連載
【島国大和】さて,次世代のオンラインゲームとはなんぞや?
島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者
島国大和のド畜生 出張所 |
どうも皆様またお会いしました。島国大和でございます。何を書いたものかと考えあぐねていた所,目の前に大変魅力的な釣り針があったのでパクリと。
切込隊長:MMO系RPGはどうしてクリッコゲームばっかりなのか?
4Gamer内への言及ならば,誰からも怒られることはあるまいて……というわけで,「クリゲーってどうなの,オンラインゲームってこの後どうなるの?」みたいな話を書いてみようと思います。
クリック型オンラインゲームの良さとは?
・誰でも遊べる。だってクリックするだけだもん。
・制作,運営コストが安い。だってクリックするだけだもん。
クリック型ゲーム(以下,クリゲー)の良さは,言ってしまえばこの2点。
・誰でも遊べる。
誰でも遊べるというのがどれほどゲームで重要かは,前回書いた,ドラゴンクエストがどんなに凄かったかでも触れた。そもそも,大勢を相手にしようと思ったら,誰でも遊べる簡単さじゃなきゃいけない。クリックするだけなら,パソコンいじってる人ならみんな出来るからバッチリ!ってなる。
・制作,運営コストが安い。
制作,運営コストが安い。……といっても,そんなに安い訳じゃないし,コンシューマに比べりゃなんだかんだで高くつくけど,ネットFPSやらアクションMOやらと比べたら,制作期間もサーバ負荷も断然読みやすい。
ゲーム開発って「やってみた,不味かった,考える」の繰り返しなので,最初からどの程度のものが作れるかが良く解ってるクリゲーは,制作が難航しにくくて,開発の立場からするととても魅力的。
ヘタにFPSでも作ろうものなら,当たり判定をどうするか,チート対策をどうするか,通信ラグはどうするか,困難な事が山盛りでプログラムが超キッツイ。
あるいは,まったく誰も見た事の無いような新しいアイデアでゲームを作ろうものなら,それが面白い保証がどこにあるやらわからないので,ちゃんと面白くなるまでにどれだけコストをかけねばならないか。
そこをいくと,クリゲーは,もともと「オンラインゲームでは,こういう作りのゲームが作りやすいよね」って所から発祥してるだけあって,開発頓挫リスクが,大変少な目。開発側の視点で見れば,そういう利点は明確にある。
クリゲーの構造と苦悩
クリゲーの基本構造は単純で。
「クリックして敵を倒す事によって強くなり,さらに強い敵を倒せる。」
すごく大雑把に言えばこう。
この辺はクリゲーじゃなくても,RPGは基本同じ構造。ドラクエだってそう。
もちろん多少はプレイヤースキルも必要だけど。あんまりプレイヤースキルが必要なゲームにしちゃうと,今度は多くの人が楽しめなくなっちゃう。
そんなシステムで,大勢の人に長時間遊んでもらわなければいけない。惹き付けなければならない。「ドラゴンクエスト」はシナリオで引っ張った。「ファイナルファンタジー」はグラフィックで引っ張った。でもオンラインゲームは,もっと長時間引っ張らないといけない。
ココが大変。かつ重要。コンシューマゲームは,1週間みっちり遊べれば十分だけど,オンラインゲームはせめて1年ぐらいは遊んでもらわないといけない。開発コストも高いし,プレイヤーが数ヶ月で居なくなればすぐ過疎化しちゃう。そりゃどうしてもマゾ仕様になってしまうわけだ。
そしてクリゲーの場合,行きつく先は決まっている。
「ためた経験値やアイテム,それに費やした時間,もったいなくて今更やめられねぇ!」
プレイヤーの多くが今更やめられねぇ!と思ってくれたら大賑わい。歪んでるぜ!
しかし,クリゲーにはクリゲーの苦労がある。
開発的に良いことばっかりだと書いた癖に!と思う無かれ。良いことばかりだから苦労する。良い事ばかりだから,みんな作る。同じようなゲームが多いのね。ほとんどのオンラインゲーム会社がクリゲーを作っている。
ライバルが大量に居る。そんなきつい市場で戦うのは大変難しい。どうやって差別化するんだよ。しかも,基本的にどのゲームも長時間プレイヤーを拘束する。そんな時間のあるプレイヤーなんていっぱい居るわけ無いじゃない。パイの食い合いにも程がある。
一つの究極形に近い「The Tower of AION」
でもゲーム自体は,いわゆる普通のクリゲー。
言ってしまえば,「アジア系MMORPGを真っ当に,真っ直ぐ,大金かけて作りました!」って感じ。
「新しい挑戦は一切しねぇ!だが絵にはコスト掛けるぜ!」
「新しい挑戦は一切しねぇ!だがクエストは大量に作るぜ!」
「新しい挑戦は一切しねぇ!だがやたら丁寧に作るぜ!」
という判断を開発者がしたかは定かではないけど,外からはそういう風に見えてしまう。凄まじい漢らしさ。
もう作り方が確定しているから,コストをかければそれだけ絵が作れるし,クエストも作れる。正しいコストのかけ方。でもこれって,かつての日本のRPGが通ってきた道なんだよね。ファイナルファンタジーとかさ。
さて今後のオンラインゲームは?
というわけで,クリゲーの過当競争に限界を感じたパブリッシャは,カジュアルゲームを作ったり,FPSを作ったり,音ゲーを作ったりと,色々やってる。もちろん,クリゲーの究極を目指したゲームも出て来ている。
クリゲーだけど,ゲーム要素を充実させてそれでいて簡単とか,よく出来てるなーと思わせるゲームも増えてきた。
だいたい,プレイヤーもバカじゃない。というか,プレイヤーってマジで頭いい。さすがに単純なクリゲーには飽きているし,クリゲーのシステムも,そのマゾ度も分かった上で,面白いとこだけちょちょいと遊ぶ。良く分かっているなと思う。
プレイヤーがちゃんとゲームを選んでくれれば,ゲームはまだまだ進化する。プレイヤーがゲームを,ひいてはゲーム業界を引っ張る側面は少なからずある。だからゲーム屋としても,その辺には期待せずにはいられない。
ちなみに,日本のオンラインゲームの開発史は,クリゲーとの戦いでもあった。
ここは個人的見解に過ぎる部分も多いかもしれないけど,最後にちょっとだけ書いて置く。
ぶっちゃけると,日本のゲーム制作者から見て,クリゲーは正直「無い」,あれはゲームとしてどうかと思ってしまう。もっと面白いゲームを作れる,もっと工夫を凝らしたゲームを作れる。そういった試行錯誤が日本産オンラインゲームではかなりなされてきた。
だけど,韓国を筆頭とする「アジア産クリゲー」と呼ばれる作品は,理由があってクリゲーなのだ。クリゲーだからこそヒットしたと言い換えてもいい。それがここまで書いたような理由。
例えば韓国では,コンシューマ機の輸入が禁止(※注),かつ国策でインターネット環境が急激に普及したという背景あっての発展であり,さらにここ最近の解禁を経ても,違法コピーの問題など,コンシューマゲームでは商売にならないから,サーバー認証が必要なオンラインゲームがどんどん進化した。クリゲーは,そうして進化して行き着いた「オンラインゲームの作り方」の一つの回答であり,到達点だ。
※注:韓国では,日本の大衆文化の輸入禁止措置が長らく敷かれており,ゲームも「日本文化の一つ」として,近年まで輸入が制限されていた
だけど,オンラインゲームが日本に広まっていまや何年も経った。日本の開発者だって,そりゃいろいろと気付く。慣れる。経験も積む。プレイヤーだって,賢い。
というわけなので, まだまだ「おお!これはスゲェ!」と思えるようなゲームが日本からも出てくると思うし,そこは期待していいと思う。
オイラも作りたい。予算下さい。
■■島国大和■■ 有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人で,不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者。みんなも知ってるあんなゲームやこんなゲームの開発に携わってきた同氏だが,最近は,オンラインゲームの開発にも手を出しているとかいないとか…… |
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