インタビュー
2005年に始まった「The Tower of AION」の開発は本当に長く,そして大変なものだった…。韓国の開発者3名に直接インタビュー
今回は,プレスカンファレンスの直後に,エヌ・シー・ジャパン本社にて行った開発者インタビューをお届けする。なかなか興味深い話を聞くことができたので,AION に注目している人は入念にチェックしてみてほしい。
ワールドワイド展開するにあたり強力なキャラクターエディット機能を実装
NCsoftアートディレクター Kim, Hyung Jun(キム・ヒョン・ジュン)氏 |
NCsoftプログラミングディレクター Shim, Maro(シム・マロ)氏 |
NCsoftワールドデザインディレクター Lee, Ji Ho(イ・ジホ)氏 |
先ほどのプレスカンファレンスではお疲れさまでした。今の心境はいかがですか?
キム・ヒョン・ジュン氏(以下,キム氏):
ようやく日本でもAION を正式に発表することができ,今は誇らしい気持ちです。早く日本の皆さんにもプレイしてもらって,感想を聞いてみたいです。
イ・ジホ氏(以下,ジホ氏):
カンファレンスの最後では壇上にてトークセッションを行いましたが,実はあのとき,内心ではかなり緊張していました。今ようやくほっとしています(笑)。
シム・マロ氏(以下,マロ氏):
自分が想像していた以上に大勢の人にきていただき,日本の方の関心の高さに驚きました。ようやく日本でもサービスを始められるんだな,と実感しています。
4Gamer:
私は2006 年のE3会場で初めてAION を目にしましたが,あのときのバージョンと比べてかなり進化したなあ,という印象を受けました。AION の開発期間はどれくらいなのでしょうか?
キム氏:
2006年のE3には,私もNCsoft の一員として参加していましたよ(笑)。AION の開発は2005年からスタートしましたが,本当に長く,そして大変でした。
4Gamer:
開発がそれだけ長くなると,市場のニーズなども変化するかと思います。それらが開発作業に,なにか大きな影響を与えたりはしましたか?
キム氏:
開発途中で軌道修正した部分はたくさんありますが,とくに大きなものとしては三つあります。一つは,ユーザーがコンテンツを消費し尽くしてしまわないように,常にゲームを拡大・充実させていくこと。次に,NPC 勢力である「龍族」の追加。そして最後は,キャラクターエディット機能を強化することです。
4Gamer:
カンファレンスでキャラクターエディットを見たときはインパクトを受けましたね。カスタマイズできる項目は,実際にはどれくらいの数があるのでしょうか?
キム氏:
数としてはそうですね,頭に関する項目だけで30 種類,体全体で15 種類があります。
キャラクターエディットの開発時にとくにこだわったのは,腕,足,首,胴体などを太さと長さを別々にモーフィングさせることです。顔に関しても目の位置,目の大きさ,目の形などがあります。そのほかにも皮膚の色やタトゥー,そばかすなどのたくさんの項目があります。ぜひ,じっくりと見ていただきたいですね。
4Gamer:
従来のMMORPG の常識で考えると,ちょっとありえないくらいの規模だと思います。
AION でプレイヤーが作成できる種族は「天族」「魔族」の2 種類のみで,例えばエルフやドワーフなどといった一般的なMMORPG における異種族みたいなものは登場しません。ですが,この機能を駆使すればもしかすると……?
キム氏:
ええ。その気になれば,エルフやドワーフっぽい外見のキャラクターを作ることもできますよ。現在稼動している韓国や中国のサーバーでも,ドワーフっぽい外見のキャラクターのみで構成されるレギオン(ギルド)などがたくさんあります。
4Gamer:
東洋っぽいキャラクターも,西洋っぽいキャラクターもボーダーレスで作れそうですよね。極端な話,萌え系キャラも作れてしまいそうな。
キム氏:
AION をワールドワイドで展開すると決めた際に,難題となったのがこの部分でした。今だから話せることですが,ここまで幅広いキャラクターエディタを作るのは,最初は「無理なのでは?」と思ったんです。例えばアジアと欧米だけを見ても,好まれるキャラクターはまるで違いますから。
ですから開発にはかなり苦労しましたが,完成度には自信があります。従来の欧米やアジア系のタイトルで,キャラクターデザインに「くどさ」を感じてしまうような人も,AIONのキャラクターカスタマイズをぜひ一度見てもらいたいですね。
4Gamer:
そのような背景があったんですね。ちなみに天族と魔族とで,基本的な能力値に違いはありますか?
ジホ氏:
ゲームの序盤ではほとんど違わないですね。中盤以降になると,主にスキル使用時の効果で,同じスキルでも少しずつ違いが出てきます。
AION が発表された当初は,ゲームエンジンに“CryENGINE”を採用していることが話題になりました。ですが発表当初と現在とでグラフィックスを見比べると,大分違った印象を受けます。実は“CryENGINE 2”にバージョンを上げていたりしていませんか?
マロ氏:
2005 年に開発を始めた頃から,CryENGINE を使い続けています。ですが,光源や色彩をより美しく表現するために,CryENGINE自体にさまざまなチューンを行っています。
PvP にNPC 勢力が介入することで「PvPvE」へとパワーアップ。PvP を行わない選択肢もアリ
4Gamer:
続いて,AION の特徴であるPvP についてお伺いします。まず,PvP への参加条件や,発生するタイミングはどのようになっていますか?
ジホ氏:
PvP にはいくつかのパターンがありますが,もっともメジャーなのは,天族と魔族の間に位置する,「アビス」と呼ばれる専用のエリアにて行われるものです。アビスへ移動するには条件があり,レベルが25 以上を対象としたクエストをクリアする必要があります。
また,アビスでのPvP とは別に,「次元の亀裂」と呼ばれるポータルを通じて,天族の本拠地エリアから魔族へ,あるいはその逆へと直接乗り込んで行うPvPもあります。こちらのPvP の条件はレベル20 以上です。
4Gamer:
ということは,例えばPvP を望まないような人にとっては,冒険中にいきなりPKされるといった危険性はないんですね。
ジホ氏:
はい。PvP はAION の大きなウリですが,すべての人がこれを行いたいとは限りません。
PvP が苦手という人は,PvP が発生しないエリアでソロプレイやクエストを中心に遊ぶことも十分にできます。そういうエリアでは実質いきなりPKにあうことはないといえます。PvP への参加時にレベル制限を設けたのは,ゲームを始めたばかりの頃は,基本的なゲームシステムを理解するのに専念してほしいからです。レベル25という条件そのものは,かなり緩いですよ。
4Gamer:
キャラクターを新たに作成して,レベル25 まで育成するには,どれくらいの時間が掛かりますか?
ジホ氏:
人によっても違いますが,初めてAION をプレイする場合は,だいたい1 週間前後でしょうか。MMO に慣れたプレイヤーや2 体目以降のキャラクターを育成してノウハウを知っている場合は,大分短くなるかもしれません。
4Gamer:
PvP に勝利することで,プレイヤーはどういったメリットが得られるのでしょうか?
大きなところでは攻城戦で勝利を収め,城を支配下に置くことで,「アビスポイント」が得られます。これを溜めることで,さまざまな褒章アイテムと交換できるシステムがあります。
また,城を敵から守り続けることができれば,その期間に応じて,税金のような形で定期収入が得られます。
4Gamer:
それでは逆に,PvP に負けてしまった場合のペナルティはありますか?
ジホ氏:
経験値や金銭が減ってしまうような,直接的なペナルティはありません。ですが先ほど申し上げた,城の支配期間に応じた定期収入が得られないというのは,敵対勢力に対する相対的なデメリットという見方もできますね。
ペナルティがないこともそうですが,AION はPvP のハードルを下げるために,さまざまな仕掛けを用意しています。ほかのタイトルなどでPvPを敬遠している人も,気軽に挑戦してくれればと思っています。
PvP におけるもう一つの大きな特徴として,NPC 勢力の「龍族」が挙げられます。この龍族は,いったいどのような形で介入してくるのでしょうか?
ジホ氏:
さまざまな形で関わってきますよ。例えば天族と魔族が直接PvP を行っていたり,攻城戦を繰り広げていたりする最中に,劣勢の勢力に助太刀したりします。また高レベル向けエリアでは,龍族が突然ポップすることもあります。
4Gamer:
龍族は劣勢な勢力に味方すると聞いていたのですが,バランス調整を兼ねたものなのでしょうか。
ジホ氏:
いえ,龍族の出現は完全にランダムで,どちらかの味方をすることはありません。
空中戦闘にはサポートシステムも
発表当初から大きなウリとされてきた,飛行システムについて質問します。360 度自由に移動できるのは魅力的ですが,移動や戦闘などの操作をサポートする機能は何かありますか?
ジホ氏:
一度ターゲットした相手を,追尾したりするシステムがあります。厳密に言うと少しややこしくなるのですが,操作システムは戸惑いにくいように配慮しています。
4Gamer:
これは極端な例ですが,モンスターを飛び越えてハイレベル向けのエリアへ移動したり,地上にいるモンスターを空から一方的に攻撃したりなど,飛行システムによってゲームバランスに問題が生じる心配はありませんか?
そういったことはやろうと思えばやれますが,あまり問題視はしていません。例えば飛行時間には限りがあるので,仮に遠くのエリアへ行こうとしても,途中で力尽きてしまいます。それにAION では高所から落下すると大ダメージを受けてしまうので,強引なショートカットは難しいですね。
空からの一方的な攻撃というのは,PvP のバランスを懸念しているのかと思いますが,クラス間の極端な相性差はないので安心してください。なにしろAION では,すべてのキャラクターが空を飛べるようになりますから。近接タイプのクラスが地上にいる際,空から攻撃を受けることは確かにあります。ですから屋外の開けた場所では,周囲に警戒して戦うなど,戦術面で工夫してほしいですね。
4Gamer:
なるほど。キャラクターは,どのタイミングで空が飛べるようになるのでしょうか?
バックグラウンドストーリーの話をしますと,作成した直後のキャラクターは「人間」の状態です。それがレベル10 になるとクラスチェンジに関連したクエストが発生し,それからは「天族」あるいは「魔族」として生き抜いていくことになります。空が飛べるようになるのもこのタイミングですね。
4Gamer:
日本語版のクラスは,すべてが「〜ウィング」という名称になっていますが,そのような設定だったためなんですね。
現在AION では八つのクラスがありますが,その能力を微調整できる「スティグマ」というシステムがあると聞きました。これについて詳しくお聞かせください。
ジホ氏:
スティグマはキャラクターが付け外しできるアイテムの一種で,それにより新たにスキルなどが使えるようになります。例えば,PvPやPvEなどといった遊び方に応じて,キャラクターのスペックを変えられるんです。
4Gamer:
スティグマを装着することで例えば,近接アタッカーの“シャドウウィング”が,自分で回復を行えたりするんですか?
ジホ氏:
クラスによって,装着できるスティグマに制限がありますが,本来のクラスにはなかったような能力も得られます。AION のクラス数は8 ですが,このシステムによってキャラクター育成は大分幅広く行えますよ。
4Gamer:
それは面白そうですね。プレイヤーはそれらのスティグマを,どのようにして入手するのでしょうか?
ジホ氏:
主にモンスターからのドロップアイテムで,そのほかにはクエストの報酬でももらえます。また,シューゴ族の取引仲介人を通じて他人とのトレードも可能です。
4Gamer:
もう一つ興味深いのが,「PC がボスモンスターを倒すと世界に影響を与える」というシステムです。これはいったい,どのようなものなのでしょうか?
ジホ氏:
お詳しいですね(笑)。そのシステムは現在,韓国版での実装に向けて鋭意開発中です。
日本の皆さんに楽しんでいただくのは,もうしばらく先の話になるでしょう。
4Gamer:
それでは,最後に4Gamer の読者に向けてコメントをお願いします。
日本のゲームプレイヤーは,ゲームに対して求めるクオリティが非常に高いです。AIONを世界に向けて展開すると決まったときも,日本の市場に対してはとくに手ごわいイメージがあったのを覚えています。我々にとっては大きなプレッシャーでしたが,同時にやりがいも感じました。ぜひ一度,AION に触れてみてください。
ジホ氏:
韓国と日本とでは,ゲーマーの遊び方や趣向に違いはありますが,ゲームの本質として面白いと感じる部分の多くは共通していると思います。いま韓国でヒットを飛ばしているAIONですが,きっと日本でも受け入れられると信じています。
マロ氏:
これまで韓国と中国とでAION のサービスを行っていますが,どちらも好評です。日本でも多くの方が楽しんでくれたら嬉しいです。どうかよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました
キム氏も指摘していたとおり,日本のプレイヤーはゲームに求めるクオリティ水準がとくに高い。さらにグラフィックスの好みも先鋭化している気配はある。日本で好まれるゲームを見ると,キャラクターデザインなどにはそれが顕著に表れており,いわゆる美形好みが著しく,「洋ゲー」然としたグラフィックスのタイトルは,ゲームシステム云々の前にフィルターにかけてしまう人が多い。それくらいキャラクターの見た目に対する拘りが強い,といえるだろう。
だが,もしかするとAION のキャラクターエディットは,その頑固な壁を打ち破ることができるのかもしれない。仮にそれが成功したら,ライトからコアまで幅広い遊び方をカバーするAION の魅力が,一気に浸透していくのではないだろうか。先日紹介した記事のムービーを食い入るように見ていると,思わずそんな光景をイメージしてしまうのである。
なにはともあれ,一刻も早くプレイし自分の目で確かめてみたい。記者である前にMMORPG のプレイヤーの一人として,そのように強く感じたインタビューであった。
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The Tower of AION
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