インタビュー
「アラド戦記」の大型アップデート“セカンドインパクト”で追加/改良される要素をチェックしよう。来日した開発チームに大切な話も聞いてきた
ところで,プレイヤーならご存じかと思うがアラド戦記では先月,少し慌ただしい動きが起きていた。10月20日から行われたイベントにおいて“武器強化関連アイテムが出現する壷”が販売されたのだが,強化失敗時のデメリットが極端に少なくなる高性能アイテムの出現率が高く,それまで強化に腐心していたベテランプレイヤーから不満の声が挙がったのだ。これについては一部アイテムの設定に不備があった旨のアナウンスがあり,すぐに販売を停止するなどの対応が行われた。だが,釈然としない気分がまだ胸に残っているというベテランプレイヤーはいるかもしれない。
そして,本稿における開発者へのインタビューは,それらが行われるよりも前である2010年10月18日に,セカンドインパクトの概要を教えてもらった上で実施したものである。本稿後半にはプレイヤーが気になっていることについての質問を掲載するが,そこでも先の件については触れることができなかった。その点はあらかじめご了承を。
「アラド戦記」公式サイト
“セカンドインパクト”はどのような内容なのか?
開発者にその方向性を聞いてみた
11月24日に行われる“セカンドインパクト”アップデートは実に多くの内容を含んでいる。開発チームとしては,どのような方向性の元に,このアップデートの内容を練り込んでいったのだろうか? まずはそのあたりを聞いてみた。
“セカンドインパクト”は,単純にレベルキャップを解放してコンテンツの上限を引き上げるだけのアップデートではありません。プレイヤーの皆さんに,これまではできなかった「新しい経験」を提供できるように開発してきました。例えばスキルであれば,単純に高威力のものを追加するのではなく,今までになかった経験をしていただけるよう,より新しい,斬新な効果やエフェクトを持つものとなるように開発を進めてきました。
もう一つ,今回は「利便性の向上」という点にもフォーカスをあてています。プレイヤーの皆さんから寄せられた意見をもとに,クエストの進行を助けるためにクエストブックを導入するなど,色々な部分でより遊びやすく進化させました。かなり多くの要素が追加/改良されています。一度プレイしていただければ必ず大きな変化を感じていただけるでしょう。
なるほど,既存プレイヤーから出ていた“プレイしやすさの向上”や“スキルの効果の見直し”などといった要望には,応えてもらえているようだ。では,新規や休眠プレイヤーに向けては,何か施策があるのだろうか?
イ・ホジュン氏:
もちろん,継続してプレイしていただいている方々だけでなく,休止していて今回のアップデートで戻ってこられるプレイヤーさんにも,スムーズに復帰していただけるような,ゲーム内のバランスの調整も行っています。ぜひこの機会に,またアラド戦記を楽しんでいただければと思います。
“セカンドインパクト”で追加/改良される
ゲーム要素の数々
それでは,上記のような開発意図の元に作り上げられた最新アップデート“セカンドインパクト”で実装される各要素を見ていこう。
既存の天界エリアの左側に新たな街が追加される。ここに新ダンジョン“海上列車”の入り口と,2人のNPCが配置されている。
ベルン=ボネガート:ルーフトハーフェン始発となる“海上列車”の管理人。高レベル装備の販売と修理,限定クエストの配布を行う。 |
チョロンイ:陸地に打ち上げられて以来,人間の町に住み着いた人魚。消耗品とモンスターカードの壷を販売している。 |
■新たなダンジョンや選択可能な難度などが追加
新たに7ヶ所の高レベル向けダンジョンが追加される。
アントベル渓谷
夜間襲撃戦:推奨レベル 60〜63 |
補給路遮断戦:推奨レベル 61〜64 |
追撃殲滅戦:推奨レベル 62〜65 |
ノースマイア
血蝶の舞:推奨レベル 63〜66 |
誘惑の街:推奨レベル 64〜67 |
海上列車
列車上の海賊:推奨レベル 65〜68 |
西部線奪還:推奨レベル 66〜69 |
キングスロードの上位となる難易度。専用クエストをクリアすることで,今回実装される新ダンジョンで選択できるようになる。非常に低い確率だが,レア(紫)とユニーク(桃)の中間の性能を持つ“真レア”装備がドロップする。
何も消費しない代わりに何も得られないモード。手持ちの消耗品をいくつ使っても減らず,倒れてもコインを気にせず何度でも復活できる。古代ダンジョンや異界など,入場に制限のあるダンジョンでも好きなだけ練習可能だ。
パーティメンバーの最低人数が3人に変更され,モンスターの配置なども調整が施される。また,パーティの平均レベルが65以上だと“次元の亀裂拡張”ボタンが活性化され,拡張した状態では高い抗魔値が必要になる代わりに強力な“2次クロニクル改”のアイテムがドロップするようになる。
■システム面の追加や改良
基本的に全職業が強化される。スキルレベルの上限が20から30に引き上げられ,スキルレベル上昇時の強化幅が大きくなる。またキャラクターレベルが高くなるほど,レベルアップ時の獲得SP量が増え,総計もアップデート前と較べて多くなる。なお,この改変に伴い,全キャラクターにスキルリセットアイテム“レテの珠”と,一週間スキルリセットし放題の“レテ河の契約”が配布される予定だ。
各職業ごとの特性をさらに顕著にし,より強化するためのシステム。レベル50以降,レベルアップごとに“TP”が1ポイント獲得可能になり,TPは下記の特性強化に利用できる。なお,有料のスキルリセットアイテムを使えばSPとTPの両方をリセットできるが,TPだけであればゲーム内通貨(ゴールド)でリセットできるとのこと。
○ステータス強化特性
TPを使用することで,力,体力,知能,精神力,的中率,回避率,HPもしくはMPリジェネレーション,全属性攻撃力強化,全属性防御力強化を上昇させられる。1ポイントごとの上昇率によっては,キャラの強さをかなり底上げできそうだ。
○スキル強化パッシブ特性
TPを使用することで,既存の習得済みスキルを強化できる。攻撃力が増すといった単純な強化から,攻撃回数増加,攻撃判定拡張,ディレイ短縮,持続時間増加など,スキルによってその効果は異なる。何が強化されるのかを事前に確認してから使いたいところだ。
○スキル強化アクティブ特性
TPを使用することで,既存のスキルをモデルとした新しいExスキルを習得できる。威力が高いのはもちろん,エフェクトもかなり派手なものが多く,特性スキルシステムの目玉といえる部分だ。元となったスキルとExスキルはクールタイムが別計算のため,習得以降は立ち回りが大幅に変化することになるだろう。ショートカットスロット数の問題もあり,かなり悩むことになりそうだ。
レベルキャップである70に達すると,キャラクターの周りに青白い妖精が表示される。また70になると,レベル69以下のパーティメンバーに強力なバフをかけられるアイテム“上級者の恩寵”が使用可能になる。
クエストがエピック,一般,限定,反復などにカテゴリ分けされ,クエストリスト上でタブを切り替えて確認できるようになる。
エモーションリストからアイコンを選択することで,感情を表現できるシステム。選択したエモーションはキャラの周りに表示され続ける。
■装備関連の拡張
レベル60で受注できる特定のクエストをクリアすることで,“補助装備”スロットが,レベル65で受注できる特定のクエストをクリアすることで“魔法石”スロットが,装備ウィンドウに追加される。これらのスロットに装備するアイテムには,属性やスキルレベル,抗魔力など,既存の装備では強化しにくいオプションが多くついている。
○クロニクル装備の能力開放
パーティの平均レベル65以上で“次元の亀裂拡張”を行い,異界ダンジョンに行くと,既存の2次クロニクルよりも強力な“2次クロニクル改”がドロップする。通常の2次クロニクル装備も,材料アイテムを集めることで“改”にアップグレード可能になる。
そのほか,使い切らなかった疲労度を一定量ためると獲得経験値が増加する“疲労度バッテリー”の実装や,パーティ人数によるモンスターの強化度合いの調整,キャラクターの成長テーブル調整,専門職業のレベルキャップが9に上昇,アバターの能力上昇,ダンジョンクリア時のランクシステム改変など,まだまだ紹介しきれないほどの変更点がある。この“セカンドインパクト”は,かつてないほどの規模を誇る“超大型”のアップデートなのだ。
現役プレイヤーとして気になっていることを,
開発チームに直接聞いてみた
今回,韓国の開発チームのスタッフに質問をする貴重な機会が得られたので,思い切って,現役のアラド戦記プレイヤーの多くが気にしているであろうことを直接質問してみた。おそらく耳が痛いであろう質問にも答えてもらうことができたので,現役プレイヤーはぜひ読んでほしい。
4Gamer:
“クリーンパッド(※)”について聞かせてください。現在のアラド戦記に導入されている“クリーンパッド”は,本当に必要なものなのでしょうか。比較的マイペースでプレイできるMMORPGなどと違い,アクションゲームであるアラド戦記では,プレイを中断して表示された文字を入力することになるクリーンパッドはかなり煩わしいと感じます。廃止できないにしても,ダンジョンクリア時のみに表示させるなど,プレイを阻害しないように変更することはできませんか。
※ゲーム中に入力ウィンドウが現れ,指定された文字の入力を求められる仕組み。BOTを取り締まるための施策の一つ。
おっしゃる事は大変よくわかります。こちらとしても心苦しいところではありますが,現状ではBOTの検出にとても有効であることは間違いなく,今すぐ削除するのは難しいというのが正直なところです。プレイ中,その日によってクリーンパッドの発生率が違うことにお気づきかもしれませんが,これはBOTの数に応じて毎日発生率を調整しているためです。健全にプレイしていただいているプレイヤーの皆さんにはご迷惑をおかけして申し訳ないのですが,どうかご理解いただきたいと思います。
4Gamer:
しかしながら,クリーンパッド入力中にもゲーム内の時間が流れ続けているのは大きな問題だと思います。ユーザーの間では「入力中にバフや召喚獣など時間制限のあるスキルが切れてしまうことがある」という不満も聞こえてきます。こういった点を踏まえてもクリーンパッドが“是”であるとお考えでしょうか。
イ・ホジュン氏:
そういった点についても把握しております。重ねて申し訳ありません。開発チームでもクリーンパッドが“ベスト”であるとは認識しておらず,現在,新たな不正検出システムを構築中です。この新システム自体はすでにほぼ完成しており,現在は調整の段階に入っています。今後の予定としましては,調整が完了したのち新システムを導入し,効果が確認されたら徐々にクリーンパッド発生率を下方修正し,ゆくゆくは削除する方向で動いていきます。
まだ予定の段階ですのでいつごろクリーンパッドを削除するといったお約束はできませんが,こちらとしては新システムに大きな自信を持っており,導入すれば必ず皆さんにご納得いただけると思っています。今は新システムの構築に全力をあげさせていただきたいので,大変申し訳ないのですが,もうしばらくご辛抱いただければと思います。
4Gamer:
わかりました。成果が上がることを期待しています。では次に,韓国版と日本版のバージョン格差について聞かせてください。これまでは差が開く一方で,大雑把に見ても一年近く,細かい要素を加えるとそれ以上に日本版は遅れています。この差が縮まるのでしょうか。また勢力戦や新ブラックリスト機能,細かいところでは競売場で使用される数字フォントの横幅統一など,日本未実装の要素が今後実装される予定はありますか。
今回の“セカンドインパクト”実装で,韓国版と日本版との差は約3か月にまで縮まります。ひとまずはご安心ください。韓国版で起きた不具合を修正してからの実装を目指していたため,時期が遅くなったことをお詫びします。
ローカライズや調整で生じるタイムラグが大きくなってしまっていた理由は,これまで韓国版と日本版の開発チームが完全に別々に動いていたためです。現在は,中国や北米でのサービス展開も踏まえ,今までとは異なるスムーズなローカライズの体勢が整いつつあります。今後は差が縮まることはあっても,開くことはないはずです。未実装要素についても順次実装していきますので,もうしばらくお待ちください。
4Gamer:
ではこちらも楽しみに待たせてもらいます。では最後に「アラド戦記」の今後の展望,予定についてお聞かせください。
イ・ホジュン氏:
これは韓国でも未発表の情報になりますが――アラド戦記は現行のオンラインゲームの中では解像度が低い(640×480)部類に入ります。そのため画面に表示できる情報に限りがあり,チャットログの表示スペースが狭く,コミュニケーションが取りにくいという問題がありました。そこで現在「チャットウィンドウやログを画面の外に出す」という機能の開発を行っています。そのほか,狭いスペースを有効活用すべく,UI関係の表示も改善するよう進めています。
ジョン・スンヨル氏:
アラド戦記は日本でかなり長い期間サービスを続けさせていただき,想定していたより多くの皆さんにプレイしていただいています。「韓国や中国のほうがオンラインゲームの市場規模が大きいので,日本は重視されていないのでは?」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが,まったくそんなことはありません。日本のプレイヤーさんは世界的に見てもゲームに対して大変厳しい目を持っていますので,皆さんの意見がこれまでアラド戦記全体に与えてきた影響はとても大きいのです。開発だけでなくサービスにおいても,プレイする皆さんのことを第一に考えて進めていこうと思っていますので,バグなど不便な点においても,目に見える部分見えない部分を含め,できる限りの努力をしていることをご理解ください。今後も色々なご意見,叱咤激励をいただければと思っています。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビュー前には明確な返答がもらえない可能性も考えていたが,いい意味で予想外に,はっきりした答えをもらうことができた。だが本作の現役プレイヤーとしては,まだほかにも改善してもらいたいと思う点はある。開発チームにはさらに力を尽くして問題の改善に当たってもらいたいと思う次第だ。
ともあれ,さまざまな改良や追加を含んだ,今回の“セカンドインパクト”アップデートが,アラド戦記のプレイヤーにとって心待ちにしていたものであることに変わりはない。アップデート実装は11月24日の予定となっている。残りの数日を期待しつつ待とう。
「アラド戦記」公式サイト
- 関連タイトル:
アラド戦記
- この記事のURL:
Copyright (c) 2005 NEOPLE Inc. All Rights Reserved. Developed by A-SHOCK
- アラド戦記オフィシャルガイド -戦いの軌跡 編-
- 本
- 発売日:1970/01/01
- スペシャルフォース公式ガイド
- 価格:¥3,225円
- 本
- 発売日:1970/01/01
- ハンゲーム公認ガイドブック
- 本
- 発売日:1970/01/01