく話せませんでしたが,2.0ではソロプレイ用のインスタンスダンジョンがいくつか追加されます。これらは,従来のレベル上げで,躓きやすいポイントを補うような形になっています。
2.0ではアカウントごとにキャラクタースロットを1枠追加しますが,ベテランの人もぜひこの機会に,リニューアルされた育成環境を体験していただきたいですね。
いまの話に補足しますと,2.0で導入されるソロプレイ用のインスタンスでは,キャラクターのレベル上げだけでなく,ギーナや有用なレアアイテムが獲得できたり,クエストやミッションも進めやすくなっています。この辺りにも注目してもらいたいですね。
4Gamer:
これからは,ソロプレイ主体でもスムースに育成できるようなイメージですか?
ジャン氏:
本当はパーティプレイも体験してもらいたいのですが,いまはゲームの選択肢として,ソロプレイが現実的に選べるところまで持ってこれたと思います。私は韓国版の2.0で,新規キャラクターをレベル1から40まで実際に育成してみました。もちろん,一般プレイヤーとまったく同じ条件です。すると,以前と比べて,プレイ感覚が全然違うんですよ。大きなストレスを感じることなく装備が揃っていったり,自然と次のステップに行くための,導線のようなものが常に感じられたのがとくに印象的でした。
4Gamer:
レベル1から50まで,言い換えると2.0以前のコンテンツに関するバランス調整は,今回の2.0と日本独自仕様を持って,ひとまず完了という認識ですか?
イ氏:
そうですね。
4Gamer:
こういったライト向けの調整が行われるのは,日本のバージョンだけなのでしょうか?
イ氏:
レベル上げの軽減に関しては,とくに日本とアメリカからの要望が強いですね。その他の国のバージョンに関しても同様の調整が入る可能性があります。
それでは,AION 2.1以降の展開はどうなる?
では,そのさらに先の展開についてお聞きします。イベントでのサプライズ発表として,11月30日に“エピソード2.1 黄金時代”が実装されることが明かされました。この2.1は,韓国ではいつごろ導入されたのでしょうか。
ジャン氏:
韓国では,10月6日に実装されたばかりです。
4Gamer:
内容を見ていきますと,2.0の日本独自仕様をも上回る,大きな緩和のようですが。
イ氏:
はい。2.0未満のありとあらゆるコンテンツに関して,ドロップ率などが劇的に改善されています。
ジャン氏:
それとカンファレンスでは詳しく述べませんでしたが,2.0時点での龍界の難度は,凄まじく高いです。モンスターのAIも賢く,相当コアなプレイヤーをも苦しめることでしょう。そのあたりのバランスに関しても,2.1で再調整されます。
4Gamer:
なるほど。“2.0”から0.1刻みになりますが,これはマイナーアップデートという認識で正しいのでしょうか?
新しい新コンテンツやシステムが追加されているわけではないので,その意味ではマイナーかもしれません。しかし,ゲームで最も大事なのはバランスであり,2.1ではそこに大きな手を加えています。
ですので,たとえ新しいコンテンツがなくても,行っていることはメジャー級のアップデートだと我々は考えています。2.1を導入したときの韓国のユーザーを見ても,2.0を上回るくらいの反響がありましたし。
4Gamer:
日本ではもう一つ,2.0からほとんど間を開けずに2.1を迎えるというところも,注目すべき点だと思います。
ジャン氏:
韓国では2.0から2.1まで5か月かかりましたが,日本では1か月未満ですからね。スタッフはとても頑張ってくれています。
4Gamer:
ここまで短縮できた理由は,テキストのローカライズといった作業を挟まないからなのでしょうか?
ジャン氏:
それもありますね。
4Gamer:
2.0と同様に,2.1でも日本独自仕様が盛り込まれる可能性はありますか?
それに関しては,現在検討している段階です。いくつかのプランはありますが,最終的には2.0を導入したあとの反響を見て決める予定です。現在お伝えできる範囲では,要塞戦に関するバランス調整が入る可能性がありますね。
4Gamer:
2.0と2.1でキャラクターの育成環境が整えられたとして,その次に大きな課題となるのは,いかにしてPvPに参加してもらうかだと思います。この部分に関してはいかがでしょうか。
イ氏:
PvPへの誘導は,すべてのローンチ国における悩みの種です。PvPの未経験者でも参加しやすいコンテンツや,少しだけのプレイでも報酬がもらえるシステムなど,さまざまなPvPシステムの実装が必要でしょう。とくにPvPを敬遠している人に向けて,いかにしてこの面白さを伝えていくか,ここが最重要ポイントだと考えています。
4Gamer:
難題になりそうですが,実現の目処は立っていますか。
イ氏:
今はまだですが,何としても実現したいです。PvPの面白さを一度知ってしまえば,きっと多くの人が病みつきになりますからね。
運営体制を刷新し,プレイヤーのフィードバックを直接獲得
最近の運営チームの活動を見ていて,フィードバックを受ける姿勢のようなものが少しずつ変化しているように思えます。ユーザーとの距離が近くなったといいますか。
ジャン氏:
そこは,現在もっとも大切に取り組んでいる部分の一つです。
4Gamer:
先ほど行われた質疑応答でも,結構ぶっちゃけたコメントも採用していたり,生の声を拾ってるなと。
ジャン氏:
その結果,質問内容がかなり被ってしまったのは反省しないといけませんね。
最近だと,公式掲示板に専門のスタッフを置いて,ユーザーとの対話を心がけるようにしています。こういったお客様とのコミュニケーションは,これからもっと増やしていきたいと考えています。
4Gamer:
なるほど。
ジャン氏:
なかには,「パフォーマンスじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが,我々としてはもっと長期的な考えでいます。というのも,こういった活動を継続して行っていくことで,ユーザーからのフィードバックをよりストレートに受け止めることができるからです。日本独自仕様に関しても,フィードバックの獲得が円滑に進むことで,よりプレイヤーの理想に近い形で導入できるはずです。
我々にとっては慣れないことを行っているので,まだまだ至らぬところもあるかと思います。しかし今は,失敗よりも,アクションを行っていくことが大切だと考えています。
4Gamer:
今回のオフラインイベントの内容も含め,その姿勢はよく伝わってきましたよ。
ジャン氏:
あまり公の場で言うことではないかもしれませんが,今回のイベントの準備では管理部門のスタッフにも手伝ってもらったりしましたし,まさに全社員が一丸となって取り組んでいました。
その際に気付いたことなのですが,そういった準備を通じて社内の雰囲気がよくなっているんですね。お客様を楽しませるためのイベントであるのと同時に,我々が成長するためのイベントだったんだなぁと思います。
4Gamer:
なんだか,そういうのっていいですね。
今回はお忙しい中,ありがとうございました。
サービスイン当初のAIONを振り返ると,大きく分けて二つの問題があった。セキュリティシステムの甘さと,ソロプレイに一通り慣れたあたりのレベル20手前など,一部のレベル帯でキャラ育成がしにくいことである。
そして現在,セキュリティシステムに関しては大分改善されてきている。BOTや不正対策などについてはまだまだ厳しい意見もあるようだが,専任チームの活動報告なども見えるようにはなってきている。そして残るゲームバランスに関しても,上で述べたように2.0や2.1で大きな改善が期待できる。しかも嬉しいことに,運営とプレイヤーとの距離も近づいてきたようだ。
つまり,AIONというMMORPGから大きな欠点がなくなりつつある。言うまでもなく,トータルクオリティは非常に高いMMORPGであるわけで,正当な評価を受けられるようになったAIONが今後どのようにユーザーに受け入れられるか,とても興味深い。
そのほかのさまざまなオンラインゲームの状況を鑑みるに,これから年末にかけてのタイミングは,AIONにとって絶好のチャンスのように思える。このチャンスをいかにしてモノするか,これからの同社の動きに注目していきたいところだ。
「The Tower of AION」公式サイト
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